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スピーカー研究⑮:B&W, 800D3(7)

☆プロローグ 

前回の「スピーカー研究⑭」では、スパイクを介してボードに載せた800D3を、1人で降ろして、床上に再セッティングする具体的な方法を説明した。

今回は、もう一度セッティングをやり直した。①スピーカーのバッフルとリスポジの距離を3m程にしたかった。また、②内ぶりの実験をしたかった。そして、今後より容易にSPセッティングができるように③床上→インシュレーター→スパイク受け→スパイクを、床上→スパイク受け→スパイクと、界面を減らしたダイレクトセッティングを試したかった。

レバーリフティングジャッキ4台で800D3を浮かせた状態で水平を取る。その状態で4本のスパイクを伸ばして、水平で荷重をできる限り均等に配分する。また、それを左右で揃えるというのは、前回のセッティングと同じだが、前回は床上から約7.5cmの位置に台座の上面が来ていたのを、6.00cm~6.10cmの範囲で、上記の条件を全て満たすようにした。重心を下げるということだが、これがかなりシビアであった。重心を下げる作業中に誤って、AETのスパイク受けに800D3のスパイク先端を当ててしまったのだが、スパイクがかけた。凄いのか凄くないのかよく分からないが、とにかく低重心かつ水平は難しかった。チャレンジする方は覚えておいた方がよい。上げるのは簡単。下げるのはかなりの手間。
SPセッティング終了のショット。8時間くらいかかった。とにかく下げながら水平にするのに時間がかかり、何度もやり直した。下げる時は、いちいち多めにスパイクを巻き上げる必要がある。しかし、下げるほど指が入る隙間が狭くなり、いよいよ面倒になる。はー。800D3のセッティングはのんびりやりましょうな。そして、何度も繰り返しやりましょうな。(^^)

☆3wayとSP→LPの距離

周知のように800D3はダイヤモンドトゥィーター、タービンヘッドミッドレンジ、25cmx2のエアロフォイルコーンウーファーである。

B&W, 800D3をLPから約3m離したところに均等になるよう正確にセッティングした。トゥィーターの中心は床上約120cmのところにある。

これらが構成する高域、中域、低域は波長が違うし、減衰モードも異なる。数ヶ月前まで、各帯域の波長や減衰の固有性を知ってはいたが、今ほどはっきりとは聴き分け、体感することはなかった。Diretta&I2Sに始まる一連の導入の成果である。混濁が消えて力強い波動が残った。これを空気中で力感を削がないように統合したい。

バッフルとリスポジの距離を大きくすれば波長が長い低域を捉えやすくなり、すっきりとした見通しの良いサウンドを得やすい。しかし同時に、高域はルームの影響を受けやすく、逆二乗則に加えて、空気中の摩擦でも減衰が起こりどんどん減ってしまう。

だから、バランスを取らないといけない。耳の高さを維持しながら、リスポジから離しすぎて高域が失われたり、後方定位の余地を壊してしまわないようにする。また、スピーカーを離すと間接音の比重が高まり、中間(=媒体)としてのルームの影響が増す。そこでスピーカー周辺の吸音材を大量に部屋から出した。バランスを取るというのは言うは易しで、非常に複雑である。

グラスウール32Kと40Kの構造体を大量に部屋から出した。
大量のロックウール80Kと200Kも出した。かなり重たいので汗をかいた。

これまではニアフィルードだったので、ルームの影響を消すことが純粋直接音の聴取に繋がっていた。しかし、ニアでは力を増した800D3のコントロールがあまりに難しく、神経質なリスポジになり、定位に不満も覚えた。

だらだらと思いついたことを書いて恐縮なので、一旦のまとめ。

今回、LPとバッフルの距離を約3mとしたのは、SPを前壁に寄せたことと、SP間の距離を離したこととも相関しているのだが、バッフル→LP間の距離約2m30cmの時よりも低域が得やすい。LPでの耳の高さをキープしていれば、高域が潰れてしまうことはない。中域は艶が回復したのは、吸音材をSP周辺から外したからだろう。しかし生々しさや威力が減った。端正ではあるが、どこか白々しい。そして、バッフル→LP間の距離約2m60cmの時と比べると、今回の約3mは良くなった点が多くない。

約2m60cmと約3mの間を模索するとしよう。5cmくらいずつ距離を縮めてみるか。。。5cm、ずつで良いのだろうか?

☆LPの高さ

繰り返すが、バランスを取らねばならない。部屋の固有のモードは変わらないとしても、定在波の影響の出方も以前とは全く違う。高さだけは維持して、SPと吸音材の配置を仕切り直すべき、、、なのか?

今回、距離を取ったので、また、SPの床上の高さを1.5cm下げたので、低域の成分は増している。逆に、大量の吸音材を部屋から出したとはいえ、高域が増える要素はない。実際、耳の位置を10cm下げると、ベース音にサウンドステージが埋もれてしまう。

そして、中域である。現状で艶は出ている。しかし、プレゼンスが弱い。トレブルの手前、ミッドハイ。つまり、上側のクロスオーバーが関わっているのだろうか?800D3のクロスオーバーは下が350Hz、上が4kHzとされている。クロスオーバーがどうした?

コムフィルタである。クロスオーバー付近では同じ音が出る。もし、位相差が拡大してLPへの到達時間にズレが生じるならば、設計上では加算されて大きくなるはずだった音が大きくなりにくくなり、さらに打ち消しあって小さくなったり、まあ、ないだろうが位相差180°になると音が消滅する。

ツイーターとミッドレンジのクロスオーバーは4KHz。その波長は約8cm。ダイヤモンドトゥイーター中心からタービンヘッドミッドレンジ中心までの長さはTannoyやTADの同軸ユニットではないので、800D3のは片手の拳くらいの距離はある。そこそこ危険な距離であるが、この中間に耳を置くのが安全であろうとひとまずは言える。

また、SP→LPの距離が2m30cm程度の時、それから2m60cmの時と比べても、約3mの現在はLPの耳の高さによる変化がだいぶ穏やかになった。このコムフィルタの緩和をするのにツイーターとミッドの中間に正面から耳を立てるのが安全なやり方であろうと述べたが、今はほぼツイーターの中心に耳の高さを置いている。音像が天井方向に跳ね上がるという現象が実は生じていた。

吸音材を段階的に増やして床の反射を抑えたり、拡散材で適度な高さにセットして音を当てたりしたが、ほとんど改善しなかったのだが、耳の高さを上げるとおさまったのであった。

今回、SPの高さは約1.5cm下げたのだが、耳の高さは変えていない。そしてプレゼンスに乏しさを感じている。LPの高さを微調整する必要があるが、昇降機能が付いた椅子を買わないと今以上の微調整はできない。それにしても、別の記事で書いたのだが、以前にLPでの耳の高さを調整した時には、良い変化も悪い変化も今ほどには感じなかった。上流システムを調整しているとこうなったのであった。

進化は盲目であるという話を思い出した。恐竜たちは大型の捕食者へと進化した。その結果、餌がなくなり滅びた、という話である。私の上流システムはDIrettaとI2SでDACとの同期が進行するなかで音がどんどん強く発出するようになった。その結果、今の試行錯誤を強いられている。

☆SPの間隔と内ぶり

SPを内ぶりを弱め、さらに、設置間隔を広げたところ、サウンドステージはどっしりと安定し、揺らぎが減った。しかし、後方定位がさらに強まり、壁を突き抜けられずに、前壁を垂直にせり上がった。センターの音像だけが。つまり、同相のステレオ成分が濃い音像だけが舞い上がり、非同相の成分はそのまま。

例えばである。下はジュリアン・ショーヴァン率いるル・コンセール・ド・ラ・ロージュという古楽アンサンブルによる『四季』。ジュリアン・ショーヴァンは中央にいる。小型のホールであるのが録音に含まれる壁の気配で分かる。ソロでジュリアン・ショーヴァンがどんどん天に昇る、他のメンバーをホールのステージに置き去りにして。

96/24のWAV

また、一青窈の『ハナミズキ』では、一青窈の想いが募ると、合唱団を置き去りにして、やはり彼女だけ天に召される。

96/24のFLAC

この奇怪な現象に当初は非常に驚いたものだが、上のチャプターで書いたように、LPでの耳の高さで解決した。しかし、耳の高さをアッパーに持ってくることで、あるべきミッドの濃さから離れてしまい、ミッドハイではコムフィルタ的音響障害が発生しているかもしれないと思った。そこで、吸音でもなく、拡散でもなく、耳を高くキープするのでもなく、別のやり方で、天にましますセンター音像をサウンドステージに着地させる作戦を考えねばならない。

そこで①内ぶりを強める、②SP間隔を広げる、とした。

①は、この前のセッションでSPをいつになく平行法に近づけてセッティングしたのだが、それで初めて「天にまします音像定位(センターのみ)」という怪奇現象に遭遇したので、あたりをつけた。SP間隔を広げて平行法に近づけると後方定位が伸びやかで、放埒になるが、壁があると突き抜けようとしてせり上がった、と予想した。逆に、内ぶりは音像定位に拘束力を発揮して、そこにとどまらせる、と。

②は、内ぶりが音像定位に拘束力を発揮しても、左右chのクロストークは避けたかった。私のルームは左右均等の水準は極めて高い。800D3に至るまでの左右chの位相の整合性も高い。その状態で、顔の前で左右を混ぜて、左右の耳に同じ音を入れる。しかし、左右の聴力は同じでない。以前に書いたように、ステレオ信号は左右で同じもの(同相)と同じでないもの(非同相)が含まれている。この音声の同一性と差異の彩り、そのテクスチャーを聴き取りたいのに、はからずも自分の聴覚差を聞いている気分になってきたのだ。ならば、内ぶりによる拘束力を効かせつつ、音声を左右の耳の前で混ぜないようにするにはSP間を広げるしかない。そういう意図である。

それで、①と②を合わせた効果なのだが、まずまずである。左右の聴覚差を突きつけられる感じは大いに減った。しかし、「天にまします音像定位(センターのみ)」の怪奇現象は抑えられてはいるが、少し気配がした。また、左右SPを広げることで後方定位をさらに強めながら、サウンドステージにとどまらせる拘束を内ぶりで与えることは成功したが、数週間前に実現した鮮明な音像定位にはならなかった。

この数週間前というのはSP→LP距離約2m60cmのセッティングで、前方両コーナーに吸音材を増やした時のことだ。この時、ピアノの鍵盤に左手と右手が奥行き方向に並んで、それぞれの音を奏でている映像が鮮明に結んだのだ。オーディオを齧っている人は分かるだろう、稀なことであると。

さて、実験としての実験を続けるとしよう。まず、SPは動かさずLPを動かしてみよう。また、LPに近づけながら、平行法に近い開き気味の状態でSP間隔を狭めてクロストークの境界を探ってみよう。


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・対照性というスピーカーセッティングの基本については

・コムフィルタについては

・位相と再生音については