購買はマジカルバナナである|コカ・コーラから学ぶカテゴリーエントリーポイント
マジカルバナナを覚えていますか?
「マジカルバナナ♪」
「バナナといったら黄色」
「黄色といったらレモン」
1990年代に流行した前の言葉から連想したものを、リズムに乗って答えていくゲームです。
では、少しだけクイズです。
本を売るなら?
バイト探しは?
プロポーズされたら?
おそらく、多くの人が次のように答えたのではないでしょうか。
本を売るなら、ブックオフ。
バイト探しは、タウンワーク。
プロポーズされたら、ゼクシィ。
ここで皆さんは、サービスの機能や価格を比較して答えを出したわけではありません。
言葉を見た瞬間、記憶の中からブランド名が呼び出されただけです。
「本を売る」といったら、ブックオフ。
「バイトを探す」といったら、タウンワーク。
「プロポーズされた」といったら、ゼクシィ。
まさに、マジカルバナナと同じです。
そして実際の購買も、多くの場合はこの連想から始まっています。
ブランドではなく、状況から購買は始まる
例えば、暑い日に外を歩いている場面を想像してください。
「暑い」
「喉が渇いた」
「冷たいものが飲みたい」
「炭酸飲料がいい」
「コカ・コーラにしよう」
頭の中でここまで明確に言語化しているわけではありませんが、記憶の動きとしては、このような連想が起きています。
マジカルバナナ風に表現すれば、
「暑いといったら、冷たい飲み物」
「冷たい飲み物といったら、炭酸飲料」
「炭酸飲料といったら、コカ・コーラ」
となります。
このとき、ブランドを思い出すきっかけになった状況が、マーケティングでいうカテゴリーエントリーポイントです。
通称、CEPと呼ばれています。
CEPには、欲求だけでなく、時間、場所、一緒にいる人、行っている活動、感じている気分なども含まれます。
コカ・コーラは、いつ思い出されるのか
炭酸飲料には、さまざまなCEPがあります。
「暑い日に喉を潤したい」
「炭酸の刺激でリフレッシュしたい」
「食事と一緒に飲みたい」
「仕事や勉強の合間に気分転換したい」
しかし、コカ・コーラの強さは、単に「炭酸飲料が欲しい」という場面だけで思い出されることではありません。
例えば、スポーツ観戦です。
サッカーや野球を見ながら、家族や友人と盛り上がる。その場面で冷たいコカ・コーラを思い浮かべる人もいるでしょう。
コカ・コーラは、オリンピックやFIFAなどのスポーツと長期にわたって関係を築いてきました。
商品を宣伝するだけでなく、スポーツを楽しむ状況とブランドを繰り返し結びつけてきたのです。
映画館も考えられます。
「映画といったら、ポップコーン」
「ポップコーンといったら、コーラ」
映画館という場所や、映画を楽しむという活動自体が、ブランドを思い出す入口になります。
さらに、マクドナルドです。
ハンバーガーやポテトを注文するとき、炭酸飲料ブランドをゼロから比較する人は多くありません。
「マクドナルドでセットを頼む」
「ドリンクを選ぶ」
その流れの中で、コカ・コーラが現れます。
繰り返し一緒に飲まれることで、
「ハンバーガーといったら、コカ・コーラ」
という記憶のつながりも強くなっていきます。
もう一つ考えられるのが、アルコールが苦手な人の飲用場面です。
「飲み会だけど、お酒は飲まない」
「乾杯できるソフトドリンクが欲しい」
「食事と一緒にゆっくり飲めるものが欲しい」
この場面で、コカ・コーラが選択肢に入る可能性があります。
これは実際の調査で検証すべき仮説ですが、CEPを考える際には、商品の機能だけでなく、消費者が置かれている状況を見ることが重要です。
強いブランドは、答えに出てくる問題が多い
マジカルバナナでは、一つの言葉に複数の答えがあります。
「黄色といったらレモン」と答える人もいれば、バナナやひまわりを思い浮かべる人もいます。
購買も同じです。
「暑い日に飲みたい」と思ったとき、思い出されるのはコカ・コーラだけではありません。
水、お茶、スポーツドリンク、他の炭酸飲料を選ぶ人もいます。
重要なのは、一つのCEPを独占することではありません。
より多くの人の、より多くの購買状況で、回答候補に入ることです。
コカ・コーラには、
「喉が渇いた」
「炭酸で気分転換したい」
「食事と一緒に飲みたい」
「スポーツを観戦したい」
「映画館でポップコーンを食べたい」
「マクドナルドでセットを注文したい」
「お酒を飲まずに食事会を楽しみたい」
など、複数の入口が考えられます。
強いブランドとは、一つの連想だけが強いブランドではありません。さまざまな問題を出されても、何度も答えとして登場するブランドです。
思い出されるだけでなく、どこでも買える
日本におけるコカ・コーラの強さは、メンタルアベイラビリティだけではありません。
日本コカ・コーラは、全国に約80万台の自動販売機を展開しています。
街中、駅、オフィス、商業施設、レジャー施設など、生活のさまざまな場所でコカ・コーラ社の自動販売機を目にします。
自動販売機は、商品を買える流通網であると同時に、ロゴや商品を毎日見せ続ける広告でもあります。
つまりコカ・コーラは、
思い出されやすい。
そして、
思い出した場所の近くで買いやすい。
思い出されるから買われる。
買えるから飲用経験が増える。
経験が増えるから、さらに思い出されやすくなる。
メンタルアベイラビリティとフィジカルアベイラビリティが、互いを強化する巨大な循環ができています。
コカ・コーラの担当者は少し気の毒である
ここまで考えると、私はコカ・コーラのマーケティング担当者が少し気の毒になります。
すでに多くの人に知られています。
数多くの購買状況と結びついています。
さらに、日本中のさまざまな場所で買うことができます。
マーケティングにおける基本的な成長レバーを、かなり高い水準まで引き切っているのです。
もちろん、新商品、価格、若年層との接点、ゼロシュガー商品の普及など、伸ばせる領域は残っています。
それでも、すでに極めて高い地点にいるブランドを、さらに大きく伸ばすのは簡単ではありません。
コカ・コーラをこれ以上に大きく成長させるには、新しい需要を生み出すほどの強いアイデアが必要です。
マーケターが抽出すべき学び
しかし、他のブランドが悲観する必要はありません。
むしろ逆です。
まだコカ・コーラになっていないブランドには、わかりやすい伸びしろが残されています。
ブランドを知っている人を増やす。
思い出される購買状況を増やす。
ブランド名、色、形などの識別資産を強くする。
購入できる店舗や接点を増やす。
売り場で見つけやすくする。
欠品や取り扱いのない状態を減らす。
これらは、必ずしも天才的なアイデアを必要としません。
マーケターは、すぐに誰も見たことのない斬新な戦略を探したくなります。
しかし、多くのブランドに必要なのは、コカ・コーラを超えるアイデアではありません。
コカ・コーラが長い年月をかけて積み上げてきた、メンタルアベイラビリティとフィジカルアベイラビリティを、一段ずつ高めることです。
ブランドづくりとは、消費者の頭の中にある連想ゲームで、自社ブランドが答えとして出てくる確率を高めることです。
そして、ブランド名が出てきた瞬間に、実際に買える状態をつくることです。
コカ・コーラは、派手なマーケティングの成功事例というよりも、ブランド成長の基本を極限まで積み上げた事例なのだと思います。
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読者の反応を見ながら、今後増やすテーマを決めています。
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参考URL
Ehrenberg-Bass Institute
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