3-3-② 暴力の嵐②
*注意*
本作は『ジョジョの奇妙な冒険』および『クレイジー・Dの悪霊的失恋』をもとにした非公式の二次創作です。
原作および出版社とは一切関係ありません。
おもいっきりネタバレしています!!!
クウウウウウウウウウウーーー
鸚鵡・サルジュは鳴き声をあげて、涼子の肩から飛び去り、離れた木に飛び移った。
直後全員が足もとを何かが通り過ぎた違和感を感じ、立ち上がって戦闘体勢をとった。
しかし、真っ暗な山の中、何が動いたのか見えず、わからない。
「何だあ?今のは?」
「何?」
「気をつけろ!何か潜んでる!」
「なんだ、敵かよッ!見えねえッ!先輩、明かり……」
「わかったわ、今明かりを……え?」
涼子がつけた懐中電灯の灯りの中に、小さな男の子が浮かび上がった。
黒髪の5歳くらいの男の子が、ブカブカの服の中に埋もれるように立って、懐中電灯を指さし
「先輩、じゃあねえのか? あんた……」
と幼い声で言った。
見ているうちに涼子が持っているはずの懐中電灯もどんどん高さが低くなり、その光が浮かび上がらせる持ち主は、18歳の彼女ではなく、典明のよく知る7歳の女の子だった。
「なッ……涼子ちゃん?!仗助君?!」
典明がハイエロファントグリーンの触手で、リュックからランプを複数取り出して灯りを灯すと、仗助と涼子は小さな子供になっていた。
涼子は最後にあった8歳程度、仗助はさらに幼く、おそらく公園であった5歳ごろだろうか。
「う、嘘……」
ボインゴも小さな子供になっていた。涼子と同じぐらいだろうか。皆10年ほど幼くなっている。
「なんだ、これは……」
驚く典明の横で、ホル・ホースが目を見開いて驚いていた。ホル・ホースはそれほど変わらなく見えるが、シワが減り典明が戦った頃の容姿に近くなったように見えた。
「これは、まさか……セト神?……なんで……」
「そのトーリさ、エンペラーの……ホル・ホース、だったか?」
上の方から声が聞こえた。
「誰だッ!」
典明がそちらに声をかけ、ライトを当てると、背の高さぐらいの木の枝に人影が見えた。
「そういうあんたは、ノリアキ・カキョーインだったな。」
と、男の声で外国語訛りの怪しい日本語が返ってくると、影は木からスタっと地面に降り立った。
影は、真っ黒なマントの服を着て、同じく真っ黒なフードを被り、黒いブーツを履いていた。
「お前誰だ? アレッシーじゃあねえな? 一緒にいるのかよ、どこに隠れてやがる?」
と若くなったホル・ホースが黒い影に銃を構えてた。
周囲を見回しながら、
「おいッ!アレッシーッ!ふざけてねえで、早く戻しやがれッ! ぶっ殺すぞッ!」
と怒鳴った。
「いるさあ、ここに」
と、目の前の影が被っていたフードをとった。
見たことない若い白人の男だった。月の光に肌は白く光り、金髪にヘーゼルの目、高い鼻に薄い唇、首には白いマフラーを巻いていた。
「はあ?何言ってやがる、てめーは?」
と銃を突きつけるホル・ホースを見て、白人の男はニヤリと笑った。口元からは2本の牙が見えた。
「貴様ッ!吸血鬼かッ!」
典明がハイエロファント・グリーンを出現させると、男はそちらに目を向けた。
「ふん、ハイエロファントグリーンか。DIOに手も足も出ずに殺されて、ユーレイになって現れたか。やっぱりユーレイは体がねーから効かねえのか」
と、男は首をすくめるような動作をすると、
「だかーら、ここにいるって言ってるんだよお、アレッシーはよおおー」
と言いながら、ゆっくりと首元の白いマフラーをとった。
男の首にはぐるりと一周する傷があり、傷から上の皮膚は白、傷から下の皮膚は褐色だった。
(あの首の傷……忘れもしない、見間違えるはずがないッ! DIOと同じ傷だ!)典明は目を見開いた。
「おい……」ホル・ホースが言葉を失った。
「まさか……」声変わり前になったボインゴが小さな両手で口元を覆う。
「そう!そのまさかさあ!
この首から下の体は、アレッシーのものさあ!」
男は首の傷を見せびらかせるように喉を逸らし、高らかに笑った。
3人は絶句した。
「おいッ!何だってんだよ?!どうなってんだ……ッて……」
声変わり前の幼い声の仗助が、歩こうとして自分の学生服に足を取られて転んだ。「アレッシーって、DIOの手下のスタンド使いの? 人間を若返らせて子供にする……その能力を私たちに?」
幼い声になった涼子も、ふわふわのコートの中でモゾモゾしながら聞いた。
「そう!そのアレッシーのセト神の能力さあ!」
金髪の男はますます楽しそうに笑った。
「オレは吸血鬼だがスタンド使いになれなくてなあ。スタンド使いになれる弓と矢で打ってもらったんだが、死にもしないがスタンド使いにもなれなかったんだ。」
ゆっくりと黒いフードを脱ぐと、黒い半袖に黒いズボンになった。
「だからなあ、スタンド使いの体をもらうことにしたのさ。」
にっこりと笑って続けた。
「首をはねてなあ!」
「きゃあ!」涼子は叫んだ。
「な、なんてやつ、だ……」横で仗助が驚いた。
かつての仲間の変わり果てた姿に、ホル・ホースとボインゴは言葉を失っていた。
「なんてこった……」
「アレッシー……」
花京院典明が厳しい表情になって男を睨みつけた。
「その肉体と共にスタンドも手に入れたというのかッ!」
「DIOと同じことをしたのさ。あいつの首から下はジョースターの先祖の体だろう? そんであいつは矢を受けて、スタンドを2つ発現したんだ。
『ザ・ワールド』と──もう1つ。イバラみてえな予知のスタンドな。そっちが首から下の体のスタンドだったってわけだ。」
男は自分の首の傷から下を指差すと、
「その話を聞いた、オレの仲間の頭のいいやつが考えたのさ。自分たちがスタンド使いになれないんなら、スタンド使いの体をもらっちまえばいいんじゃあないか、ってな。それでスタンド使いを狩ることにしたってわけよ」
「……スタンド使いを……狩る?」
仗助は話についていくのがやっとのような返事をした。
「アレッシーはおかしかったなあ。スタンドで攻撃しても、オレが変わらないからマジでビビってよお。オレが何十年生きてると思ってるんだ、10年やそこらで変わるわけねえだろう?
助けてくれ、殺さないでくれって土下座してきたんで、首を刎ねてやった。よかっただろう?これで永遠に俺と生きられるんだからさあ。」
「う……うう……」
ボインゴが吐きそうになっている。
「簡単だぜ、スタンド使い狩りはよお。このセト神で子供に戻して首を跳ねるんだ。子供になりゃあみんなスタンドも弱くなる。そんで死んだ後に能力解除すりゃあ、体もスタンドも大人に戻るんだ。便利だよなあ」
「貴様……」
典明は肉体がないのに関わらず怒りで頭に血が上っていくのを感じた。
「ああ、でも、お前ら。オレの知りたいことを教えてくれたら、見逃してやってもいいぜ?」
「し……知りたいこと、だと?」
ホル・ホースが苦虫を潰した表情で聞き返した。嫌な予感しかしないから聞きたくないといった様子だ。
「DIOを倒した最強のスタンド、スタープラチナの居場所だよ。本体は日本人って聞いてたのに、見つからねえ。」
「な、何でだ」
「決まってるだろう? そいつの首を刎ねりゃあ、“世界最強のスタンド”をオレのものにできる!このオレ、ゲオルグ・ヴェルナー・フェルゼンシュタイン様のなああああッ!」
(……ッ! 承太郎ッ!)
花京院典明は怒りで目の前が真っ赤になった。
「貴様ッ! エメラルド……」
「待てッ! 花京院! ここで戦うな!」
ホル・ホースが花京院を止めた。
「なぜだ、ホル・ホース!」
「見ろ!」
と残りの3人を指差した。
「俺以外の奴らは、5歳から9歳ってとこだ。あと1回攻撃をくらって10年若返れば、胎児まで戻って……死んじまう!」
「な……ッ」
「離れろ! 離れて戦ってくれ! あいつの意識がなくなってスタンドが消えれば元にもどる。それから……」
「それから?」
典明がホル・ホースを見つめると、ホル・ホースも真剣な表情で見つめ返した。
「オレたちは今はまだ元の記憶がのこっちゃいるが、そのうち知能も若返っちまう。そうするとオレはお前たちのことをも、どうしてここにいるのかも忘れちまうんだ。どっかいっちまうかもしれねえし、その状態で他の吸血鬼に襲われるかもしれねえ。お前一人に任せて悪いが、なるべく早く決着をつけてくれ」
「くッ……厄介なスタンド能力だな……」
「何をごちゃごちゃいってやがる!」
ゲオルグと名乗る男が怒鳴り、背後に土偶のような真っ黒のスタンドが現れた。「「「ッ!」」」
ゲオルグの降りてきた木の上から緑の触手がシュルシュルと伸びてきてゲオルグの足に巻き付くと、一気にゲオルグを引き上げた。
「なああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーー」
バンジージャンプのように木の上に飛び上がり、空中を飛んで、そのまま遠くの山の木々の間へ落ちていった。
花京院典明は、小さくなった仗助、涼子、ボインゴに、ホル・ホースを見て、
「ここで動かないで待っているんだ!いいな!すぐ戻るッ!」
と厳しい顔でいいきかせると、自らもハイエロファントグリーンの触手で遠く飛び立った。
ゲオルグの足には細い触手を結びつけておいた。それにより元の位置から500メートル以上離れた位置にゲオルグが落下したのが典明にはわかった。
生息している木々の倍以上の高さから落下したはずで、手足が折れ曲がりちぎれていた。しかし、頭は庇ったらしく、吸血鬼の肉体は急激に再生を始めていた。
典明は、触手を木の枝から枝に巻き付けて木から木に飛び移って移動し、ゲオルグの前に音もなく降り立った。
「てめえ……」
地面の上でちぎれた手足を繋げながら、ゲオルグがうめいた。
ゲオルグを見下ろし、花京院典明は言った。
「脳幹をぐちゃぐちゃに、だったな」
