3-5-② 1人の女、2人の男②
*注意*
本作は『ジョジョの奇妙な冒険』および『クレイジー・Dの悪霊的失恋』をもとにした非公式の二次創作です。
原作および出版社とは一切関係ありません。
おもいっきりネタバレしています!!!
目次 前書き&注意点 前の話(3-5-① 1人の女、2人の男①)
ホル・ホースが右手に銃のスタンド・エンペラーを現して、弾丸を放った。
弾丸もスタンドであり、右に左に曲がって何匹もの蛇を次々と撃ち抜いた。
しかし蛇の数は多く、死骸を乗り越えて次から次へと向かってきた。
ホル・ホースは次から次へと銃を打ち続けながらボインゴへ叫んだ。
「ボインゴ、おめえがいちゃ足手纏いだッ!援護するからここから離脱しろッ!花京院を連れてこい、あいつの結界なら一網打尽だ。仗助でもいい!」
「でも……」
「おめえの予言はここで蛇に食い殺されろって書いてあんのか?」
「いや……」
「いけ!」
ボインゴは、一瞬ホル・ホースを見たが、背を向けて走り出した。
ボインゴが木々の間を走っていき、ホル・ホースは銃を打ち続けながら移動しつつ、蛇を自分の方向へ誘導していった。
ローラが岩からするすると地面に降り、蛇たちの間をぬって、ホル・ホースに近づいてきた。傷ついている様子はなかった。
「……へへ……蛇を操るスタンド能力ってところか。この蛇をいくら殺しても、お前さんには影響がねえみたいだな。何よりだ」
「まだそんなこと言ってるの?自分が死のうって時にッ!」
ローラは苛立ったように牙をむいた。
「ったりめーだろッ、オレは女だけは殴ったことはねえ!」
ローラの左右から無数の蛇が現れこちらに向かい襲ってきたが、ホル・ホースの手前で縦横無尽に這い回る弾丸が蛇を次々と撃ちつくしていった。
「なぜだ、ローラッ!何で吸血鬼になんかなったッ!なぜあいつらの味方をするッ!儀式なんてしてどうするつもりだ!」
「あんたには関係ない」
まっすぐホル・ホースを見据えてローラは続けた。
「……って言いたいところだけど、一応命の恩人だし、色々世話になったから教えてあげるわ、ホル・ホース。」
蛇の攻撃が止まり、ホル・ホースも銃弾を止めた。
ローラはにっこりと笑って言った。
「DIO様を復活させるのよ」
「は?」
ホル・ホースは何を聞いたかわからず、聞き返した。
「アクリドルの水晶は今夜の満月の光で特別な光を放つの。その水晶を手にする儀式で、我々吸血鬼は進化する。その進化した吸血鬼の血で、死んだものも蘇るの。そして……DIO様に復活いただくの」
両手を合わせて、うっとりと夢を見るような顔でローラは続けた。
「な、何言ってんだ。死んだもんが蘇るなんて……」
と言いかけたホル・ホースは、花京院典明のことを思い出した。
幽霊になって蘇った花京院。あれがもし肉体を持ったら、完全に復活したことになるのだろうか。
いや、まさか。
首を振って否定したホル・ホースはどこか遠くを見ているようなローラに、現実を突きつけた。
「DIOは灰になって消えたんだ。復活なんかしねえ」
ローラはきっとホル・ホースを睨んだ。蒼い目で。
「嘘よ!あの人が言ったもの!DIO様は蘇るって!骨が残っているからって、それに吸血鬼の血を与えれば復活できるって!」
「お前は見たのか?ローラ?」
「え……?」
「そのDIOの骨を見たのかって聞いてるんだよ」
「いえ……DIO様のお友達が大事に持ってるからって……」
けっと吐き捨てるようにホル・ホースはいい、ローラに指を突きつけていった。
「そいつは詐欺の常套句だよ、ローラ。騙されてるんだ、お前。10年前、DIOもオレたちも負けた。DIOは空条承太郎のスタンドに倒された。その体は、ジョースターと承太郎が朝日に充てて完全に灰にした……DIOの骨なんか残っちゃあいねえッ!あいつは全部灰になって消えたんだッ!」
まっすぐに見つめ返すホル・ホースに強い口調で断言され、ローラの瞳が揺らいだ。
「騙されてんだ、ローラ。お前は、騙されてる。」
「嘘……嘘よ。あなたはいつも冗談に嘘ばっかり……」
「確かにオレは嘘つきだが、これに関しては嘘じゃあねえ。本当だ」
「え、嘘……嘘嘘嘘……だって、だから、私は……あの子をおいて、10年……DIO様に会うために……」
頭を左右に振って混乱し始めたローラに、ホル・ホースは畳み掛けた。
「騙されてる、ローラ。そいつらがお前に何言ったか知らねえが、DIOは復活なんかしねえ」
言葉を失ったローラにホル・ホースがエンペラーを消した右手を伸ばした。
「来い、オレと」
「……え?」
「オレの仲間に怪我を治せるスタンド使いがいる。吸血鬼を人間に戻せるかもしれねえ。無理ならSPW財団に掛け合う。血ならオレがなんとかしてやる。だから……だから……そんな奴らとは手をきれッ!オレと来い」
ローラは両手で顔を挟み、また頭を左右にふった。
「ダメよ。だめ……私にはDIO様しか居ないの。DIO様は私のことを愛してくださったの……DIO様には私だけだって……私が必要だからっって……だから私は……」
ホル・ホースはローラに踏み込んで右手を伸ばした。
「そのDIOはお前に何をしたッ?!! 血を吸いつくして、捨てたんじゃあねえかッ! あんなやつのところへ戻って何になる……オレと来い……オレと……子供を見つけて一緒に……3人でやり直そう」
「ダメよ……ダメ……」
美しい蒼い目は血走って、ホル・ホースを見返した。
「私は、私は、あの子を……捨てたのよおおおおおーー!」
まとっていた黒いマントが風に吹かれて体から剥がれて飛んでいった。
現れたローラの体は、腰から下が大蛇だった。
「もう……今更遅い……、遅いのよおおおおおーッ!!!」
動きを止めていた蛇たちが再び一斉にホル・ホースに襲いかかった。
「くッ……」
ホル・ホースが再び右手にエンペラーを現して狙いを定めた時、
右から大きな大きな蛇が現れてホル・ホースの右腕に飛びつき、食いちぎった。
「うああああああああーーーーーー!!」
ホル・ホースは、ちぎられた右腕を抑えて、絶叫しながら地面をのたうちまわり、転げ回った。
「あんたのエンペラーは右手に宿る。右手を失えばもう、スタンドは使えない……」
ずるずるという音と共に、地面に這いつくばるホル・ホースの横へローラが近づいた。
ホル・ホースの右腕から血が溢れて流れ出し、地面には、食いちぎられた右腕が血に塗れて落ちていた。
「は、は……ぐ……あ……はあはあはあ……ぐ……」
痛みに顔を歪めながら、左手で腰のベルト抜き、口と左手で右肩の下に止血のためにベルトを巻きつけた。
そのホル・ホースの体に巨大な大蛇が巻き付いていった。ローラの下半身だった。
「最後は私が血を吸い尽くして殺してあげる」
「ぐ……う……」
じわじわと上まで巻きつき締め付けられていく。
「何か……言い残す言葉は」
ホル・ホースと向かいあったローラが尋ねた。
荒い呼吸の下、ホル・ホースが口を開いた。
「……こんな熱烈な抱擁、嬉しいぜ、ローラ」
怪訝な顔をしてローラがホル・ホースを見つめた。
「何?ふざけてるの?これから死ぬのよ?」
「……思ったままを言っただけさ。オレは女を尊敬している……若かろうと、年寄りだろうと……吸血鬼だろうとスタンド使いだろうと蛇だろうと、関係ねえ……オレは世界中の全ての女を愛してる。……女に抱かれて死ぬ最期なら、最高の死に様ってやつだぜ……」
No1よりNo2がホル・ホースの信条だった。
でもこれだけは、世界中の誰にも譲れない。
美女を守るカウボーイとして、そして、皇帝としての最後のプライドだった。
(あの時はローラは意識がなかったからな……できるならオレも強く抱きしめてやりてえが……)
その時、ホル・ホースの背後に亡霊が現れた。
王冠を抱き、マントを翻す男の亡霊が。
「な……スタンド?他に味方が?」
ローラがホル・ホースから離れ、周囲を見渡した。
ホル・ホースは現れた亡霊、いや、スタンドを見つめた。
(これは……オレのスタンド、エンペラーだ)
遠い昔の幼い頃の記憶を思い出した。
(……思い出した、オレのエンペラーは、昔は人型だったッ! その後、銃の形に変わったんだッ……オレが施設で見たカウボーイの映画に憧れたから……それで、)
人型になったスタンドの皇帝が右手に銃を現した。
「く……」
とローラがずるずるとさがって距離をとり、ホル・ホースは座り込んでいた。
皇帝はローラに銃を向けた。が、その銃はポトリと地面に落ちた。
「……女は傷つけるものじゃあねえ。愛でるものだ……」
皇帝のスタンドがホル・ホースに重なり、左腕と、ちぎた右腕からスタンドの右腕を伸ばして、大蛇に向けて差し出した。
「……愛してるぜ、ローラ。……DIOよりも……世界中の誰よりも」
ずるずるとローラが近づいて、再度ホルホースに蛇の下半身を巻きつけた。
ホル・ホースがローラを抱きしめた。その蒼い目を見つめながら
ローラはゆっくりと両手を伸ばしてホル・ホースをそっと抱きしめ、口を開けて牙を見せた。
「ホル・ホー……」
ザクッ
ゴボッ
温かいものがホル・ホースの顔にかかった。
「が……」
ローラの首から何かが突き出ていた。
刃物だった。
ローラの背後にボインゴが立っていた。
歯を食いしばり、両手で握りしめた日本刀をローラの首に突き立てていた。
首を刃物で貫かれ、口から血を溢れ出したローラは、ホル・ホースを見ると、
笑った。
「……ロ」
「ぐ……えっえいッ!!」
日本刀が横に引かれ、ローラの首が傷の部分でスパッと切り離された。
血飛沫をあげた切り口から飛んだ首が宙を舞って、地面に落ち、そのままごろごろと坂を転がっていった。
「ローラッ!」
ホル・ホースが体の向きを変え、転がる首を追いかけようとした。
が、首の下のローラの体がそのままホル・ホースをきつく抱きしめたまま離さず、ホル・ホースは動けなかった。
「はッ、はなせ、離せ、ローラッ!首が……お前の首がッ!」
ゴロゴロゴロゴロ……
「そっちは、そっちは崖が……ローラーッ! 」
ポーン……
「ローラ・ペンドルトン──ッ!!!」
グシャ。
首のない体が力を失い、地面に崩れ落ちた。
集まっていた蛇はあっという間にいなくなり、傍には、抜き身の日本刀を下げ血まみれになったボインゴが立っていた。
「ホル・ホース……なんか……ごめん?」
敵とホル・ホースとただならぬ関係を察したのだろう。ボインゴはおずおずと謝った。
ホル・ホースは、自分に寄りかかっていた残った体を左手で地面に横たえて、両手を組ませた。
朝日が登れば灰になるだろう。
DIOと同じように。
それから、ボインゴに向き直り、
「いや、助かったぜ。……ありがとな、ボインゴ」
と礼をいった。
