「FX戦士くるみちゃん」考察💱芽吹ちゃんの強制ロスカットは回避できなかったのか?
「FX戦士くるみちゃん」(ネット公開版)の芽吹ちゃんを取り上げます。
芽吹ちゃんのネタバレになります。
ネット公開版のストーリーに基づいて考察します。商業連載されているコミック版のストーリーとは異なりますが、芽吹ちゃんについてはネタバレになること自体に変わりはありません。

(2014年11月19日朝)
芽吹ちゃんは、2014年8月下旬に保有し始めたFXのポジション(USD/JPY 10枚売り 平均取得単価103.30円)を損切りすることなく保有しつづけ、約3か月後の2014年12月5日21時30分(米雇用統計)にポジション(USD/JPY 48枚売り 平均取得単価112.49円)が強制ロスカットされ、口座残高が0円になります。
くるみちゃんは芽吹ちゃんに損切り(ロスカット)するように2回説得しましたが、芽吹ちゃんがくるみちゃんの説得を受け入れることはありませんでした。
今回は、芽吹ちゃんに(損切りさせて)強制ロスカットを回避させるためにどのような説得が可能だったのか、くるみちゃんの立場から投資視点(※)で考察します。
※そもそもFXは投資ではなく、投機(またはギャンブル)です。ただ、評価損益がマイナス(含み損)の場合に、損をするように感じて損切りできない心理に陥ることがあることは株式投資の場合でも同じですので、投資視点で考察します。(※関連記事参照)
芽吹ちゃんの選択
まずは、芽吹ちゃんの行動を時系列で確認します。
① 2014年5-6月頃(第7-9話)
口座へ現金20万円を入金する。(入金総額:20万円)

→ 口座残高20万円
↓
くるみちゃんに毎日のように電話して相談しながらトレードする。
↓
→ 口座残高40万円:口座残高を2倍(通算損益:20万円のプラス)に増やすことに成功する。(2014年6月26日時点)
↓
② 2014年8月下旬(8月20日27時FOMC議事録公表前)(第10話)
→ 口座残高79万円:口座残高を約4倍(通算損益:59万円のプラス)に増やすことに成功している。

↓
(くるみちゃんに相談せずに)USD/JPY 10枚売り を発注する。
↓
③ 2014年9月(第11話)
→ 口座残高79万円(有効証拠金49万円、評価損益△30万円)(2014年9月9日時点)

(2014年9月9日)
↓
→ 口座残高79万円(有効証拠金39万円、評価損益△40万円)(2014年9月17日時点)


(2014年9月17日)
強制ロスカットに備えて現金50万円を追加入金する。(入金総額:70万円)
→ 口座残高129万円(有効証拠金89万円、評価損益△40万円)(2014年9月17日時点)
↓
④ 2014年9月18日(第12話)
(くるみちゃんに相談せずに)USD/JPY 10枚売り を追加発注する。
→ 口座残高129万円(有効証拠金61万円、評価損益△68万円)
↓

(2014年9月19日)
↓
⑤ 2014年10月15日(第13話)
→ 22:28 口座残高129万円(有効証拠金128万円、評価損益△1万円)
→ 22:32 口座残高129万円(有効証拠金134万円、評価損益+5万円)
→ 24:00 口座残高129万円(有効証拠金118万円、評価損益△11万円)
評価損益が一時的にプラスになる(含み損が解消する)が、芽吹ちゃんは利益確定しない。

(2014年10月15日)
↓
⑥ 2014年10月31日(黒田バズーカー)(第15話)
→ 口座残高129万円(有効証拠金4万円、評価損益△125万円)

(2014年10月31日)
↓
クレジットカード3枚のショッピング枠合計30万円分を追加入金する。(入金総額:100万円、借入総額:30万円)
→ 口座残高159万円(有効証拠金32万円、評価損益△127万円)
↓
⑦ 2014年11月上旬(第16話)
現金5万円と学生ローン30万円を追加入金する。(入金総額:135万円、借入総額:60万円)
→ 口座残高194万円(有効証拠金14万円、評価損益△180万円)

↓
⑧ 2014年11月中旬(第18-20話)
萌智子にお金を借りに行く。萌智子はお金を貸す条件を2つ出す。
条件1:「年利109.5%」

条件2:「きっちり働いてもらう」

2つの条件を受け入れる。

萌智子からの借入金200万円を追加入金する。(入金総額:335万円、借入総額:260万円)
→ 口座残高394万円(有効証拠金175万円、評価損益△219万円)
↓


(2014年11月19日)
→ 口座残高391万円(有効証拠金125万円、評価損益△266万円)
↓
⑨ 2014年12月5日(第22-23話)
→口座残高391万円(有効証拠金7万円、評価損益△384万円)




(2014年12月5日)
↓



(2014年12月5日)
→口座残高0万円(有効証拠金0万円、評価損益0万円)
芽吹ちゃんへの説得機会は2回
2014年12月5日(強制ロスカット)までの間に、芽吹ちゃんはくるみちゃんと2回電話で話をしています。くるみちゃんが芽吹ちゃんに損切りを説得できた機会はその2回だけでした。
説得機会1回目(⑤の後、2014年10月15日)
芽吹ちゃんの口座残高129万円(有効証拠金118万円、評価損益△11万円)


(2014年10月16日)
説得機会2回目(⑦と⑧の間、2014年11月)
芽吹ちゃんの口座残高194万円(有効証拠金14万円、評価損益△180万円)



機会1と機会2の違い
機会1の時点では評価損益は△11万円でしたが、そのわずか1か月後の機会2の時点では(黒田バズーカーを食らって)評価損益が△180万円と事態が急速に悪化してしています。
機会1の時点で、くるみちゃんから損切りを進められた芽吹ちゃんは「今切ったら確実に10万円失う」「嫌に決まってる」と呟いており、損切りがまるで負けを確定する行為であるかのように考えていることが分かります。
芽吹ちゃんの考え方は投資判断としては間違い
芽吹きちゃんは、評価損益が△180万円に達した時点で、吐くほどに気分が悪くなっています。


(2014年11月5日)
(※これほど気分が悪くなっているということは、リスクを取りすぎているということです。リスクを取りすぎている場合、ポジションを小さしてリスクを減らすべきです。)
一方で、ロスカットが強制執行されて評価損益が0円になった(含み損がなくなった)時点では、芽吹ちゃんの気分は軽くなっています。


(2014年12月5日)
芽吹ちゃんの気分(感じ方)は評価損益のマイナス幅(含み損)にリンクしているようです。
・吐くほどに気分が悪くなっていた時点の評価損益額:△180万円
・気分が軽くなった時点の評価損益額:0円(プラスマイナスゼロ)
しかし、冷静に計算すると、芽吹ちゃんの気分(感じ方)は負債総額にリンクしていないことが分かります。
・吐くほどに気分が悪くなっていた時点の負債総額:46万円
・気分が軽くなった時点の負債総額:260万円
この点で、芽吹ちゃんの投資判断(考え方)は間違っていると言えます。
損失を最小限に抑えるための投資判断
芽吹ちゃんは、評価損益が0円の状態をスタート地点(プラスマイナスゼロ)と考えているため、評価損益がマイナスの状態で決済(損切り)すると損をするかのように感じています。
この考え方は、投資判断としては危険です。
適切な投資判断に基づくアプローチを次に3つ提示します。
正当アプローチ:現状を所与の条件とする
現在のマイナスを所与の条件として判断します。
(投資判断として最も妥当です。)
機会1の時点では、評価損益がマイナス10万円ですので、現在のマイナス10万円をスタート地点(プラスマイナスゼロ)と捉え直して判断します。
(→ 現状を所与の条件として、現状より利益が期待できる方向で取引します。)
別アプローチ1:最悪の事態を前提とする
口座残高をすべて失うという最悪のリスクが顕在化することを前提に判断します。
機会1の時点では、強制ロスカットが執行されて口座残高が0円になる(現状より118万円マイナスの)点をスタート地点(プラスマイナスゼロ)と捉え直して判断します。
(→ 最大損失を回避する方向で取引します。)
別アプローチ2:点ではなく線で見る
現在保有しているポジションで損得を判断せず、通算損益でプラスマイナスを判断します。
機会1の時点では、口座への入金総額(元本)は70万円ですので、元本70万円をスタート地点(プラスマイナスゼロ)と捉え直して判断します。
(→ 元本割れを回避する方向で取引します。)
上記の判断を適用する
正当アプローチ(現状を所与の条件として現状より利益が期待できる取引をする)

(説得機会1回目)
機会1で、くるみちゃんは芽吹ちゃんに「ノーポジ(「ノーポジション」の略)の立場で考えて」と言って、このアプローチでの説得を試みています。
しかし、芽吹ちゃんを説得する(損切りさせる)ことはできませんでした。
※芽吹ちゃんに「確かに一理あるかも」と考えさせることには成功しています。この後、芽吹ちゃんは萌智子に相談しましたが、萌智子が(芽吹ちゃんを潰すために)嘘を教えたため、それを信じた芽吹ちゃんは損切りを実行しませんでした。


別アプローチ1(最悪を回避する取引をする)
最悪を回避することを判断基準として、強制ロスカットが執行される点をスタート地点(プラスマイナスゼロ)として考えます。
機会1の時点(口座残高129万円)では、最悪の評価損益は△129万円になりますので、その点をスタート地点とすると、機会1の時点は118万円のプラスで利益確定できる機会だと言えます。
同様に、機会2の時点(口座残高194万円)でも、最悪の評価損益△194万円をスタート地点にすると、機会2の時点は14万円のプラスで利益確定できる機会だと言えます。

(説得機会2回目)
機会2では、くるみちゃんは「もし負けたら」と切り出して、最悪を回避するというアプローチでの説得を試みています。
但し、最悪の事態を「本当に死んじゃう」ことに設定しており、強制ロスカットについては触れてませんでした。
結果としては、くるみちゃんは芽吹ちゃんを説得する(損切りさせる)ことはできませんでした。
※「FXが原因で本当に死んじゃった人」とはくるみちゃんのお母さんのことです。くるみちゃんのお母さんはFXで2000万円を失い亡くなっています。芽吹ちゃんはその事実を知らないため、くるみちゃんが伝えようとした最悪の事態を回避することの重大性を認識できていません。
別アプローチ2(元本割れを回避する取引をする)
口座への入金額を元本と考え、元本割れしない(通算損益をプラスにする)ことを基準に考えると、芽吹ちゃんが見ている景色とは違った景色が見えてきます。

③の2014年9月17日時点で、芽吹ちゃんが「私を助けてください」と呟いていますが、この時点で芽吹ちゃんはそもそもピンチに陥っていないと言えます。
この時点での芽吹ちゃんの評価損益は△40万円(含み損)です。芽吹ちゃんは40万円を失ったように感じているようですが、仮にこの時点で決済した場合、通算損益は19万円のプラス(※)になるからです。
※ポジションを決済すると、39万円が口座に残ります。口座への入金額が20万円ですので、通算損益額は 39万円-20万円 =19万円です。

同日27時のFOMC後、円安が更に進行して、評価損益が△51万円に悪化し、芽吹ちゃんは「絶対生き延びてやる」と呟いていますが、この時点でも芽吹ちゃんはまだピンチに陥っていないと言えます。
この時点でポジションを決済していた場合、芽吹ちゃんの通算損益はまだ8万円のプラスですので、現在のポジションを積極的に決済することにより、通算損益をプラスで確定できるからです。
機会1の時点で同様に考えると、通算損益額は48万円もプラスですので、通算損益をプラスで確定するように、このアプローチで芽吹ちゃんにポジション決済(損切り)を説得できる可能性があります。
機会1:通算損益は48万円のプラス(=有効証拠金118万円-入金総額70万円)(※借入金:0円)
機会2:通算損益は121万円のマイナス(=有効証拠金14万円-入金総額135万円)(※借入金:60万円)
※機会2の時点では、通算損益がマイナスに落ち込んでいるため、このアプローチでは説得できません。
ここまでのまとめ
どのようなアプローチでくるみちゃんが芽吹ちゃんを説得しようとしたのか整理します。
機会1
✅ 正当アプローチ:有効 (結果:説得失敗)
□ 別アプローチ1:有効 (試行なし → 機会2で試行)
□ 別アプローチ2:有効 (試行なし)
機会2
□ 正当アプローチ:有効 (試行なし ← 機会1で試行済み)
☑️ 別アプローチ1:有効 (結果:説得失敗)
※但し、最悪の事態を、強制ロスカットによって口座残高が0円になることではなく、「FXが原因で本当に死ぬ」こととした。
□ 別アプローチ2:無効 (試行なし)
くるみちゃんが試していない有効なアプローチは次の通りです。
機会1
別アプローチ2:(評価損益はマイナスであるが)通算損益がプラスであることを説明し、利益確定することを勧める。
機会2
別アプローチ1:強制ロスカットが執行される(口座残高が0円になる)最悪の事態を回避して現在の有効残高を確保することを勧める。
くるみちゃんは、2回とも電話で会話していたので、十分な時間を確保できなかった可能性がありますが、時間があれば上記のアプローチで芽吹ちゃんを説得できていた可能性があります。
※芽吹ちゃんの最終的な通算損失額は335万円です。2014年12月5日に評価損益が△391万になり、強制ロスカットが執行されましたが、391万円が通算損失額ではないことは、別アプローチ2に記載の通りです。)
芽吹ちゃんは結局何を得たのか?
芽吹ちゃんが負債を負ってFXから退場したという点では、この結末はバッドエンドです。
一方で、FX開始前に「働きたくない」と公言して周りをいら立たせていた芽吹ちゃんが、FX引退後(強制ロスカット後)には「本気で働いてみせます」と自分の人生に主体的に向き合うようになった点はプラスなのかもしれません。
FX開始前

(FX開始前:くるみちゃんとの会話)

(FX開始前:萌智子との会話)
↓
FX引退後(強制ロスカット後)

(強制ロスカット後)
引用元
ネット公開版は、原作者「でむにゃん」のサイトで公開されています。
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