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3-6 夜空にたなびく赤いマフラー

*注意*
本作は『ジョジョの奇妙な冒険』および『クレイジー・Dの悪霊的失恋』をもとにした非公式の二次創作です。
原作および出版社とは一切関係ありません
おもいっきりネタバレしています!!!

目次  前書き&注意点  前の話(3-5-② 1人の女、2人の男②)


仗助が怒鳴ると、木の影からまた影が現れた。

月の光に照らされて浮かび上がったのは、人影だった。
男だ。
この闇夜にサングラスをかけ、長い黒髪と、首に巻いた赤いマフラーをたなびかせている。

「へー、またゾンビだか吸血鬼だかのお出ましか……」
と仗助が拳を握りしめると、
「待て」
男は手袋をはめた手を静止するように前へ突き出した。ややアクセントが外国訛りだが日本語だった。
「君は今、波紋を使っていたな。何者だ。どこで修行して、誰に波紋を教わった。」
「そっちこそ、誰だよ。まずてめーから名乗りな」
仗助が警戒しながら聞き返した。
「よかろう」
と男はサングラスを外した。

「私はアランという。チベットの奥深くに存在する波紋使いの里のものだ。私自身は波紋はほとんど使えないが、里のものとして、吸血鬼およびその元凶である石仮面を追う任務に当たっている。日本で吸血鬼ーーそして、それから生まれるゾンビが現れたと情報をえて、私はこの山に潜伏し調査を行なっていた。」
アランと名乗った男は、仗助と涼子を探るような目で見回した。
「今度は君の番だ。波紋は吸血鬼を倒す強力な武器になるが、悪用すれば危険なものだ。私の里では波紋を一子相伝の秘術として伝えている。一般市民が知っているものではないし、ましてや扱えるものではないのだ。もしそれを秘密裏に漏らしたものがいるのなら、私はそのものを見つけ出して、罰しなければならない」
仗助と涼子は顔を見合わせた後、涼子が口を開いた。
「えっと、私は花京院涼子、こちらは東方仗助です。波紋の秘密を漏らした人はいません。なぜ仗助くんが波紋を使えるようになったかというと、その……説明が難しいのですが……遺伝に不思議な能力が関わったから……と言いますか」
「遺伝?不思議な能力?なんのことだ?」
「仗助くんのお父さんが波紋を使える方だったんです」
涼子の説明にアランは目を見開いた。
「バカな!……こんな日本に……波紋使いがいるはずがない!」
「……悪かったなーこんな日本でよおー……」
仗助はそっぽを向いた。
「仗助くんのお父さんはアメリカの方なんです」
涼子がフォローに入ったが、アランはさらに険しい表情になった。
「アメリカの、スタンド使いーー誰だ!貴様の父親の名前はなんだ!」
仗助がそっぽを向いたまま答えた。
「ジョセフ・ジョースターってやつ」
「ジョセフ……ジョースター?!! あいつには一般人の娘しかいないはずだ!」
「隠し子って、ことになるらしーぜ。おれは」

アランはあっけに取られた表情になると
「は、はは……ははは、はーはははっはっはっはっ……」
と顔を覆って笑い始めた。
不思議そうに見つめる仗助と涼子の前でひとしきり笑い終えたアランは、
「いや、すまない。あまりにも運命の皮肉に笑いが出てしまった。」
と目を拭いながら続けた。
「君がジョセフ・ジョースターの隠し子というなら納得がいく。ジョセフ・ジョースターは、生まれ持った天性の波紋の素質があって、修行をする前から波紋を扱うことができた。君もその素質を受け継いだのだろう。素晴らしい才能だよ」
「……そりゃあ、どーも」
仗助はそっぽ向いたまま、ちらっと目だけアランをみてつぶやいた。
アランはどこか遠くを見ながら続けた。
「ジョセフ・ジョースターは、父方の祖父と母が波紋使いの戦士だった。彼の母、リサリサーーエリザベス・ジョースターは美しくも稀代の波紋使いだったよ。赤石を守る役目を持ち、里から出ていたが、時々里へ来て他のものに波紋を教えてくれた。私も教わった一人だったよ」

それを聞いた仗助は、涼子の前に庇うように立ち、再び拳を握りしめてアランに向き直り、スタンドを出現させた。
「仗助くん?」
「何もんだ、てめー」
「……どうした? 仗助くん、だったか?」
「とぼけんじゃあねえ!」
噛み付くように仗助が凄んだ。
「おれの父親ってやつは、いい歳こいておれのお袋に手を出したろくでなしのジジイなんだよ!今はもう80近いはずだ!その母親ってのは幾つだよ?100歳かあ?なんで、そんな歳のババアに波紋を教われるんだよ!あんたどう見てもハタチそこそこじゃあねえか!」
「……波紋使いは加齢がゆっくりなのだ。リサリサも50歳で20代の見た目だった」
「てめーは波紋はほとんど使えねえんじゃあねえのかよ!」
アランの顔色が変わった。
「こんな時にわざわざこんな山にお出ましなんて怪しいと思ってたんだ。正体を表しな!」

アランはゆっくりと笑った。
口の両端から牙がニョキニョキと生え出てきた。
ゆっくりと赤いマフラーを下にずらすと、その首には一周する傷があった。
「日本語では、ここであったが100年目というんだったかな……
私の名は、アラン・ストレイツォ。
貴様の父親、ジョセフ・ジョースターと戦い消えた、クリス・ストレイツォの、息子よ!」

「な……吸血鬼? 波紋使い、なのに? なんで倒す相手の吸血鬼に?」
戸惑う涼子の問いに、アラン・ストレイツォは初めて涼子に目を向けて、答えた。
「波紋使い、だからだ。波紋使いだからこそ、波紋法で鍛錬した自分の老いていく肉体がはっきりとわかるのだ! だから父は不老不死を求め、吸血鬼になった! そして私も……」
「おれの父親と戦って消えたっつーのは、吸血鬼になって倒されたってことかい。」
仗助が遮って確認した。
「そうだ! 61年前! ニューヨークで! 私の父は殺されたのだ! 貴様の父親に!!」
「知らねーよ、そんな昔の話はよおー! おれは自分の父親っつーやつも、会ったことねーんだよー!」
「だから、私がここで貴様を殺す! 手に入れた吸血鬼の力に……新しい力を加えて!」

アランが2人になった。

「え?」
「な……あいつが……2人?」
「日本のニンジャには、分身の術という技があるらしいな」

アランが4人。アランが8人。アランが16人。
どんどん増えていく。

「我がスタンド、セベク神の能力! 分身の術だ!」

どんどん増えたアランは木々の間を埋め尽くしていき、驚いたサルジュが、キューンと鳴いて空中に飛び立った。

アランが32人。アランが64人。アランが128人。

「どんどん増えていくわ!」
「くそッマジかよッ! ドラッ!」
仗助のスタンドが波紋をまとって、増えたアランを殴り飛ばすと、殴られたアランは消滅した。
が、
「それはスタンドが生み出した分身だ」
「本体はこの中の1人」
「波紋で本体の私を潰せはお前の勝ちだ、仗助」
あちこちのアランが口々に発言する。
その間にもアランはどんどん増えていく。

アランが256人。アランが512人。アランが1024人。
黒髪に赤いマフラーが無数に並んでいく。
山の中の一角は増え続けるアランで鮨詰めになった。

「数が多すぎるぜッ、クソがッ! ドラッ! ドラッ! ドララララララララーーーーッ!!」
アランが飛ばされて舞い、また別のアランが蹴られて吹っ飛び、また別のアランが波紋で消滅する。
「残念、それは分身だ」
アランがいうと、また別のアランが話す。
「なるほど、スタンドに波紋を這わせるのか」
「DIOに効かなかったのは、スタンドの差か?」
「仗助の波紋は右手だけのようだな」
「口ほどにもない」
「いや、正式な修行を受けていないにしては上出来だろう」

仗助と涼子は岩の前に追い詰められた。
仗助は、自分の背中、岩との間に涼子を挟むように庇い、自分の前に現したスタンドで、次々と襲ってくるアラン達を殴り飛ばし、蹴り飛ばしていた。
が、左右に回り込んだアラン達が両方から、手を手を手を伸ばし、仗助と涼子をそれぞれ引きずり出した。
「きゃあ」
「ッ!てめえ……なっ」
足を払われた仗助が地面に倒れ伏せる。
背中にアランがアランがアランが乗っかった。
「ぐ……」
(重い……上から押されて息が苦しい、波紋が……でねえ……)

「ふん」
「手足をバタバタと動かして」
「潰される前のゴキブリのようだな」
上に乗ったアラン達が、仗助に嘲りの言葉を囁いた。
「……てめえ……!」
仗助のスタンドがラッシュで周囲のアラン達を吹き飛ばし、本体に向かって近寄ってくる。

「そこまでだな、仗助。スタンドを引っ込めろ!」
声のする方向を見上げると、涼子とアランが4人、岩の上に立っていた。
涼子は両側から2人のアラン・ストレイツォに押さえつけられて、身動きが取れなかった。口もアランの手で塞がれて声も出せず、目だけが仗助を見下ろしていた。
「先輩……てめえッ! 先輩をはなせ! ぶっ飛ばすぞ……ぐ……」
叫ぶ仗助の背中にもう1人アランが乗っかった。
仗助のスタンドは近距離型だ。本体が動かなければ岩の上まで届かない。

「仗助、ひがしかた、だったか」
「ジョセフ・ジョースターの息子よ」
「試してみようか」
「父と同じように」

涼子の口を押さえていたアランが手をずらして涼子の頬を挟み、口を開けさせた。
別のアランが涼子の口の中に手を突っ込んだ。
「~~~~~~ッ!」
涼子が声にならない叫びをあげた。

口から手を出したアランが何かを投げ捨てた。
カラン、という音を立てて、仗助の前に落ちてきたそれは、歯だった。
涼子は奥歯を抜かれたのだ。

「ッ! てんめえええええーーーッ!! 女になんてことしやがるーーッ!」
仗助は拳を握りしめて、アラン達の下でさけんた。
「女だの男だの、戦いには関係ない!」
「強いものが正義なのだ!」
「私の義姉・リサリサは、どんな男より強い波紋戦士だったぞ!」
「知らねーっつってんだろー、そんなババアーーーーッ!!!」

再びアランが涼子の口の中に手を突っ込んで引き抜き、別の歯が仗助の目の前に落ちた。
「あ……あが……」
頬を挟んで口を開けさせられたままの涼子は、口から血が溢れ出し、目からは涙が溢れた。
「……先輩」
仗助は歯を噛み締めた。

「スタンドを引っ込めろ、仗助」
「そうすればお前を殺すだけにしてやる」
「このまま抵抗を続ければ、歯の次は目だ」
「その次は耳、だんだん小さくなるぞ」
岩の上のアランが、仗助の背中に乗ったアランが、次々と脅す。

「く……くそ……先輩……」
仗助は岩の上の涼子を見上げた。
涼子も岩の上から仗助を見下ろした。
涙を溢れさせながら涼子は仗助を見ていた。

目と目があった。

仗助はスタンドを引っ込めた。

「はーはははっ、観念したかーッ!」
「一思いに引きちぎってくれる!」
「くらえ、父の仇!」
アラン達が仗助に手を伸ばしてきた。

その時、サルジュが涼子とアラン達の前に飛び降りた。
そして、サルジュの後ろに、スタンド・イシス女神が出現した。

「な!」
「鳥の……」
「……スタンド!」
アラン達は驚いてサルジュとイシス女神に目を向け、
仗助は両手で自分の耳を塞いだ。

キイイイイイイイイーーー

と鸚鵡の鳴き声が響いた。

アラン達は見た。エジプトの景色を。
そのアラン達の耳に
──「Then that means you lose, young lady.」
歴戦の波紋戦士の声が響いた。

直後、その場のすべてのアラン達は、
鉄の塊を全身につけた2人にすごい勢いで両側から押し潰される衝撃を受け、
意識を失って倒れた。

本体が意識を失ったことでスタンドは消え去り、アラン・ストレイツォは1人だけ木の間に倒れていた。
仗助がスタンドで岩を削ってそこにアランを置き、また岩を直しながら変形させて、岩でアランを拘束した。
次に、仗助はスタンドで涼子の傷を直し、岩から下ろして地面に立たせた。
すると、アランは意識を取り戻した。変形していた顔が吸血鬼の治癒力で戻っていく。

仗助と涼子がアランの前に立つと、
「殺せ。失敗した私は、始末されるだけだ。」
仗助は涼子を見た。涼子はアランを見て仗助を見ると、腕を組んでため息をついた。
仗助はアランを見ると、
「話が本当ならあんた、おれの父方のばーちゃんの知り合いってことだろ? 殺すのはなんつーか、ちょっとなあ」
と頭を掻いた。
アランは仗助と涼子を見ると、フッと微かに笑った。
「父は、クリス・ストレイツォは波紋の里の指導者たる強い波紋使いだった。しかし息子の私は、いくら修行してもろくに波紋ができなかった。父は、波紋の才能溢れるエリザベスを、義理の姉を自分の後継者にした。私が父に似ていたのは見た目だけ……私は不出来なコピーにすらなれなかった。それでも……」
アランの周囲に黄色いエネルギーが現れた。
「お、おいッ」
「これ……波紋!」
「……里の裏切り者だったとしても……吸血鬼になったとしても……私の、たった一人の父だったッ!」

波紋がアラン・ストレイツォの全身を包み、体を粉々に打ち砕いていく。
「……父よ……私の……最後の……波紋で……どうか……おそばに……」

アラン・ストレイツォはチリになって消え、赤いマフラーが風に飛んでいった。

仗助と涼子は、アランの消えた後をしばらく言葉もなく見つめていた。

バサバサとサルジュが降りてきて、涼子の肩にとまり、
「……ありがと」
と、涼子はサルジュを撫でた。
「仗助くんもありがとう。私の意図が伝わってよかったわ」
「いやー、本っ当にやばかったスね。先輩、大丈夫っすか? 歯、治したはずなんスけど」
さっきスタンド能力を使った時、地面に落ちていた歯が2本、ピューっと宙を舞って涼子の口に戻っていったのを確認はしたが、仗助は心配していた。
「大丈夫よ、ほら。」
涼子は目を閉じると、口をあーん、と開いて仗助に見せた。

仗助は涼子の頬に手を当てると、「あー奥歯……」と身を屈めて涼子の口の中を覗き込んだ。
(なんか……・)
触った頬はやはり柔らかかった。
(なんつーか、なんだろ……)
仗助は顔を少し、涼子に近づけた。

その時、

「涼子ちゃんッ! 仗助くんッ! ここにいたのか!」
と花京院典明が上から降りてきた。




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