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人を送るのではなく、人が育つ循環をつくる-インドネシア出張で見えた海外人材事業の現実と原点-

おはようございます。
人と人の間をつなぐ想いの翻訳者、阿波野聖一です。
私は秋田県で介護、地域、海外人材という、一見異なる世界の間に立ちながら、人、組織、地域、想いの「違い」をつなぐ仕事をしています。
このnoteでは、現場で起きた出来事や学びを通して、誰かの明日につながるヒントを発信しています。

インドネシアに来る時間が増えるほど、同じ場所を見ても、同じ人に会っても、感じることが変わってくる。

最初はただの景色として見えていたものが、背景や文脈を知ることで、まったく違う意味を持ち始める。

道路、カフェ、学校、病院、家族の家、行政機関、ガソリンスタンド。
一つひとつは何気ない日常の風景かもしれない。
けれど、その奥には、家族の暮らし、地域の経済、教育の課題、制度の矛盾、若者たちの希望と不安がある。

今回のインドネシア出張では、日本で働く人材の入院と長期離脱、そのご家族への説明、現地の仲間との対話、教育や制度の課題、そして海外人材事業の本質について、改めて深く考える時間になった。

人を送って終わりではない。
ビザを通して終わりでもない。
登録支援の項目を埋めて終わりでもない。

海外人材事業とは、人が育ち、働き、暮らし、学び、戻り、また次の人を育てる循環をつくる仕事なのだと思う。

1. 同じ景色が、違って見えるようになる

今回(6/17-23)のインドネシア出張を終えて、改めて感じたことがある。

インドネシアに来る時間が増えれば増えるほど、毎回同じ場所を見ても、同じ人に会っても、感じることが変わってくる。

最初に来たときは、ただ「知らない国」「違う文化」「活気のある場所」として見えていたものが、回数を重ねるたびに、少しずつ違って見えてくる。

なぜこの人はこう考えるのか。
なぜこの地域ではこの仕事が成り立つのか。
なぜ若者たちは日本に行きたいのか。
なぜ家族は送り出すのか。
なぜ制度はあるのに、現場ではうまく機能しないのか。

背景や文脈が見えてくるたびに、同じ景色の中にある意味が深くなっていく。

道路、カフェ、学校、家族の家、病院、行政機関、ガソリンスタンド。

一つひとつは、現地の日常の風景である。

けれど、その奥には、家族の暮らしがあり、地域の経済があり、教育の課題があり、制度の矛盾があり、若者たちの希望や不安がある。

海外人材事業は、書類や制度だけでは見えてこない仕事だと改めて感じた。

現地に来て、食べて、移動して、話して、沈黙も含めて同じ時間を過ごす。
その積み重ねの中でしか見えてこないものがある。

2. 日本に行くことはゴールではない


今回も、インドネシアの仲間と本当に多くの対話を重ねた。

移動中、食事中、学校、行政機関、そしてスラバヤの空港へ向かう最後の車中まで、何度も同じ問いに戻っていった。

人はなぜ日本に行くのか。
誰のために働くのか。
日本で何を学ぶのか。
帰国後にどう生きるのか。
その経験を、どう次の世代につなげていくのか。

海外人材事業に関わる中で、つい「日本に行くこと」が一つのゴールのように語られることがある。

内定をもらうこと。
ビザが下りること。
来日すること。
日本で働き始めること。

もちろん、それらは大切な節目である。

でも、日本に行くこと自体がゴールではない。

むしろ、日本で働くことは、人生を広げるための一つの通過点なのだと思う。

日本で働くこと。
日本のルールを守って暮らすこと。
言葉を覚えること。
仕事を覚えること。
地域の人と関わること。
そして、限られた時間の中で勉強を続けること。

これは本当に大変なことだ。

だからこそ、海外人材には、最初の想いやキッカケを忘れてほしくない。

なぜ日本に行きたいと思ったのか。
誰のために頑張ろうと思ったのか。
どんな夢があったのか。
家族にどんな未来を見せたかったのか。

日本での生活は、楽しいことばかりではない。

寂しさもある。
言葉の壁もある。
文化の違いもある。
仕事の厳しさもある。
時には、思うようにいかず、迷うこともあると思う。

でも、その限られた時間の中で、目的や夢を忘れずに、時間を無駄にしない行動を積み重ねることは、必ず夢の実現に近づいていく。

私は、そうやって日本で頑張っているグローバルメンバーを心から尊敬している。

3. 努力が、故郷に形として建っていた


今回の出張で、忘れられない場面があった。

日本で数年間働き、その間に故郷に家を建てたグローバルメンバーがいる。

その本人よりも先に、私がその家を訪れることになった。
そして、お父さんやご家族にお会いした。

まだ本人は日本で働いている。
でも、その努力の積み重ねは、すでに故郷に一つの形として建っていた。

その家を見たとき、言葉にできない感慨があった。

日本で働くということは、単に収入を得ることではない。

遠く離れた場所で働き、寂しさや不安を抱えながらも、毎日を積み重ねる。
その時間が、家族の暮らしを支え、故郷に家を建て、未来の土台になっていく。

もちろん、家を建てることだけが成功ではない。
何を夢とするかは、人それぞれでいい。

けれど、その家には、その人が日本で過ごしてきた時間、努力、我慢、家族への想いが刻まれているように感じた。

海外人材の努力は、見えにくい。

日本の現場では、日々の勤務、記録、介助、生活、言葉の勉強に追われる。
慣れない環境の中で、当たり前のように働いているように見えるかもしれない。

でも、その一日一日の積み重ねが、故郷の家族に届いている。
家になり、学費になり、生活になり、未来になっている。

その事実を、私は現地で改めて見た。

だからこそ、限られた日本での時間を、ただ過ぎていく時間にしてほしくない。

夢に近づく時間にしてほしい。
家族や自分の未来につながる時間にしてほしい。

その姿を見て、私は日本で頑張るグローバルメンバーを、心から尊敬している。

4. 入院、長期離脱という現


今回の出張では、もう一つ大きな目的があった。

日本で働くインドネシア人材が、突然の病気により入院し、長期的に仕事を離れざるを得なくなったケースについて、現地のご家族に状況を説明する時間があった。

個人が特定されることは避けたいので、ここでは詳細は書かない。

ただ、この出来事は、海外人材事業の現実を強く突きつけるものだった。

日本で働くということは、夢や希望だけではない。

慣れない国で暮らし、働き、言葉を覚え、ルールを守り、家族のために頑張る。
その一方で、病気や事故、入院、長期離脱、収入の途絶、医療費、今後の生活など、本人だけでは抱えきれない現実もある。

現地でご家族と向き合い、改めて感じた。

日本に来ている一人ひとりの後ろには、必ず家族がいる。
祈るような思いで送り出している人たちがいる。
遠く離れた場所で、本人の体調、仕事、生活、収入、将来を心配している人たちがいる。

だからこそ、海外人材事業は、単に「人を紹介する仕事」では済まされない。

入院したとき。
長く働けなくなったとき。
収入が途絶えたとき。
家族に説明が必要になったとき。
本人の人生が大きく変わるかもしれないとき。

その時に、誰がそばに立つのか。
誰が言葉をつなぐのか。
誰が制度と現実の間に入るのか。

そこまで含めて、この仕事なのだと思う。

そして同時に、時間の大切さも強く感じた。

健康で働けることは、当たり前ではない。
日本で働ける時間も、無限ではない。
家族のために頑張れる時間も、いつまでも続くとは限らない。

家を建てた人材の姿は、限られた時間を積み重ねた先に生まれる希望を教えてくれた。
一方で、突然の入院や長期離脱は、時間がいつまでも続くわけではないという現実を教えてくれた。

だからこそ、限られた時間を、目的や夢に近づく時間にしてほしい。

5. 最初の想いやキッカケを忘れないために


今回、インドネシアの仲間とも何度も話した。

日本に行く前に、なぜ日本に行きたいのかを書いてほしい。
誰のために頑張るのかを書いてほしい。
日本で何を学び、どんな自分になりたいのかを忘れないでほしい。

お金を稼ぐことも大切である。
家族を支えることも大切である。

でも、目の前のお金だけを追いかけて、自分を高める時間を失ってしまったら、日本に来た意味が薄れてしまう。

日本語を学ぶ。
仕事を覚える。
資格に挑戦する。
地域の人と関わる。
日本の生活ルールを身につける。
自分の未来を少しずつ広げていく。

その積み重ねこそが、本人の人生を支える力になる。

日本に来る前に、本人が自分の目的を書く。
家族のために、自分の未来のために、何を学ぶのかを言葉にする。
忘れそうになったときに、もう一度そこへ戻れるようにしておく。

これは単なる精神論ではない。

日本での生活は、想像以上に現実的で、厳しい。
働いて、疲れて、生活して、悩んで、時には孤独になる。
その中で、自分の目的を見失うことは珍しくない。

だからこそ、最初の想いを見える形にしておくことが必要なのだと思う。

6. 違和感やモヤモヤも、大事な気づき


もちろん、今回の出張では、良いことばかりを見たわけではない。

制度の矛盾。
行政の縦割り。
ビザや補助金への違和感。
ブローカーの問題。
生活コストと賃金のギャップ。
教育が十分に届いていない現実。
そして、病気や生活トラブルのように、本人や家族の人生に直接関わる問題。

正直、違和感やモヤモヤもたくさんあった。

でも、その違和感やモヤモヤもまた、大事な気づきなのだと思う。

違和感があるから、問いが生まれる。
モヤモヤするから、もっと深く知ろうとする。
見過ごせない現実があるから、自分たちの仕事の意味を問い直すことができる。

たとえば、制度があるのに、現場ではうまくつながっていない。
補助金があるのに、本当に必要な人に届いているのか分からない。
教育の仕組みがあるのに、本人の人生設計まで支えられていない。
人を送り出す仕組みがあるのに、その後の生活やキャリアまでは十分に見られていない。

そうした違和感を見過ごしてしまえば、この仕事はただの手続きになってしまう。

人を送って終わり。
ビザを通して終わり。
登録支援の項目を埋めて終わり。

そういう仕事では、本当の意味で人を支えることはできない。

7. 人材とは、労働力ではない


人材とは、労働力ではない。

一人ひとりに家族があり、地域があり、背景があり、夢があり、不安があり、未来がある。

そして、日本側にも、受け入れる現場があり、職員がいて、利用者がいて、地域の暮らしがある。

その両方をつなぐこと。
制度と言葉の間にあるズレを埋めること。
不安や違和感を見過ごさず、信頼に変えていくこと。

それが、私たちがやるべき海外人材事業なのだと思う。

外国人材を、単に「足りない人手」として見るのか。
それとも、共に地域を支える仲間として迎えるのか。

この違いは、とても大きい。

前者であれば、必要なのは人数かもしれない。
後者であれば、必要なのは関係性であり、教育であり、対話であり、覚悟である。

人を受け入れるということは、労働力を補充することではない。
一人の人生と、その人の背景にある家族や地域も含めて、関わるということなのだと思う。

8. インドネシアには、資源も人も物語もある


今回、インドネシアで見たコーヒー、食文化、学校、土地、家族、行政、病院、若者たちの目。
それらは一見バラバラに見えて、実はすべてつながっていた。

インドネシアには、若い力がある。
家族を想う気持ちがある。
自然、農業、魚、コーヒー、土地、食文化、地域資源もある。

しかし、それらが十分に価値に変わっていない現実もある。

「仕事がない」のではなく、仕事に変えられていない資源がある。
「人がいない」のではなく、育つ仕組みに接続されていない若者がいる。
「教育がない」のではなく、人生や仕事に結びつく教育になりきれていない場がある。

ここにも、大きな可能性と課題がある。

人も地域資源も、ただ存在するだけでは価値にならない。
背景や文脈を理解し、それを必要な場所へつなぎ、意味のある形に変えていく必要がある。

それは、コーヒーでも、人材でも同じだと思う。

ただ「商品」として売るのではなく、その土地の背景や人の思いごと届ける。
ただ「人材」として紹介するのではなく、その人の家族、学び、努力、夢ごと伝える。

そこに、私たちの仕事の意味がある。

9. 日本側にも覚悟が必要


一方で、日本には深刻な人手不足がある。

介護現場も、地方も、地域社会も、これまでのやり方だけでは持続が難しくなっている。

だからこそ、外国人材の受け入れは必要になっていく。

しかし、ただ「人が足りないから来てもらう」という発想では、もう限界がある。

日本に来る人材にも、目的が必要である。
受け入れる日本側にも、覚悟が必要である。
送り出す側にも、教育と責任が必要である。

受け入れる側には、伝える力が必要になる。
聴く力が必要になる。
育てる力が必要になる。
生活や文化の違いを理解しながら、必要なルールをきちんと伝える力も必要になる。

多文化共生とは、何でも受け入れることではない。
日本のルールを一方的に押し付けることでもない。

なぜそのルールが必要なのか。
何を守るためのルールなのか。
どうすれば互いに安心して暮らし、働けるのか。

そこを丁寧に伝え合うことが必要なのだと思う。

10. 人が育ち、戻り、また次の人を育てる循環へ

今回の出張を通じて、改めて確信した。

私たちは、人を送る会社ではなく、人が育ち、働き、暮らし、学び、戻り、また次の人を育てる循環をつくる会社でありたい。

日本で働いた経験が、その人だけで終わらない。

日本語を学び、仕事を覚え、資格を取り、生活を身につけた人が、次の人を育てる側になる。
帰国後に、現地の教育や仕事づくりにつながる。
日本とインドネシアのあいだに、人が育つ循環が生まれる。

それができれば、海外人材事業は単なる労働力の移動ではなくなる。

人が育つ。
地域がつながる。
家族の未来が広がる。
日本の現場も変わる。
インドネシア側にも新しい仕事や教育が生まれる。

そんな循環をつくりたい。

もちろん簡単ではない。

制度の問題もある。
お金の問題もある。
教育の問題もある。
現場の負担もある。
本人の努力だけではどうにもならないこともある。

それでも、だからこそ、向き合う価値がある。

11. おわりに


海外人材事業の本質は、人手不足を埋めることだけではない。

分断されつつある社会の中で、もう一度、人と人が向き合える関係をつくること。
海を越えて出会った人たちが、それぞれの場所で、自分の夢に近づいていけるように支えること。

今回のインドネシア出張は、その原点を確認する時間になった。

日本で数年間働き、故郷に家を建てた人材がいる。
一方で、突然の病気により入院し、長期的に仕事を離れざるを得なくなった人材もいる。

そのどちらも、海外人材事業の現実である。

努力が形になることもある。
思いがけず、人生の予定が大きく変わることもある。

だからこそ、健康で働けることは当たり前ではない。
日本で働ける時間も、無限ではない。
家族のために頑張れる時間も、いつまでも続くとは限らない。

限られた時間を、目的や夢に近づく時間にしてほしい。

そして私たちもまた、違和感から逃げず、現実から目を背けず、グローバルメンバー一人ひとりの人生に向き合っていきたい。

人を送るのではなく、人が育つ循環をつくる。     

今回の出張を通じて、その想いがより強くなった。

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