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教材は無限! 議事録を活用した探究プログラム

中学校や高校で、様々な探究プログラムが導入されています。けれども、企業とのコラボや世界に目を向ける活動などが多いように感じます。今の日本に必要なのは、私たちの生活に直接関係のある政策や法律にもっと関心を持ち、疑問を持ったら自分で調べる力を育むことではないでしょうか。私がぜひ導入してほしいと考えた探究プログラムを、時々書いていこうと思います。


本当の意味での「探究」

学校で導入されている探究プログラムの例として、企業からミッションを与えられ、それについて生徒たちが何らかの提案をするというものがあります。

全国大会もある人気のプログラムですが、企業からミッションを与えられた時点で、本当の意味での探究とは言えないように思います。もちろん、大きなテーマからどんな課題を見つけ、それを解決するためにどのような提案をするかは生徒(グループ)によって異なります。そうだとしても、生徒たちが生活の中で自然に疑問を持ったものではないことが多いのではないでしょうか。

今の日本では、日常生活の中で関心を持ちさえすれば、疑問に思うことは山ほどあります。その多くは、健康やお金、権利など、自分たちの生活に直接関係があることです。そういったことに関心を持つきっかけになるようなプログラムというのは、あまり導入されていないように感じます。

公立の学校では、教材や予算など、探究学習に必要なリソースが不足している場合も多いと思います。けれども、お金や教材がなくても、探究学習はできるはずです。大切なのは、「疑問を持つ」ということではないでしょうか。予算がなくても、教材がなくても、先生方が関心を持てば、子どもたちの未来のために必要な探究活動を行う方法はあると思います。

「無関心」から「自分ごと」へ

近年は、部活動や授業で「模擬国連」を導入している学校が増えています。

「模擬国連」とは、参加者が各国の大使(外交官)になりきり、国連の会議や国際会議を模擬する活動です。多岐にわたる国際問題が取り上げられ、参加者はそれらの議題に対して担当国の政策や歴史、外交関係などを調べ、担当国の大使という立場で政策を作り、議論や交渉、スピーチ等を行います。

国内の大会だけでなく国際大会もあり、国際社会が抱える様々な課題について学び、リサーチする力や交渉力などを育むプログラムとして高く評価されているようです。

自分の立場で政策などを考えるのではなく、担当国の大使になりきることで、他国の課題や問題を「自分ごと」として考えられるのもよい点だと思います。

けれども、今の日本に起きていることを考えたら、国際社会の課題に目を向けるより、まず国内に目を向けるべきではないでしょうか。国民が知らないうちに重要な法案が通り、このままではどんどん自由や権利が奪われていきます。

そこで、ぜひ探究プログラムとして導入してほしいと考えたのが、公開されている議事録を活用したロールプレイング「模擬審査会」(仮称)です。

教材は議事録

「なりきる」ことが「自分ごと」として考えるのに役立つなら、ぜひ議事録を教材として活用してほしいです。様々な議事録が公開されていますが、まずは私たちの命や健康と密接に関係している厚労省が公開している議事録を扱ってほしいと思います。

例えば、「第17回 医薬品等行政評価・監視委員会」(令和6年9月20日開催)の議事録です。

資料

上記の議事録では、まず、事務局に異動があったことが報告されています。

私たちの生活に深く関わることを決める人たちは、どのように選ばれているのでしょうか。少なくとも、選挙で選ばれた人ではありません。

議事録には、利益相反についての報告も書かれています。審議会に参画している人は、研究費の受取状況などを報告しなければなりません。
出席委員からの申告書(寄附金等の受取額)

上記の資料には、50万円以下、あるいは50万円超~500万円以下を製薬会社から受領している委員がいることが書かれています。

支払った製薬会社や金額、受領した委員について、具体的に書かれた議事録もあります(下記参照)。

このように、私たちの生活に関わることを決めている人たちについて知るためにも、議事録は役立ちます。

再び、最初の議事録に戻ります。

この議事録の本題は、「催奇形性を示す薬剤に関する安全対策の現状について」と「9価HPVワクチンの接種状況について」です。どちらも重要ですが、後半の「9価HPVワクチンの接種状況について」は中高生に直接関係があります。生徒たちに委員長や各委員のセリフを割り振って審議会のロールプレイングを行うことで、様々な気づきや学びがあると思います。

この議事録では、医療の問題だけでなく、広告に関する問題についても考えることができます。

私たち国民には、私たちの生活に関わることがどのように決められているか知る権利があるはずです。どのような内容であれ、議事録は政府が公開しているものなので、生徒たちにも知る権利があると思います。

たくさんの議事録がネット上で公開されていますが、わざわざ調べなければ見る機会はありません。つまり、政府は国民に対して親切に知らせようとはしてくれないのです。どこに何が公開されているかさえ、自分で調べようとしなければ誰も教えてくれません。

それを中高生のうちに知っておくことは、これから生きていく上で大きな力となるはずです。

「模擬審議会」(仮称)を通して、生徒たちが何を感じ取るかはわかりません。もしかしたら、何も感じないかもしれませんが、大人が思う課題などを押しつけては意味がありません。まずは、議事録を活用したロールプレイを行い、終了後の振り返り(感想を提出)をセットで実践してみることから始めてみてはいかがでしょうか。

議事録に書かれた意見は本人(生徒)のものではありませんが、自分の考えと違う意見が割り当てられたら、違和感を覚える生徒がでてくるかもしれません。あるいは、議事録の本題とは直接関係ない部分、例えば「なぜ何年も同じ人が委員を続けられるのか?」などに疑問を持つ生徒が出てくるかもしれません。疑問が生じれば、そこから本当の意味での探究が始まると思います。生徒たちの反応を見ながら、事前に下調べをしたり、議論の場を作るなど、発展的な内容に変えていくこともできるでしょう。

このプログラムには、お金も特別な教材も必要ありません。公開されている議事録が教材なのです。

1つの議事録をやり終えたら、それと関連する議事録を探したり、気になるニュースと関連する議事録を探すなどすれば、教材はいくらでもあります。

実際に導入するとなると問題点が見えてきたりして簡単ではないかもしれませんが、プログラムを考えるヒントになればと思い、記事にしてみました。

<参考>
ニュースと関連した議事録の例

●長崎大学でのエボラウイルス研究



「住民から長崎大学への質問会」議事録(平成31年3月2日)


●マイナ保険証




●牛のランピースキン病

ランピースキン病発生に伴う米国向け牛肉輸出の取扱いについて
農林水産省・厚生労働省(令和6年12月10日)

食品安全委員会動物用医薬品専門調査会(第 269 回)議事録
(令和6年2月2日)