医師による判断の違い
厚労省のサイトで、新型コロナワクチンの接種及び副反応疑い報告の状況等について、最新の報告が12月3日に公開されました。心筋炎がクローズアップされていますが、症例報告を見ると、医師によって判断に違いがあることがわかります。検査もしないで様子見を指示されたら、どうすればいいのでしょうか?
12月3日に公開された資料
新型コロナワクチン接種後の副反応疑いに関する資料は、たくさん公開されているので、どれを見たらよいか迷ってしまうと思います。
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まずは、「資料1-7-1 副反応疑い報告の状況について」を見てみます。


心筋炎関連事象疑いとして報告された件数を見ると、10代、20代男性の報告頻度が多いです。

過去の審議会で出されたデータと比較すると、明らかに増えています。

それらを踏まえて、ファイザー製、モデルナ製ともに、心筋炎を「重大な副反応」とする方向で、添付文書の改訂が検討されています。改定案では、「因果関係は不明であるが」という文言もなくなっています。
追記:添付文書はすでに改訂されていました。
コミナティ筋注の添付文書
モデルナ筋注の添付文書
では、心筋炎が疑われるときは、どのような症状が見られるのでしょうか?

「多くの急性心筋炎患者ではかぜ様症状(悪寒、発熱、頭痛、筋肉痛、全身倦怠感)や食思不振、悪心、嘔吐、下痢などの消化器症状が先行する。その後、数時間から数日の経過で心症状が出現する。心症状には、①心不全徴候(出現頻度約70%)、②心膜刺激による胸痛(約44%)、③心ブロックや不整脈(約25%)に随伴する症状がある」と書かれています。
症例報告を見ていると、心筋炎と診断される前の症状として、発熱や頭痛のほか、「何度も嘔吐した」「下痢をしていた」などが印象に残ります。
心筋炎の症例報告
では、報告された症例経過を見てみましょう。
資料1-2-3-1より
症例経過は、なぜかファイザー製の方が詳しく書かれています。長いものは、重複している部分などを編集しました。BNT162b2は、コミナティ筋注のことです。
事例:15716 15歳男性 コミナティ筋注2回接種 ロット番号未報告
基礎疾患、病歴や併用薬は報告されなかった。
日付不明、患者は以前、COVID-19 予防接種のため COVID-19 ワクチン
(製造販売業者不明)、単回量にて初回接種を受け、初回接種後、接種部位の筋痛が出現した(日付不明)。
2021/09/12(2回目のワクチン接種 3 日後)、心筋炎が出現した。
臨床経過は以下の通り:
2021/09/09、他院にて 2 回目のコロナワクチン接種を受けた。
同日夜間(2021/09/09)、寒気を自覚した。
2021/09/10(2 回目のワクチン接種翌日)、発熱が持続し、夜間には
胸の痛みも自覚した。同日、排便が 2 回あり、2 回とも下痢であった。
2021/09/11(2 回目のワクチン接種から 2 日後)、同院を受診した。
PCR 提出後、患者はアセトアミノフェン(カロナール)の処方を受
け、帰宅した。アセトアミノフェン内服後、熱は一旦下がったが、薬剤の効果が切れると、再び上昇した。
21:00、アセトアミノフェンを最終内服し、入眠したが、
2021/09/12 未明(2 回目のワクチン接種から 3 日後)、胸の痛みのた
め、報告元病院を受診した。痛みは締め付けられるような痛みであったが、安静時は違和感のみであった。呼吸苦や頻呼吸はなかった。
2021/09/12~2021/09/17(2 回目のワクチン接種から 8 日後)、心筋
炎のため入院した。
2021/09/25(2 回目のワクチン接種から 16 日後)、心筋炎は回復し
た。報告薬剤師は心筋炎を重篤(入院)とし、事象は BNT162b2 と関連あ
りと評価した。
報告薬剤師の意見は以下の通り(報告者意見):
ワクチン初回接種の際は接種部位の筋痛のみであったが、2 回目接種
(2021/09/09)後、同日夜間に寒気や発熱が見られ、2021/09/10 夜
間からの胸痛を自覚した。
2021/09/11、患者は近医を受診し、アセトアミノフェンの処方を受け
たが、その後も胸痛が続き、2021/09/12 未明に報告元病院を受診し
た。
血液検査および心電図から、コロナワクチン接種後の心筋炎が疑われ
た。心筋炎の好発年齢とはいえ、2 回目のワクチン接種から 2 日後の
発症であり、時期的に整合していた。CK-MB 高値であるが著しい高値
ではなかった。逸脱自体はピークを過ぎた可能性もある。
次は、13歳の事例です。
事例:15877 13歳男性 コミナティ筋注2回目接種 ロット番号:FH3023
2021/10/17 15:00、2 回目を接種。
ワクチン接種前の体温は、摂氏 36.7 度であった。病歴、家族歴なし。
2021/10/19 04:00(ワクチン接種の 2 日後)、患者は胸痛を発現し、病院に行った。心電図は、異常な結果(心電図 ST-T 部分上昇)を示した。
血液検査の結果は、トロポニン上昇を示した。
心エコーの結果は、左心収縮能正常を示し、心のう水はなかった。
事象は、「心筋炎」として報告された。
2021/10/20、患者は胸痛(一過性)を発現した。
2021/10/21 以降、胸痛の症状は、消えた。
2021/10/21、血液検査の結果は、トロポニン上昇、CK 上昇、CK-MB 上
昇を示した。心電図は、まだ異常な結果を示した。
2021/10/26、血液検査と心電図の結果は正常に戻った。
2021/10/26(ワクチン接種の 9 日後)、事象の転帰は回復であった。
報告医師は事象を重篤(医学的に重要)と分類し、事象は BNT162B2
に関連ありと評価した。
他の要因(他の疾患など)の可能性はなかった。
報告医師は、以下の通りにコメントした: 「これまで報告のあるワ
クチン接種後(mRNA COVID-19 ワクチン)の心筋炎に矛盾しない。」
心筋炎が疑われた症例を見ると、ほとんどの場合、まずは心電図、血液検査で状態を確認しています。ところが、中にはそのような判断をしない医師がいました。
「本報告は、ファイザー社医薬情報担当者経由で連絡可能な医師から入
手した自発報告である。本医師は 2 人の患者の類似事象について報告
した」と書かれていました。ほぼ同じ内容ですが、2つの事例を紹介します。
事例:15843 20代男性 コミナティ筋注2回接種 ロット番号不明
病歴と併用薬は報告されなかった。
不明日、2 回目のワクチン接種後、患者は有害事象を発現した。
報告された臨床経過は以下の通り:
2 回目のワクチン接種後、胸あたり違和感ある、チクチクする等の主
訴があった。医師は軽度の心筋炎を疑い、様子見を指示した。
その後、患者は再来していない。
追加情報:
医師は、心筋炎は生検をやらなければ分からないし、患者が他の疾患
を持っているのかどうかも分からないと言った。報道等の影響もある
と思うとのことであった。その後何もないので関係ないと思うとのこ
とであった。重篤性は提供されなかった。
有害事象は製品の使用後に発現した。事象の転帰は不明であった。
追跡調査は不能である。ロット/バッチ番号に関する情報は入手でき
ない。これ以上の情報は期待できない。
事例:15874 30代男性 コミナティ筋注2回接種 ロット番号不明
病歴と併用薬は、報告されなかった。
不明日、2 回目のワクチン接種後、有害事象を発現した。
臨床経過は以下の通り報告された:
2 回目のワクチン接種後、胸あたり違和感ある、チクチクすると主訴
があった。医師は心筋炎疑いだが軽いので、様子見を指示した。
その後、再受診はなかった。
追加情報:医師は、心筋炎は生検をしないとわからないし、他の疾患
かもわからないと述べた。また、報道等の影響がある可能もある。
医師は、その後何もないので関係ないと考えた。
事象の転帰は不明であった。重篤性は、提供されなかった。
製品使用後に有害事象が発生した。
再調査は不可である。ロット/バッチ番号に関する情報は、取得でき
ない。これ以上の追加情報は期待できない。
報告には、心電図や血液などの検査を行ったと書いていません。この報告からは、医師はワクチン接種後、特に若い男性に心筋炎が起きる可能性があると報道などでも知っているにも関わらず、検査をしていないと読み取れます。「メディアが報じているから、心配で受診したようだけど、この程度なら大丈夫」と判断したのでしょうか。
「心筋炎は生検をしないとわからない」とも言っていますが、他の医師は生検をする前に心電図や血液検査で状態を確認しています。確定診断には生検が必要なのかもしれませんが、軽症だと思っても、念のため心電図や血液検査を行うのが一般的ではないのでしょうか。
一番気になったのが、「その後何もないので関係ないと考えた」という部分。この患者は再受診していません。他の病院で診てもらったかもしれないのに、なぜ何もないとわかるのでしょうか?
死亡後に心筋炎が疑われた事例
次の事例は、ファイザー製の報告にありますが、メーカー不明となっています。
事例:15694 34歳男性 メーカー・ロット番号不明 2回接種
基礎疾患等の報告なし
家族歴は、患者の父親の突然死(詳細不明)
事象の経過は次の通りであった:
特に既往歴のない患者であった。
2021/10/05、2 回目のワクチン接種を受けた。
2021/10/06、発熱があった。
最終安否確認は、2021/10/07 22:00 であった。
2021/10/08 07:00、患者は心肺停止状態で発見された。したがって、
その間に心肺停止に至ったと思われる。
搬入時、心電図波形は心静止であった。気管挿管行い心肺蘇生を試みた。
しかし、07:49 に心配再開することなく、死亡確認。
死亡時画像診断では、大動脈に解離や破裂の所見はなかった。両肺は
全体にすりガラス影あるも心停止に伴う肺水腫の状態と考えられ、肺
炎が存在したとしても評価できない状態であった。他、肝、胆、膵、
脾、腎に著変なし。脳も急性期出血はなかった。
搬入時、高感度トロポニン I 1559.5 pg / mL と高値。はっきりとした死因は分からず、家族に解剖を提案したが希望されず。
後日、搬入時に行った COVID-19 PCR 検査も陰性の判定が出た。
報告薬剤師は、事象を重篤(死亡)と分類し、事象と COVID-19 ワク
チンとの因果関係を評価不能と評価した。
他要因(他の疾患等)の可能性は、心筋梗塞の可能性が報告された。
報告薬剤師は次の通りコメントした:死亡後画像診断で判断する限
り、明らかな器質的疾患はなかった。搬入時のトロポニン I が 1000
以上となっており、死後変化だけでの上昇とは考えにくく、心筋炎も
しくは心筋梗塞が疑われる。若年であり、心血管疾患のリスクファク
ターはなく、COVID-19 PCR 検査で陰性であったことから、COVID-19
感染による心筋炎も否定的。これらを考慮すると、新型コロナウイル
スワクチン接種が本件に関連した可能性は否定できないと考えられ
る。心筋炎疑い、心筋梗塞疑い、心肺停止の転帰は死亡であり、発熱の転
帰は不明であった。
この報告からは、症状が軽かったから受診しなかったのか、受診したけれど治療しなかったのかはわかりません。けれども、適切な治療をしていれば、助かっていたかもしれません。
モデルナ製にも、同様の事例があります。資料1-2-3-2より。
事例:18042 22歳 男性 モデルナ筋注2回接種
2021/09/08 ワクチンモデルナ筋注 1 回目の接種。
日付不明 接種前の体温:36.0°C。
2021/10/06 ワクチンモデルナ筋注 2 回目の接種。接種後から発熱、倦怠感、眼球結膜充血あり。
2021/10/20 08:10 朝、ベッド上で心肺停止となっているのを家族が発見
し、救急搬送。蘇生行うも救命は困難であった。
09:57 死亡確認。致死性不整脈で死亡診断書を作成。本剤接種歴から心筋炎などの副反応の可能性あり。
発熱、倦怠感、眼球結膜充血、心肺停止、致死性不整脈、心筋炎の転帰は、
死亡。追跡調査予定あり。
心筋炎調査票の案
厚労省のサイトには、ワクチン接種後に心筋炎が認められた場合、医師が記入する調査票の案も公開されています(参考資料9)。
事前に見ておくと、どのような検査が必要なのか、参考になるかもしれません。
医師から様子見を指示されても、自分で「何かおかしい」と感じているなら、検査をしてもらった方がよいと思います。
アスリートとしての活躍を目指している若者やお子さんは、今後の活動にも影響するかもしれないので特に注意が必要です。
