Escape from Tarkov ― NATO弾①
シリーズ初回はこちら: Escape from Tarkov ― 弾丸の歴史
――NATO弾の名前はいったい?
Escape from Tarkov を遊んでいて、まずもって
5.56×45弾、M855 という謎の番号の羅列を覚えなければならないのは、理不尽すぎると感じたことはないだろうか。
まず結論から言うと、
米国軍人の方たちも同じ理不尽を味わっている に違いない。
今回は、その理由について整理していきたい。
M とは?問題
米軍の軍備を俯瞰して見ると、
M が冒頭についている装備がやたらと多い ことに気が付くはずだ。
M15、MRE などがその典型である。
では、この M とは何なのか。
調べてみると、ある意味で拍子抜けする事実に行き着く。
米軍における M とは「正式に採用された軍備」 を表す記号であり、
それ以上でもそれ以下でもない。
正式採用前の段階では XM という文字が割り当てられるらしい。
そのため、
M1 Abrams:戦車
M2 Bradley:歩兵戦闘車
M50:ガスマスク
M69:訓練用手榴弾(音だけ出る)
M67:破片手榴弾
M18:スモークグレネード
これらはすべて M で始まる。
重要なのは、
数字に性能的な意味はほぼない という点だ。
基本的には 採用された順に番号が振られているだけ である。
果ては MRE。
これは Meal, Ready to Eat(食事、すぐ食える)の略だが、
こちらも一応「正式採用物資」という意味で M が付いている。
恐らく米軍の新兵さんは、
これらを一通り丸暗記させられる羽目になるのだろう。
では、採用順なのだから
番号が後の方が強いのかというと――
そんなことは全くない。
あくまで「採用された順」。
それ以上の意味はないのである。
M855 と M856
ここからは、裏を取った一次資料というより
ChatGPT に教えてもらった情報を基にした整理 なので、その点は注意してほしい。
とはいえ、
M855 と M856 の関係については、
少し考えると納得できる部分が多い。
まず M855 は、
通常弾として試験され、正式に採用された弾丸らしい。
これが基準となる弾として採用され、
それに合わせてトレーサー弾が採用された
――という順番になる。
なぜなら、
トレーサー弾(曳光弾)は
通常弾の弾道に「できるだけ合わせて」設計されて、
はじめて意味を持つからだ。
弾道が違ってしまえば、
味方に敵の位置を知らせる
自分が今どこに撃っているかを把握する
といった役割が、そもそも成り立たない。
このため、
M855 が採用されたからこそ、M856 が採用された
と考えるのが合理的に思える。
トレーサー弾の目的を整理すると、
威力や貫通力ではなく
「弾道を可視化すること」
にある。
現実の運用では、
射撃の修正
分隊内での目標共有
リロードタイミングの把握
といった用途が想定されている。
混ぜて使うことが前提の設計
ここで面白いのは、
M855 と M856 が混在して使われることを前提に設計されている
という点だ。
例えば、
マガジンの終盤だけトレーサー
一定間隔でトレーサーを混ぜる
といった運用は、
現実の部隊運用ではごく普通に行われてきたらしい。
この視点に立つと、
Tarkov に存在する
マガジンロードのプリセット
弾を1発ずつ指定して詰める UI
が、
単なるゲーム的な凝りではなく、
現実の運用思想を反映したもの
であることが見えてくる。
さらに A1 とか言う理不尽
では M855A1 とは何なのか。
A は Alternation(改修)やAmendment (改訂)を意味し、
M855 を改修・改良したモデルという位置づけになる。
ここで素朴な疑問が浮かぶ。
「じゃあ新しい番号を振ればよくない?」と。
しかし、米軍ではそう簡単にいかないらしい。
理由をかなり雑に言うと、
新しい番号を振ると、関連する文書や運用規定を
全部作り直す羽目になるやろ、トンチキめがっ
という事情があるそうだ。
そのため、
基本は同じ装備だが性能を改良した場合、
A1 という改修番号を付けて処理する。
この結果、
M855A1
M856A1
はそれぞれ
M855 / M856 の改良版
という位置づけで考えて良さそうである。
AP(Armor Piercing)
Escape from Tarkov で AP と表記されている
M995 弾 は、
Armor Piercing――つまり装甲貫通を主目的とした弾丸だ。
名前のまんまである。
Tarkov の世界では
貫通力(Penetration)が非常に重視されるため、
単純に「強い弾」という扱いになりがちだ。
しかし、歴史的な背景を見ると、
少し違った見方ができる。
1980年代以降、
ケブラー製防弾ベストの普及
セラミックプレートの登場
ヘルメット性能の向上
特に1990年代以降は、
正規軍・準軍事組織ですら防具を装備
「当たっても倒れない」事例が増加
という状況が生まれた。
ここで、現場からこんな声が上がる。
「弾は当たっているのに、敵が止まらない」
こうした時代背景の中で、
装甲をとにかく貫通することに性能を全振りした弾
として AP 弾が求められるようになったらしい。
当然、その結果として
貫通力の数値は非常に高くなる。
しかし裏を返せば、
人体すら貫通してしまい、止血だけで継戦可能になる
という見方もできる。
現実世界での運用を調べてみると、
マガジン前半:装甲を抜くための AP 弾
中盤:肉体破壊を主目的とした通常弾
終盤:状況共有や残弾確認のためのトレーサー
といった装填が行われることもあるらしい。
ここから先はまだ推測の域を出ないが、
Escape from Tarkov の世界でも
同じことが起きている可能性はある。
つまり、
装甲が硬い敵に AP だけを撃ち続けるより
装甲を抜いた後に肉体ダメージを与える弾を使った方が
効率が良いのではないか
という考え方だ。
マガジンのプリセット機能が実装されていることを考えると、
この仮説はそこまで的外れでもない気がしてくる。
そしてこの考えは、
次の弾丸を見たとき、さらに強くなる。
次作はこちら: Escape from Tarkov ― NATO弾②
※ この連作で扱っている内容の背景や実際のプレイ感については、
毎週金曜日に配信している配信内でも触れています。
文章とは少し違った形での理解の助けになると思いますので、
興味があればこちらも覗いてみてください。
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