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キリング・ミー・ソフトリー【小説】53_百合の咲く浜で
昼間は混雑しているシーサイドも徐々に賑わいを失って、深夜となれば人の気配はなく稀に手持ち花火で大いに沸き返るはた迷惑な軍団と出会すのみ(これまた誰もが旧友その上リーダーは知成だった為、世間の狭さを痛感)。
盆、8月半ば。夜分に我が家を忍び足で抜けては海へ行く習慣が付いた。
因みに兄は毎年この時期を逃れ、家族揃ってこちらの誕生を祝うべく27日と最も近い週末に帰省する。
浜風が心地良い。
海辺に入り浸る暮らしを綴ったところ、眠れないと言う莉里さんから波音が聞きたいとリクエストされ、ドキドキしながらメッセージアプリを通話へ切り替えた。
「あ、もしもし?」
「こんばんは。お休み前にお邪魔します。わあ、めっちゃ海!」
「てか、うるさくない?平気?もうちょっと離れよっか。」
「ううん、このままでいいの。はあ、落ち着く。」
東京に住む彼女が隣にいる訳もないのに、確かにスマートフォンの向こう側では繋がっていて、同じ欠片を拾い集める。
背後には一抹の光も見えず、ただ月影が暗闇を照らした。暫し黙り込むも静寂は怖くなかった。
「これ絶対ヒーリング効果あるわ、なんか悪いのぜーんぶ流れちゃうヤツ。」
「そりゃ良かった。」
「今更だけどアキくんの声ヤバいね、耳に残る。」
「俺のことは放っといて、大人しく聞いてなよ。莉里さんが寝るまで付き合うから。」
生まれてこの方ずっと身近な、当たり前にあった場所が図らずも莉里さんにとっては好きなものの一部で。
こんな何の変哲もない街と蔑んできたけれど、沿岸で育ったことを心からありがたく思う。
3時を過ぎた頃、彼女が立てる寝息に幸せを噛み締め、そっと布団に潜った。
