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パブコメから社会の動きを知る課外活動

中学校や高校で、様々な探究プログラムが導入されています。けれども、企業とのコラボや世界に目を向ける活動などが多いように感じます。今の日本に必要なのは、私たちの生活に直接関係のある政策や法律にもっと関心を持ち、疑問を持ったら自分で調べる力を育むことではないでしょうか。私がぜひ導入してほしいと考えた探究プログラムを、時々書いていこうと思います。今回は、その2回目です。

「無関心な国民」と「意見を無視する政府」

前回は議事録を活用したプログラムについて書きましたが、パブコメ(パブリックコメント)もぜひ活用してほしいと思っています。

国の行政機関は、政策を実施していくうえで、さまざまな政令や省令などを定めます。これら政令や省令等を決めようとする際に、あらかじめその案を公表し、広く国民の皆様から意見、情報を募集する手続が、パブリック・コメント制度(意見公募手続)です。

https://public-comment.e-gov.go.jp/contents/about-public-comment

日々さまざまなパブコメが募集されていますが、募集についてメディアが取り上げることはほとんどありません。自分でチェックしなければ知らないうちに募集が始まり、知らないうちに終わってしまいます。

さらに、多くの人が意見を出したとしても、意見は無視されて予定通り決まってしまうものがほとんどです。

最近では、長崎大学でのエボラウイルス研究に関するパブコメがそうでした(下記参照)。

2件しか集まらないものなどもあるので、92306件の意見が集まったというのは多い方です。けれども、提出意見を踏まえた案の修正は「無」でした。


https://public-comment.e-gov.go.jp/pcm/1040?CLASSNAME=PCM1040&Mode=1&id=495240239

提出しても変わらないなら、やる意味がないと思う人も多いでしょう。

けれども、国民が関心を持っていることを示すことには意味があると思います。政府が無視できないほど、もっともっと多くの意見が提出されたら、状況が変わってくる可能性もあるでしょう。92306件は多い方ですが、人口から考えたらまだまだ少ないのです。今のように国民があまりに無関心であることが、政府のやりたい放題につながっていると思います。パブコメに多くの人が関心を持ち、関心を持っていることを政府に示すことさえもできていないのに、何かを変えることなどできないのではないでしょうか。

そこで、学校で作ってほしいのが「パブコメ部(同好会)」です。もしかしたらすでに、パブコメに取り組んでいる部活はあるのかもしれませんが、今のところ見つけられていません。

授業でパブコメに取り組んでいる高校はあるようです。

個人的には、授業で1つの募集にみんなで取り組むより、自分が興味を持った募集についてそれぞれが調べていく方がモチベーションが上がると思うので、課外活動で取り組むのがよいように思います。

同じ募集に興味を持った生徒が複数いれば、グループで取り組むのもよいでしょう。

パブコメ部の活動案

1.パブコメの募集内容をきちんと理解できるまで調べる

まずは、募集中のパブコメをチェックすることから始めると思いますが、タイトルだけでは何に関係しているかがわかりにくいです。

例えば、前述の長崎大学でのエボラウイルス研究に関する募集。

「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律施行令の一部を改正する政令案に関する御意見の募集について」

このタイトルを見ただけでは、長崎大学でエボラウイルス研究を行うことに関する意見募集とはわかりません。

募集時に公開されていた「概要」と書かれた資料を見ると、長崎大学が関係していることはわかりますが、エボラウイルスについては触れられていません。

https://public-comment.e-gov.go.jp/pcm/download?seqNo=0000282742

この情報から「BSL4施設」について調べると、厚労省のサイトには下記のように書かれています。

BSL4施設とは
BSL(バイオセーフティレベル)とは、細菌・ウイルスなどを取り扱う実験施設の分類で、病原体を封じ込めるための設備や運営管理体制により1~4に区分されています。この数字が大きくなるほど、施設設備や管理体制のレベルが上がっていくことになり、BSL4施設とは、もっとも高いレベルの安全基準や安全管理体制が取られている封じ込め施設ということになります。
そのためBSL4施設では、エボラ出血熱の原因となるエボラウイルスや、ラッサ熱の原因となるラッサウイルスなどを取り扱うことが可能です。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/kijun_bsl4.html

ここでやっと、エボラウイルスを扱うことも可能になることがわかります。

このように、タイトルを見ただけでは何の募集かわからないことが多いので、まずは気になったタイトルから募集の内容について調べることが必要になるでしょう。これだけでも、多くの学びがあると思います。


2.疑問や不明点を解消するための活動

パブコメ募集のサイトで公開されている情報だけでは、改正されると私たちの生活にどう関わってくるのかがわからないことも多いです。そのときは、疑問や不明点を解消できる方法を考えて行動する必要があります。

ネット上で解説してくれている人もいますが、生徒たちが正しい解説を見極めるのは難しいでしょう。学校の課外活動であることを利用すれば、法学部の大学教授などに解説してもらうことも可能ではないでしょうか。

少子化が進み、大学も受験生集めに苦労する時代となりました。付属校ではない高校とも高大連携の協定を締結する大学も増えています。大学側としても、高校とのつながりができることがプラスになる面があれば協力してくれるのではないでしょうか。

最近は、知りたいことがあると大学の先生に自らアポをとる高校生も増えているようで、大学教員側も自分の研究分野に興味を持って中高生から質問されたら嬉しいのでできるだけ協力するという話も聞いたことがあります。

ですから、生徒たちが話を聞いてみたいと思う大学教員を探して、解説をお願いしてみるという方法もあると思います。先生がお願いするよりも、生徒からお願いした方がスムーズにいくケースが多いようです。もちろん、多忙な場合などは断られることもあるかもしれませんが、それも経験の1つとなるでしょう。

大学の研究室で話を聞くことになれば、オープンキャンパスではわからない雰囲気なども知ることができます。知名度だけで受験する大学を選ぶのではなく、「この大学で学びたい」「この先生の下で研究したい」という気持ちで選ぶきっかけになるかもしれません。

また、高校生たちが熱心に取り組む姿を見せれば、学校として高大連携プログラムの提案などもしやすくなるかもしれません。

場合によっては、法律について知るだけでなく、改正によって影響を受ける側の人たちに話を聞くことが必要になることもあるでしょう。いろいろな分野の人たちから話を聞くことは、キャリア教育にもつながると思います。

3.自分の意見をまとめて提出

募集内容がしっかりと理解できたら、それについてどう考えるか自分の意見をまとめてパブコメ募集のサイトから提出します。意見を書く作業は、アウトプットのトレーニングにもなるでしょう。

4.結果が出たら、他者の意見を確認する

提出して終わりではなく、他の人たちはどのように考えていたかを確認することも大切です。さらに、そのような意見が出たのになぜ修正されなかったのかなども考えると、学びを深めることができるでしょう。

5.気になるニュースと絡めてパブコメを遡る

募集中のものだけでなく、募集が終了したパブコメを見ることにも学びがあると思います。

例えば、牛のランピースキン病について。

2024年11月に、日本で初めて牛の感染症「ランピースキン病」が確認され、12月13日時点で、福岡県の18農場で確認されました。

これについて遡ってみると、2024年2月2日に開催された「第269回動物用医薬品専門調査会」で、「ランピースキン病生ワクチン(Bovilis Lumpyvax-E)を接種した牛に由来する食品の安全性に係る食品健康影響評価」について話し合われ、2024年2月21日付でこの審議結果に関するパブコメを募集していました。

けれども、2月の時点ではほとんどの人はランピースキン病に関心がなかったようで、意見は2通しか出されませんでした。

ランピースキン病生ワクチン(Bovilis Lumpyvax-E)を接種した牛に由来する食品の安全性に係る食品健康影響評価に関する審議結果(案)についての意見・情報の募集結果について

2月に意見募集されていたときには自分には関係ないと思っていたことも、12月には私たちの食生活に関係してきたことがわかります。

このように、ニュースと関連して遡ることからも学びがあると思います。

学校教育に関するパブコメなども、関心を持ちやすいかもしれません。
(下記募集は終了しています)

日頃からパブコメに関心を持つことで、生活に関わる法律、各政党の政策や選挙に関心を持つことにもつながるでしょう。

前回の議事録同様、こちらも教材はいくらでもありますし、特別な道具や場所も不要です。勉強との両立が難しいからと部活動に入らない生徒でも、パブコメ部なら勉強との両立もしやすく、推薦や総合型選抜の役にも立つので入部するかもしれません。新しい部活動や同好会として、始めてみてはいかがでしょうか。