【ドラクエ考察】勇者の「5分間睡眠説」。プレイヤーが愛した「昼夜システム」の変遷。
「ドラゴンクエストIII そして伝説へ…」
初めてプレイした時のことをよく覚えています。
フィールドを歩いていると、じわじわと画面が暗くなり、町に入るとあたりはすっかり「夜」の顔。
この「昼夜システム」を初めて体験した時、自分が本当にアリアハンの世界を歩いているかのような感覚になりました。
しかし、当時のFC版ドラクエ2にはなかった
「昼と夜」という時間の概念が生まれたことで、
当時のプレイヤーたちの間ではこんな素朴な疑問も浮かび上がっていたようです。
「宿屋に泊まらない時、勇者たちは一体どこで寝ているんだろう?」
いやそんなんプレイング次第じゃん。
というツッコミ衝動を抑えつつ今回は考察本
「ドラクエの秘密」で語られた
「勇者の睡眠事情」を紹介します。
そして、その後のナンバリング作品(DQ3〜DQ8)における「昼夜システム」の変遷と「夜」がプレイヤーに与えた感動とは何だったのかを振り返ってみたいと思います。
1. 「ドラクエの秘密」が迫る「勇者の超人すぎる野宿テクニック」
「ドラゴンクエストIII」や「IV」がファミコンの全盛期を飾っていた頃、一冊の考察本が発行されました。
高円寺ファミコン考察学会・著の
「ドラクエの秘密」です。
本書の中で面白かったのが、
「勇者たちは夜でも歩いていないと夜が明けないがいつ眠るのだろうか?」
という問いに対する考察でした。
広大なフィールドや、魔物がうごめくダンジョン。
宿屋に泊まれば一瞬で回復できるのですが、
何日も野宿なしで連戦を繰り広げる勇者一行の「睡眠事情」について、本書ではいくつかの仮説が立てられていました。
説①:不眠不休で旅を続けている(徹夜説)
1〜2日の短旅行ならともかく、何ヶ月も続く世界を救う旅において生理的に不可能です。
説②:歩きながら寝ている(夢遊病説)
フラフラ歩きながら意識を飛ばす説というビックリな説ですが、魔物が徘徊する危険な野外でこれをやれば、あっという間に全滅します。
割と荒唐無稽な考察や、斬新すぎる切り口の多い本書ですが、この2つの説には当時幼かったわたしも思わず苦笑いした記憶があります。
著者にその自覚があったのかどうかはわかりませんが、提示された結論は...
「5分間睡眠のような超短時間睡眠を繰り返し取っているのではないか」
というものでした。
これまたトンデモ理論きたよコレ。
...と思いきや、説得力の持たせ方が面白かったです。
ただ寝るだけではありません。
武術の達人のように「眠りながらも意識のどこかは起きており、敵が近づいて殺気を感じた瞬間に飛び起きる」
という特殊な第六感が働いているのです。
「武術の達人」というワードを出されたら、
いかに疑い深い少年ゆぱであっても納得せざるを得ませんでした。
武術の達人ってすげー
そして、幼少期からの厳しい修行と、
ロトや天空の血筋がもたらす超人的な身体能力。
当時は「DQ3」や「DQ4」が最新作だったからこそ「あの暗闇のフィールドで、勇者一行はそんな過酷なサバイバル術を駆使して旅してたのか!」
と妙に納得させられたものでした。
2.プレイヤーが愛した「昼夜システム」の変遷(DQ3〜DQ8)
勇者たちの「夜の過ごし方」に想像を膨らませてくれたこの昼夜システムですが、実はナンバリングの歴史を辿ると、一度姿を消していた時期があるのをご存知でしょうか。
◾️黄金期の「昼夜」(DQ3・DQ4・DQ5)
「DQ3」で導入された昼夜の概念は
「DQ4」「DQ5」へと引き継がれました。
夜にしか入れない場所、夜にしか現れないNPC。そして夜になると活発化する強力なモンスターたち。

このイベントにはドキドキさせられました。
昼と夜で二つの顔を持つ世界。
プレイヤーに「冒険の旅情」を強く感じさせてくれました。
◾️姿を消した「昼夜」(DQ6・DQ7)
しかし、スーパーファミコン後期の「DQ6」、
そしてプレイステーションで発売された「DQ7」では、なんとフィールド移動時のリアルタイムな昼夜変化が廃止されてしまいます。
(※シナリオやイベントによる時間変化のみ)。

普段は遭遇できないイベント仕様。
「夢と現実」「過去と現在」といった複雑な世界を描くゲームデザイン上の理由もあったと考えられますが、広大なフィールドをいくら歩いても時間が経過しないことに「時間の止まった寂しさ」を感じてしまいました。
◾️歓喜の「昼夜復活」(DQ8)
だからこそ、2004年に発売された
「ドラゴンクエストVIII 空と海と大地と呪われし姫君」で、見渡す限りの3D世界とともに
「フィールドの昼夜システム」が復活した時の感動は忘れられません。

地平線に夕日が沈み、やがて紫色の夜空へと変わり、遠くの街にぽつぽつと灯りがともる。
「DQ3」のファミコン画面で頭の中に思い描いていた「勇者が歩く夜の世界」が3Dグラフィックで目の前に広がった瞬間、胸が熱くなりました。
3. まとめ。「夜」があるからこそ、勇者の旅は輝く。
「勇者はいつどこで寝ているのか?」
という当時のおもしろ考察から、近年の作品に至るまで、ドラクエにおける「夜」は単なるグラフィックの切り替えではなかったのだと思います。
それは、プレイヤーが
「危険と隣り合わせの異世界を、勇者たちと共に旅している」と実感するための大切な演出だったのだと思います。
一晩中「死の恐怖」と戦い、仲間の亡骸を引く。
フィールドを彷徨い朝になり、ようやく辿り着いた街。その安堵の涙越しに見るからこそ朝日は輝いて見える。
こんな素晴らしい名言をかつてのわたしは残しているわけですが(自画自賛モード)その考えは今も変わりません。
5分間の超短時間睡眠で殺気に備えながら、
暗闇のフィールドを歩き続けた勇者たち。
グラフィックの進化から「DQ5」、DQ8」ではもう無理がありそうな説ですが、当時のファミコン版の「3」「4」のドット絵からこのような想像に胸をときめかせるのも非常に楽しい時間でした。
次にドラクエの夜のフィールドを歩く時は、
夜のBGMに耳を傾けながら、勇者パーティの逞しさに思いを馳せてみることにします。
【参考・出典】
書籍名:『ドラクエの秘密』
著者:高円寺ファミコン考察学会(1993年発行 / Data House)
