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日本のサービス業を蝕む「感情労働」の限界と、仕組みが生む歪み。『カスハラクレーム予防の教科書』出版記念セミナーリポート(第2回目)

日本のサービス業を蝕む「感情労働」の限界と、仕組みが生む歪み


共創勝川セミナーのリポート第2回目をお届けいたします。前回は、超一流企業が陥っているシステムのバグやコストの顧客転換が、利用者を「困惑」から「怒り」へと変えてしまう構造についてお話ししました。

https://note.com/beltempo/n/n535619545911

今回は、その結果として生じる顧客の怒りが、どのように現場の最前線へと負担となって押し寄せているのか

そして、日本のサービス業が長年依存してきた「美徳」の限界と、海外の仕組みとの違いについて掘り下げていきます。


現場の「感情労働」に甘える経営

なぜ、顧客を困惑させ、怒りを誘発するような不条理なシステムや動線が世の中からなくならないのでしょうか。

その理由は、経営陣が

「顧客の怒りは、すべて現場の笑顔と丁寧な謝罪で処理できる」

と甘えているからに他なりません。

日本のサービス業は、高度経済成長期から「おもてなし」や「ホスピタリティ」という言葉を掲げ、現場の自己犠牲によって世界一の労働の質を維持してきました。
かつてのように全員が正社員で処遇され、ボーナスや手厚い生活保障という見返りがあった時代なら、その無理な構造もなんとか機能していたかもしれません。

しかし現在、現場を支える多くが非正規雇用やアルバイトへと置き換わっています。コンビニのスタッフも、公共料金の支払いからチケット発券、宅配便の受付まで、信じられないほどのマルチタスクと高いホスピタリティを要求される時代です。

今回の大炎上に繋がったトラブルも、システムの不備で発生した顧客のイライラを、現場の人間が自らの心をすり減らしながら頭を下げて収める「感情労働」に依存し続けています。

仕組みのバグによって起きた問題を、現場のスタッフがひたすら謝罪することで収める構造。これがある限り、経営側がシステムを根本から改善することはなく、現場の疲弊に歯止めがかかることはありません。


コールセンターの慢性的な人手不足と「断絶」の裏側

こうした感情労働の限界が最も顕著に現れているのが、コールセンターの現場です。

現在、多くのコールセンターは深刻で慢性的な人手不足に陥っています。

いざ受話器を持てば、待たされ続けて怒り狂った見知らぬ人から朝から晩まで怒鳴られ続ける日々が待っています。どれほど理不尽に責められても、会社のマニュアルは「安易に謝罪をしてはならない」「返金に応じてはならない」とがんじがらめに縛られ、担当レベルでの柔軟な解決は許されません。

上司への電話の取り次ぎすら拒否するように指導されている会社もあるようです。
現場のオペレーターは顧客の怒りの防波堤として、ただただ心を折られていくのです。

心に深い傷を負ったまま、静かに職場を去っていく人も多く、現場は慢性的な人手不足です。現場の人間がすり潰されていく前提でしか成り立たないビジネスモデルが、今の日本には溢れているのです。

マナー研修、クレーム対応研修以前の問題です。研修をやったところで、現場の問題が何一つ解決しない根本原因はここにあります。

ヨーロッパでは法律で禁止されている「ナビダイヤル」

出羽守と言われることを承知で海外に目を向けてみると、サービスの仕組みそのものに対する考え方が根本から異なることが分かります。

たとえばEU(欧州連合)では、「消費者権利指令」に基づき、商品の購入後や契約後のアフターサポート、問い合わせに関する電話対応において、基本料金を超える金額を顧客に課してはならないと法律で厳格に定められています。

日本で広く使われている「0570」から始まるナビダイヤルで、顧客を何時間も待たせた上に高額な通話料を課金するような仕組みは、法律で明確に禁止されているのです。

不具合の確認や手続きの変更など、会社側の都合やシステムのために電話をかけている顧客に対し、サポート料金を有料にすることはあってはならないという、極めて当たり前の消費者保護の観点です。

翻って日本はどうでしょうか。

電話を速やかに繋げるためにシステムや人材に投資をするよりも、長時間、顧客を待たせてナビダイヤルで課金する方が会社に利益をもたらす逆インセンティブが働きます。

そして現場には「とにかく頭を下げておけ」と指示する方が、短期的には会社が儲かってしまう構造が存在します。

こうした「仕組みのバグを個人のモラルの問題にすり替える」日本のビジネスモデルの歪みこそが、カスタマーハラスメントを助長し、現場の尊厳を奪っている真犯人なのです。

そのことに誰も気がついていないのか、それともこれは誰もが知っているけれど「口にしてはいけない、不都合な真実なのか」。

ビジネスモデルにおける仕組みの歪みが、現場をどれほど追い詰めているか、その現実が見えてきましたでしょうか。

では、私たちがこうした理不尽なトラブルから身を守るために最も重要な「予防」の考え方と、これからの時代における「お客様を選ぶ」という覚悟について次回リポートします。

引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。



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