時空を超えて‥‥小説(世流寝狐17)
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一瞬頭の中に、係長が出席している連絡会議の様子が浮かんだ。そして確信にぶつかる。そうだ、そうなのだ、篠田はそのことを知っていたのだ。あの食堂でのからかいようはきっとそうだ。
体からスッと血の気が引いていくのが分かった。と同時に夕闇の一部がちぎれて全身を包み込むと、再び闇に逃げ去ったように思えた。合志の膚は、舞う雪の冷たさを窓越しに感じ取っていた。
8
変わりばえのしない日報を記し重い足どりで署を出た。バスを降りて亀の井にあるアパートへ帰る途中、アパート近くの蕎麦屋に寄った。肩にかかった雪を払い落とし、コートを脇にかかえると、入ってすぐ左の椅子に腰かける。仕事が早く終わった時にはよくここで一服する。蕎麦の味ももちろんだが、ここを切り盛りしている夫婦を気に入っていた。家庭的な雰囲気が独り者の合志には、茶店でコーヒーを飲むより気が安まった。今日は特に厭な思いにかられた為か、ゆっくりくつろぎたかった。真実は明日確かめるとして冷えきった体だけでも早く温めなければと思った。
店内には、賑やかな家族連れやマンガに没頭しながら麺をすする学生、タバコを吹かしながら食べ終わった後の満足感に浸っているサラリーマンなど、七、八人の客がいた。合志はそのサラリーマンのうしろ姿が何となく自分に似てるなと思う。
よく見ると自分の右先にも客が一人いた。入った時には気付かなかったが、荒い毛糸編みのカーディガンを着た老婦が音も立てずに、いや音を立てるのを嫌うように背をまるめ素うどんを食べていた。そこだけ色と音から遮断され、別世界の様に見えた。余計な詮索だが、この寒い夜に共に食事をする家族はいないのだろうか、と合志は思う。そのうち老婦はお金を丼の横におくと、杖を頼りに静かに出て行く。追うように店主が礼を言ったが、その声は空しく店内に響いた。
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*週末に少しずつ投稿する予定です。作品はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。
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