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キリング・ミー・ソフトリー【小説】16_アゐデンティティ


現実にはしっかり志を持つ学生は微々たるもの。真司の軌跡は眩しく、いかにフォローされても惨めだった。
彼との格差に打ちひしがれてしまい、帰宅を待たずスマートフォンで求人情報を調べ、週2からOK、未経験歓迎、シフト制で学生も安心と謳う適当な位置のコンビニエンスストアに応募し、何とかアルバイトの枠へ収まる。


まず高校生活を引き摺った子供が社会人の莉里さんに恋心を抱くなど浅はか、彼女は暇潰しで戯れに付き合ってくれるんだろう。
SNSを覗けばどこぞの男が寄せるふざけたコメントにも逐一丁寧な対応、意中の相手がいようと合点がいく。
何故、好き嫌いという気持ちは思い通りに操れないのか



再生回数が跳ね上がり淳にバレた為、引退まっしぐらの予定が、一念発起し新作の〈弾いてみた〉動画を録った。
消し去りたいありとあらゆる衝動をぶつけ、狂ったかの如くギターを掻き鳴らすも、編集の段階で桁外れた見苦しさに我ながらドン引きして即刻お蔵入りとなる。



外面を整え、環境が違えど、中身が変わらなければ意味を成さない
「なんだよ、なんなんだよ。俺が一番分かんねえの俺だわ。」
ひっそりとした夜の海へ向かう。
穏やかな漣と溶け合い、感傷に浸り瞳を閉じればカップルらしき男女のはしゃぎ声で邪魔され、舌打ちする。


「目標はね、この先見つけられるんだよ。」
と父はのんびり言い、
「今日も楽しかったかしら?」
夕飯前、さも明らかであるように尋ねる母。
自宅にいると頭がパンクしそうだ。
どうせ当たり障りない答えを返すと高を括り、まさにその雑な慰めを求めて、莉里さんに弱音を吐く。
『大学入るんじゃなかった』『は?どーしたの?』


彼女にこれまでの経緯や複雑な心境を包み隠さず伝える。じわじわ風が強くなってきた。
ちっとも絵にならない男が海辺に腰掛ける、たったそれだけ。至って不恰好。




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