相手の脳を騙したい
僕はよく「相手の脳を騙したい」という表現を使う。イメージは、マジックだ。マジックの場合、「視界には入っているはずなのに、見えていない(認識出来ていない)」みたいな状態になる。これに近いような形で僕は、「見えている情報通りの人物ではないように受け取ってもらうもらう」みたいなことが実現できるように振る舞っているつもりだ。
例えば僕は、「男」で「42歳」で「痩せて」いる、みたいな外的な情報があるし、あるいはもう少し僕のことに詳しい人なら、「昔書店で働いていた」とか「本とか映画にメッチャ触れてる」みたいな属性知ってくれていたりもするだろう。で、そういう「分かりやすい情報・属性通りの人物に見えないように振る舞う」ようにしているのだ。
例えばメチャクチャ分かりやすいところで言えば、僕は身長182cmで体重が60kgとかなり痩せているのだけど、思った以上にたくさん食べれる。さすがに今は昔ほどは食べれないが、僕がよく言うのは「わんこそばを168杯食べたことがある」という話。男性の平均は60杯ぐらいだそうで、盛岡にいた時に行った東屋という店では、100杯を超えると「たくさん食べましたね!」ということで木札が貰える。168杯は、ごく一般の人間としてはなかなかの記録なのだ。ちなみに、僕がわんこそばを食べている時に隣のテーブルに家族連れがいたのだが、彼らは既に食べ終わっているのに、「こいつ、何杯食べるんだ?」みたいな興味から、僕が食べ終わるまで帰らなかったぐらいである。
あと、よく意識していることは「(ごく一般的な)男には見られないようにすること」だ。「男なら普通、こういう時にはこうするよね」みたいなことを、まあやらない。それは、意識的にやらないようにしているのだ。以前、「『名前が付かない関係』だけでいい」という記事を書いたことがあるが、まさにそんな感じで、「『男として扱われない』ようにすることで、何とも表現しにくい関係性を目指している」のである。
僕にとってこの「相手の脳を騙す」というのは、「普通には成立しない関係性を成り立たせるための魔法」でもあるのだ。
「年上」とか「上司」とか「異性」とか、そういう「僕本人よりも前に出がちな属性」で見られていると、良いことは1つもない。だから僕はかなり早い段階でそういう「見られ方」を外すようにしている(上手くいっているかは分からないが)。なんとなくのイメージとしては、「相手が無意識の内にかけているサングラスを自然と外させる」みたいな感じだろうか。
みたいな話をすると、「それ、どうやってるの?」みたいに聞かれることもある。まあ、意識的にやっていることも無意識的に出来ていることもあると思うのでなんとも言えないが、1つ言えることは、「自分がどんな『属性』で見られているのか?」に対する意識は鋭敏でなければならない、ということだろう。特に男の場合、この点に関する認識が薄いことがとても多い。
例えばだが、「太っている人」が「ダイエット」について力説しても説得力はないだろう。まあ、これぐらいのことは誰だって分かるはずだが、同じような状況は結構見かける。「あなたのその『属性』でそんな『言動』をしても、本心だと受け取ってもらうのは無理だよ?」と。「属性(の見え方)」を変えるか「言動」を変えるかするしかないが、「言動」を変えたくないなら「属性(の見え方)」を変えるしかない。「相手の脳を騙す」というのは、そういうことだ。
前に「傾聴力」についての記事を書いたのだが、これもまさにそういう話である。「何でも話してくれたら聞くよ」みたいな態度が「傾聴力」だと思われがちだが、それって一休さんの「屏風から虎を出してくれたら捕まえますよ」みたいな話に近いと思っている。「いやいや、『屏風から虎を出すこと』が難しいんだよ」と相手が感じている可能性はあるだろう。だから僕は、「自分がべらべら喋ることで、相手に『自分も喋っていいかも』と思わせる」みたいなスタンスを「傾聴力」と呼んでいる。僕自身は、「こいつには何を話しても大丈夫そうだ」と思ってもらえることが多い気がしているんだけど、どうだろうか? 実際、昔付き合っていた人に、「長江さんは私がどんな話題(かなり変な人で、ぶっ飛んだ話題も多かった)を出しても何か返してくれるから凄い」と言われたことがある。
あるいは僕はよく「初対面感」という言葉を使う。これはそのまま「初対面っぽい感じ」という意味だ。例えば、「休みの日に何してるんですか?」という質問は、まさに「私たち、初対面ですよね?」とお互いに意識させるようなものである。だから僕は、初対面の相手ほどそういうことは聞かない。不躾にならない範囲で「さも、以前から知り合いだったかのような雰囲気」を相手に感じてもらおうと思っているのだ(上手く出来ているかは分からないが)。割とどんな場でも「ずっと前からいるみたいだね」みたいに思われることが多いので、それなりには成功しているとは思っている。
こういう話をすると、「そんなこと考えたこともなかった!」みたいな反応になることが結構多い。そしてその度に、僕は僕なりに驚いていたりする。他者をバカにする意図はないのだが、「僕としてはごく自然な発想なんだけどなぁ」という感じてしまうからだ。
ちなみに、この話に関連するかはちょっと微妙だが、この前嬉しかったことがあるので書いておこう。10歳以上年下の女友達と飲んでいる時に、僕が「つまらないオッサンになりたくない」みたいな話をしていたのだが、彼女が「つまらなくなってたら指摘しましょうか?」と言ってくれたのだ。マジで嬉しい。彼女は本当に言ってくれそうな人だし、加えて、僕がそれを本当に望んでいるということも理解してくれたのだと思う。こういう感じになれるためにも、「相手の脳を騙す」努力をしていると言っていいだろう。
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