昭和28年(1953年)狂犬病予防法施行規則 / 改正 第十五条を削り~(前半)
昭和28に初めて狂犬病予防法施行規則が改正されたときの改正省令を読んでいます。
この時の改正は、法令の構成(政令=施行令が制定された)や語句を改めるなど本質的に変わったことはないのですが、私はこの「第十五条を削り」だけは気になっています。
この改正は、狂犬病予防法施行令(処分前の評価)第五条へと移ったからなのですが微妙に違うのです。その微妙さが気になって仕方ありません。
今回読む部分(太字の部分)
第十五条を削り、第十条を第十一条とし、以下第十四条まで順次一条ずつ繰り下げ、第九条の次に一条を加える。
(犬の所在地が変更した場合の鑑札の交付)
第十条 狂犬病予防法施行令(昭和二十八年政令第二百三十六号)第二条第一項の規定による鑑札の交付は、犬の新所在地の市町村長を経て行うものとする。
大蔵省印刷局 [編]. 官報 昭和28年(9月)-(10月) 19530900-19531000, 日本マイクロ写真 (製作), 1953. 第8033号 289頁
今回取り上げる部分は冒頭の「第十五条を削り」から始める法律の入れ換えと、第十五条を削る意味を取り上げます。
条文を移動したり、加えたりする時の書き方
条文の番号をずらしたり、条文を削ったり、加えたり。
初めて読んだ時「何がどうなってんの?」と思ったものでした。冷静に読んでみると(条文の移動は)それほど複雑でもありませんでした(ただ削った条文のことは気になった)。
冷静に読んだ結果を書きます。
まず今迄の第十五条は削除する。次に今までの第十条から第十四条を、第十一条から十五条に一つずつ繰り下げて、空いた第十条に新しい第十条を挿入する。第十六条以後は変わらずそのまま。
確かにこの順番で書かれると間違えなく理解できますが、最後を削って一番前に戻ってくるのが解せませんでしたが、幾つも法令(改正法令含む)を読んでいて気付いたことがあります。
1.改正内容は必ず頭から順番に書く
2.説明(改正条文)の途中であっても、一つの条文(第〇条)が重複しないようにする。
この二つは必ず守っているようです。
この原則を守ると、まず第十五条を先に空けなければ第十四条の行き場がなくなってしまうので、第十五条を削ることを先に書く。
今迄の第十条から第十四条を繰り下げて(第十条を空けて)その後、新たな第十条を示す。
改正法で条文を削除する場合、今回のように、ある条文を削除し前後の条文で調整する方法と、「第〇条を次のように改める。」とした上で「第〇条 削除」とする方法の2つがあるそうです。後者の場合、その後の条文には「第〇条 削除」と書かれることになります。
今回は、削除と追加が比較近くにあったので、このような形になりましたが、単発で削除や追加があった場合を含めた改正の書き方について、改めてページを設けたいと思います。
条文を追加(挿入)する場合は、今回のように、追加した条以後を繰り下げる方法と、枝番を使う方法があります。
今回取り上げた改正を後者の方法を使ったのであれば、挿入した第十条を「第九条の二」にし、第十五条は「削除」の表示になります。
周辺の条文を動かした場合、その条文を準用等している箇所があれば、そちらも直さねばなりません。デジタル化されている現在では難しいことではありませんが、それが成されていなかった時代に、そのチェックを厳密に行うことは大変なことだったのではないかと想像しています。
参考にさせていただいたページとして以下を紹介しておきます。
条の枝番号と削除 @ 参議院法制局
条文の削除や追加についてまとめたnote
法律入門:条文の削除や追加
つづいて、削られた狂犬病予防法施行規則第十五条がどのようなものであったのか見てみます。
削られた(昭和二十五年制定時の)第十五条
(処分前の評価)
第十五条 予防員は、法第六条第六項の規定によつて犬を処分する場合又は法第十四条第二項の規定によつて犬を殺す場合は、あらかじめその犬の価格について適当な評価人三人以上に評価させておかなければならない。
官報 1950年09月22日 第7111号 313,314,315。
国立国会図書館デジタルコレクションでPDF化された2ページ。
1ページ目から2ページ目へのリンクがあります。
https://dl.ndl.go.jp/pid/2963657/1/1
https://dl.ndl.go.jp/pid/2963657/1/2
法第六条第六項は、犬が抑留された後、所定の手続きを経て定められて期間内に所有者が引き取らなかったとき処分できる、というもの。
法第十四条第二項を説明する前に、第十四条第一項を説明します。
参考までに、狂犬病予防法第十四条について書いた私のnoteはこちら。
狂犬病発生時に予防員は病性鑑定のため、犬の死体を解剖することができるし、解剖のため狂犬病にかかった犬を殺すことができる。
第二項は「前項の場合においては第六条第七項の規定を準用する。」となっています。第六条第七項は「処分によつて損害を受けた所有者に通常生ずべき損害を補償する。」というもの。
つまり法第十四条第二項は、狂犬病発生時に病性鑑定を行うための解剖をしたら、それにより発生した損害を補償する、となる。
つまり「抑留後の処分」「病性鑑定に必要な解剖」を行った場合に通常生ずべき損害を補償するために、あらかじめ「犬の価格について」評価する、という条文。
しかしこの「犬の価格について」が狂犬予防法施行令(処分前の評価)第五条に移った時になくなってしまうのです。
その狂犬予防法施行令(処分前の評価)第五条を見てみましょう。
昭和二十八年制定の狂犬予防法施行令(処分前の評価)第五条
(処分前の評価)
第五条 予防員は、狂犬病予防法第六条第六項の規定によつて犬を処分し、又は同法第十四条第一項の規定によつて犬を殺す場合には、あらかじめ、適当な評価人三人以上にその犬を評価させておかなければならない。
(この条文について私が書いたnoteはこちら)
削除された施行規則第十五条とよく似ています。
まず、先に書いたように「犬の価格について」がなくなっている。
何故なくなったのか調べてみたのですが国会議事録など読む限り見つかりませんでした。今(2025年=令和七年)現在の感覚だと、譲渡適性等評価すべきことは他にもあるはずですが、当時も同様の考えがあったのか、または他の理由だったのか知りたかったのですが分かりませんでした。
「あらかじめ」の後の「犬の価格について」の代わりに「、」が入りました。法律には句読点にも意味があると読んだことがであるので何か意味があるのではないかと考え、最近の法律を幾つか見たのですが、皆入っていました。入っているのが当り前のようです。
法第十四条第二項が第一項になっていますが、こちらが正しいですよね。「犬を殺すことができる」と書いてあるのは法第十四条第一項。
昭和25年制定時の狂犬病予防法施行規則は幾つか不備があったように(素人の私が読むと)おもいます。
今回は細かい部分で気になることが幾つかあり、しかも解決されないものもありました。しかし飼い主がしなければならないこと・してはならないことについての内容ではありませんので気にしないことにします。
ここまで
