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ファンドレイザーの成功者としての井上円了

「河童の目線で人世を読み解く」市井カッパ(仮名)です。
「すべての組織と人間関係の悩みを祓い癒し、自然態で生きる人を増やす」をミッションに社会学的視点から文章を書いております。

御覧いただき、ありがとうございます。

noteのできるだけ毎日更新を実践しています。現在の曜日ごとのテーマはこちら。木曜は「コーチング/大学講師絡みの話/教育論、アカデミックな話題」のテーマとなります。

今日は大学絡みの話です。現在、非常勤講師として通っています東洋大学ですが、下記の記事で紹介しましたように「井上円了が志したものとは」というテーマで作品募集をされていて、その2025年度の発表があったようです。

ちなみに私も一本、投稿させていただきまして、「投稿したものは、さすがに却下になることはないかと思いますので、来年度の募集までにはサイトに掲載されるかと思います。」なんてお気楽なことを下記に書いています。

今年の発表はこちら。

冒頭でびっくりしました。

「応募いただいた作品総数は2008篇」

ですって!

ちょっとびっくりです。数十本程度と高をくくっておりました。(事前に調べとけ、という話ですが。

もちろん、わたくしめなぞのものは箸にも棒にもかからず。入選していないので、当然のように原稿が掲載されることもありません。

ということで、個人的にもったいないので、こちらに掲載しておきます。ご興味あれば御覧ください。


ファンドレイザーの成功者としての井上円了

2024年9月より東洋大学国際学部国際地域学科で「非営利組織の経営」という授業を担当することになり、その関連で東洋大学ボランティア支援室も訪問させていただいた。その際、東洋大学の講師派遣のパンフレットをいただき、東洋大学の元となった哲学館の設立資金を集めるために、円了先生が巡回講演を行っていたと知った。資金調達は「非営利組織の経営」でも極めて重要なポイントであり、現代では「ファンドレイジング」という名称でひとつの専門的な仕事にもなっている分野でもある。

日本におけるファンドレイジングの歴史は古く、しかも仏教とも密接に結びついている。飛鳥時代から奈良時代にかけて活動した行基は、当時、日本では禁止されていた民衆への仏教の普及活動を行って政府の弾圧を受けることになる。その際に併せて困窮者の救済や社会事業を指導したとされており、次第にその功績が認められるようになり、聖武天皇の依頼で奈良の大仏造立の実質上の責任者として招聘され、最終的には東大寺の「四聖」の一人となった。これを以て、日本のファンドレイジングの歴史の初めとも言われている。

同じ仏教を学び、民衆にそれを伝えるための資金を集めた、という点で、この行基の活動と円了先生の活動はどこか重なるところがあるように思える。特に、円了先生が哲学堂を建てるに当たり、その教育の対象者として、「若い頃に学べなかった」「貧困にして大学に入ることが不可能な者」と設定したことは、活動に社会的な意味合いを強く持たせるものであった。その教育の目的も「哲学者の養成」ではなく「哲学を学ぶ」に置いたことで、単に哲学を行う専門家を育てるという意味合いではなく、広く一般に哲学することを普及したいという思いを感じ、ここも、仏教の叡智を国家で独占したいと考えていたかつての朝廷の考えに抗った行基の活動に通じるものを感じた。

そうした熱い思いが民衆にも伝わって、いわゆるクラウドファンディング方式による私的な学校の設立という試みが成功したのであろうと思う。円了先生は大学を卒業するに当たり、就職して官の道を行くことを良しとせず、事業を立てて生きるという選択をされた。「俺はよそから月給をもらわないで、ひとつ人間一生で、どのくらいの事業ができるか試してみよう。」という言葉が残っているが、これは単に自分のやりたいことをわがままにやろうというのではなく、世の中に必要とされていながらいまだに存在していない事業をやろうということであり、まさに「非営利組織の経営」で取り上げている様々な非営利組織、NPOやNGOの皆さんの活動とも重なるところである。やはりこうした活動で大事なことは、大きな大義を持つことであり、そしてさらにその大義を伝え、広く理解してもらい、協力を呼び掛けることである。勝海舟に出会い、裸になって「誠の心」を伝えることで資金問題は解決する、とアドバイスをもらった円了先生は巡業講演の計画を立て、4年に渡りこれを実行することになる。その講演の内容は様々であったと思うが、その話から、おそらく「学ぶことの意味」が伝わったのではないか、と思われる。だからその学ぶ場所を作りたい、支えたい、という思いに対して、たくさんの人からの協力が集まったのであろう。現状では、円了先生の講演内容がどうしてファンドレイジングの成功につながったのか、という分析まではできているわけではないが、実際に講演の記録が残っているのであれば、これから世の中の役に立つような、何か新しいことをしたい、という人にとっては有益なノウハウがそこにあるのではないか、と個人的に考えている。

ファンドレイジングというと寄付集め、単にお金をなんとかすること、と勘違いしている人も多いのではないかと思うが、実際にファンドレイジングに成功している人の話を聞くと、これはお金ではなく応援者や、いわば仲間を集めることなんだ、と共通しておっしゃっている。お金のために行うのではない。その活動や理念を多くの人に知ってもらい、応援してもらうファンと出会うためにやるのだ、と。決して大口の寄付ばかりを集めようとしていなかった円了先生のファンドレイジング活動は、まさにその王道を行っていたと感じられる。

ところで、蛇足として付け加えるなら、東洋大学も非営利組織であるが、その最新の「資 金収支予算書」を見ると、寄付収入は総収入の1%にも満たない数字になっており、学生からの納付金と補助金の収入が多くなっていて、なんとも寂しい限りである。現代は「独立行政法人国立科学博物館」がクラウドファンディングで国内史上最高額の約9億円を集める時代である。今一度、円了先生の活動に立ち返り、もう少し応援者やファンを集める活動に力を入れても良いのではないかと思っている。


現場からは以上です。お読みいただき、ありがとうございました。面白かった、参考になった、という方は是非、高評価いただけると嬉しいです。フォローも大歓迎です。

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