「周防大島の空気」を探して。私の中の景色が変わるまで
「周防大島の空気や自然を感じてほしい」「周防大島での生活を綴ったエッセイはいかがです?」私が取材で出会った人たちの言葉です。
今年の夏、周防大島へ行ってみよう。
そう考えたのは、私の中に「周防大島の空気や自然」の景色が、どうしても浮かばなかったからです。自分が書いた言葉がうわっ滑りしている。
おすすめされた『ダンス・イン・ザ・ファーム』を読んだときもそうでした。どこか遠い場所の出来事のような気がする。
瀬戸内海で2番目に大きな島「周防大島」は、私の住む周南市からは車でおよそ1時間20分。近いけれど遠い島というのが私のイメージです。
反対に広島に住んでいた頃は、もっと身近でした。実は広島市内から周防大島までの移動時間は、周南市からと変わらない1時間20分程度。
広島のテレビ局も情報番組で取り上げる。仕事をすれば周防大島出身の人に出会う。実際に山口県周防大島町は広島市を中心とする「広島広域都市圏」に加入しています。
同じ山口県の周南市より広島市にいる方が、飛び込んでくる情報は多い気がするのです。
最後に周防大島を訪れたのはもう20数年前です。「今の周防大島を見てみよう」と土曜日に出かけました。

いやもう広かった。大島大橋を渡り島へ着いてからが長かった。さすが「大島」。ちなみに「大島」は通称で、正式名称は「屋代島」です。
本当は南側を巡って、島をぐるっと1周したかったのだけど。多分道が狭くてくねくねしてるはず。
マップを見ながら「うーん」と悩み、厳島神社で引き返しました。

地元の人が地家室方面へ向かうのを、厳島神社の鳥居の前からじっと見ていたのです。反対方向から、車が山道ですれ違うのを待っているのが見えたから。
「これは疲れがでない良い季節に、最初から南側を目指して来ないと無理だな」というのが、行き交う車を見ての感想です。

目的の「周防大島の空気や自然」をつかめたのか…正直に言って「島が大きい。確かにいろんな山も海もある」という感想しか今回はなかった。
今朝、『ダンス・イン・ザ・ファーム』の最後の章を読みながら、土曜日に見た景色が頭に浮かびました。
それは島の先端にある伊保田港に向かう途中で見た光景です。
地元の海岸線でした。沖合にはテトラポットが並んでいる。海岸線から突き出ている防波堤の上に、日傘を差したおばあさんが1人で座っていたのです。
日差しが照りつける午後1時過ぎでした。車は停車していない。歩いてきたのだろう。明かに地元の人だと思う。
その姿を、私はハンドルを握りながら見たのです。「どうしてこんな時間にこんなところへ」と。
理屈じゃないんだな。あれが「周防大島の空気と自然」だったんだ。
海でも山でもない。防波堤で海を眺める、ひとりのおばあさんの姿。
今朝『ダンス・イン・ザ・ファーム』を閉じたとき、やっと私の中にも周防大島の景色が生まれました。
*周防大島での暮らしを綴ったエッセイ『ダンス・イン・ザ・ファーム』はこちら↓
*今回訪れたきっかけとなった取材記事はこちら↓

