【開催報告】ケーススタディ&ビジネスコーチング研究会 No.1442「再雇用者へのフィードバック ─ 役割の明確化とそれを的確に伝える工夫」
「河童の目線で人世を読み解く」市井カッパ(仮名)です。
「すべての組織と人間関係の悩みを祓い癒し、自然態で生きる人を増やす」をミッションに社会学的視点から文章を書いております。
御覧いただき、ありがとうございます。
さて、今回は、主催・運営:株式会社コーチングバンク、協賛:株式会社キャリアクリエイツ、で毎月2回、オンラインで開催させていただいております「ケーススタディ&ビジネスコーチング研究会」の開催報告になります。
この研究会で利用させていただいている、株式会社キャリアクリエイツのケーススタディ「LDノートライブラリ」はこちら。毎回、最新ケースを利用させていただいています。
今回のケースは、No.1442「再雇用者へのフィードバック ─ 役割の明確化とそれを的確に伝える工夫」でした。
ケースの概要は「老舗メーカーで再雇用されたシニアが若手との間で、業務スタイルや価値観の違いが顕在化。シニアは課長の指示に反発し、若手からは助言が現場を混乱させるとの不満も。課長は意見交換を促すが、シニアは若手の姿勢に反発。」というもの。
LDノートライブラリのケーススタディは、こうしたどこの会社でもどこかで起こっている問題を取材して切り出し、A4用紙2枚にまとめてあります。そして、そのケースの後に、登場するマネジメント者の対応のどこに問題があったのか、どのような改善行動が必要かを考える教材になっており、目的は、マネジメントする立場にある方が現場でのマネジメント能力を思考実験によって鍛える、というものです。
ただし、この「ケーススタディ&ビジネスコーチング研究会」では、さらにこれを発展させ、このケースに登場するマネジメント者にコーチングする場合には、どのようなコーチング戦略で臨みますか、ということを、対話しながら考えていく、というプロフェッショナルなビジネスコーチングを身に着けたい方のためのトレーニングの場となっています。
さて、今回のケースを見ていきましょう。
このケースの舞台は機械器具製造業の生産管理部。かつて工場の不良率を大きく改善したという64歳のシニア社員が再雇用でいて、39歳の課長と29歳の若手社員が登場します。課長がシニア社員に経験を元にアドバイスを、という依頼をしたものの、現場はデジタル化しており若手社員は現場が混乱すると課長にクレーム。課長はシニア社員のやる気も大事、と反論しつつも、どうすればいいのかわからなくなる、という話。
これは参加者とも話したのですが、今回のケースで登場する再雇用者に関しては、そもそも国が出している方針がおかしなことになっていて、そのおかしな方針を法律で縛るものですから、会社の人事が現場にむちゃぶりして、そのしわ寄せが現場に来ている、というのが現実でしょう。
そしてなぜ、そもそも国の方針がおかしいかと言えば、民間企業の現場を知らない人が制度を作っているとしか思えず、そうでないとしたら、人間心理というものがわかっていないか、全体的に俯瞰して制度を設計する視点を持ち合わせていないかのどちらかかと思います。
個人的には、そもそも年齢による定年という制度は、年齢による差別だと思っているので、そもそもおかしいのですが、もっとおかしいのは、週休2日の5日間拘束ながら、賃金は再雇用前より下がっている、ということで、給料下げるならせめて週休3日にしなさいよ、と思っています。会社に縛り付けておいて収入減らすというのは、とてもひどい制度だと思っています。
それはさておき、このケースの中では、課長がしきりに「業務遂行能力や組織貢献度の観点で評価」と言っています。再雇用者であっても評価する、というのが人事から強く伝えられていることがわかりますが、そもそもやる気を奪う制度を設計しておいて貢献度を評価すると言っているあたり、無茶苦茶だなぁ、と思います。そしてこの評価制度は再雇用者を評価している風でもありつつ、実は評価者の課長自身が、再雇用者のモチベーションを落とさせずにマネジメントできているかを評価するものにもなっているような印象です。
そんなこともあってか、この課長は仕事の実務のことはほとんど頭になく、再雇用者を含めた人間関係ばかりを気にしているように読めます。
課長の対応には、どのような問題があるか
直接的には書かれていませんが、おそらくこの課長は人事から再雇用者のマネジメントを押し付けられたことに関して、不満を持っているのでしょう。若手に対して「再雇用しているので、戦力になってもらわないと困る」と言っていますが、言われた若手も、それはあなたの仕事でしょ、と思って困ってしまいます。
本来、マネジメントをするべき立場の人間が不満を持ちますと、受け身になります。受け身になると何も考えず丸投げしてしまうのですが、これですとマネジメントが機能しなくなります。
少なくとも、マネジメントの立場にある者でしたら、説明責任を果たすことが求められます。そのためには、たとえ会社の方針に賛成できなくとも、せめて理解はしておくべきかと思います。
説明責任については下記の記事で書いています。
課長は今後、どのような改善行動をとるべきか
現状では、再雇用者と若手社員の間に課長が割り込んで、むしろコミュニケーションを分断して混乱を産んでいるように見えます。そんな課長なら、むしろ居ない方が仕事がスムーズに進みそうです。
なぜこの混乱が起こるのか、という観点から、このケースを注意深く読みますと、再雇用者も若手社員も「仕事についての話」をしていますが、課長だけが「人についての話」をしています。これでは話がかみ合うこともありません。
もうひとつ。再雇用者が「以前よりも感じづらくなっています」と言った際も、それ以上、話を聞かず、「業務の範囲が変わったから」ときめつけています。そして、再雇用者に対しても若手社員に関しても、「例えば」と言って思い付きのアイデアを提案しています。
これはつまり、説明責任を果たしていないだけではなく、相手の話も聴いていないことを示しています。
ここでいう「話を聴く」というのは、「話していることを聴く」だけではなく、コーチングで言うところの「話していないことも聴く」ということを言っています。
そして、説明しない、話を聴かないということは、対話が成り立たない、ということでもあり、まずは、再雇用者と若手社員と腹を割って話し合ってみるのが良いのではないかと思われます。
このケースにどんなコーチングを提供するのか?
「ケーススタディ&ビジネスコーチング研究会」では、もともとLDのケースに掲載されている2つの問いかけに加えて、この3つ目のオリジナルの質問を用意しています。例えば、本人もしくは会社が課長レベルのマネジメント層にコーチをつけた、という設定。初回のセッションでこの話を聞かされたあなたは、どのようにこの課長をコーチングしますか、という問いです。
コーチング用語で、コーチとクライアントのほかに、スポンサーという概念があります。これは、コーチングを依頼する本人以外の人や会社のことを言います。個人の満足さえあればいいパーソナルコーチングと違い、ビジネスコーチングの難しさというか、独自性はここにあります。単にクライアントの話を聴いてクライアントに満足してもらえばそれでいい、というわけにはいかないのです。
ということで、クライアント本人の成長を促し、ビジネス上の成果も出しつつ、クライアントもスポンサーも満足のいく結果になることを支援することが、コーチの役割となります。
これはなかなか通常のセッションだけでは身につかない技術なので、そのシミュレーションの場として、この「ケーススタディ&ビジネスコーチング研究会」があるのです。
コーチングについてあまり理解のない方は、ここで、問題を起こしている人物に対して何かティーチングしたりコンサルしたりということを考えてしまいます。これは私たちの思考の癖で、ついつい、教えれば人は学び、変わると考えがちですが、それがうまくいかないことは、誰しも実は体験していることです。
私はこのことを、よく下記の図を使って説明しています。

ティーチングは単なる情報の伝達です。ですので、そのゴールは情報が伝わったかどうかの確認で、「あなたの言っていることを理解しました」であり、それが行動変容につながるかどうかは保証されていません。
コーチングの場合には、できることを増やしていく、という考え方をしますので、どこまでもいっても行動です。
指示命令に、人は従うかもしれませんが、それは、その人が学んだからでも理解したからでもありません。それは従ったフリをしているだけで、問題は何度でも形を変えて再発します。
コーチングはその方法に生産性が無いと考えて、再発しない不可逆変化を起こすにはどうすればいいのかを考えます。その結果が、本人に考えてもらい、気づいてもらい、行動してもらう、というコーチングの大事な前提になるのです。
「ケーススタディ&ビジネスコーチング研究会」では、こうしたコーチング的な問題解決志向を、身に着けてもらうために、毎回、今日もどこかの日本の職場で起こっていたケースを読み解きながら、対話を繰り返しています。
さて、今回のケースですが、まずは会社の再雇用制度への不満をぶちまけてもらうのが良さそうです。その上で、再雇用者について、「反発する」「否定的な態度」だと思っていることについて、それが何に起因しているのかということを考えてもらいたいです。幸い、今回のケースでは若手社員が優秀であるのか、現場はうまく回っていそうです。それを前提とした上で、この課の成果を考えたときに、自分と再雇用者はどのように関わっていくことが良いことなのか、再雇用者ときちんと対話するところから始めると良いのではないかと思います。
さて、今回は以上です。ここのところ、「余計なことをするマネージャー」とでも言いたいケースが多い印象です。逆に言えば、それだけ日本の会社の現場の生産性が上がっているのかもしれず、結果として、ブルシット・ジョブも余剰人員も増えているような印象です。
ブルシット・ジョブについてはこちらに書きました。
「ケーススタディ&ビジネスコーチング研究会」は、毎月2つのケースで開催しています。
ご興味あればこちらから、まずは、グループ登録いただければ、開催案内が届くかと思います。
ちなみに、次回のケースはこちらです。
現場からは以上です。お読みいただき、ありがとうございました。面白かった、参考になった、という方は是非、高評価いただけると嬉しいです。フォローも大歓迎です。
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