見出し画像

3-8-④ 黒の囁き④

*注意*
本作は『ジョジョの奇妙な冒険』および『クレイジー・Dの悪霊的失恋』をもとにした非公式の二次創作です。
原作および出版社とは一切関係ありません
おもいっきりネタバレしています!!!

目次  前書き&注意点  前の話(3-8-③ 黒の囁き③)


「……こ……これはッ……」

仮頼宿裕仁のスタンド・メジェド神の感情増幅攻撃を受けて、ホル・ホース、ボインゴは笑いながら動かなくなり、仗助と涼子は突っ伏して動かなくなった。
そこへ100体以上はいるであろうゾンビが一斉に襲いかかってきた。
大仁の”研究”の成果なのか、今までのゾンビたちより体が大きいもの、手足が複数あるものや、動きが素早く力が強いものが多かった。
花京院典明はハイエロファントグリーンを出現させて、伸ばした触手とエメラルドスプラッシュで4人を守りつつ応対していたが、数が多く苦戦していた。スタンド攻撃を受けても回復が早くすぐに立ち上がって向かってくる。動きも早く、狙って延髄を破壊するのは困難だった。

木の上の大仁は勝利を確信して笑っていた。
「もうよい、花京院典明よ。……消えよ。首を落としたスタンド使いたちの体は、儂が有意義に使ってやる」
「……クッ!」

その時、鸚鵡のサルジュが空に舞い、翼を広げた。
背後に、鳥のスタンド・イシス女神が現れた。

キイイイイイイイイーーー

鸚鵡の鳴き声があたりに響き渡った。
突然、ホル・ホースたちもゾンビたちも笑うのも動くのもぴたりとやめ、何かを抱えるような姿勢で立ち尽くしてしまった。

典明は、一体何が起こったのか分からず、困惑して辺りを見渡すと、突っ伏していた涼子がゆっくりと立ち上がった。
骨壷をしっかりと握りしめて、大きな丸い瞳から涙を流し、それでも木の上の大仁をしっかりと見据えていた。
サルジュがその肩に降り立った。
木の上で余裕の笑みを浮かべていた大仁から笑顔が消え、雪の上に飛び降りて涼子を睨みつけた。
「貴様、イシス女神と同期して……この儂のメジェド神に抗おうというのかッ!記憶と感覚によって儂の与えた感情を凌駕するつもりかッ!!」
「悲しい……でも……でも、こんなの本当の悲しみじゃあ、ない。私は、私はこの10年、ずっと、もっとずっと悲しかった! それに比べれば……こんなの、ただのまやかしよ!!」
「黙れえええええッ! 分家の小娘がああああああーーーッ!!」

典明には感じ取れないが、仮頼宿大仁の感情を増幅させるスタンドに対し、涼子はサルジュの記憶のスタンドを操って対抗し始めたようだ。
イシス女神は記憶を再現するスタンドであるが、記憶と共にその時の感覚──視覚聴覚嗅覚触覚も再現し追体験させる。
涼子は、感覚を体験させることによって、そこから別の感情を揺り起こし、メジェド神からの感情を塗り替えようとしているのだ。

大仁と涼子が向かい合って睨み合った。

すると鳥型のスタンド・イシス女神が、霞と涼子たちの間に降り立ち、映画のフィルムのリールの束でできた羽を、羽ばたかせた。
大仁の体から、映画のフィルムのようなものが現れて伸び、イシス女神のリールに巻き取られていった。1本から、2本、3本と、その数は徐々に増えていく。

「なッ……!」
大仁は細い目を見開いた。

涼子は目を閉じた。

遠い昔の風景が見える。

幼い子供が2人、和風の庭で鞠をついて遊んでいる。
擦り切れた和服に、揃いのおかっぱの子供たちは、顔立ちもよく似て、姉と弟のようだ。
──「かーごめーかごめー、かーごのなーかのとーりーはー」
──「ふふふ、大仁は鞠つきお上手ねえ。」
──「ふふー。あねぎみー」
──「あらあら、甘えん坊さんだこと。貴方はこの仮頼宿家の跡取り息子なのよ。」
──「あねぎみーだいすきー」
──「はいはい」

長い黒髪の女性が白い浴衣の寝巻きで床に伏せている。
袖から覗く細い腕やこけた顔には、包帯が幾重にも巻かれ、その隙間からは赤く痛々しい爛れた皮膚が見えていた。
細い手を握ると微かにこちらに顔を向け、視線が合う。
苦しげな呼吸は途切れ途切れで、今にも止まってしまいそうだった。
──「姉君……姉君!駄目……駄目です!いっては駄目です!私の研究がこの我が家の病を打ち消して見せます!だから……だから今ひとときッ!」
──「……ひろ……ひと……。よい……のです……これも仮頼宿の……血の定め……これが運命……。其方の……研究は……この家の……世のために……」
──「駄目だ!そんな……そんな運命なんて、私は認めない!!姉君!どうか、どうか目を!いくな、いくな、姉君!!姉君いいいいいいいいーーーー!!!」

鏡にうつった仮頼宿大仁の姿が見える。
先ほどの女性と同じような白い浴衣の寝巻きを着て、平安時代の姫君のような髪型をした黒髪をした、切れ長の目の男が、鏡に向かって微笑んでいる。
──「いかがです? 姉君と同じ服を着て同じ髪型にしました。やはり儂らは姉弟、よく似ている。鏡を見るとまるで姉君がいるよう、姉君が私に微笑んでいるようだ」
大仁はにこりを笑って口から牙を出した。そして、右手で鏡に映った自分をそっと撫でた。
──「儂は病を克服した。我が仮頼宿の病を打ち消した。今度は貴女だ、姉君。この吸血鬼の血の力と、手に入れた新しい力で、もう一度……もう一度貴女を……」
大仁は白い骨壷を取り出すと愛おしそうに抱きしめ頬擦りをした。

「やめろおおおおおおおおおおおおーーーーーーーーッ!!!!」
現実の大仁が絶叫した。

「やめろお!儂の記憶を見るなあああああーーーーッ!儂の記憶を奪うなあーーーッ!!儂と姉君の思い出を返せえええええええーーーーッ!!!」
目を開いた涼子は、悲しそうな表情で大仁を見た。

(……典明お兄ちゃんと同じ髪型同じイヤリング同じ腕時計。鏡を見ると典明お兄ちゃんがいるみたいだった。でも──)

「……貴方の気持ちはわかる。でも……」
「黙れ」
「でも」
涼子は両手を握りしめ、涙を浮かべながら、大仁にいった。

「でも、死んだ人間は生き返らないのよ!」
「黙れええええええええええええええーーーーーーーーッ!!!」

紫の霞が一気に涼子の周りに集まり、襲い掛かってきた。
「ッ!」
涼子は怯んで目をつぶったが何も起きなかった。
「?」
そっと目を開けると、目の前に緑の格子が立ち上がって、紫の霞を防いでいた。
「これは……」
緑の格子は鳥籠のように涼子の周りを地面まですっぽり覆っていた。地面からさらに緑の蔓が伸びていき、仗助、ホル・ホース、ボインゴの元へ到達した。3人はそれぞれ、誰かに向かって微笑みかけるように、空中の一点を見つめて立っていた。彼らの周囲にもすっぽりと包むように緑の網が立ち上がり、彼らの体を囲った。

「それでいい、涼子ちゃん。」
花京院典明が涼子の傍にきていた。
「ありがとう、助かったよ」
少し微笑んで涼子に言うと、まっすぐに大仁を見据えた。

4人を緑の鳥籠が包み、下から伸びる緑の蔓が、白い地面の上に魔法陣のような模様を描いた。
その魔法陣の外周から、さらに大きな緑の鳥籠が地面から立ち上っていった。
100体以上の立ち尽くしたゾンビが全てその中に入っている。

「……これは」
「……ハイエロファントの結界」
大仁と涼子が見上げるうちに、緑の巨大な結界が、その頂を閉じた。
「くそッ!」
大仁は紫の霞で自分の周囲を覆い尽くした。

そして。

仮頼宿一樹は誰かと握手しているような動作をしていた。
承太郎、といいながら。
うれしそうに楽しそうに、悔しそうに悲しそうに。
その一樹を紫の霞が覆い隠すのを横目に見て、典明は正面を見据えた。

(今度こそ……ッ)

「くらえッ!ゾンビども!
半径30メートル、エメラルドスプラッシュをーーーーッ!」

まばゆい宝石が、ハイエロファントの結界の中を無数に飛び交った。

満月の光を浴び緑に輝くエメラルドが、次々とゾンビを打ち倒していった。


次の話(3-9-① 超春満月①)  
目次  前の話(3-8-③ 黒の囁き③)

いいなと思ったら応援しよう!