医薬品の有効性や安全性、誰の言葉を信じますか? 製薬マネーと公正性
世界中で医薬品に関する様々な研究論文が発表されていますが、一方で、多くの研究費や講師料、原稿料などが、製薬会社から医師や研究者に提供されています。何らかの形で製薬会社とつながりがある人たちが有効性や安全性を評価して、テレビや記事などで語られる内容は、公正な判断といえるのでしょうか。
「産婦人科の実際」2021年3月号
5月12日にHPVワクチン訴訟を傍聴しましたが、関連資料を調べたかったので後日、国会図書館へ行きました。
そこで、「産婦人科の実際」(2021年3月号)という雑誌に目を通したのですが、気になることがあったのでいろいろと掘り起こしました。
「産婦人科の実際」(金原出版)という雑誌は、出版社のHPでは下記のように紹介されています。
毎号充実した内容を提供し、産婦人科医の「あれ知りたい!」「これ知りたい!」「いま知りたい!」にお応えします。明日からの診療に即役立つプラクティカルな知識が満載です。
どのような医師が購読しているのかわかりませんが、2021年3月号は非常に偏った内容だと感じました。
特集のタイトルがすでに偏った印象ですが、HPに目次が公開されています。

有料ですが、下記の電子配信サービスで記事を読むことができます。
コロナワクチンやHPVワクチンについて調べたことがある人なら、このメンバーを見たら内容が偏っているとすぐにわかると思います。
例えば、森内浩幸氏はコロナワクチンに関するコメントを求められて、テレビ番組にも多く出演していました。エボラウイルスなど危険度が高い病原体を取り扱えるBSLー4施設に指定された、長崎大高度感染症研究センター長も務めています(下記参照)。
岡部信彦氏は、厚労省の審議会の資料等でよく名前を見かけます。
「一般社団法人医療産業イノベーション機構」のサイトで公開されていた講師略歴(2020年に開催されたフォーラム)を見れば、政府との関わりが一目瞭然です。


両者について「製薬マネーデータベース」で調べてみると、下記のデータが得られます。
例:2019年
森内氏は、医師平均より多くの製薬会社から講師料などを受け取っています。


1位にあるMSDは、HPVワクチン訴訟の被告です。Meiji Seika ファルマや武田薬品工業からも受け取っています。

岡部氏も武田薬品工業をはじめ、Meiji Seika ファルマや第一三共など、コロナワクチンと関係している企業から講師料などの提供を受けています。



HPVワクチン訴訟の被告である GSK(グラクソ・スミスクライン) 及び MSD より、講演料又は原稿執筆料として 50 万円以下の受取があったことも、平成25年度第6回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会 議事録(2013年12月25日)に書かれています(下記参照)。
このような人たちが、製薬会社の不利益になるようなことを書くとは思えません。
森内氏の記事は、「ワクチンとはまったく無関係の有害事象(触れ込みや濡れ衣)への恐れから、ワクチン忌避につながることがある」ことを取り上げ、百日咳ワクチンやMMRワクチンなどに関する誤解や偏見(とされること)が起きた経緯、その結果生じた健康被害についてまとめられています。
その中にあった下記の記述は、意味がよくわかりませんでした。つまり、接種後1週間以内に絶対に死亡例が出ないワクチンなどないということだと思いますが、この例えではかえってわかりにくいです。
「有害事象だか副反応だか知らないが、接種して1週間以内に人が死ぬことがあるワクチンなんて絶対嫌だ」という人がいるが、もしも接種してから1週間以内には死亡例が絶対に出ないワクチンがあるのなら、毎週そのワクチンを接種すると永遠の生命が得られることになる。
岡部氏は、ワクチンの安全性に関するWHOの専門家会議(GACVS)が「予防接種ストレス関連反応(ISRR)」という概念を提唱したことについて説明。「これまでの予防接種の副反応は、ワクチン液そのものの反応として捉えられることが多かったが、ワクチンの接種を行うという行為そのものが一連の反応を誘発する可能性があり、これをできるだけ除く、あるいは発症したとしてもそれによる健康障害を最小にし、ワクチン接種の安全性を高めようとすることが、ISRRの概念が提唱されたキーポイントである」と述べています。
5月12日に、HPVワクチン訴訟の被告側証人として証言をした住谷昌彦氏もこの雑誌に記事を執筆しています。2018年のデータでは、被告であるグラクソ・スミスクラインから金銭を受け取っていました。



さらに、厚生労働行政推進調査事業費補助金による研究にも参加しています。
住谷氏は記事で、「薬剤によって特異的にCRPS(複合性局所疼痛症候群)が生じる知見はなく、ワクチン自体ではなく針刺し行為によって生じた疼痛疾患と考えることが妥当である」と述べています。
同じく、HPVワクチン訴訟の被告側証人として証言した角田郁生氏の記事も掲載されていました。2016年~2021年までの個人データからは、2017年(田辺三菱製薬)と2019年(バイエル薬品)から講師謝金の受け取りがあっただけですが、所属する近畿大学医学部は毎年多数の科や研究室で様々な製薬会社から奨学金などを受け取っています。大学で研究を続けるためには、製薬会社との良好な関係を壊すわけにはいかないでしょう。


記事は、HPVワクチン接種後の神経系の「副反応」とされる「HANS(子宮頸がんワクチン関連神経免疫異常症候群)」という概念が国際科学誌上で認知されていないこと、HANSの動物モデルとして発表されたデータには科学的に問題があることを基礎医学の立場から解説しています。
私が気になったのは、この特集には被害者側の記事がないことです。
この雑誌が本当に「医師に役立つ情報」を提供したいなら、推進派だけでなく被害者側の記事も載せるべきだと思います。けれども、製薬会社が広告を出している雑誌なので、被害者側の意見など載せられるはずがないのでしょう。
この特集の「企画者のことば」が、電子配信サービスの無料コンテンツとして公開されています。
企画者のことば より 一部引用
反 HPV ワクチン主義者は,産婦人科医団体が HPV ワクチンを推奨するのは製薬企業からお金を受け取っているからという陰謀論を唱え続け,大多数の産婦人科医が子宮頸癌患者を診療することで報酬を受け取っているという明白で,かつ陰謀論にとっては不都合な真実をあえて無視しています。
「産婦人科医団体が HPV ワクチンを推奨するのは製薬企業からお金を受け取っているから」というのは、「陰謀論」なのでしょうか。この方たちがいう「陰謀論」の定義がわかりませんが、実際に、金銭の受け取りはあるわけですし、そこに忖度があると考えるのは過去の事例(次の記事参照)もあるのですからデマとは違うと思います。
「陰謀論」にとっては不都合な真実については、HPVワクチンの接種対象となっている人数(小6~高1)と、子宮頸がん患者の数はどちらが多いのでしょうか。
文部科学省『令和5年度 学校基本調査(確定値)』『令和4年度 同』より算出されたデータによると、2023年度の小6は1,050,986人、中1が1,066,810人、中2が 1,069,005人、中3が1,085,148人、高1が1,005,341人です。最近は男子にも勧めているので、そのまま合計すると5,277,290人になります。
一方、2021年のデータでは、日本全国で子宮頸がんと診断されたのは10,690人です。
もちろん、単純に比較することはできません。けれども、クリニック等で子宮頸がんの疑いがあると診断したとしても、多くの場合は大学病院などに紹介状を書いて治療はそちらで行うことになるのではないでしょうか。
厚労省のリーフレットによると、HPVワクチン接種は、サーバリックスおよびガーダシルでは3回接種で4〜5万円、シルガード9では3回接種で8〜10万円、2回接種で5〜7万円とのこと。
対象者全員に接種できれば、製薬会社が儲かることは間違いないでしょう。製薬会社が儲かれば、そのお金は結果的に、また医師や研究者にまわってくるのです。
逆に推進派は、なぜこれほどまでに被害者の声には耳を傾けず、むしろ被害者を誹謗中傷し、「安全性のエビデンスはある」といって勧められるのでしょうか。
ちなみに、「企画者のことば」を書いた方たちも、MSDから金銭の受け取りがありました。


両者とも大学に所属されているので、大学としても多額の奨学金などを多数の製薬会社から受け取っています。そのような人たちの言葉に、説得力があるでしょうか。
この雑誌では記事を書いていない他の被告側証人も、ほとんどが製薬会社から講師謝金などを受け取っています。
例えば、これを見てどのように感じますか?

金額はそれほど多くありませんが、被告から「コンサルティング等業務委託費」をもらっている人が、その企業の不利益になることなど言えると思いますか? もし言ったとしたら、その人は今後、どの製薬会社からもコンサルティング等の業務を依頼されることはないでしょう。
下記に証人の名前がありますので、ぜひご自身で調べてみてください。お金の流れが見えてきます。
このような医師たちは、被告側の証人として適任といえるでしょうか。
直接その企業から金銭を受け取っていなくても、今後も製薬会社から講師や原稿執筆の仕事がほしいと思ったら、不利益になることなど言えないでしょう。「あの医師は製薬会社が不利益になることもいうヤツだ」と思われたら、おそらく今後製薬会社からの仕事はなくなるからです。
「講演料」の意味
下記(東洋経済オンラインの記事)は、有料会員限定なので途中までしか読めませんが、1ページに製薬会社が行う「講演」について書かれていました。以下、一部を引用します。
製薬会社にとっての顧客は、患者ではなく医師である。医師による処方箋が必要な「医療用医薬品」が、製薬会社の売り上げの約9割を占めるからだ。医師にアプローチする際、有力な手段が自社主催の講演会だ。
講師には、医師の間で発言力がある「キー・オピニオン・リーダー」(KOL)を起用し、医師を対象にして薬や疾患についての講演を行う。
その狙いについて、製薬会社の複数の営業経験者が「自社の薬に有利になるよう、露骨にならない程度に語ってもらう」と言う。別の担当者は「(講演会場に集まった医師たちに)一網打尽に接触できる」と語った。
ほかにも新薬開発などのアドバイスをしてもらうコンサルティングや、自社が発行する冊子などへの原稿執筆で医師との接点ができる。これらには「謝金」という形で支払う。21年度に製薬会社から医師へ支払われた講師謝金は約250億円にも上る。
講演料は、「自社の薬に有利になるよう、露骨にならない程度に語ってもらう」対価であることがわかります。
そのような対価を得ている人たちの証言は、証言としての価値があるのでしょうか。
テレビでの発言も同じでしょう。森内氏をはじめ、テレビでコロナワクチンを推進していた人たちのほとんどが、このような対価を得ていた人たちです。厚労省の審議会で「ワクチンの安全性に懸念はない」と言い続けている専門家たちも、このような対価を得ています。
年間1000万円の副収入を得る医師は、医師全体の0.07%ほどにすぎない。だが高額受領者は、大学教授や学会の重鎮といった医学界で影響力が強いKOLだ。製薬会社に有利な言動をした場合、結果的にほかの医師の処方や研究が、公正さを損なう可能性がある。
新薬を承認する厚生労働省の審議会では、過去3年のうち審議する製薬会社からの受取額が年間500万円を超える年度がある場合は審議に参加できない。年間50万円を超える年度がある場合は議決には参加できない。
前述の記事には、KOLが製薬会社に有利な言動をすると、結果的にほかの医師の処方や研究が公正さを損なう可能性がある、と書かれています。なぜ受取額が年間500万円を超えなければ、厚労省の審議会に参加できるのでしょうか。金額の問題ではないと思います。
このような人たちが語る「安全」を、信じることができるでしょうか。
長くなったので2回に分けました。次の記事に続きます。
