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1-1-④ 悪霊の街、スタンド使いの挨拶④

*注意*
本作は『ジョジョの奇妙な冒険』および『クレイジー・Dの悪霊的失恋』をもとにした非公式の二次創作です。
原作および出版社とは一切関係ありません
おもいっきりネタバレしています!!!


目次  前書き&注意点  前の話(1-1-③ 悪霊の街、スタンド使いの挨拶③)


「で、あんた。今度はボインゴに何を手伝わせるんだい?」
煙を吐き出しながらマライアが話を変えると、
「……オウム……」
ずっと黙ってコーヒーを飲んでいたボインゴが、ボソッと答えた。

「おーボインゴ! もう予言で知ってたんだな! ありがてーぜ! よろしく頼むな!」
昔よりだいぶ成長して大人になったボインゴだが、150cmぐらいの小柄な身長を亀のように丸め、テーブルのすぐ上にあった顔だけあげて、ホル・ホースを不満げに見返した。
「予言は絶対です……ボクがあなたの鸚鵡探しに付き合うという予言はもう印刷されてしまいました……変えられません……どんなにボクがいきたくなくても、ボクは鸚鵡探しに付き合うしかないんです……」

「おうむ?」
「ああ、アミラばあさんの頼みでよお。マリクの母親の。覚えてるか、10年前、鳥使いやってた……」
「ああ、いたね、そんな坊やが」
「坊やって……お前と同じ年ぐらいだったぞ、あいつ」

10年前、ホル・ホースたちスタンド使いを集めていた”あの男”は、スタンド使い以外の人間も多く従えていた。そのうちの1人が鳥の調教師のマリクという男だった。
彼は”あの男”に逆らって鳥を逃がそうとし、殺され、死んだ。
それから10年経った先月。
ホル・ホースに、息子を亡くした母親が依頼をしてきた。息子の形見の鸚鵡が籠ごといなくなってしまった、盗まれたから探してくれ、というのだ。

──あんた、息子の元同僚だろう? 鸚鵡を探して連れ戻しておくれよッ 鳥が盗まれたぐらいでエジプトの警察は動いてくれないんだようッ
──SPW財団の奴らが今も時々ここへ来るんだろう? なら連中に頼めよ
──危険だと判断されたら、あいつらはきっと鸚鵡を殺しちまうよッ 

年老いた母親は、息子が調教していた鸚鵡と隼と一緒に映る写真を、ホル・ホースに見せた。
10年以上前に撮られた写真は、色褪せながらも大事に大事に保管されたものだった。

──息子が殺されてこの10年、あの子が儂の子供だったんだよッ

”世界一女に優しい男”を自称するホル・ホースは、女の涙に弱い。たとえ老婆でも涙ながらに泣きつかれては断れなかった。
それに、マリクに調教されていた鳥ということなら、おそらくは──

「……で、仕方なくよ」

エジプト内の”独自のネットワーク”を駆使してあちこち当たってはみたものの、鳥籠を持った泥棒の情報は全くなかった。裏ルートの売買も当たってみたがこっちもスカ。

また予言に頼るしかないか、と、ボインゴの家にいったら、兄貴のオインゴが暗い顔をして出てきた。
弟はいない、多分”館”だ、というので、こっちへやってきたのだ。

「しかし、ミドラーがよりによってオインゴを選ぶとはなあー。オレという男がいながらよお」
「フフフ。まあ、あの娘にしてはいい選択だったじゃあないの。」
「あんな不細工のどぉこがいいんだ? 喧嘩だってたいして強くねえし、泣き虫だしよお」
「何言ってんだい、なかなかの優良物件じゃあないか。10歳下の弟の面倒をずっとみてきて生活家事全般できて手先も器用。今はミュージカル俳優とやらで真っ当に生活できてるんだろう? 背は高いしスタイルもまあ悪くない。顔はまあアレだけど、」
あいつに顔は関係ないだろう、世界一のハンサムにもなれるんだから、とマライアが付け足し、
「まあなあ」
とホル・ホースが応じた。

ボインゴの兄オインゴもスタンド使いだ。
オインゴのスタンド・クヌム神は、見た目も声も匂いも自在に変えられる変身のスタンドだ。
ただし中身まで変わるわけではないので、本人の演技力が不可欠だった。
その経験を活かして、10年前の敗北の後、オインゴは、なんと俳優に転身した。
ホル・ホースも一度彼の出演している舞台を見にいったが、演技もそこそこだったし、何より歌が上手で驚いたものだ。

この兄弟は、10歳違いで、スタンド能力で金を稼ぎ、2人で助け合いながら生きてきた。あの戦いの後、SPW財団がボインゴの学校の支援をしてくれるようになり、オインゴは財団の依頼の仕事で時折金を稼ぎながら、真っ当な世界に戻っていった。
そのオインゴが今度結婚することになった。
それ自体はめでたいことなのだが、相手は昔の仕事仲間のミドラーだったので、またまた驚いた。
ミドラーのスタンド・ハイプリエステスも実体を持ち、色々な物に化けることができるというもの。
オインゴのスタンドと同じく潜入調査に適したスタンドだったため、この10年財団の依頼で一緒に仕事を組むことが多く、親しくなったのだという。

「あっちこっち浮気してる宿なしより、オインゴの方がずーーーーッとマシさ。」とマライアは笑って続けた。
「それに、ミドラーだって30過ぎちまった。焦ってんだよ、あの娘もさ」
ミドラーはスタイル抜群の美人だが、いかんせん性格に難がある。
「ま、餅は餅屋。スタンド使いはスタンド使いってね。」
とマライアはタバコをテーブルので揉み消した。

「で、こいつはおっかないミドラーお義姉さまの弟にはなりたくねえって、家出少年ってワケか。」
ホル・ホースはボインゴを指差し、ボインゴはそっぽを向いた。

「いい加減祝ってやったらどうだい、拗ねてないでさ」
マライアは2本目のタバコに火をつけながら、少し優しい声でボインゴにいった。
「…………」
「そうだぜ、ボインゴ。もうおめえも19なんだから兄離れってやつをして、自分もカワイイ女の子を見つけろや。ミドラーより美人で若い娘をさー なんならオレが紹介してやろうか? 今回の礼によお」
「……要りません……」
「ったく、おめえはよお」
ホル・ホースが笑いながらいうと、マライアがタバコの煙ごしに、じろりと睨んだ。
「あんただってフラフラしてるくせに、人のこと言えないだろう」
と今度はこっちに飛び火してしまった。

「オレの恋人は世界中にいるからよお~ 誰か1人に決めちまったらみんなを泣かせちまうだろう~ かわいそうじゃあねえか」
「いい加減、あんたも歳なんだから身を固めたらどうだい。女の寝床をフラフラできるのは若いうちだけだよ。年取った金なし宿なし男に用はないんだから。」
「う……うるせえよ……」
痛いところをつかれて、ホル・ホースは口ごもった。

ホル・ホースは、この冬に39になった。
自慢の金の間に白を見つけて凹んだのはつい先日だ。どことは言わないが。
朝疲れが抜けずに女に起こされることも多くなった。

「いいんだよッオレはッ! とにかく頼まれちまった鸚鵡を探しにいかなきゃなんだから!」
ホル・ホースは強引に話を変えると、立ち上がってボインゴの正面に移動した。
「おい、ボインゴッ! それでどこにいるんだよ、その鸚鵡はよおッ 予言に出てるんだろう?」
ボインゴはいかにも不精不精という感じで膝に乗せていた本をみせた。

表紙には、
”OINGO BOINGO BROTHERS  ADVENTURE”
と英語のタイトルが書かれ、その下に2人の人物が描かれている。右に帽子を被った背の高い男性の姿で、左側にはその半分ぐらいの身長のボリュームのある髪型の男が描かれ、それぞれオインゴとボインゴを表している。左上には顔のついた太陽のようなイラストも添えられており、いずれも輪郭から飛び出しそうな口にどこを見ているのかわからない目でシュールな描写をされていた。

本を開くと、漫画のコマ割りが浮かんだ。
大きなコマにボインゴのイラストが描かれ、吹き出しで「ケケ」と笑っているのか嘆いているのかわからない発言をしていた。左右に文章が添えられている。

《ぼくボインゴ! ぼくはいまとっても不安!》

次のコマには、ボインゴの横に帽子を被った人物のイラストが描かれている。ホル・ホースと同じ帽子を被っているところから、ホル・ホースのイラストなんだろうが、なぜか目つきの悪い両目が帽子の上についている。

《だってオウムなんかを探すために あのホル・ホースとまたコンビで旅に出るなんて!》

(ハンサムなオレをこんなに描きやがって……)

ホル・ホースは文句を言いたくなるのをグッと堪えた。
ボインゴのスタンド・トト神は、他のスタンドと違って、持ち主のボインゴが自由に動かすことができない。口調こそボインゴの味方のようだが、内容も絵柄も、ボインゴの自由にできず、予言の結果起こる結果もボインゴにとって良い結果になるとは限らなかったりする。ボインゴの未来の予言を基本としているが、未来を変えるスタンドではなく、確実に起こることを少し早く、しかも不十分な情報で示すに過ぎない。

 《しかもぼくらの向かうさきは 聞いたこともないおかしな名前の街だ!

 その街の名前は──》

「モリオーチョーーー?!!」

「……はい……」
「ニッポンだと? そんな遠くに鸚鵡がいるっつーのかよ!」
「……鸚鵡がいるかはわかりませんが、ボクとあなたは日本の杜王町という街に行くのです……ハイ……」
「ふ……ふざけんじゃあねえぞ!」
ついに、切れたホル・ホースは、ボインゴの胸ぐらを掴んでゆすぶった。
「ニッポンなんて行けるかよ!アミラにもらった金じゃあ、全然足りねえ、超赤字じゃあねえか!」
「ボ……ボクに言われても、ボクだって行きたくないのです……でも、予言は絶対なのです!運命なんです!……」

ちっ、と舌打ちしたホル・ホースは、ボインゴを突き飛ばすように離し、財布の中を確認しようと、右手を尻のポケットに入れ、左手をテーブルに乗せた。
左手の下にバチンと刺激を感じて見下ろすと、さっきはなかったコンセントが出現していた。
「な……ッ!」

マライアがタバコの煙を吐き出した。



次の話(1-2 典明お兄ちゃんの記憶)  
目次 前の話(1-1-③ 悪霊の街、スタンド使いの挨拶③)

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