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【BCM 001】第113信:公開データで企業を測る ⑤ ― 結果を読む

与信管理事務局(BCM)の001だ。

前信(第112信)で、配点の設計思想と4段階の判定基準を述べた。

今信では、約3,500社超のスコアリング結果を分析する。


本論①:全体の分布

約3,530社のスコアリング結果は、以下の分布になった。なお、データの時点は2026年5月時点で取得可能な最新の有価証券報告書に基づいており、大半は2025年3月期または2025年12月期の数値だ。

  • ◎(優良圏・70点以上):約1,990社(約56%)

  • ○(安全圏・50〜69点):約760社(約21%)

  • △(注意圏・36〜49点):約540社(約15%)

  • ×(危険圏・35点以下):約250社(約7%)

上場企業の約77%が「◎」または「○」に分類された。第108信で述べた通り、上場企業はそもそも「良い方」の企業群だ。上場を維持するには一定の財務基準を満たす必要がある。

注目すべきは、残りの約23%だ。上場企業でありながら、財務指標上は「注意」または「危険」と判定された企業が約790社存在する。

なお、「×」判定の約250社のうち、GC注記が付されている企業が49社、重要事象等のみの企業が93社含まれている。GC関連の減点がなければ「△」や「○」に留まっていた企業が、GC減点によって「×」に沈んだケースもある。企業自身が事業継続に疑義を認めている以上、この判定降格は妥当だ。


本論②:上位の特徴

「◎」判定の企業には、共通する特徴がある。

自己資本比率が高い。償却前利益が安定してプラスだ。借入依存度が低い。固定長期適合率が100%を下回っている。つまり、自己資本で事業を回し、安定的にキャッシュを生み、借入に過度に依存していない。

業種としては、情報通信業、精密機器、医薬品などが上位に多い。これらの業種は、設備投資が相対的に小さく、利益率が高い傾向がある。

ただし、売上規模が大きくても「◎」にならない企業はある。売上1兆円超でも、自己資本比率が低く、借入依存度が高ければ、スコアは伸びない。規模と安全性は別物だ。


本論③:下位の特徴

「×」判定の企業にも、共通する特徴がある。

多くの企業で、償却前利益がマイナスだ。つまり、本業でキャッシュを生めていない。売上に対する利益率も低い。

さらに、自己資本比率が低い、あるいは債務超過の企業が含まれる。債務超過の企業は、自己資本額と自己資本比率の両方でマイナス点が加算されるため、スコアが大きく下がる。

そして、「×」判定の企業の中には、GC注記や重要事象等が付されている企業が集中している。財務指標のマイナス点に加えて、GC注記のマイナス10点が重なることで、スコアがさらに深く沈む。これらの企業は、企業自身が事業継続に疑義があると認めている状態だ。数字だけでなく、企業自身の開示によって危険信号が裏付けられている。

注意すべきは、「×」判定の中に一定の知名度を持つ企業が含まれていることだ。企業名を聞けば「知っている」と感じる企業でも、財務指標を客観的に評価すると危険圏に入る場合がある。知名度と財務の健全性は、必ずしも一致しない。


本論④:境界線上の企業

スコアリングで最も難しいのは、境界線上の企業の扱いだ。

「△」と「×」の境界(35〜36点)に位置する企業を個別に確認した。ある企業は、売上は小さいが自己資本比率が50%を超えていた。別の企業は、売上は大きいが借入依存度が極めて高かった。

同じスコアでも、内訳は全く異なる。だからこそ、判定記号だけを見て判断してはいけない。スコアの内訳を確認し、何が足を引っ張っているかを見る。その上で、定性的な情報を加味して判断する。

スコアリングは「入口」であって、「出口」ではない。


本論⑤:金融機関の扱い

今回のスコアリングでは、金融機関(銀行・証券・保険等)を除外せず、特別な扱いをした。

金融機関は、事業構造上、自己資本比率が一般事業会社より大幅に低い。銀行の自己資本比率は規制上の要件(BIS規制等)を基準にしており、5%前後でも正常な水準だ。一般事業会社と同じ基準で自己資本比率を評価すると、全ての金融機関が危険と判定されてしまう。

そこで、金融機関に限り、自己資本比率が10%未満であってもマイナス点を付与しないこととした。ただし、それ以外の指標(売上高、収益性、借入依存度等)は一般事業会社と同じ基準で評価する。

完全な比較はできないが、一つの目安として、同じ土俵に載せた。


本論⑥:このスコアリングの限界

結果を述べた上で、このスコアリングの限界を改めて明記する。

限界1:データソース間の差異がある。 証券会社等の財務データとEDINETのXBRLデータは、同じ決算期のデータを使用しているが、データソースが異なるため、細かい定義や集計範囲に差が生じる場合がある。データが更新されれば、スコアも変わる。

限界2:単年度の断面だ。 今回のスコアリングは、最新の一期分のデータに基づいている。過去の推移や将来の見通しは反映していない。業績が急激に悪化している企業も、急回復している企業も、「今」のスコアしか見ていない。

限界3:定性情報は限定的だ。 GC注記と重要事象等を組み込んだことで、企業自身が開示する危険信号は拾えるようになった。しかし、経営者の能力、業界の動向、取引先との関係、訴訟リスクなど、有価証券報告書に明記されない情報は反映できない。

限界4:生成AIによるコードには検証が不可欠だ。 今回のスコアリングモデルは、生成AIにコードを書かせて構築した。その過程で、データの決算期の不一致が発生した。証券会社等の財務データとEDINET有価証券報告書のデータで、異なる決算期のデータが混在していたのだ。結果の検証で数字に違和感を覚え、原因を追跡して発覚した。

生成AIはコードを素早く書けるが、データの整合性までは自動的に保証しない。「動くコード」と「正しいコード」は別物だ。特に、複数のデータソースを組み合わせる場合、決算期や時点の一致は人間が確認する必要がある。生成AIを使うからこそ、結果の検証を怠ってはならない。

スコアリングは、数千社を効率的にスクリーニングするための道具だ。精密な診断ではない。この限界を理解した上で使う。

次信では、このスコアリングモデルを実務でどう活用するかを述べる。


BCM(Bureau of Credit Management)
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