【現場編 #07】背景2人だけのチームで、片方が倒れても詰まないようにした話
前回、外注さんの初回提出を見て、
「これなら終わる」と思った話を書いた。
外注さんが仕様書を読み、
サンプルデータを見て、
こちらの意図に沿ってデータを作ってくれた。
その時点で、インゲーム背景の量産にはかなり手応えがあった。
だが、それで安心できたわけではない。
なぜなら、社内の背景担当は二人しかいなかったからだ。
私と、業務委託の方。
本当にそれだけである。
外注量産がうまく回れば、
155マップ分のインゲーム背景は、なんとか量産できる。
だが、背景の仕事はインゲームだけではない。
当時は、アウトゲーム側の背景も必要だった。
ワールドマップ周り。
ホーム画面周り。
ガチャ演出周り。
そういった、ゲーム内のメニューや演出に関わる背景も作る必要があった。
しかも、このあたりはまだ仕様が固まりきっていない部分も多かった。
つまり、外注さんにそのまま投げるのが難しい。
仕様が決まっていないものは、外に出しづらい。
あとから変わる可能性が高いものは、社内で様子見ながら進めるしかない。
そこで、背景内の担当を分けることにした。
インゲーム背景は私が見る。
アウトゲーム背景は、業務委託の方に任せる。
これが、一番自然な分け方だった。
私はすでにインゲーム背景の見た目を調整しており、
外注向け仕様書やサンプルデータも自分で作っていた。
だから、インゲーム側の量産管理は私が見る。
一方で、アウトゲーム側は未確定要素が多く、
仕様が固まり次第、社内で柔軟に対応する必要があった。
そこは、業務委託の方にお願いする。
この分担自体は、かなりスムーズに決まったと思う。
ただし、ここで一つだけ重要なことがある。
担当は分けた。
だが、情報は分けなかった。
少人数チームで一番危ないのは、
作業が属人化することである。
「それはあの人しか知らない」
「その仕様は担当者しか分からない」
「今日は担当者がいないので答えられません」
この状態になると、
たった二人のチームは一瞬で詰む。
二人しかいないのだ。
どちらか一人が休んだだけで、
背景の確認が止まる。
どちらか一人が体調を崩しただけで、
別部署からの質問に答えられなくなる。
それはあまりにも危険だった。
だから私たちは、
担当は分けても、情報は共有することにした。
具体的には、背景に関わるミーティングには、
インゲーム、アウトゲームの区別なく、基本的に二人とも出るようにした。
自分の担当ではない話でも、最低限は聞いておく。
今、何が決まっているのか。
何がまだ決まっていないのか。
どの部署がボールを持っているのか。
いつまでに決まらないと作業に入れないのか。
こういう情報を、二人とも把握しておく必要があった。
完全に同じ作業ができる必要はない。
だが、何が進んでいて、何が止まっているのかは、
お互いに分かる状態にしておく必要があった。
毎朝の確認でも、それぞれの作業状況を共有していた。
たとえば、インゲーム側であれば、
「外注さんにこのロケーションを発注した」
「昨日Mayaデータが上がってきた」
「確認したところ大きな問題はなかった」
「次はUnity側の作業に入ってもらう」
「このペースなら、月末までにこのロケーションはゲーム内で確認できそう」
といった内容を共有する。
アウトゲーム側であれば、
「ワールドマップの仕様が決まった」
「ホーム画面で必要なオブジェクトが見えてきた」
「ガチャ画面はまだ演出が決まっていない」
「この日までに内容が決まらないと、背景側は作業に入れない」
といった内容を共有する。
こうして、インゲームとアウトゲームの進行を、
背景内だけでなく、PMとも確認していた。
この時に大事だったのは、
単に「進捗を報告すること」ではない。
危ないところを早めに見つけることである。
たとえば、アウトゲーム側の仕様がまだ決まっていないなら、
そのまま待っているだけでは危険である。
「いつまでに決まらないと作れません」
と先に伝える必要がある。
背景は、仕様が決まってから作る。
だから、仕様が決まらないなら、
その遅れは背景だけの問題ではない。
この線引きを、毎朝の確認で少しずつ共有していた。
もう一つ決めていたことがある。
片方が不在の時の対応である。
別部署から、
「〇〇の背景って今どうなっていますか?」
と聞かれることがある。
その時に、
「担当者がいないので分かりません」
で終わらせるのは、できるだけ避けたかった。
もちろん、分からないことを勝手に答えるのは危険である。
だが、完全に止めてしまうのも良くない。
だから、分かる範囲で答えることにした。
たとえば、
「私の認識では、今は〇〇の予定です。
ただ、正確な回答は担当者が出社してから確認して、改めて返答します」
という形である。
これなら、相手を完全には止めない。
だが、勝手に確定情報として扱われることも避けられる。
担当者が戻ったら、必ず確認する。
必要であれば、改めて報告する。
この流れを徹底した。
少人数チームでは、
「知らない」で止まることがかなり危ない。
だが同時に、
「なんとなく知っている」で勝手に答えるのも危ない。
必要なのは、
分かる範囲と分からない範囲を分けて伝えることである。
これは、単に情報共有のためだけではない。
担当者を守るためでもある。
誰が何を決めたのか。
どこまでが決まっていて、どこから先が未確定なのか。
その情報が曖昧なまま進むと、あとで問題が起きた時に、
「背景が把握していなかった」
「担当者が止めていた」
「確認が遅かった」
という話にされてしまうことがある。
だからこそ、担当者が不在の時でも、
勝手に確定回答はしない。
だが、分かる範囲の状況は共有する。
そして必ず本人に確認を戻す。
この対応は、作業を止めないためであり、
担当者の責任範囲を守るためでもあった。
地味ではあるが、かなり重要だった。
また、万一どちらかの作業があふれた場合に備えて、
最低限、お互いの仕様は把握しておくようにした。
もちろん、完全に代われるわけではない。
インゲーム背景の外注管理を、
そのまま業務委託の方に丸ごと引き継げるわけではない。
アウトゲーム側の細かい仕様を、
私がすぐに全部判断できるわけでもない。
だが、何をしているかが分かっていれば、
最低限のフォローはできる。
誰に確認すればいいのか。
どの資料を見ればいいのか。
どの作業が止まるとまずいのか。
これが分かっているだけでも、
現場の止まり方はかなり違う。
二人しかいないチームでは、
一人が倒れたら終わる。
これは冗談ではなく、本当にそうだった。
だから、倒れないように頑張るだけでは足りない。
倒れても、いきなり全部が止まらない状態を作る必要があった。
そのために、
担当は分ける。
情報は共有する。
不在時の返答ルールを決める。
最低限、相手の作業内容も把握しておく。
このあたりを、かなり意識していた。
現場ではよく、
「少人数だから仕方ない」
という言い方をする。
もちろん、少人数ではできることに限界がある。
だが、少人数だからこそ、
仕組みで守れる部分もある。
情報を一人に閉じない。
確認経路を作っておく。
どこまで分かっていて、どこから先は担当者確認なのかを明確にする。
これだけでも、チームの耐久力はかなり変わる。
155マップを終わらせるために必要だったのは、
外注さんの力だけではなかった。
社内の背景チームが、
ちゃんと回り続けることも必要だった。
そのために、私たちは担当を分けた。
だが、情報は分けなかった。
インゲームとアウトゲーム。
担当作業は違っていても、
同じ背景チームとして、お互いの状況は把握しておく。
それが、二人しかいない背景チームを守るための最低限の仕組みだった。
少人数チームでは、
作業スピードだけでは足りない。
誰が何を知っているのか。
誰が不在でも、どこまで答えられるのか。
どの情報を共有しておくべきなのか。
そこまで含めて、チーム運用である。
背景制作は、モデルを作るだけの仕事ではない。
チームが止まらないようにすることも、
現場では大事な仕事なのである。
次回は、
外注さんから上がってきたデータを、
実際にどのようにチェックしていたのかを書いていこうと思う。
Mayaデータで何を見ていたのか。
Unity上で何を確認していたのか。
どのように修正指示を返していたのか。
一日最大20ルート分を確認していた時の話である。
