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美術鑑賞のときに意識していること、何が楽しいのかを言語化してみた


美術鑑賞って何が面白いの?と聞かれることがたまにあります。

美術作品を観てもどこに注目すればいいのかが分からないという感覚は、

美術鑑賞を始めたばかりの人だけでなく、ある程度見てきた人にも共通しているのではないでしょうか。

今回はいち美術好きとして、美術鑑賞の時に自分が何を考えているのか、何が楽しいのかを言語化してみようと思います。

① 自分の知識と照らし合わせてみる

まず最初にするのは、目の前の作品について自分の知識と照らし合わせてみることです。

何が描かれているのか。
描かれた時代はいつ頃か。
作者は誰で、どの地域の人なのか。
どんな色が使われているのか。
構図にはどんな特徴があるのか。
素材は何が使われているのか。

色々と列挙してみましたが、これらが一目ですべてわかるわけではありません。
むしろ分からないことだらけです。分からないことがスタート地点ですね。

こちらのレンブラントの作品『The Syndics of the Drapers’ Guild(毛織物商組合の幹部たち)』を例にしてみましょう。

黒い服を着た男性たちの集団肖像画だな、
集団肖像画といえば17世紀ごろのオランダだな、
オランダ集団肖像画といえばレンブラントだな、
人物がみんなこちらを向いている構図だな、
服の黒と襟の白が印象に残るな・・・

といった具合で、自分の知識を連想ゲームのように繋げながら考えてみるのが面白いですね。

② 解説文を読んでみる

最初の印象でなんとなくのイメージをしてから、解説文を読んでみます。
※①からスタートするとより深く楽しめますが、観ても何が何だか分からない作品は②からスタートしたほうがいいかもしれません。

こちらは先ほどのレンブラントの作品の解説文です。

After suffering financial difficulties in the 1650s, Rembrandt moved to a rental house on the Rozengracht. The Amsterdam élite no longer knocked on his door as often as they had done before.

He nevertheless remained popular: this important guild commissioned him to paint a group portrait. Rembrandt produced a lively scene by having the wardens look up from their work as if interrupted by our arrival.

1650年代に経済的困難に見舞われた後、レンブラントはローゼングラハトの借家に移り住みました。かつてのようにアムステルダムの上流市民が彼のもとを頻繁に訪れることはなくなりました。

それでもなお、彼の人気が失われたわけではありません。この重要なギルドは、彼に集団肖像画の制作を依頼しました。レンブラントは、私たちが部屋に入ってきた瞬間に作業の手を止めたかのように、監督役たちが顔を上げる場面を描くことで、生き生きとした一場面を生み出しています。

https://www.rijksmuseum.nl/en/collection/object/The-Sampling-Officials-of-the-Amsterdam-Drapers-Guild-Known-as-The-Syndics--575b43f479d021359fb5f63b32f7c234

こちらを読むと、画中の人物が全員こちらを見ている構図が、この絵に緊張感や動きを与えていることが分かります。

また、この作品を描いたころにはレンブラントの人気は全盛期を過ぎていたことも読み取れますね。

解説文を読んでみると、「正直、全然理解できていなかったな」と感じることも多々あります。

自分が注目していた点がまったく触れられていなかったり、逆に、まったく気づかなかった要素が重要だと書かれていたりします。

一方で、自分が考えていたことと解説の内容が部分的に合致していると楽しいですね。

このズレと重なりの両方を楽しむのが、美術鑑賞の面白いところだと思います。

注意すべき点があるとすれば、解説文=絶対の正解とするクイズではないという点でしょうか。

作品に対する感じ方や解釈には幅があるので、解説文と異なるからといって必ずしも否定されるべきものではありません。

③ 最近はChatGPTに聞く

最近は、①と②を経て頭に浮かんできた疑問や考えを、ChatGPTに投げてみることもあります。

いわゆる「壁打ち」のような使い方です。

ここで意識しているのは、答えをもらうことではなく、考えを整理することです。

自分が何を分かっていて、何が分かっていないのかを言葉にする過程で、
思考が少しずつ整理されていきます。

先ほどのレンブラントの作品で考えてみると、例えば以下のような質問を投げかけてみると思います。

・レンブラントの集団肖像画といえば『夜警』が有名だが、同じ集団肖像画でもこの作品はどう違うのか?『夜警』と比べるとかなり落ち着いた印象だが、その違いの理由は何か?

・レンブラントは他の作品ではどのような構図、描き方の工夫をしているのか

・なぜこのギルドはレンブラントに作品を依頼したのか?そもそも毛織物商組合って何?

ChatGPTの返答を読んで、「なるほど」と思うこともあれば、「そこまでしっくりこないな」と感じることもありますが、美術館で少し休憩がてら思索を深めるにはちょうどいいです。

ただし、Chat GPTは不正確な答えを織り交ぜてくることもしばしばあるので、正確に知りたいところは本や美術館のサイトなど他のソースでも確認しましょう。

何が楽しいのか?

①~③の過程を経る中で、自分がすでに知っていることと、知らなかったことが明らかになっていきます。

その結果、美術鑑賞を通じて新しく学んだことによって、これまで自分の中でつながっていなかった知識と知識が線でつながっていく感覚が非常に面白いです。

美術は社会、歴史、政治、経済、宗教、心理、哲学などありとあらゆる知識を横断する人間の営みなので、

美術鑑賞はそうした知識と知識をつなげていく感覚をほぼ無限に味わえる趣味なのではないかと思います。

ごく簡単な実践方法(ファーストステップ)

ここまで自分の美術鑑賞の楽しみ方を書いてきましたが、知識偏重な楽しみ方のため、ちょっと面倒そうだなと感じた方もおられるかもしれません。

なので、ファーストステップとしては、時間も労力も最小限に抑えるのがよいのではないでしょうか。

1) 美術館に行ったら、1作品だけ選ぶ
2) その作品の顔や手、色をざっと見る(2〜3分)
3) 「何をしているところだろう?」と頭の中で軽く想像する
4) 帰宅後、気になった作品の名前で簡単に検索して解説を読む
5) 「最初に思ったこと」と「解説」を比べてみる

これを繰り返すことで、少しずつ「知識と感覚を線でつなぐ」楽しみ方が身についてきます。

美術館のすべての作品で①~③の過程を経るのは相当しんどいですし、
私自身も正直そこまで出来ていません。1作品でもできたらもう全然十分です。

美術鑑賞は○○道のような修行でも苦行でもないので、自分が楽しいと思える、疲れたと感じない範囲で、このサイクルを気楽に回していくのが良いのかなと思います。

ここまでお読みいただきありがとうございました。今後も美術鑑賞に関する記事を発信していきます。

もし実践してみて気づいたことや質問があれば、コメントで教えていただけると嬉しいです。
よろしくお願いします。



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