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デヴィッド・グレーバー『負債論』を読む その8「第8章「信用」対「地金」─ そして歴史のサイクル」

「河童の目線で人世を読み解く」市井カッパ(仮名)です。
「すべての組織と人間関係の悩みを祓い癒し、自然態で生きる人を増やす」をミッションに社会学的視点から文章を書いております。

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現在は、こちらの書籍を読んでいます。

前回の記事はこちら。

前回は、この世界は「政治的・法的な諸理念が奴隷制の論理に基礎づけられている」世界だとグレーバーは語り、では、なぜ、今の世界に形として奴隷制が残っていないのか、その疑問については、次章で語られる、となっていました。

そして今回の第8章ですが、わずか数ページのかなり短い章になっています。そして次の第9章から第12章までは、歴史を順番に語っていく構成になっています。そういう意味では、前半の終わりでもあり、後半のはじめでもあるというつなぎの章になっています。

と言いつつ、この章の後半は「メソポタミア(前3500ー前800年)」「エジプト(前2650-前716年)」「中国(前2220-前771年)」と小見出しがついており、既にこの章から歴史が語られ始めることがわかります。

ということで、まずはつなぎの数ページをじっくりと読んでいきます。

ここでは「なぜ?」ということは書かれていませんが、グレーバーは古代の奴隷制があるときから消滅しているという事実を突きつけます。そしてそれはインドや中国でもほとんど同じことが起こっていた、と。帝国主義時代はどうかと言えば、それは「自国の同胞たちが自国内での奴隷所有を支持しない」ために、アフリカで奴隷を捕獲し、新世界でプランテーションを建設していたので、これは古代の奴隷制とは違う、という主張です。

ちなみに貨幣についても同時性があり、硬貨の鋳造は中国、北部インド、エーゲ海周辺で、同時期(前500-前600年頃)に起こった、と言います。そこから硬貨は1000年程度、広がっていき、そして、奴隷制が消失をはじめた後600年頃から貨幣の信用は失われていき、地金が優位になる時代がやってくる。グレーバーはこの時代を「暴力の全般化する時代」であったと語っています。戦争によって貨幣より地金の信用が上がった、というのは、現代でも変わらない話のような気がします。

このサイクルを証明するために、グレーバーは歴史を語り始めます。彼によると時代は下記のように分かれるようです。

農業帝国時代(前3500年-前800年):第8章
枢軸時代(前800年ー後600年):第9章
中世(600-1450年):第10章
資本主義帝国の時代(1450-1971年):第11章

そして本章では、「農業帝国時代(前3500年-前800年)」として、「メソポタミア(前3500ー前800年)」「エジプト(前2650-前716年)」「中国(前2220-前771年)」が語られます。

メソポタミア
・信用貨幣が支配的であった
・物理的取引よりも計算の尺度として利用
・粘土による約束手形は商人ギルドの内部で流通
・利子の概念発生:宮殿や神殿の官吏による有利子貸付
・定期的に農民革命、負債を帳消し、記録を破壊、土地再配分

エジプト
・有利子負債の発生を回避
・貨幣は計算手段
・負債は「罪責性」の問題
・プトレマイオス朝以降、定期的な債務帳消しが制度化

中国
・地方で多様な種類の社会的通貨
・社会的通貨が商業的な目的に転用
・官僚的な貯蔵施設の設置

この章ではこういった歴史的な話がなされ、そして結論はありません。最終的にこの章で書かれたことは、人類の文明の初期の頃、確かに貨幣と負債が現われた、ということです。そして明確には書かれていませんが、負債は必ず膨らみ続け、最終的には負債をチャラにする「革命」が起こってリセットされる、ということが繰り返されてきた、ということです。ただし、まだそれぞれの文明は広い世界の中でそれぞれ閉じている部分も多く、そのことが他の文明に何か影響を与えたということは書かれていません。エジプトのプトレマイオス朝はマケドニアのアレキサンダー大王系の末裔です。また、中国は前漢の時代が書かれています。ということで、いわゆる戦争は既にあったかと思いますが、それについてはグレーバーはあまり言及してはいません。これがグレーバーの言う「農業帝国時代」(この言葉の定義もありません)ということになります。

次章では、グレーバーがカール・ヤスパースの定義を採用した「枢軸時代」を見ていきます。

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