キリング・ミー・ソフトリー【小説】59_高嶺の花ちゃん
昨日19歳になりました、10代ラスト楽しみますと文章を添えて野郎どもの後ろ姿をSNSへ投稿すれば、何食わぬ顔で莉里さんがサラッといいねをつけてきた。
もどかしくて堪らない。
興奮度が増し、あの電話の件を黙ってはいられず知成にメッセージアプリでありのままお届け。
『女神。超あざとくね?すっげーかわいんだが』『へえ、なかなかやるじゃん』『もうムリ。カンペキ落ちた。絶っ対相手にされないの分かってんだよ、友達だから優しくしてくれるって』
もしもこちらが境界線を跨ぎ、踏み躙った場合は再び壁を作られるどころか、いよいよ扉を閉ざし鍵を掛けるだろう。容易くスマートフォンひとつで棄てる、繊細な繋がり。
最も恐ろしいのは莉里さんに恋人が出来てしまうという事態だ。どこぞの誰かとくっ付き、雲の上の存在と化すなんて、嫉妬で悶え苦しむ。
第一、ライブ以外での彼女を殆ど知らなかった。好きな食べ物はおろか私服ですら想像が沸かない粗末な程度だが、莉里さんが他の者に笑いかけるなどもってのほか、釣り合わなくとも独り占めしたい。俺の側にいてよ。
身勝手な願望とは呑み込んだ上で。
『バリバリ下心あるヤツな。いや、いくらなんでも男のそーゆーの気付かないワケなくね?経験豊富ってかわりと彼氏いたっぽいし、明らかちーに合わせて知らんぷりかましてるだけっしょ。ぜんぶ計算済みでやってんじゃねえの?』
期待を持たせ弄んで自由に操り、いずれ飽きるまで振り回して一喜一憂させてはしゃぐ。
正直言って莉里さんならばやり兼ねない行為、それでも尚好きなのだからタチが悪い、腐っている。
『知成助けて!』『なんかね、人に意見聞くとき自分の中では既に答え出てるって、母ちゃんが』
ずばりそのもの。何を隠そう、心のうちにちらほら揺蕩う感情があった。
いっそ直接話した方が早いのでは?
こうして今夜、海で落ち合うことになる。
