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法律入門:条文の削除や追加

昭和28年に狂犬病予防法施行規則が改正され、その改正省令の中に以下の部分がありました。

 第十五条を削り、第十条を第十一条とし、以下第十四条まで順次一条ずつ繰り下げ、第九条の次に一条を加える。
 (犬の所在地が変更した場合の鑑札の交付)
第十条 狂犬病予防法施行令(昭和二十八年政令第二百三十六号)第二条第一項の規定による鑑札の交付は、犬の新所在地の市町村長を経て行うものとする。


大蔵省印刷局 [編]. 官報 昭和28年(9月)-(10月) 19530900-19531000, 日本マイクロ写真 (製作), 1953.  第8033号 289頁

この前半部分では、第十五条を削り、第十条を追加しています。この様に条文を削除したり追加したりする改正法の書き方を説明します。

(以下、上記条文の太字部分を読んだときのnote)
昭和28年(1953年)狂犬病予防法施行規則 / 改正 第十五条を削り~(前半)

この例では、都合よく削除する条文と追加する条文の数が一致しているし、比較的近い場所なので調整がついていますが、そうではない場合も多いと思います。また、法律を読み込んでいる人は枝番の条文や「削除」となっている条文を見たことがあるとおもいます。

このような条文の削除や追加がどのように行われ、その後どの様に記されるのかを調べてみました。


改正法令を読んでいて気付いた基本的なルール

今迄改正法令を読んでいて、条文を削除・追加する時には以下のルールがあることに気付きました。

1.改正内容は、頭から順番に書く
2.説明(=改正条文)の途中であっても、一つの条文(第〇条)が重複しないようにする。

・同様の改正が離れた箇所にあっても、出てくる順番に一つずつ書く。
・条文を追加する場合は、
 ・追加先の条番号を空ける(削除または移動する)改正条文を書いた後に、追加する条文を書く。
 ・または、枝番(後述)を使う。

この様な書き方は、読む側にとって(私のような頭の回転が鈍い人間には特に)ややこしくて理解に時間がかかる書き方ですが、時間をかければ誤解なく理解できます。

冒頭に引用した例は、ちょうど削除する条文(第十五条)があり、その前の方に追加する条文(第十条)があって調整がつきましたが、一般的な(単発の)削除や追加がどのように行われるかと調べてみました。


削除や追加のルールを調べてみました

幾つかの参考になるページがありましたが、以下のページを参考にするのがよさそうです(参議院法制局なので信用できそうだし)。

条の枝番号と削除 @ 参議院法制局

私の経験と上記ページに書かれていることを、私なりにまとめて書きます。

〇 追加(挿入)〇
上記ページでは、条文の追加を挿入と表現していますが、私は今迄「追加」と書いてきたので、そのまま追加で書きます。

・枝番
 冒頭の例では、第九条の次に一条追加するために、その後の条文を繰り下げ、第十条の場所(?)を確保していますが、そうではなく、第九条の後ろに追加する場合、「第九条の二」とするのです。
 そうすることで、周辺の条文に影響を与えずに追加することができます。
 しかし、見た目は良くありません。私は初めて見た時「第二項と違うのか?」と思ったし、前の条文(この例では第九条)との関係は?、と疑問におもったものでした。

 私が驚いたこの方法を使った条文として、動物の愛護及び管理に関する法律の第三十九条の二~二十六 があります。枝番が二十六もあることにも驚きましたが、第三十九条(枝番なし)は「都道府県が協議会を組織することができる」ことが書かれていて、(枝番の)二~二十六は「犬及び猫の登録」と題された主にマイクロチップことが書かれています。このように全く別内容なのです。

・繰り下げ
 冒頭の例の様にその条文以後を繰り下げて、その場所(条数というのかな)を確保する。
 今回の様に繰り下げられる条文に変更がなければ「順次一条ずつ繰り下げ」で済むのですが、繰り下げられる条文に変更があった場合は、一条ずつ書かねばならず、慣れないととてもややこしく感じます。

 初めて読んで時は「ややこしい」と思いましたが、一度理解できると「またこの方法か」と理解し易くなります。
 繰り下げられた条文を参照(例えば準用)している場合は、そちらの条文も修正しなければならなくなり、改正法全体が複雑になることがありそうです。

〇 削除 〇
こちらも2つの方法があります。

・「削除」と表記のまま
 削除した条文は「削除」と表記したままにする。
 改正法ではどうするか。以下の様に書きます。
 ----
 第〇条を次のように改める。
 第〇条 削除
 ----
こんな感じで書かれます。その後の法律のその部分は、「第〇条 削除」と記されます。

・繰り上げ
 冒頭に記した例のように以後の条文を繰り上げる方法ですが、繰り下げで書いたように、繰り上げられた条文を参照している条文があれば、それも改正しなければなりません。それらが多くなると面倒なことになるので、繰り下げも繰り上げも、あまり使われないのではないかと考えます。
 この方法の例を探したのですが見つかりませんでした。先に紹介した「条の枝番号と削除 @ 参議院法制局」の最後の方に「繰り上げ」の例がありますが(「繰り上げ」の一種ではありますが)続く条文全てを繰り上げるものではありませんでした。
参考までに成立した該当条文へのリンクはこちら

 繰り下げも繰り上げも、このように影響が限られている場合にのみ使うのかもしれません。


参考:削除例 ~ 動物の虐待

動物関係の法律で削除されたもので、私の記憶にあるのは(条ではなく号ですが)軽犯罪法第一条第二十一号。
・元の第二十一号は「牛馬その他の動物を殴打し、酷使し、必要な飲食物を与えないなどの仕方で虐待した者」。引用元:法律第三十九号(昭二三・五・一)@ 衆議院

削除した改正法は、動物の保護及び管理に関する法律の制定の附則。その条文は

 (軽犯罪法の一部改正)
2 軽犯罪法(昭和二十三年法律第三十九号)の一部を次のように改正する。
  第一条第二十一号を次のように改める。
  二十一 削除

引用元:動物の保護及び管理に関する法律 法律第百五号(昭四八・一〇・一)@  衆議院


削除後(令和七年現在も)の軽犯罪法は以下のように「削除」と記され残っています。

 二十一 削除

引用元:軽犯罪法(昭和二十三年法律第三十九号) @ 法令検索

参考までに当時制定された動物の保護及び管理に関する法律に於いて動物の虐待についてどのように書かれたのかを書いておきます。

(罰則)
第十三条 保護動物を虐待し、又は遺棄した者は、三万円以下の罰金又は科料に処する。
2 前項において「保護動物」とは、次の各号に掲げる動物をいう。
 一 牛、馬、豚、めん羊、やぎ、犬、ねこ、いえうさぎ、鶏、いえばと及びあひる
 二 前号に掲げるものを除くほか、人が占有している動物で 哺乳類又は鳥類に属するもの

引用元:動物の保護及び管理に関する法律 法律第百五号(昭四八・一〇・一)@  衆議院

令和七年現在の最高刑は「五年以下の懲役又は五百万円以下の罰金」になり対象とする動物として(第二号に「人が占有する動物で」に続くところに)「爬虫類」が加わっています。(引用元:動物の愛護及び管理に関する法律(昭和四十八年法律第百五号)第四十四条 @ 法令検索 )
世の中変わってきたなと思います。


追加(挿入)が多い例

・私が知る限り追加がとても多い例として、平成十一年に「動物の保護及び管理に関する法律」が「動物の愛護及び管理に関する法律」に改正されたときの「動物の保護及び管理に関する法律の一部を改正する法律 法律第二百二十一号(平一一・一二・二二)」があります。

旧法である「動物の保護及び管理に関する法律」は全十三条、改正後の「動物の愛護及び管理に関する法律」は全三十一条。これを今回説明した方法で改正法として文章になっています。

先に書いたルールに従い、まず第一条、第二条の改正条文あり、次は最後の第十三条を内容を修正した後、第二十七条に移動しています。
このような複雑な書き方が延々と続きます。

たぶん、先に完成形(改正後の形)を作り、改正前後の条文を比べ、改正法を作っているのだと思います。

・もう一つの例として、条ではなく項ですが、昭和29年の狂犬病予防法改正法律第八十号(昭二九・四・三〇)◎狂犬病予防法の一部を改正する法律)の六条部分です。改正前は全七項、改正で途中に三項入って(繰り下げ)改正後は全十項になります。繰り下げた項の中には内容を変更するものもあり、複雑ではありますが、どうにか理解することができました。
この書込みの後になりますが、該当部分の説明も書いて行く予定(忘れなければリンクします)。



多くの方は改正法を読む機会はないと思いますが、動物の愛護及び管理に関する法律がまだまだ改正されそうなので、念のため取り上げました。

ここまで

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