【海外競馬】エクリプスS観戦記【競馬場訪問レポ】
英国現地7月5日(土)、エクリプスSを観に、サンダウンパーク競馬場を訪問しました。施設はこじんまりとしていましたが、ロンドンからのアクセスの良さも含めて、総じて良い印象を受けたので、簡単に記録しておきます。
エクリプスSとは
英国競馬のうち、2000ギニーやダービーに関しては、日本のクラシックのモデルとなったレースであり、それなりに馴染みがあるように思います。その一方で、エクリプスSについては、ウイポで触れているか、海外競馬を追っているかでもない限り、あまり知名度の高いレースではないのではないでしょうか。
エクリプスSは芝2000mのGIレースで、春のクラシックを終えた3歳馬と、古馬との激突がコンセプトとなっています。歴代優勝馬にはEnable、Opera House、Sadler’s Wellsなどの名馬が名を連ねます。
1着賞金は1億円程度と高くなく、遠征費等を踏まえるとGII以下になるので、なかなか日本馬の遠征はありません(2020年ディアドラ号: 5着のみ)が、欧州競馬においては最重要視されており、過去10年のカルティエ賞年度代表馬のうち6頭は、このレースの勝ち馬から選出されています(以下URL参照。2024年City Of Troyもこの後受賞)。
ちなみに、レース名の「エクリプス」に関しては、ウマ娘でも引用された「Eclipse first, the rest nowhere」なる格言が有名な英国の伝説的競走馬が由来です。18戦以上して無敗だったという競走成績もさることながら、種牡馬としても、他の追随を許さない次元で繁栄しています。適当な現役競走馬の血統表をnetkeibaで確認いただき、父系を辿っていくと、ほとんどの場合「Eclipse」の名前を見つけることになると思います。
2025年の出走馬と結果
例年少頭数での施行になっており、今年もその例に漏れず、6頭立てとなりましたが、名門レースに恥じぬ好メンバーとなりました。
まず、優勝候補筆頭とみなされていたのが、Ombudsman(牡4)です。デビューが3歳夏と遅れたものの、6月18日のプリンスオブウェールズSでは、Anmaat(昨年のチャンピオンS覇者)を破りGI初戴冠。中2.5週の詰まったローテは現地でも割引材料とみなされていましたが(参考: 2025 Coral-Eclipse at Sandown: what are the strengths and weaknesses of the main contenders? | Racing Post )、それでも各ブックメーカーが1番人気に指名していました。ゴドルフィンの主戦ビュイックJも、🇬🇧2000ギニー覇者Ruling Court(以下URL参照)ではなく、こちらへの騎乗を選択しており、2013年のAl Kazeem以来となる、英国夏古馬芝10ハロンGIの連勝が期待されていました。

ゴドルフィンと同じく2頭出しとなったのがクールモア×オブライエン師のタッグで、🇫🇷ダービー馬Camille Pissarroと、🇬🇧ダービー1番人気だったDelacroixとが出走しました。前者は前年のジャンリュックラガルデール賞(ロンシャン芝1400m 2歳GI)において、後に🇮🇪2000ギニーとセントジェームズパレスSとを制する現3歳最強マイラーField Of Goldを沈めた実績もありましたが、主戦のR・ムーアJはメンバー中唯一GI未勝利だったドラクロワ号を選択。ダービーでの惨敗にもかかわらず、陣営の期待を引き続き背負っていました。
レースでは、昨年の凱旋門賞で1番人気に推され(4着)、今季仏GIを2連勝していたSosieが先頭。フューチュリティT覇者Hotazhellが並び、3-4番手にゴドルフィンの2頭、5-6番手にクールモアの2頭といった形で道中は固まっていました。
直線オンブズマン号が抜け出してソジー号らを捉え、カミーユピサロ号が懸命に追う構図となりました。この2頭に完全に絞られたかのように思われましたが、進路取りに手間取っていたドラクロワ号がラスト1ハロンから外鋭伸。ゴール直前でオンブズマン号を首差差し切り、斤量有利(オンブズマン61kg、ドラクロワ56.5kg)があったとはいえ、ダービー1番人気は伊達じゃないと証明しました。

競馬場の雰囲気等
上述のとおり、日本でも知名度がそこまで高くないと思われる本レースですが、現地でも人気がないのか、チケットが安く(決勝線の真ん前に陣取れるエンクロージャーが36GBP。ほかの有名GIの1/2~1/3程度)、人混みもほとんどなかったのが個人的には好印象でした。
スタンドなどの施設はこじんまりとしていましたが、多くの英国競馬場と同様、競走馬にとって過酷なほど起伏に富んだコースのため、向こう正面やホームストレッチの奥の方を良く見通すことができ、トラックは雄大だという印象を受けました。ニューマーケット競馬場を訪れたときの私のコメントからも何となく察することができるように、私はこの手のデカくてユニークなコースが大好きで、英国競馬の醍醐味の一つだと思っています。

また、これも過去のnoteでたびたび指摘している点ですが、競走馬との近さは中々日本では味わえない魅力です。パドックやウイナーズサークルと、本馬場とを結ぶ馬道が観客から目の届く位置にあるほか、騎手や運営側によるファンサービスも徹底されています。
例えば、サンダウン競馬場では、1600mや2000mのレースを試行する場合、ゲートが向こう正面側に設置され、返し馬をするのであれば1コーナー側から回る(馬道も1コーナー側にあるため、ホームストレッチをほとんど通らないことになる)方が効率的です。実際、当日の1600mのレースの返し馬では、1コーナー側から回されており、その様子を間近で見ることは叶いませんでした。
しかし、メインレースとなるエクリプスSの本馬場入場に関しては、あえてホームストレッチ側を途中まで歩かせてから、あらためて1コーナーを回ってゲートに向かう形での返し馬となっていました。その際も、あえて外ラチ沿い(観客側)を歩かせるなど、観客が競走馬を間近で見ることができる工夫を感じられました。日本でも外ラチを走らせてくれる騎手がちらほらいますが、こちらは6人全員でした。
10万人以上の観客を集めることもある日本の競馬場で、同じような取組みをしたらアンコントローラブルな事態に陥るのは目に見えていますし、馬最優先というJRAや日本競馬界の姿勢を完全に支持しています(し、実際それで興行としてJRA職員や厩舎関係者等を養える程度には回っているので媚びる必要もないと思います)が、それでも、このようなサービスを行ってくれる英国競馬は、競馬好きとしてはたまらないものがあります。

また、ロンドン中心部からのアクセスの良さも魅力的です。KGVIQES等が施行されるアスコット競馬場もロンドン近郊に位置していますが、鉄路は明らかにサンダウンの方が空いており、移動の快適さという点でこちらに軍配が上がりました。
このように、総じて5月の2000ギニー並みの良い体験だったとの所感を抱いています。アスコット競馬場等と違ってドレスコードが緩い点も高評価です。特に日本から観戦する際に、スーツや革靴といったかさばる手荷物が不要となるのはありがたいと思います。もっとも、既述のとおり、日本馬の参戦はめったにないため、欧州駐在でもない限り、あえて足を運ぶインセンティブに乏しいかもしれません。
日本調教馬にとってはどうしても金銭的なメリットに欠けるレースですので、例えばSaxon Warrior(2018年2着)のように日本にゆかりのある欧州馬が、いつの日かこの格式高いレースを優勝してくれると嬉しい限りです。
