3-8-① 黒の囁き①
*注意*
本作は『ジョジョの奇妙な冒険』および『クレイジー・Dの悪霊的失恋』をもとにした非公式の二次創作です。
原作および出版社とは一切関係ありません。
おもいっきりネタバレしています!!!
「おい、仗助!」
「仗助君!」
仗助が気がつくと、目の前にホル・ホースの顔があった。
「あ……兄貴……?」
「おおー気づいたか、大丈夫か、仗助?」
「おれ……」
「あー、あいつのスタンド・ヘフ神は魂を過去に飛ばすスタンドだってよ。おめえも過去に行ってたんか?」
ホル・ホースの指差す方に、ハイエロファントの触手で捉えられた男がヘラヘラと笑いながら頭を下げた。先ほどのスタンド・ヘフ神の本体らしい。
「……過去……」
(やっぱり、あれおれの過去だったんか……やっぱり、”あの人”は……)
「仗助?」
黙った仗助をホル・ホースが訝しげに見つめたので、
「いやー、あれ、過去だったんすねー。おれ、若いお袋に会っちゃってー、誰だあ、こいつってびっくりしたっスよー」
と仗助は笑ってごまかした。
やはり心配そうだが、一方で探るように見ていた花京院典明が、それを見て安心したようにため息をついた。
典明の横でハイエロの触手に捉えられた男が、
「I gave him back—! Can’t you let me off now—?」
と頼んでいたが、
「What are you talking about? You're going to take us to where the Acrydol Crystal is.」
と典明はにべもなく答えた。
涼子が仗助に近づいてきて、
「これ、ありがとう、仗助くん……」
と、仗助が涼子にかけたダウンを渡した。
「いやあ、先輩も戻ったみたいで、よかったっスね」
て仗助は受け取りながら、涼子の泣き腫らした顔を見た。
涼子も過去に行ったのか。
どんな過去を変えたかったのか。
そして過去は変わったのか。
聞きたかった。
が、泣きはらした顔に、何も言えなかった。
仗助が初めて会ってから、涼子は何度も泣いている。
その原因はいつも。
「さあ、いこう。うちから盗まれた水晶へ案内してもらおうか」
典明がいった。
*
ハイエロファントグリーンの緑の触手に胴をぐるぐる巻きに拘束された男は、先頭に立って歩き一行を案内した。
その後に幽霊の花京院典明、肩にサルジュをのせた涼子に仗助、ホル・ホースとボインゴが続いた。
雪を踏みしめながら上に進んでいくと、山の木々は、月の光を浴びて紫がかった霞を帯びてきた。
すると木々の間に黒い建物が現れた。
満月の光を跳ね返す白い雪の上に、全ての光を吸収するような黒い建物は、よく見ると平屋で、屋根には錆びついた茶色いトタンがかかり、正面にはやはり黒いドアがあり、ドアの横には錆びた鉄板の看板が縦に設置されていた。
掠れた看板の文字は、
”大日本帝國陸軍 嶺冥山防疫研究所 第九觀測棟”
と読めた。
「That’s the place. Over thereー」
とマチズモが顎でしゃくった。
「旧陸軍の施設……跡? こんなところに?」
首を捻る涼子の横で、典明は表情を険しくし、
「Open the door.」
とマチズモに命令した。
「Huh? Me? You want me to open it?」
「Hurry up.」
とマチズモの両腕をガッチリ押さえ込んでいた触手が、シュルシュルと解けて胴体を一周するだけになった。
「Y-yeah, yeah, I got it.」
と首をすくめながら黒い建物にマチズモが近づいていった。
が、その動きが止まった。
「……Guh……」
マチズモはビクビクと体を震わせた。
「おい、どうし……」
「GAAAHHH―!! GUHBOOOAAAHHHーーーー!!」
と叫び声を上げ始めこちらを振り返った。
巨大なミミズが飛び出していた。目から耳から口から鼻から。さらに、ブシャ、ズシャ、と皮膚を服を突き破って、腕から胴体から足からも突き出して、ぐにゃぐにゃうねうねと動いていた。
「なッ、なんだッ こいつはーーーッ!!」
仗助は目を見開いた。
マチズモは曇った悲鳴を上げ続け、血を撒き散らしながら、雪の上に倒れ込んで、転がりまわった。
「GUAAAHHH―!! GYEEEAAAHHH!!」
「お、おいッ!」
仗助がマチズモに駆け寄ろうとしたが、
「よせッ! 仗助君!」
と典明がスタンドとともに仗助の前に体を張って止めた。
「な、なんで、だって……」
「あれは、肉の芽だッ! 吸血鬼が人間を操る細胞! 近寄れば君も侵されるッ! もう助からないッ!!」
「な……」
全身から巨大なミミズを吹き出した異形の化け物となった男は、口から泡と血を吹き出しながら、地面に横たわり、仗助と典明に手を伸ばしていた。
「Why... help... me...」
典明に引き止められた仗助は、見ていることしかできなかった。涼子は顔を覆い、ボインゴは目を背け、ホル・ホースは眉を顰めて見下ろしていた。
「..I... was...」
パタリと、手が血に染まった雪の上に落ちて、
マチズモは死んだ。
「──まったく人とは信じられぬものよ」
若い男の声がした。
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