見出し画像

パンデミック条約、効果や安全性の検証より、知的財産権の放棄でもめている!? 

2023年11月15日、「超党派WCH議員連盟(仮称)設立総会」が参議院議員会館で開催されました。国会議員が党派を超えて、WHOのパンデミック条約やIHR改正の危険性について声をあげようという連盟です。議員らが外務省と厚労省に質問した内容と、ステークホルダーの関連記事を掘り起こし、見えてきたことをまとめてみました。

効果や安全性を検証しないまま交渉が進む危険性

前回の続きです。

パンデミック条約やIHR改正は、どうせ勝手に決められてしまうのだから知ってもどうにもならない・・・と思う人もいるかもしれません。けれども、自分で調べて知っておかなければ、決まった後に「パンデミック条約で決まっているので」と言われたら、従わなければならないと思いこんでしまうかもしれません。実は、努力義務のようなもので、必ずしも従う必要がないこともあるかもしれないのです。


今、何が起きているか知ろうとすることが、命や健康を守ることにつながると思います。

11月15日の設立総会では、日野市議会議員の池田としえ氏から厚労省に向けて、下記の質問がありました。

・IHR(国際保険規則)改定について、国会審議はされるのか? それとも首相や大臣の一任ということで最終的に決まっていくのか?

・今回のワクチン接種の是非に関する統括というのが、国民的総意としては行われていない。元々ワクチン接種もWHOが主導で日本も含めて世界中が動いてるので、このワクチン接種が国民にどういう影響を与えているのかということの統括がありながら、次の段階に進んでいくというのが物事の順序であるはず。その点に関しては、どのような評価をしているか?

・地方議員は、死亡だけでなく今もなお苦しむ、接種後すぐに具合が悪くなったり、ななみならない症状だという人からの相談を多数受けている。ワクチン分科会のメンバーに元ファイザー社・臨床開発統括部長の坂元昇氏 が就任していて、議事録を見ると常に会議をリードしている。日本中でかつてないほどの被害が出ているにも関わらず、元ファイザー統括部長のリードによって接種推進の方向に引きずられているのは、利益相反ではないのか?

元ファイザーの坂元氏については、下記の記事で取り上げました。


厚生労働省
・IHRの改正内容が、感染症法など、国内法の改正が必要であれば当然審議される。IHRの改正が既に国内法で担保されている内容であれば 審議はしない。

・ワクチン関係は、直接の担当が今回参加していないので詳細は答えられない。有効性や安全性は科学的な知見や情報を収集して、審議会の方で評価している。

1つめの答弁は、最後の方がよく聞き取れませんが、国内法で担保されている場合は国会では審議しないということだと思います。

ワクチンに関しては、ちゃんとした回答にはなっていなかったので、前回の記事で取り上げた、「アフリカ日本協議会」の記事をさかのぼってみました。「アフリカ日本協議会」の共同代表は、パンデミック条約の交渉にステークホルダーとして参加できる「Japan CSO Network for Global Health」の代表でもあります。

国際保健に取り組むNGO・市民社会のネットワークである「GII/IDI懇談会NGO連絡会」(代表:稲場雅紀・アフリカ日本協議会共同代表)は、パンデミック条約交渉のステークホルダーの一つである「アネックスE団体」にノミネートされ、同交渉について直接、問題提起をすることが可能となりました。

https://ajf.gr.jp/globalhealth/fairaccess/cso-video/

パンデミック条約の交渉が始まる前、下記の記事では、途上国へのワクチンの供給が大きな課題となっていることと、ワクチンに関する情報公開と透明性の課題について書かれています。

2020年11月29日

市民社会が提起しているのは、まず情報公開の不十分さです。上記3ワクチンの「成果」は中間発表の段階ですが、開示された情報はいずれも不十分なものです。「効果」についても、対象者数が少なく、人種、性別、所得、生活状況など異なった条件で、実際にどの程度効果が発現するのか、また、リスクがどのように変化するのか全く定かではありません。
(中略)
医薬品の透明性を求めるフランスのNGO「OT-MED」代表のポーリーン・ロンデイさん(Pauline Londeix)はロイター通信に「出された情報は極めて不十分で、医薬品メーカーが競争に勝ち抜くために都合の良い情報を出しているだけにすぎない。治験の方法と結果が全て公開されるべきなのに、逆行している」と述べています(注1)。

データの透明性については、米国の人権NGOヒューマン・ライツ・ウォッチも、最近発表した報告書「ワクチンを発見した者はだれであろうと、シェアしなければならない=COVID-19ワクチンの人権と透明性の強化=」において、詳細に述べています。
(注1)Reuters, “Britain and other nations press on with AstraZeneca vaccine amid trial questions”, November 27, 2020

https://ajf.gr.jp/covid19_29nov20/

2020年11月頃は、途上国の目線でこのような意見がでていたことがわかります。

ところが、最近の記事を見ると、途上国を中心とする団体はとにかく「医薬品への公正なアクセス」を求めている印象です。一方、先進国の開発系製薬業界は「知的財産権の放棄」を求められたことに反発し、交渉が難航しているように読み取れます。

けれどもその流れの中で、ワクチンの安全性に関する検証については見えてきません。なぜワクチンが安全なものという前提で、話し合いが進められているのでしょうか。とても不自然に感じます。なぜ実際に接種した人たちのデータで、検証されないのでしょうか。

もしワクチンが本当によいものなら、途上国にも公正に分配されるように話し合う必要があると思いますが、これだけ健康被害がでているものを、途上国の人たちは本当に求めているのでしょうか。健康被害の情報は、途上国の人たちに届いているのでしょうか。


パンデミック条約、これまでの流れ

「アフリカ日本協議会」の記事からは、これまでの流れを知ることができます。以下、記事からポイントを書き出しました。

長くなってしまいましたが、私が初めてnoteに書いた記事にもつながる掘り起こしになりました。

2021年12月28日

「パンデミック条約」については、2020年秋頃より、欧州諸国を中心に、これを制定すべきという動きが強まったと書かれています。


パンデミック条約:だれの利益になるのか?(第3世界ネットワーク)

上記は、開発途上国の開発と貿易・投資・援助の課題に取り組んできた「第3世界ネットワーク」(Third World Network:在クアラルンプール)が 2021 年 10 月に発表した、世界保健機関(WHO)を軸に進む「パンデミック条約」に関する交渉についての分析記事の日本語訳とのこと。

以下、一部引用です。

欧州委員会のパンデミック条約に関する提案は、拘束力のある法律を選択的に用いて欧州連合の保健安全保障上の利益を確保しつつ、公衆衛生に関する調整と協力の要件は拘束力のない法のメカニズムに委ねることを目指しているという指摘を裏付けるものである。つまり、既存の国際保健規則の下で協力の法的義務を強化したり、法的拘束力をもってタイムリーかつ公平な医薬品へのアクセスを強化したりするという政治的機運は、欧州連合内にはほとんど存在しないのである。

https://ajf.gr.jp/wp-content/uploads/2021/12/19e68328a14303418ee5f49f2fb6983e.pdf


2022年7月31日

・「パンデミック条約」の交渉は、2020年に欧州連合のシャルル・ミシェル欧州理事会議長が提唱したことで始まった。

・「パンデミック条約」は、WHOがCOVID-19への対応を検証し、今後のパンデミック対応の在り方を見直すために設置した「パンデミック対策・対応独立パネル」(IPPPR)の報告書でも支持された。

「パンデミック対策・対応独立パネル」の報告書 より

独立パネルが強調する「構築すべき力」について

・ ワクチンは前例のないスピードで開発された。新型コロナウイルスが集団感染を引き起こしたことが確認されてから数日以内にワクチン開発が進められ、記録的な速さで多くのワクチンが承認された。今こそ COVID-19 の感染を全世界的に抑制するために、ワクチンがより公平で戦略的に配布されなければならない。

・ オープンデータとオープンサイエンスのコラボレーションは、パンデミックの警戒と対応において中心的な役割を果たした。例えば、新型コロナウイルスのゲノム配列がオープンプラットフォームで共有されたことにより、史上最も早く、ウイルス感染の診断検査が開発されることとなった。

https://ajf.gr.jp/wp-content/uploads/2021/09/WHO_IPPPR_Report_Summary_jp.pdf

・「政府間交渉主体」(Intergovernmental Negotiating Body: INB)が交渉プロセスを管理する形で、検討が進んできた。このパンデミック条約は、現状では「条約」(Convention)となるか、合意(Agreement)となるか、その他の国際的取決め(Other International Instrument)となるか決められていない。

・INBはWHOのすべての加盟国に開かれているが、その進行プロセスを検討していくのは、WHOの地域区分毎に選出されたブラジル(米州)、エジプト(東地中海)、日本(西太平洋)、オランダ(欧州)、南ア(アフリカ)、タイ(南東アジア)の6か国で構成される「ビューロー」(Bureau)。

・ビューローは南アのプレシャス・マツォソ氏(Precious Matsoso)とオランダのローランド・グリース氏(Roland Griece)が議長、他の4か国の代表が副議長となって進行。

外務省の答弁によると、日本からは副議長として本清耕造大使 (在ジュネーブ日本政府代表部)が選出されたとのこと。本清耕造氏選出については、下記にも書かれています。


前述の「独立パネルが強調する『構築すべき力』について」には、「新型コロナウイルスが集団感染を引き起こしたことが確認されてから数日以内にワクチン開発が進められ、記録的な速さで多くのワクチンが承認された」と書かれていましたが、安全性については触れられていません。

また、「数日以内に開発が進められた」というのは、早すぎると思うのですが・・・。

特例承認の審査報告書を見ると、下記が黒塗りになっていることをnote1本目の記事で取り上げました(下記参照)。

コミナティ筋注 特例承認に係る報告書より

武漢市で発生した肺炎が新型コロナウイルスによるものだとWHOが発表したのが2020年1月12日と書かれているので、「数日以内」ということは、黒塗り部分は1月ということになるでしょう。文字の幅からも1月だと思いますが、なぜ隠す必要があったのでしょうか。

そして、パンデミック条約では、これよりも早く対応することを目指しているようです。

2022年11月23日

・「パンデミック条約」は、IHRを尊重しつつ、パンデミックと国際保健に関する、より幅広い領域について、各国の主権を尊重しつつ、国際的な合意を形成しようという試みである。

・これまでパンデミックに関わる医薬品への公正なアクセスを求めてきた市民社会は、基本的にこの草案に歓迎の意を表明


2023年2月23日

・2023年2月1日に「ゼロ・ドラフト」を送付。「ゼロ・ドラフト」は、昨年11月16日に加盟国に送付され、第3回INBで加盟国等の議論に供された「概念的基礎草案」(Conceptual Zero Draft)について、加盟国からの意見を入れてヴァージョン・アップしたもの。


2023年5月7日

・「国際保健規則」の改定交渉については、「国際保健規則」改定作業部会(WGIHR)が交渉の舞台となっている。この二つの交渉には重複する内容が多いことから、整理が必要との意見や、このままでは来年5月の世界保健総会というタイムリミットに間に合わないとの意見が強く出されている。

・「国際保健規則」改訂作業部会は事前に、国際保健規則の改定に向けて各国が提出した提案をまとめた「条文ごとのまとめ」を公開。

・米国の提案は、加盟国の取り組みや、国際保健規則に基づいて各国から提出された情報等が実際に国際保健規則に従ったものであるかをモニターしたり、国際保健規則に関わる加盟国の能力強化について助言したりすることを目的とする「法令遵守委員会」を新たに設置するというもの。
アフリカ・グループの提案は、同様に加盟国の取り組みが国際保健規則に従っているかどうかをモニターしつつ、加盟国が国際保健規則に従って行動できるような技術協力や資金援助などの提供について助言したり、促進したりすることを目的とする「実施委員会」を新たに設置するというもの。

・アフリカ・グループはこれに加えて、「保健緊急事態への備えと対応の公平性のための資金メカニズム」をWHOに設置することも提案。

※この記事については、国際保健政策に関する独立調査・報道機関である「Geneva Health Files」の複数の記事を参考にしたとのこと。


2023年6月4日

この「起草グループ」は、昨年12月に開催された第3回INBで、その構成やあり方が定められたが、基本、WHO加盟国とオブザーバー(Holy See(=ヴァティカン)とパレスチナ)および地域共同体等がメンバーとなり、詳細な文言調整などの交渉が行われる会議体となっている。

https://ajf.gr.jp/covid19_04jun2023/

・パンデミック条約の新たな草案テキスト(Draft Bureau’s Text of the WHO CA+)が加盟国等に共有された。

・ゼロ・ドラフトが38章だったのに対して、こちらは41章立てとなっている。

この記事を読んでオブザーバーに、Holy See(=ヴァティカン)が入っていることが気になり、さらに調べてみたところ、別の記事に、2021年2月にヴァチカン(Holy See)ジュネーブ代表部のイヴァン・ユルコヴィチ大司教が声明を発表したと書かれていました。

声明の中で、「ワクチンがすべての人にとっての普遍的なものでなく、特定の国の所有物になるとしたら、悲しいことだ」というフランシスコ教皇の発言があったと書かれています。

2021年1月には、教皇自身も接種して、接種を呼びかけたことが報じられました。

さらに、2021年2月にローマ教皇庁は、職員が新型コロナウイルスワクチンの接種を拒否した場合、解雇もあり得るとする法令を公布。批判を受けて、すぐにワクチン接種を望まない職員には「代替の選択肢」を提供するとの声明を発表しました。


このような考えを持つバチカンは、交渉にどのような影響を与えているのでしょうか。


2023年7月1日

・議論の膠着が見られる中で、交渉自体の透明性が低下し、交渉の中で政府以外の主体が参加できないことが多くなっていることについて、市民社会は警鐘を鳴らしている。

・新たなドラフトに対しては、パンデミック行動ネットワーク(PAN)や、グローバルファンド活動者ネットワーク(GFAN)など幾つかの団体が、公式に意見を表明している。

2023年10月28日

国際製薬団体協会(IFPMA)は、テキスト送付の翌日に極めて破壊的な声明を出した。IFPMAはこの制度によって、研究者が病原体情報にアクセスするのが遅れ、これがワクチンや治療薬の開発の遅れにつながると主張している。

※国際製薬団体協会(IFPMA)は、Annex Cのステークホルダー(WHOと公式関係にある非国家関係者)としてリストに入っています。


https://cdn.who.int/media/docs/default-source/executive-board/list-of-entities-in-official-relations-with-who.pdf?sfvrsn=c04e75ba_3&download=true

ステークホルダーについては、前回の記事で取り上げました。


「交渉テキスト」の内容だと、パンデミック発生時に科学者が研究を迅速に実施するために必要な病原体へのアクセスを遅らせる可能性があることや、新たなワクチンや治療薬の開発に不可欠だった製薬会社へのインセンティブが明らかに欠如するなどと書かれています。そして、これが採択されれば、2021年にG7が定めたワクチンの「100日間ミッション」は失敗するだろうと。


そしてIFPMA事務局長のトーマス・クエニ氏は、「こんなヒドい条約なら、ない方がいい」とまで言っています。

https://healthpolicy-watch.news/wp-content/uploads/2023/10/advance-DRAFT_Negotiating-Text_INB-Bureau_16-Oct-2023.pdf

第 11 条に「知的財産権の免除」措置について書かれていることが、問題となっているようです。

知的財産権の期限付き放棄について、日本の研究者や製薬会社の人たちは、どのように考えているのでしょうか。

そのほか、「アフリカ日本協議会」の記事では、人権に関する部分がかなり削除されていることにも触れられていました。

「ビューロー原案」

https://apps.who.int/gb/inb/pdf_files/inb5/A_INB5_6-en.pdf

             ↓ ↓ ↓
「交渉テキスト」

https://healthpolicy-watch.news/wp-content/uploads/2023/10/advance-DRAFT_Negotiating-Text_INB-Bureau_16-Oct-2023.pdf

「交渉テキスト」には、過去の「ゼロ・ドラフト」や「ビューロー原案」と比較して、人権や、公正なアクセスのための措置などの面で深刻な後退が見られる。

https://ajf.gr.jp/covid19_28oct2023/

という感じで交渉はうまくいっていないようですが、大どんでん返しもあるかもしれませんし、やはりIHR改正の方が重要になってくるかもしれません。

私たちは交渉に直接関わることはできませんが、国民が関心を持ち、知ろうと努力することには、大きな意味があると思います。

冒頭の池田氏による質疑部分はYouTubeだと、BAN(削除)対策でミュートになっていたりするので、ニコニコ動画で公開されているものがおすすめです(56分頃)。

設立総会 全編