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キリング・ミー・ソフトリー【小説】58_ロンリ、ユ。


窮屈な改札を抜ける。
薄ら笑いを浮かべた知成に大好きか、そっかなどと復唱され、口を滑らせなければ良かったと悔やむ夏の夜。ついイラッとしてぬいぐるみを知成に投げ付け、ぶつかり合う。


若干、気温が下がり涼しくなった。
つまりはもうすぐ誕生日が過ぎる。
俺、何やってんだろ。あーあ、莉里さんには会えなかったな、遠距離だし付き合ってもないから当たり前だけど。
今日に限って音信不通、メッセージが彼女の方で止まっている為、わざわざ自分から催促のように送る訳にもいかず、ただ連絡を心待ちにするのみだ。


知成の家へ着き、俺もちー大好きだよと小っ恥ずかしい返事を囁かれて男に言われても気が萎えることをようやく悟った。
長い溜息の後、虚ろな目で空を見上げればポケットに忍ばせたスマートフォンが小刻みなバイブレーションで暴れる。


「は?うるせえな、誰だよ。母さんか…、」
舌打ちして覗き込んだ途端に息が止まりかけた。Lily、莉里さんからの電話。
「えっ、あっ、も、もしもし?」
混乱で声が上擦る。


「ごめんね、いきなり。今、大丈夫?」
「全然!」
「あの、アキくん。19歳のお誕生日だよね。おめでとう。へへ、友達の私が知らないとでも?一番最後に言ってやろうかなって。
とんだサプライズに平静さと語彙力を失い、破茶滅茶な叫びばかり溢れ落ちた。


「嘘、マジか、あ、うわ、ヤバい、その、どうしよ、すっげえ嬉しい。ありがとう。」
「相当びっくりしたみたいね。」
「こんなんズルいでしょ。来ると思ってなかった。」


通常なら真っ直ぐ帰ってシャワーを浴びたいところだが、脇道に逸れてでも話を続ける。
「莉里さんの誕生日いつ?」
「残念、終わってる。6月3日、22歳になりました。」
まさに距離を置かれた時期だった。
初めて彼女の口から年齢を聞いたものの、3歳差とは俄かに信じ難い。もっと幼く見える。


「日付変わっちゃった。そんじゃ、アキくんにとってこの1年がハッピーになりますように!来月のフェス楽しみだね、おやすみなさい。」
案外あっさり電話を切られても、莉里さんの朗らかさが身体中に絡みつき離れなかった。


高鳴る胸は、物陰から霊の類いが飛び出してきそうな街灯の少なさと無関係。
何もかもが愛おしい莉里さんによる。



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