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Escape from Tarkov ― 5.45x39弾①

シリーズ初回はこちら: Escape from Tarkov ― 弾丸の歴史

■ “毒弾”と呼ばれた弾丸

5.45×39弾には、かつて奇妙な噂があった。
「ソ連の弾には毒が入っている」というものだ。
もちろん、実際に毒が仕込まれていたわけではない。
しかしこの噂は、完全な作り話とも言い切れない側面を持っている。
というのも、5.45弾で負傷した兵士の状態が、
それまでの弾丸とは明らかに違って見えたからだ。
傷口は小さい。
しかし、時間が経つにつれて状態が悪化していく。
外見と内部の損傷が一致しない。
この“違和感”が、「毒」という言葉で説明されたに過ぎない。
では実際には何が起きていたのか。
それを理解するためには、この弾が生まれた背景に遡る必要がある。


■ 戦場の変化と「当てる」という問題

第二次世界大戦以前、歩兵戦闘は比較的長距離で行われると考えられていた。
そのため、弾薬は遠距離でも威力を維持できることが重視されていた。
しかし実際の戦場は違った。
戦闘の多くは100〜300mの範囲で発生し、
森林や市街地ではさらに短距離での交戦が主流となっていく。
ここで重要になるのは、威力ではなく命中率だった。
どれだけ強力な弾であっても、当たらなければ意味がない。
そして、反動の大きい弾ほど連続して命中させることは難しい。
この問題に対する最初の解が、中間弾という概念だった。


■ 7.62×39という「第一の答え」

ソ連が採用した7.62×39弾は、
それまでのフルパワー弾と比較して軽量で、扱いやすい弾薬だった。
遠距離性能をある程度犠牲にする代わりに、
近距離での戦闘に最適化された設計である。
これは明確に「戦場の現実」に寄せた判断だった。
しかしこの弾にも限界があった。
反動は依然として大きく、
フルオート射撃時の制御は難しいままだった。
つまり、
近距離には適応したが、“当て続ける”という課題はまだ残っていた。


■ 小口径高速弾という発想

この問題に対して、アメリカは別の方向から解を出す。
弾を軽くし、初速を上げ、反動を減らす。
その結果として生まれたのが、5.56×45弾である。
これは単なる軽量化ではない。
「命中率を上げることで戦闘力を高める」
という思想の転換だった。
この変化は、ソ連にとって無視できないものだった。


■ 5.45×39という再設計

ソ連が導き出した答えが、5.45×39弾である。
この弾は、7.62の延長ではなく、
戦い方そのものを見直した結果として設計されている。
軽量化によって反動は抑えられ、
フルオート射撃の制御性は大きく向上した。
そしてもう一つ、特徴的な構造がある。
弾の先端に設けられた空洞によって、
命中後に姿勢が崩れやすくなっているのだ。
この結果として起きるのが、いわゆるヨーイングである。
弾は体内で向きを変え、
内部での損傷が拡大する。
外見上は小さな傷であっても、
内部では大きなダメージが生じる。


■ “毒”ではなく“構造”

ここで最初の話に戻る。
なぜこの弾が「毒弾」と呼ばれたのか。
それは単純に、
それまでの常識で説明できなかったからである。
小さい穴なのに重症になる。
時間差で状態が悪化する。
この現象は、化学的なものではなく、
純粋に物理的な挙動によるものだった。
しかし、それを理解する前の段階では、
人はそれを「異常」として捉える。


■ 弾丸の進化が意味するもの

5.45×39弾は、威力を追求した弾ではない。
また、単なる軽量弾でもない。
これは、
「当て続けること」を前提とした設計であり、
その上で必要なダメージを確保するための工夫が積み重ねられている。
7.62が「当たった時の価値」を最大化した弾だとすれば、
5.45は「当てる確率」を最大化した弾と言える。


■ 一言でまとめると

5.45×39弾は、
毒を使った弾ではなく、
“戦場の現実に適応した結果として生まれた弾”である。


■ 次回予告

次回は、この5.45弾がどのように改良され、
装甲との戦いに適応していったのかを見ていく。

次作はこちら: Escape from Tarkov ― 5.45x39弾②

※ この連作で扱っている内容の背景や実際のプレイ感については、
毎週金曜日に配信している配信内でも触れています。
文章とは少し違った形での理解の助けになると思いますので、
興味があればこちらも覗いてみてください。
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