時計では表せない「時間」を探す(9回):ろうそくの「時間」
変化してやまないろうそくの炎には、不思議な魅力があります。
いつまでも見ていたい。
今回の記事は、ここに「時間」を探してみます。
1 ろうそくの炎の変化と「時間」
ろうそくの炎は、変化してやみません。
といっても私たちは、変化の細かな断片をパラパラと受け取るのではありません。
変化してやまないその変化を変化として捉えるのですが、また、持続する一つのまとまりをも感じとるようなのです。
ここに「時間」の出番がありそうに思います。

1)ろうそくの炎
ろうそくを立て火をつけ、何ということもなく、ろうそくの炎を見ます。
ろうそくの炎は、世のいそしみに疲れた私たちを別世界に引き込むようです。
このようなことにも、生き物としての定位があります。私たちは、周囲の絶え間ない変化の中から一つの現象(自分にとっての世界)を切り取ります。これをするのが定位ということでした。
2)ろうそくの炎の変化
ろうそくの炎を見ていて、次のようなことに気づきます。
🌱炎は絶え間なく変化し、同じ炎はない。
🌱炎の変化を予想することも操作することもできない。
3)変化の内に見る一つのまとまり
ろうそくの炎の絶え間ない変化の一方、この変化に、一つのまとまりを感じることができます。ここが肝心です。
この一つのまとまりの感じは、次のようなことからやってくるようです。
🌱物理的な一まとまり
「今燃焼しているこの1本のろうそくの炎」という事実があります。
目の前にあり、手に取ることもできるこのローソク。炎の始まりから炎の終わりまでの間、「このろうそくが同一のろうそくであること」は確かなことと思えます。
この確かさから、ろうそくの炎の一まとまり感がやってくるようです。
🌱自律性を感じることによる一まとまり
ろうそくの炎の変化には、どうかすると自律性があるように思えます。
実際には炎は、化学変化と室内の空気の動きによって変化しているのでしょう。でもそこに何か生き物の意志があるかのように思えるかもしれません。
そういったとき、ろうそくの炎の変化に一まとまり(一つの生き物の意志)を感じるのは自然なことでしょう。
🌱共通性などによる一まとまり
ろうそくの炎は確かに、いつ揺れるか、どのように揺れるかは予想できません。
けれど全体として、「炎は上へ延びること」や「ときに揺れること」という変化の共通性があります。
また、変化といっても爆発などは起きず、一定の範囲内にあります。
これらのことも、炎の様々な変化を一まとまりのものにしているのでしょう。
4)ろうそくの炎に探す「時間」
私たちは、絶え間なく変化するろうそくの炎を捉えながら、その一方で、その変化に一まとまりを感じるのでした。
改めて、次のように並べてみます。
・絶え間なく変化する個別の炎
・変化の一まとまり(同一性)
ここに、変化と同一性ということが出てきます。ろうそくの炎は「変化するのに同一」という相いれない事態なのです。
でも、「時間」の出番は、ここにありました。「同一性における変化」を成立させるのが「時間」だったのです。
a、b、c、d、e、f、g……というように変化する炎は、一つになることができません。個別の炎はそれぞれ異なっているので、形として一つに重ならないからでした。
しかし、A(a、b、c、d、e、f、g……)というように、一まとまりにくくることはできます。
このように「個別の異なったもの(変化)を一つのまとまり(同一性)にくくる」のが「時間」(厚みとしての時間)でした。
私たちは、「ろうそくの炎」という一まとまり(同一性)の内に、変化してやまない個別の炎を見続けるという体験をします。
こうしたとき、私たちの中に、静かな生きた「時間」が流れるのでした。
この「ろうそくの炎の時間」は、「河の流れの時間」とどこか似ています。
以前の記事を引用します。
ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。
有名な方丈記の冒頭ですが、「絶えずして」が同一性、「もとの水にあらず」が変化なので、ここにも「時間」が捉えられているようです。
2 付録(もう一つの「時間」)
ろうそくには、もう一つの「時間」があります。
「ろうそくの燃焼のプロセスと時間」です。
この時間を探すために、少し姿勢を変えます。ろうそくに近づき、視野を拡大するのです。切り取る世界が変わるのでした。
芯とその周辺がよく見え、燃焼のプロセスが分かってきます。

1)燃焼のプロセス

ろうそくは、次のプロセス(不可逆的な変化の一まとまり)によって燃焼します。
①火をつける。
↓
②個体のパラフィンが液化する。
↓
③液化したパラフィンは、芯の周りにたまり、浸透圧により芯を上る。
↓
④芯を上ったパラフィンは、炎の熱により気化する。
↓
⑤気化したパラフィンは、空気中の酸素と化合する。
↓
⑥この化合により炎が生じるとともに、その熱により上昇気流が生じ、炎が上へ延びる。
2)燃焼のプロセスと「時間」
燃焼は、一つのプロセスとして進行しました。つまり、その変化(個体→液体→気体→化合→炎)は、一つのプロセス(同一性)のもとにおける変化でした。
「次々変化していく同一性」として、ここにも「時間」があります
このプロセスが止まると、炎はどうなるのでしょう。
炎は静止するのではなく、消滅するのでした。このことも「時間」にはふさわしいことです。
3 参考
次の記事を参照いただければ幸いです。
定位
「時間」についての考察(8):「時間」にとって同一性とは何か?(「定位」から始める考察)
https://note.com/bright_hornet958/n/n6485509307ce?sub_rt=share_pw
変化、同一性
「時間」についての考察(5):「時間」とは何か
https://note.com/bright_hornet958/n/n87774606e3ef?sub_rt=share_pw
次の動画も参考にさせていただきました。
