1-3-④ 砕けぬダイヤ④
*注意*
本作は『ジョジョの奇妙な冒険』および『クレイジー・Dの悪霊的失恋』をもとにした非公式の二次創作です。
原作および出版社とは一切関係ありません。
おもいっきりネタバレしています!!!
派出所の入り口前に到着したホル・ホースが入ろうとすると、
「だから言ってるだろう!」
と興奮した男の声がした。
透明な扉から中を覗くと、仗助と初めて会った時の暴走車に乗っていた中年男が、椅子に座って捲し立てていた。
「あの事故は私のせいじゃあない!!」
という男に、
「とにかく落ち着いてください。平岡警部」
と制服の警官がなだめていた。
「いきなり黄色い服の男が後ろに現れて、命令されたら、体が勝手に動いたんだ……私のせいじゃあない……どうしてこんなことに……」
と嘆き出した中年男に、
「今署のものが迎えにきますので、それまで茶でも飲んで休んでてください」と制服の警官が声をかけて後ろの部屋に入って行った。茶を入れに行ったのだろう。
先ほど暴走車を止めて変形させたのは仗助だが、ホル・ホースも目の前にいて、スタンドの銃を打ち込んでいる。会話の内容から、中年男は警察のしかもある程度地位のある人間だったらしい。
入りにくい状態に、ホル・ホースは、扉から入るのをやめて、手前で身を隠した。
ふと、道の向こうを見ると、電線に1羽の鳥がとまっていた。
毛先に銀が少し入った真っ白な羽毛に、黒い嘴の──鸚鵡だった。
そして、その鸚鵡の背後に、鳥のような形が浮かび上がった。
口の部分にキャップがはまるようになってそこに目の部分から伸びたパイプが繋がっていた。
羽の部分は、映画のフィルムが巻かれたリールのような丸い束がいくつもいくつも折り重なって、鳥の形を作り、伸びたパイプのような足の間にパイプのような尾が伸びていた。
「鸚鵡ッ! しかもスタンドが……」
キイイイイイイイイーーー
鸚鵡の鳴き声が響いた。
鸚鵡のスタンドのリールから、映画のフィルムがまっすぐに伸びて、ホル・ホースを突き刺した。
──「それで……といったのはおまえのことだよ ホル・ホース」
再びDIOの声が聞こえた。
今度はしっかりと、耳ではなく頭の中に響いた。
直後体が動かなくなった。
目の前に、本棚と金髪の男の姿が浮かんだ。男は筋肉質の上半身に前だけのインナーを身につけ、緩めたベルトを下げて、右手に本を持ち、こちらを振り返った。
派出所の前にいるのはわかっていてその風景も注意すれば見えるのに、本棚と男の風景もその上に二重写に写っている。眼球の上のコンタクトに、映写機で映像を写したようだった。
目の前の男は忘れようと思っても忘れられなかった。
(DIO!!!
こ……これは、オレの記憶? 10年前、DIOに報告にいった時の……)
ホル・ホースは背中に氷を詰められたような気分になり、荒い呼吸になって、冷や汗を流した、いや、感じた。
(そう、この時、おれは、マライアとアレッシーが倒されて、ジョースター一行がカイロに到着するとDIOに報告に行った。そのDIOになじられたんだ……)
記憶している通りに、全く同じに、DIOの発言は続いた。
──「おまえはいつわたしのために奴らを倒しに行ってくれるのだ……?ホル・ホース」
──「わたしに忠誠を誓うと言っておいて……まったく闘いに行かないじゃあないか……」
──「2度も失敗して……逃げ帰ってきたな……」
(そう、オレのタバコをとって両手の指に押し付けて、傷の治りが左の方が遅いといった。
首から下のジョナサン・ジョースターの肉体がまだ馴染みきっていないと。
そうしてこっちに背を向けて椅子に座って本を読み始めて……)
──「今度こそジョースターどもを殺してきてくれよ わたしのために」
(背を向けたまま左手の人差し指を立てて……)
──「さもなくばわたしがおまえを殺すぞ!」
(そう、それでオレは、10年前にオレは頭に来た。
背後がスキだらけだから、この野郎の頭をコッパみじんに吹っ飛ばした方が……って)
ホル・ホースの右手からエンペラーが出現し、
10年前のように椅子に座っている男の後頭部に銃を狙いつけた。
(体が勝手に!)
が、現在椅子に座っているのは、平岡警部と呼ばれた暴走車の持ち主である。
ホル・ホースは声を出せず、エンペラーをしまえない。
10年前と同じように。
(間違いねえッ!
これはあの鸚鵡のスタンド攻撃ッ!!
かつてこの声を聞いた時の状況を、オレの行動を再現させられている!)
──「なにをしているっ 早く行けよ……」
ホル・ホースの銃の引き金をひく力が加わる。
(本当に過去の再現なら、あの時のオレは、DIOの全てを見透かした一言「本当にオレを撃とうとしているのか?」にびびっちまって引き金を引けなかったはず!
だからあの一言を聞けば、引き金を引けずに止まるはずだッ)
しかし画面は変わらず、DIOは向こうを向いて椅子に座ったままだった。
(早く言えッ次の言葉をよおおおおーーッ 指が止まらねえだろうがッーーーー!!)
目の前にはDIOの姿に映って、背広姿の中年男が俯いている。
背広のカフスに横断歩道の緑のランプが写った。
そこから、キラキラと煌めいた翠の宝石が、飛び散った。
(これは──!!!)
平岡警部は人の気配を感じて後ろを振り返った。が、誰もいなかった。
制服の警官・富沢が茶を入れて持って、平岡のいる部屋に戻ってくると、平岡はドアの方を見ていた。
「どうしました平岡警部」
「いや……今誰かいたような気がしたんだが……気のせいか……」
*
ホル・ホースは、荒い息を吐き、冷や汗を拭いながら裏道を小走りに移動していた。
「あっ危なかった……あいつを撃っちまってたら、勝手のわからん島国でお尋ね者になっちまうところだったぜ」
ペット・ショップという名の隼で、DIOの配下のスタンド使いがいた。10年前の戦いで死んだ。
そのペット・ショップと同様にマリクに調教された鸚鵡と聞いて、ホル・ホースは警戒していたが、悪い予想は当たってしまった。
やはり、あの鸚鵡は、ただの鳥ではなかった。
ペット・ショップと同様にスタンド使いだったのだ。
しかし、DIOが倒されてからこの10年、鸚鵡はただの鸚鵡として過ごしてきたと聞いている。
それがここにきて急にスタンド能力を使い出したということは、盗まれた鸚鵡を盗んだ奴が、その力を利用している可能性が高いことになる。
「ただの、”迷い鳥”探しってわけにはいかねえか、全くよおッ!」
愚痴をこぼしながらあたりを見渡すと、タバコ家にパチンコ屋、不動産屋に鍵屋が並び、その横のケーキ屋から甘い匂いが漂ってきた。
冷や汗まみれのカウボーイが溶け込むには難しい、のどかな昼間の駅近通りだった。
交番から慌てて走って逃げ、仗助たちがいる自動販売機の横とは、逆方向に来てしまったようだ。
一旦戻ろうと踵を返すと、
キイイイイイイイイーーー
また鸚鵡の鳴き声が響いた。
同時に、
「死ね!ポルナレフ」
という声と共に頭上から人影が、ナイフを振り翳しながら飛び降りてきた。
「なっ!!」
ホル・ホースは、反射的にバッと飛び退いて、エンペラーを構えた。
見ると、白いコックコートに赤いエプロンのパティシエ姿の若い女性が、ケーキ屋の2階から飛び降りたところだった。
その目を見ると、白目も黒目もなく、スクリーンに映った映画のフィルムのように白黒が上から下にぐるぐると回っている。
「はあー懐かしい名前じゃあねえか。バカな電柱男よりホル・ホースってオレの名前をよんでくれると嬉しいんだがなあ、マドモワゼル?」
「ウシャアーーーーーーッ!!」
パティシエはそのままナイフを振り回し、ホル・ホースは銃を撃たずに体術で避けた。
(この女はさっきの俺と同じで、あの鸚鵡のスタンドに操られてやがる。ポルナレフを襲って剣の使い手……アヌビス神の記憶か?)
ホル・ホースは10年前に、自分と同じようにDIOの配下だったスタンド使いを思い出した。剣のスタンド使いで、ポルナレフと承太郎と戦って敗れた男だった。
ホル・ホースは世界一女にやさしい男を自称しており、女にうそをつくが女だけは殴ったことはない。ブスだろうが美人だろうが女を尊敬しているからだ。
『1番よりNo.2』が彼の人生哲学ならば、”世界一女にやさしい男は”は、彼の信念であり覚悟であり、魂に刻まれた墓標でもあった。
そのため、ホル・ホースにとって、エンペラーで女を撃つことはもちろん、殴る蹴るという選択肢もなかった。
剣を振り回したところを背後に回り込み、パティシエの頭に軽くゲンコツを当てて気を失わせた。
「きゃー」と悲鳴が上がり、同じパティシエの格好の別の女が、ナイフを振り回して、通りすがりの中年女性を切り付けている。
「あっちもかッ!くそ!」
エンペラーを発射してナイフを打ち落とし、駆け寄って同様に女の気を失わせた。
「おいッ!大丈夫か……」
と倒れた中年女性を助け起こそうとすると、と3人のパティシエの女がナイフを構えて向かってきた。
「アゴの下だなポルナレフ!」
「アゴの下だなポルナレフ!」
「アゴの下だなポルナレフ!」
今までの2人と同様に両目とも白黒が上から下にぐるぐると回っていて、女の口調とは思えない声と物言いだった。
「たまげたな鸚鵡の野郎。複数の相手も操作出来るとは……しかし参ったぜ……撃つわけにゃあいかねえ相手ってのは、『皇帝』の天敵かもしれんぜ、こいつはよおお」
「ウシャアアーーーッ!」
「ウシャアアーーーッ!」
「ウシャアアーーーッ!」
3つのナイフがホル・ホースを囲んで襲い、ホル・ホースは再び体術で避ける。
(エンペラーでナイフを撃ち落とすにも、動き回ってるし構えて狙う余裕がねえッ 下手すりゃあ女にあたっちまうッ)
その時、もう1人のパティシエの女がナイフを両手に2本持って現れた。
「『銀の戦車』プラス『アヌビス神』二刀流ッ!」
「な……」
ホル・ホースの脇腹が抉られ血が吹き出した。
「ワハハハハハハハハハハハハハハーーーーッ」
*
「なッ、何を言って……」
呆然とする涼子の前で、赤い頬の仗助は落ちたカバンを拾い、パンパンを汚れを叩き落とした。
「あんたさっきから、無理して強い自分を演じてるみたいで、見てらんなかったんすよね。
なんか悩みがあんなら、典明お兄ちゃん? その人に相談すりゃあいんじゃあないすか?」
「……お兄ちゃんはもういないのよ」
涼子の表情に制服姿を見て仗助は察したようだった。
「……ああ、それは、お悔やみっつーかなんつーか……」と涼子のカバンを差し出した。
「……気にしないで」と涼子は手を伸ばした。
すると仗助は顔色を変えて別の方を振り向き、カバンを手にしたまま動き始めた。
「ちょっと! 私のカバン!!」
「今聞こえなかったっすか!? 銃声みてぇのが!!」
「私には何も……」
仗助の方に走ってくる人影を見た涼子は何故か、
仗助を背中から思い切り蹴っ飛ばしていた。
(また予言通りに!)
人影は、ナイフを持って突っ込んできたパティシエ姿の女性で、涼子の足に引っかかって転倒した。
「なッ、何すんだよ先輩……」
と蹴られた背中を押さえて振る向く仗助に、落としたナイフを女がゆらりと立ち上がった。
両目とも白黒が上から下にぐるぐると回り、異様な雰囲気を醸し出している。
「なんだあ?? 通り魔ってやつかあ!?」
「仗助ッ!!!」
呼ばれた方を振り向くと、地面に倒れたホル・ホースが顔だけ上げて叫んでいた。
「その女たちは操られているだけだッ、本人の意思じゃあ、ねえ……」
口から血が溢れる。
その手前に同じような異様な様子の3人の女がナイフを手に仗助たちの方へ向かってくる。
「くたばれ承太郎ォーーーーッ!!」
立ち上がった女が投げたナイフを、仗助のスタンドが弾きおとし、そのまま女の顔を殴り倒した。
涼子にカバンが投げ渡される。
「お姉さん方確かにいつもと違くなっっちまってるみたいっすねえー」と仗助はポケットに手を突っ込みながら、ナイフを持って襲ってくる3人の女たちに早足で突っ込んでいった。
「サンドイッチのお礼になるべくやさしくすっから、悪く思わんでくださいよォーーッ」
「ウッシャアアアアアアーーーーッ」
「ウッシャアアアアアアーーーーッ」
「ウッシャアアアアアアーーーーッ」
向かってくる女たちの前にピンクのスタンドが浮かび上がり、
「ドララララララララララララ」
目にも止まらないパンチのラッシュを打ち込んだ。
3人とも吹っ飛んで倒れた。ナイフが道に落ちる。
騒ぎに通行人が集まってきた。
スタンド使いでない人間には、仗助のスタンドやホル・ホースの銃や銃声は聞こえず見えないが、人が不自然に飛んで倒れたのは見える。
ざわざわと通行人から不審がる発言が聞こえてきた。
「どうもーーーッ
以上がホル・ホースと愉快な仲間たちによる、街角パフォーマンスでしたァーーー!!!」
戯けた仕草の仗助が大きな声をあげた。
「どうすか?!この迫力!! 楽しんで頂けたっすかねえ~?」
仗助が、1人の通行人女性の肩を抱いて捲し立てた。
女性は、「えっええ、まあ……」とおされてしまっていた。
倒れていたパティシエたちは次々と起き上がったが、
「?? 私……どうしてこんな……」「さっきまでイチゴを切ってたのに??」
少し混乱した様子だったが、
「早く仕事に戻らなきゃ」「そうね」と次々に店に戻っていた。
切られて倒れたはずの中年女性もどこも怪我がなく、不思議そうにしながら買い物に戻っていく。
通行人も、皆が平気な様子を見て、「トリックだったの?」「テレビの撮影かしら」とトーンダウンしていった。
「はい!今日のショーはここまでっす!まだどこかの街角でお会いしましょーッ」
勢いで乗り切った仗助がホル・ホースに駆け寄って、
「大丈夫っすか!? 早くズラからねーと兄貴ッ」
と助け起こした。
「……お前のその『後で治しゃあブン殴っても良い』っつう発想……どうかと思うぜ」
というホル・ホースに仗助は、
「じゃあ兄貴の傷も治さねぇ方がよかったすかねえ?」
と答え、その時自分の傷が治っていることにホル・ホースは気づいた。
支えて歩きながら何があったか聞く仗助に、まだ引かない汗を拭いながらホル・ホースが答えた。
「オレがエジプトから追ってきたのはただの鸚鵡じゃあなかった。あの鳥は──」
「鳥?」
眉をひそめる仗助に、ホル・ホースは続けた。
「あの鳥は、かつて『DIO』という男の指示で、特別な調教を受けたスタンド使いだった……」
*
駅から少し離れ、霊園近くまで来ると、ホル・ホースは置いてあったベンチに腰をかけた。
横に立つ仗助の顔を見ると、左頬が少し赤く腫れている。
戦闘で怪我をしたのかと聞くと、交番まで一緒に来た制服の”先輩”に引っ叩かれたという。
「なんだおめえ、2人きりになったのを良いことに押し倒したか?」
「おっ!なっ?!」
「これだからティーンはよお。いいかあ? ものには順序っていうものがあってだなあ……」
「ち、ち、違うっすよッ!!そんなことするわけないっすよッ」
赤くなって仗助が否定するのを見て、なんだ違うのか、となぜか少し呆れたようになったホル・ホースは、「それならその頬、おめえのスタンドで治さねえのか?オレの傷みたいによお」と聞いた。
「いやあ、おれのスタンド?っつーんすか?
こいつ、他の壊れたものを治したり、他人の傷を治したりはできるんすけど──
自分のは治せねえんですよ」
「そうなのか?便利なようで不便なスタンドだなあ。
そういやあ、さっきの車の形を変えたのは?」
「あー、それは治しながら形を変えたんす。
ただ、おれの機嫌とか調子が悪いと、ちゃんともとの形に戻んないこともあるんすよね」
思わずホル・ホースは自分の服をめくって腹を確認した。
刺された後仗助に治してもらった腹は、元の形に戻っていて、そっと安堵のため息をついた。
「それより、鸚鵡って、鳥がおれたちと同じような力を持ってるってことっすか!?」
「ああ、オレたちの持ってる能力・スタンドは、大抵人間が持ってるんだが、たまに動物でも持ってるやつはいる。オレの知ってる限りだと、オランウータンに犬、鳥だと隼がいたな」
「マジっすか……」と仗助は、頭をかいた。
「昨日までこのスタンド能力?おれだけの病気かなんかと思ってたんすけど、それが鳥!!!なんかバカらしくなっちまうっすねえ~~~」
全く気にしていないわけでもなかったか、とホル・ホースは認識を改め、
「いいか、よく聞け仗助」と仗助に向き合った。
「問題は鸚鵡のスタンド能力そのものじゃあねえ。盗んだ鸚鵡の能力を利用して、他人を傷つけるやろうがこの街に潜んでやがるってことだ」
「……確かにそいつはグレート……っすね」
「それに奴は明らかにオレを狙ってきていた。オレが鸚鵡を取り戻しに来たことに気づかれたとしか思えん」
「なら、兄貴の能力で返り討ちにすりゃイイじゃねえすか」
「あの鸚鵡は、かつてDIOに調教されて仕えていたとはいえ、DIOが死んだ後この10年、スタンド使いじゃあない老婆のもとで、普通の鸚鵡として暮らしてきた。飼い主の希望もある。鸚鵡はできれば生かしたまま捕えたい」
「なるほど」
ホル・ホースは先ほどの仗助の強力なスタンドを思い出しながら立ち上がって、目の前の本体に語りかけた。
「そこでだ。オメーのそのグレートな力で、オレを助けちゃあくれねえか」
「おれが兄貴を……助ける??」
驚いたように聞き返す仗助に、
「ああ、頼りにしてるぜえ、仗助」
と重ねてホル・ホースが続けると、仗助はにこりと笑った。
「悪くねえっすねえ、誰かに頼られるっつーのは! まっ、さっきもおれが助けたんすけどねえ~~!!」
「おっおお、感謝してるぜ」
「さっきはびっくりしたっすよ、蹴っ飛ばされてみたらナイフ振り回して、兄貴はぶっ倒れてるしよお……って、あれ?先輩……?」
仗助が涼子を探して周囲を見渡した。
「ああ、嬢ちゃんか──」
ホル・ホースが肩をすくめるように答えた。
「さっき店の姉ちゃんたち、ナイフ振り回して襲ってきたんだから、そりゃ逃げるだろ。これからだって鸚鵡相手に戦いになって危ねえかもしんねえから、オレたちとは一緒にいねえ方がいい。惜しいかも知れねえが、諦めな。」
「だからそんなんじゃあねえすよ~」
冗談を言いつつ移動を始めた2人から隠れながら、涼子はカバンを下げて漫画本を抱えて会話を盗み聞きしていた。
(DIO……聞き間違いじゃあなかった。
これが”真実”へのヒント……やっぱりホル・ホースは、典明お兄ちゃんと会ったDIOって男のことを知っているんだわ!!
知りたい!あの男が何を知っているのか! けど……)
涼子はホル・ホースを追いかけて問いただそうかと思ったが、踏みとどまって手にもった漫画本を開いた。
(今するべきは未来を知ること!)
《少しづつ”真実”が近づいているぞー
でもリョンリョン、ここで焦っちゃダメ!》
漫画の新しいコマには、漫画本を振り回している涼子らしいイラストが描かれていた。
《すぐに詰め寄ってもシラを切られるだけ、遠回りこそ最短の近道なのさ!》
GOALと書かれた横断幕に向かって曲がった矢印が書かれて、その手前に涼子らしいイラストが走っていた。
《2つ目の”鍵”を手に入れよう!それは──》
