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今日という一日が、少し愛おしくなるまで

特別な出来事があったわけじゃない。
ただ、朝が来て、いつものように一日が始まった。
それでも映画を観終えた今、「この一日を大切にしたい」と思う自分がいる。
『アバウト・タイム 愛おしい時間について』は、何も起きない日々の尊さを、そっと思い出させてくれる。

この映画を観てまず印象に残るのは、時間旅行の物語でありながら、驚くほど静かなこと。
派手な演出も、感情を煽る音楽もない。
あるのは、家族の会話やドアを閉める音、朝が始まる気配。

恋愛パートは、少し可笑しく、どこか軽やかだ。
同じ言葉を言い直し、同じ場面をやり直すことで、人生がうまく進んでいくように見える。
けれど、その軽やかさは長くは続かない。
時間は次第に「自分のため」ではなく「誰かのため」に使われ始める。
そしてある瞬間、
時間を戻す力は「便利なもの」ではなく、「選択を迫るもの」へと変わる。

誰かの人生を守るために過去へ戻った結果、あったはずのものが音もなく入れ替わってしまった。
説明も、大きな演出もない。
ただ残るのは、別の“愛している存在”を失ってしまうかもしれないという事実。

その事実を知ったとき、日常の音が急に輝きだす。
父と過ごす時間も、特別な出来事の中ではなく、普段と変わらない時間の中にある。
浜辺での何気ないひととき。
波の音と笑い声。
それでもその時間は、「これが最後だ」と知っているからこそ、二度と取り戻せないものとして胸に残る。

『アバウト・タイム 愛おしい時間について』は、その感覚を、音と光のあいだでそっと残していく。
観終えたあと、世界が少し静かに聞こえるのは、映画の中の音が特別なものではなかったからかもしれない。

時間を戻せたとしても、人生はきっと思い通りにはならない。
だからこそ、何も起きない今日という一日を、最初から大切に生きる。


【作品紹介】
『アバウト・タイム 愛おしい時間について』
監督:リチャード・カーティス
公開:2013年
時間を戻せるという設定を持ちながら、物語は驚くほど静かに、日常のすぐ隣を歩いていく。


今日もまた、映画の音と暮らしの音のあいだで、
静かな余韻に耳をすませている。


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シネマと音のあいだで 眩しい光と音のあいだで、心が少し和らぐような映画を。 今日も静かな余韻を分かち合えたら嬉しいです。