Escape from Tarkov ― 7.62x39弾③
シリーズ初回はこちら: Escape from Tarkov ― 弾丸の歴史
特殊用途弾 ― T-45M1 と US
前回は、7.62×39弾のソ連軍標準弾である
**PS弾(鋼鉄芯弾)**について見てきた。
PS弾は歩兵戦を想定した、
いわば最も基本的な軍用弾薬である。
しかし実際の戦場では、
標準弾だけでは対応できない状況も存在する。
例えば
夜間戦闘
弾道確認
特殊任務
消音戦闘
といった状況である。
こうした用途に対応するため、
ソ連軍は特殊な機能を持つ弾薬も用意していた。
今回はその代表例である
T-45M1(曳光弾)
US弾(亜音速弾)
について見ていこう。
T-45M1 ― 曳光弾
T-45M1は、
7.62×39弾の**曳光弾(Tracer)**である。
曳光弾とは、
弾丸の後部に燃焼剤を仕込み、
飛翔中に光を発する弾薬
のことである。
発射された弾は飛行中に発光するため、
射手は弾道を視認することができる。
なぜ曳光弾が必要なのか
曳光弾の目的は主に二つある。
① 弾道確認
特に自動火器では、
弾着を目視で確認することが難しい。
曳光弾を使えば、
弾がどこに飛んでいるか
修正すべき方向
を瞬時に判断できる。
② 部隊内の射撃指示
機関銃などでは、
曳光弾が射撃方向の指示として使われることもある。
曳光弾は一種の「光る弾道」になるため、
「この方向を撃て」
という指示を視覚的に伝えることができる。
T-45からT-45M1へ
ソ連では当初、
T-45曳光弾が採用されていた。
しかしT-45にはいくつかの問題があった。
特に問題とされたのが
標準弾との弾道差
発光開始距離や発光時間のばらつき
といった点である。
曳光弾は弾道を視認するための弾薬であるが、
標準弾と弾道が大きく異なってしまうと、
射撃修正の基準として使いにくくなってしまう。
また、発光が早すぎれば射手の位置を敵に知らせてしまい、
逆に遅すぎれば弾道確認の意味を持たなくなる。
こうした問題を改善するために開発されたのが
改良型のT-45M1である。
T-45M1では
発光特性の安定化
標準弾に近い弾道特性
などが改善され、
より実戦で使いやすい曳光弾となった。
米軍との考え方の違い
この改良の流れは、
西側の弾薬開発と比較すると興味深い。
例えば米軍では、
5.56mm弾の採用時に
M855(通常弾)
M856(曳光弾)
が最初からセットとして設計・採用されている。
つまり西側では
通常弾と曳光弾を最初から体系として設計する
という考え方が強い。
一方でソ連では
まず基本弾薬を採用する
実戦で問題点が見つかる
改良型を作る
という流れが多く見られる。
T-45からT-45M1への改良も、
まさにその典型的な例と言えるだろう。
US弾 ― 亜音速弾
もう一つの特殊弾が
**US弾(Ус)**である。
US弾は
亜音速弾(Subsonic ammunition)
である。
音速の壁
通常の7.62×39弾は、
弾速が音速を超えている。
弾丸が音速を超えると、
ソニッククラック
と呼ばれる衝撃波が発生する。
これは銃声とは別の音であり、
サプレッサーを使用しても完全には消せない。
そこで亜音速弾
US弾は弾速を音速以下に抑えることで、
ソニッククラックを発生させない
ように設計されている。
これにより
サプレッサーと組み合わせた静音射撃
特殊任務
などに使用することが可能になる。
代償
しかし亜音速弾には欠点もある。
弾速が低いため
弾道が大きく落ちる
射程が短くなる
といった制約がある。
そのためUS弾は
特殊用途の弾薬として運用されていた。
戦場の要求と弾薬
ここまで見てきたように、
PS弾 → 標準戦闘
T-45M1 → 弾道確認
US弾 → 静音任務
といった形で、
弾薬はそれぞれ異なる役割を持っている。
つまり弾薬は単なる消耗品ではなく、
戦場の要求に応じて設計された道具
なのである。
次回
しかし冷戦が進むにつれ、
戦場には新しい問題が現れる。
それが
個人装備の防護力の向上
である。
防弾チョッキの普及により、
従来の弾薬では十分な効果を得られない状況が生まれた。
こうして登場したのが
装甲貫通弾(AP弾)
である。
次回は
7.62×39弾における装甲貫通弾、
BP弾を中心にその進化を見ていこう。
次作はこちら: Escape from Tarkov ― 7.62x39弾④
※ この連作で扱っている内容の背景や実際のプレイ感については、
毎週金曜日に配信している配信内でも触れています。
文章とは少し違った形での理解の助けになると思いますので、
興味があればこちらも覗いてみてください。
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