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アサヒ飲料はnoteで何を探しているのか?「#飲み物のある時間」をCEP戦略で読む

アサヒ飲料とnoteが、「#飲み物のある時間」というお題企画を実施しています。

募集しているのは、商品の味や機能を評価するレビューではありません。

仕事や家事の合間に飲む一杯、落ち込んだ日に気持ちを切り替えてくれた一本、思い出と結びついた飲み物など、飲み物とともに過ごした時間についての記事です。

一見すると、飲み物にまつわる心温まるエピソードを集めるブランディング企画に見えます。

もちろん、生活者との接点づくりやUGCの獲得、企業好感度の向上も目的に含まれているでしょう。

しかし、アサヒ飲料が過去に実施してきたマーケティングを踏まえると、もう一つの可能性が見えてきます。

この企画は、まだ企業側が十分に把握できていないカテゴリーエントリーポイントを発見するための探索装置なのではないでしょうか。

なお、これはアサヒ飲料が公表した企画意図ではなく、公開情報をもとにした私の仮説です。 


アサヒ飲料はCEPを実務で使っている

カテゴリーエントリーポイント、通称CEPとは、生活者がある商品カテゴリーの購入や利用を考え始めるきっかけです。

飲料でいえば、「暑い日に喉を潤したい」「仕事の合間に気分を切り替えたい」「食事と一緒に何か飲みたい」といった状況や欲求が該当します。

CEPは、消費者の記憶からブランドを呼び出す入口です。

ブランドが多くの購買状況と結びついているほど、商品が必要になった瞬間に思い出される可能性が高まります。

アサヒ飲料は、この考え方を知識として紹介しているだけの企業ではありません。

三ツ矢サイダーでは、競合を含むSNS投稿データからCEPを分析し、「アレンジ用途」が自社にとって特徴的なCEPであることを発見しています。

そして、その分析結果を「三ツ矢サイダーで保冷剤を作ってみた」という動画企画に落とし込み、TikTokとInstagramで合計400万回以上の再生を獲得しました。

動画だけで終わらず、店頭POPにも展開されています。

つまりアサヒ飲料には、生活者が投稿した言葉からCEPを見つけ、コミュニケーションや売り場へ実装した実績があるということです。

その企業が今度は、商品名ではなく「飲み物のある時間」をテーマに、生活者から記事を募集しています。

この背景を踏まえると、単なる投稿キャンペーンとは少し違って見えてきます。

なぜアンケートではなく「記事」なのか

通常の消費者調査で飲料を利用する場面を聞く場合、企業側が「運動後」「食事中」「仕事の休憩中」などの選択肢を用意します。

この方法は、すでに想定しているCEPの大きさを比較するには向いています。

一方で、調査を設計した側が思いついていない利用場面は、選択肢に入りません。

自由回答を設けても、「飲み物を飲むのはどのようなときですか」と質問されれば、多くの回答は「休憩中」「喉が渇いたとき」のように短くなります。

しかし、「飲み物とともにある大切な時間について記事を書いてください」と頼まれると、回答の形が変わります。

いつ、どこで、誰と、どのような気持ちで飲んだのか。

その前に何が起き、その一杯によって何が変わったのか。

記事には、選択式アンケートでは削ぎ落とされてしまう生活の文脈が残ります。

たとえば「仕事中にコーヒーを飲む」という回答だけでは、「仕事中」という大きな括りしか見えません。

しかし物語として読めば、

「重要な会議の前に気持ちを整える」

「行き詰まったときに席を離れる理由をつくる」

「同僚と会話を始める」

といった、より具体的なCEP候補が見つかるかもしれません。

アンケートが既知のCEPを測る手段だとすれば、記事は未知のCEPを発見する手段になり得ます。

商品名ではなくカテゴリーを主語にしている

今回のお題は、「三ツ矢サイダーの思い出」でも「カルピスの好きな飲み方」でもありません。

「飲み物のある時間」という、カテゴリー全体に開かれたテーマです。

もちろん、三ツ矢サイダー、カルピス、ウィルキンソンなど、アサヒ飲料の商品に関する投稿も歓迎されています。

しかし、自社商品だけに限定してはいません。

自社ブランドを主語にすると、集まりやすいのは「現在そのブランドがどのように利用されているか」という情報です。

カテゴリーを主語にすれば、競合商品やお茶、コーヒー、手作りの飲み物まで含めて、人がどのような状況で飲み物を必要としているのかを広く観察できます。

CEPは企業が一からつくるものではなく、もともと生活者の暮らしの中に存在する状況や欲求です。

未知の入口を探すなら、最初から自社ブランドの枠に閉じない方が合理的です。

読者の反応も仮説の優先順位付けに使える

noteの記事には、スキ、コメント、シェアといった反応がつきます。

多くの人が「自分にも同じ経験がある」と感じる記事には、複数の生活者に共通する文脈が含まれている可能性があります。

したがって、読者の反応は、どのCEP候補を次の検証に進めるかを決める参考値にはなります。

ただし、スキの数をそのままCEPの発生数や市場規模として扱うことはできません。

反応数は、文章力、タイトル、見出し画像、投稿者のフォロワー数、note内での露出などにも左右されるからです。

記事への反応は定量調査の代わりではありません。

あくまで、仮説の発見と優先順位付けに使う補助線です。

私だったら、この後どうするか

仮に私が集まった記事を分析できるなら、「素敵なエピソードが集まりました」で終わらせません。

まず、記事から飲料が必要とされる状況、感情、時間、場所、同行者、目的を抽出し、似た内容をまとめます。

たとえば、

「仕事を始めるスイッチを入れる」

「仕事を終えて自分に戻る」

「家族との会話を始める」

「一人の時間へ切り替える」

「緊張する場面で気持ちを整える」

といった形で、ポテンシャルの高そうなCEP候補を一覧化します。

次に、定量調査でそれぞれの文脈がどの程度発生しているかを測ります。

魅力的な物語でも、年に一度しか起きない場面なら、事業への影響は限定的かもしれません。

反対に、毎日や毎週のように発生する文脈なら、多くの購買機会と結びつく可能性があります。

さらに、発生数の多い文脈について、その状況でどのブランドが想起されるかを調査します。

頻繁に発生していても、すでに競合ブランドが強く結びついているなら、想起を獲得するための投資は大きくなります。

一方で、発生数が多いにもかかわらず、強く思い出されるブランドが少ない文脈があれば、そこは「想起の空白地帯」です。

私なら、次の条件がそろうCEPを優先します。

発生数が多い。

飲料カテゴリーとの関連性が高い。

競合ブランドの想起が弱い。

自社ブランドの特徴や既存資産と結びつけやすい。

そのうえで、広告、SNS、店頭、パッケージを通じて、その文脈とブランドを繰り返し結びつけます。

重要なのは、一度だけ印象的な広告をつくることではありません。

同じCEPとブランドの組み合わせを、表現を変えながら継続的に提示し、その状況になった瞬間にブランドが自然と思い出される状態をつくることです。

記事で発見し、調査で確かめ、広告で想起を取りにいく。

ここまでつながって初めて、生活者の物語がブランド成長の資産になります。

この施策からマーケターが学ぶべきこと

企業のnote企画を「認知拡大」や「ファンづくり」だけで捉えると、記事という形式が持つ可能性を見落とします。

記事は、生活者に自由に語ってもらうコンテンツであると同時に、通常の調査では見つけにくい文脈を集める定性データにもなります。

さらに、投稿された記事は生活者自身の言葉で書かれています。

そのため、CEPだけでなく、広告表現やコピーの種まで見つかる可能性があります。

もちろん、本当に今回の企画がCEP探索を目的としているかは分かりません。

しかし、CEPを実務に導入しているアサヒ飲料が、商品ではなく飲み物のある「時間」を問い、生活者から物語を集めていることには、マーケティング上の合理性があります。

アサヒ飲料が集めているのは、飲み物の思い出だけではないのかもしれません。

まだ誰も名前をつけていない、飲料が選ばれる新しい入口なのかもしれません。

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参考URL

note公式
お気に入りの飲み物とともにある大切な時間について教えてください!お題企画「#飲み物のある時間」で募集します。

アサヒ飲料公式note
私の「#飲み物のある時間」

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