# 【現場編 #04】外注仕様書は、チームを守るためにも必要だった
前回、背景だけで全部やるのをやめた話を書いた。
286マップと言われたものを見直し、
実際に作るMayaデータ数は155マップまで減らした。
そして、ルート設計まで背景側で抱え込むのをやめた。
企画はゲーム内容を決める。
背景は、それを見た目として成立させる。
その分担を決めたうえで、私は外注向けの仕様書を作り始めた。
仕様書というと、
「作り方を書いた資料」だと思われるかもしれない。
もちろん、それは間違いではない。
どのツールを使うのか。
どのフォルダに何を入れるのか。
命名規則はどうするのか。
テクスチャはどう作るのか。
Unityではどう設定するのか。
外注先に作業してもらう以上、
こうした情報はすべて必要になる。
だが、現場で仕様書を書く目的はそれだけではない。
私にとって、この時の仕様書は、
単なる作業手順書ではなかった。
背景チームを守るための資料でもあった。
当時の私は、かなり高い確率でプロジェクト全体のリリースは遅れるだろうと思っていた。
背景だけの問題ではない。
インゲーム仕様も、イベントも、アウトゲームも、まだ不確定な要素が多すぎた。
だが、プロジェクトが遅れた時に、
「背景のデータ作成が遅かったからです」
と言われる状況だけは避けなければならなかった。
背景担当は、私と業務委託の方の二人だけである。
しかもインゲーム背景を実質的に捌くのは、ほぼ私一人になる。
この状態で、ルート設計も仕様決定も外注準備も品質管理も全部背景側で抱えてしまえば、どこかで破綻する。
そして破綻した時に、
「背景が遅い」
という話にされる。
それだけは避ける必要があった。
これは、誰かに責任を押し付けるための話ではない。
逆である。
誰が何を決めるのか。
誰が何を用意するのか。
背景は何を受け取れば作業に入れるのか。
それを明確にしておくための話である。
現場では、曖昧なまま進めた仕事ほど、後から揉める。
「そこは背景がやると思っていました」
「そのルートはまだ確定していません」
「やっぱりこっちに変えてください」
こうなった瞬間、量産体制は崩れる。
だから先に、責任範囲を整理する必要があった。
そこで私は、PMと企画に相談した。
「286マップを作るなら、ルート確定はそちらでお願いします」
という話である。
背景側でできるのは、
決まったルートを、見た目として成立させることだ。
だが、どこを通るのか。
どこで戦闘するのか。
どこで分岐するのか。
それはゲーム内容そのものであり、背景だけで決めるべきものではない。
だから、企画側でルートを決める。
そのルートをコリジョンマップとして作る。
背景は、それをもとに外注に出せる形へ落とし込む。
そういう流れにした。
そして、
「わかりました」
という返事をもらった。
この返事は大きかった。
これで、背景が作業に入るための前提が決まったからである。
ここからようやく、仕様書を書く意味が生まれる。
なぜなら、仕様書には
「何をどう作るか」だけではなく、
「何を受け取ったら作業できるのか」も書く必要があるからだ。
外注先に渡すものは何か。
コリジョンマップ。
コンセプト用のサンプルモデル。
Mayaデータ。
Unityデータ。
テクスチャ。
作成ルール。
チェック項目。
これらを揃えることで、初めて外注量産が成立する。
逆に言えば、これらが揃っていない状態で外注に投げても、ほぼ確実に崩れる。
仕様書は、親切だけで書くものではない。
もちろん、外注先が迷わないようにするための資料ではある。
だが同時に、
こちらが何を準備し、
どの前提で発注し、
どこまでを背景側の責任範囲とするのかを明確にする資料でもある。
つまり、仕様書は現場の防波堤である。
口頭だけで進めると、後からいくらでも話が変わる。
だが、資料として残しておけば、
「この前提で進めています」
「このデータをもとに作成してください」
「このルートは企画側で確定したものです」
と言える。
この状態を作ることが重要だった。
現場でリーダー的な立場に立つなら、
自分の作業だけを見ていては足りない。
自分のチームが、一方的に不利な立場にならないようにすることも仕事である。
誰かを責めるためではない。
チームを守るためだ。
作業を終わらせるためだ。
そして、後から
「背景が遅かったからです」
と言われないためである。
155マップを終わらせるために、
私が最初に作ろうとしたのは、単なる作業手順書ではなかった。
作り方を統一し、
外注先が迷わないようにし、
企画側の決定事項を前提として固定し、
背景チームがやるべき仕事に集中するための資料。
それが、外注向け仕様書だった。
次回は、
実際にその仕様書に何を書いたのか。
Maya編、Unity編、サンプルモデル、命名規則など、
外注量産を成立させるために用意したものについて書いていこうと思う。
