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Xの「コミュニティノート」はまだ「わからない」ことも否定!?

X(旧Twitter)では、誤解を招く可能性があるポスト(ツイート)には「コミュニティノート」(間違いを指摘するポスト)が付くようになりました。IHR改正やパンデミック条約については、まだ決まっていないことに関しても否定するノートが付いています。まだ決まっていないことなのだから、肯定も否定もできないはずなのに、なぜ否定しようとするのでしょうか。


IHR改正に関する情報の錯綜

前回の記事で、IHR改正に関する情報が錯綜していることを取り上げました。

もっとも気になるポストは、「IHR改正、拒否の期限は11月末」という情報です。

これについては前回の記事に詳しく書きましたが、これでは説明が足りません。「2022年5月に採択された改正への」拒否期限が11月末であることを書かなければ、2024年5月に決まる予定の内容と誤解される可能性があります。実際に、そう思って拡散している人が多数います。

Xでは、誤解を招く可能性があるポストには情報を正す目的で「コミュニティノート」が付くようになりました。もしそれが「IHR改正、拒否の期限は11月末」というポストに対して、「2022年5月に採択された改正への拒否期限」と修正するために付くならまだわかります。けれども、IHR改正やパンデミック条約に関するポストに、下記のような「コミュニティノート」が付いていました。

これは誰が書いているのでしょうか。Xの説明によると、「協力者は、ノートの作成と評価を志願してコミュニティノートに登録した、通常のXユーザーが務めています」とのこと。

IHR改正もパンデミック条約も、今話し合いを進めているところで、まだ何も確定していません。話し合いの内容を知っているのは会議に参加している人など、ごく一部の人だけだと思います。通常のユーザーが、なぜ断言できるのでしょうか。

11月7日に行われた厚労大臣の会見では、記者からの質問に対して下記のように説明されました。

武見大臣会見概要
(令和5年11月7日(火)9:26~9:42 省内会見室)

記者: WHOのパンデミック条約に関する方針について質問します。2024年5月の第77回WHO総会での提出・採択に向けて、現在、国際保健規則(IHR)の改定と新たな「パンデミック条約」の策定作業が進められており、「WHOへの国家権力を超える権限移譲に繋がるのではないか」など、様々な問題点が指摘されています。

日本の新型コロナウイルス・パンデミックにおいては、緊急事態であることを理由に、ワクチンが特例承認され、ワクチンの成分や製薬会社の免責事項などが十分に公表されず、国民自らが、その安全性を確認できない不透明な状態のまま、ワクチン接種が進められました。これは民主主義が機能しなかったということです。

このたびのIHR改定とパンデミック条約によって、今後の医薬政策において、ワクチンの承認過程、つまりワクチンの透明性・安全性は確保されるのでしょうか。また、民主主義がゆがめられ、日本の国家主権、そして主権者は国民であるという主権在民の大原則が侵されるような事態を招く危険性はないでしょうか。

https://www.mhlw.go.jp/stf/kaiken/daijin/0000194708_00619.html


大臣: 基本的に、安全性の確保を含めて、ワクチンの承認は各国の規制当局によって行われています。国際保健規則、インターナショナル・ヘルス・レギュレーションですが、その改正や、いわゆる「パンデミック条約」の議論はまさに今、進行中です。国民が接種する国内のワクチンの安全性を含めた承認過程に関することについては、まだ議論されていません。なお、現在使用されている新型コロナワクチンについては、特例承認されたものも含めて、その品質、有効性・安全性をPMDAの審査において確認して、審議会における審議を経た上で、薬事承認されています。その成分を含めたワクチンに関する情報や審査結果に関しても、添付文書や審査報告書、審議会の議事録を通じて公開しているところです。その安全性や審査における透明性等について、現状において特段問題があるとは考えていません。

https://www.mhlw.go.jp/stf/kaiken/daijin/0000194708_00619.html

コロナワクチンの「安全性や審査における透明性等について、現状において特段問題があるとは考えていません」という驚きの発言については、後述します。

記者からの質問に対してズレた回答をしていますが、「国際保健規則の改正や、いわゆるパンデミック条約の議論はまさに今、進行中です」と言っています。国内のワクチンの安全性を含めた承認過程に関することについても、まだ議論されていないと言っているのです。

Xで拡散している人たちは、決まってからでは遅いから意見を言っているのです。国民が選んでもいない人たちが勝手に決めることがおかしいと思うことを、一般のユーザーがなぜ否定するのでしょうか。

公開されている情報

下記は、外務省のサイトで公開されている資料です。

パンデミックの予防、備え及び対応(PPR)に関するWHOの新たな法的文書(いわゆる「パンデミック条約」)の交渉 令和5年10月10日

INB6結果概要 より

https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100559309.pdf

日本は「国際的な規範や規制を強化することが重要」という立場だと書いていますが、具体的にはどのようなことなのか、なぜ国民に説明しないのでしょうか。

以下、首相官邸のサイトより。


https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kenkouiryou/global_health/dai1/siryou3-3.pdf

2021年6月の資料
これまでのIHRを検証し、IHR改正に向けた報告書です。

IHR検証委員会最終報告書
• COVID-19対応に関するIHRの機能を検証し、WHOに技術的な助言を行う目的に最終報告書を提出。
従来のIHRの主要機能に加えて、法的対策、デジタル化とコミュニケーション、IHRの遵守と遵守責任の3点を新たに検討。
• パンデミックの可能性がある感染症の発生に関する情報を、各国政府の事前承認を必要とせずにWHOが即時に公表できるようにIHRを改正する必要があること、IHRの適応範囲を超えた問題については、特別条約や新たな取り決めによる対応の可能性を検討する必要があること等を提言。

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kenkouiryou/global_health/dai1/siryou3-3.pdf

「法的対策」や「IHRの遵守と遵守責任」とは、具体的にはどのようなことなのでしょうか。

以下、読売新聞からの一部引用です。


パンデミック条約制定へ 教訓と課題
2021/07/30 12:05  読売クオータリー2021夏号
■5月の世界保健総会(WHO年次総会)で、WHOや各国のコロナ対応を検証した報告書が三つの組織から提出された。
(中略)

IHRには義務を履行しなくても何の制裁も罰則もなかった教訓から、「コンプライアンス(法令順守)違反に対する制裁」や「強い紛争解決プロセス」の導入を挙げた。さらに、「野生生物や家畜からの人獣共通感染症の流出を想定した内容になるため、生物多様性や絶滅危惧種などの取引に関する環境条約との調整が必要になる」との見解を示した。各国の自主的な批准が必要な「条約」とすべきか、加盟国が拒否しない限り自動的に拘束されるIHRのような「規則」とすべきかの考察も行っている。

https://www.yomiuri.co.jp/choken/kijironko/cknews/20210728-OYT8T50094/

IHRには義務を履行しなくても何の制裁も罰則もなかった教訓から、「コンプライアンス(法令順守)違反に対する制裁」や「強い紛争解決プロセス」の導入を挙げた、と書かれています。

つまり、これまでのIHRは義務を履行しなくても何の制裁も罰則もなかったけれど、改正によってそうではなくなる可能性があるのではないでしょうか。

以下、厚労省の研究成果データベースで公開されている資料より、一部引用です。

国際保健規則(IHR)の強化とパンデミックに関する新しい国際文書に関して国際法学の見地から検討・分析
保健関連国際文書の交渉プロセス並びに法整備に関する研究 獨協大学法学部 鈴木淳一

筆者(鈴木淳一氏)は公開資料に基づいて分析して、それをもとに下記の内容について考察を行っています。

本稿では、①COVID-19 への対応を概観しこれを批判的に検討したうえで、②現在 WHO を中心として行われている IHR の改正、パンデミック条約を含む新たな国際文書の制定及び世界保健機関憲章(WHO 憲章)体制の強化に関する交渉が並走している様子を概観する。

さらに、③現在交渉が行われている複数の国際文書について、WHO 憲章下にある国際文書の多様性と序列、④WHO 憲章下の国際文書と他の条約レジームとの関係、⑤当該文書のガバナンス機関、⑥国際文書の発効手続等について分析する。最後に、⑦国際文書に関する交渉の評価を示す。

https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/report_pdf/202206006A-buntan1.pdf

(1) 次のパンデミックに対応するための国際文書作成の背景

(1)―4 COVID-19 への対応からの示唆と現状分析
COVID-19 への対応の反省を踏まえた次のパンデミックへの対応の準備という観点からすれば、IHR の改正やパンデミック条約を含む新しい国際文書の制定を通じて、各国に対して情報提供や各種措置の実施について包括的な義務を課し、危機状況にあってはワクチンや個人用防護具(PPE)等を含めて国際的なコントロールを実現し、国家への強制力を有する国際的なガバナンス機関を設置して当該義務の遵守の確保をするという「強い条約レジーム」の確立が望まれる。

https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/report_pdf/202206006A-buntan1.pdf

公開されている資料からは、このようなことが「望まれている」と読み取れるということです。


最後に筆者(鈴木淳一氏)は、3つのシナリオが考えられるとしています。

(7)―6 交渉全体のシナリオ
本交渉の特徴として、IHR の改正交渉とパンデミック条約を含む新たな国際文書の制定が並走して行われ、両文書の間で概念やガバナンス機関の共有が生じていることがあげられる。今後の条約交渉のゆくえは不透明であるが、いくつかの具体的なシナリオが考えられる。

シナリオ A は、包括的で整合的なパンデミック条約の交渉に成功し、多数の国家が参加する場合を想定したものである。本シナリオが次のパンデミックに備えるという観点からは望ましいとしても、実際にはパンデミック条約の制定と多数の諸国の普遍的な参加には多大な困難が予想される。現実には、枠組条約等の活用によって、交渉が事実上の先送り
となる可能性がある。

シナリオ B は、パンデミック条約の交渉が失敗する場合である。この場合、既存の WHO 憲章とIHR の改正を中心とし、パンデミック条約を含む新たな国際文書の内容を IHR に盛り込みつつ、国際文書自体の法的義務の内容を希薄化させて、法的拘束力のない勧告などのソフトローへとトーンダウンする可能性がある。

シナリオ C は、パンデミック条約を含む新たな国際文書の交渉は成功するが、成立した同文書への普遍的な参加が損なわれる場合である。この場合、当該文書は暫定的な適用により、EU などの地域的なルールとして利用される可能性もある。

以上を踏まえて、シナリオの B 又は C を想定すれば、包括的で実効的なパンデミック条約が実質的に成立しない可能性があるため、複数の文書交渉の並走、概念・原則の共有、ガバナンス機関の共有は、交渉が始まったばかりの現段階では暫定的には有用ということになる。

https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/report_pdf/202206006A-buntan1.pdf

失敗した場合のシナリオBで、「国際文書自体の法的義務の内容を希薄化させて法的拘束力のない勧告などのソフトローへとトーンダウンする可能性がある」と書かれています。

ということは、交渉がうまくいってしまったら、法的義務が濃いものになる可能性があるということではないでしょうか。

このように、今の段階ではどうなるか「わからない」のです。

ですから、それぞれの発信がすべて正しいというわけでもなく、「コミュニティーノート」の訂正が正しいとも言えないと思います。

このような中で大切なことは、どちらかの発信を鵜呑みにするのではなく、やはり「自分」で調べることだと思います。まずは、明らかにされている情報の中から、「事実」を知ることが大切ではないでしょうか。


コロナワクチンの安全性に対する大臣の発言

冒頭で取り上げた厚労大臣の会見で大臣は、「その成分を含めたワクチンに関する情報や審査結果に関しても、添付文書や審査報告書、審議会の議事録を通じて公開しているところです。その安全性や審査における透明性等について、現状において特段問題があるとは考えていません」と言いました。だからといって、「コロナワクチンは安全性に問題はないんだ」と納得して終わっては「事実」を知ったことにはなりません。「現状において特段問題があるとは考えていません」というのは、「考え」であって「事実」とは限らないのです。

添付文書や審査報告書、審議会の議事録のほか、副反応疑いの報告や予防接種健康被害救済制度の審議結果は、厚労省のサイトやPMDAのサイトで公開されています。

ファイザー社製ワクチン 審査報告書、添付文書

副反応疑いの報告、議事録

予防接種健康被害救済制度の審議結果

これらを「自分の目」で見て確認して自分で考えてこそ、初めて「事実」が見えてくるのではないでしょうか。