急性心不全のさわりだけかいてみた。〜第1部:診断編〜
※急性心不全という用語は直近のガイドラインで「非代償性心不全」に変更されましたが、長くてわかりにくいのでこのnoteでは「急性心不全」で統一します。
※"わかりやすく"を最優先にしているため、正式な用語と異なる表現があります(例:左心不全=肺うっ血など)。悪しからず。
まとめて読みたい方は以下のnoteをぜひチェック。
そもそも"心不全"ってどういう病気?
心不全は「心臓の病気」、ととらえると少しわかりにくいです。
正確には、
「①心臓の機能が落ちて②身体の需要に応えられなくなった“状態”」
のことを指します。
身体の需要に応えられない(代償できない)から"非代償性"と呼ばれ、症状が出現するわけです。
(正確に言うと、高血圧や糖尿病とか、将来的に心臓に負担をかけかねない疾患がある時点で"心不全"と定義され、②のように症状が出現することを慣習的に"急性心不全"や"非代償性心不全"と呼んでいました)
ただし"心不全"と一括りにしても、実際の病態は千差万別。
同じ心不全でも、
血圧が高くて肺が水浸しの人と、
血圧が低くて冷や汗をかいている人では、治療が正反対になります。
背景疾患だけでも
不整脈、虚血、心筋症、弁膜症。
さらに増悪の契機(感染症、甲状腺機能亢進症、塩分負荷、腎不全など)まで含めたら、パターン別に対処法を書くのは不可能でしょう。
しかし、急性心不全の初期対応だけなら、
循環器内科医が注目しているのは大きく2つだけ。
うっ血しているか
心拍出が足りているか(低心拍出:Low Output)
この2つさえわかれば、初期対応は十分可能です。
このあと書く診断の話は、この2点の確認に尽きます。
うっ血──左と右で症状が違う
うっ血とは、心臓の内圧が上がって症状が出る状態。
ただし内圧が上がっているのが左心か右心かで症状が異なります。①肺うっ血(左心のうっ血) と ②体うっ血(右心のうっ血) に分けて考える。これは治療選択に直結するので、必ず区別してください。
※以下、イメージを伝えやすくするため非理論的な表現を多用しています。言葉通りには捉えないでください。

① 肺うっ血
左心系の内圧が上昇すると、血液がスムーズに前へ流れなくなり、
手前にあたる肺循環で血流が滞ります。
肺は左心系と直接つながっている臓器です。
左心系の圧が上がれば、肺の毛細血管内圧も上昇し、
血管内の水分が肺胞側へ滲み出る。
結果として肺の中がいわば「水びだし」の状態になります。
こうなるとガス交換がうまく行えず、酸素を十分に取り込めなくなる。
これが酸素化低下、呼吸困難、息切れ、起座呼吸の正体です。
胸部X線ではいわゆる肺水腫様の陰影を呈します。
肺うっ血のポイントは、症状の多くが「肺の病気のように見える」こと。
ここが心不全診断を難しくしている理由の一つです。
② 体うっ血
体うっ血は、右心系の前方にある全身の静脈系で起こります。
右心系が受け取れなくなった血液が、全身の静脈側に滞る。
下肢の静脈がうっ血すれば下腿浮腫。
頸部であれば頸静脈怒張。
体重増加も体うっ血を反映する重要なサインです。
消化管にも影響します。腸管がうっ血すると、食欲不振や便秘といった一見心臓と関係なさそうな症状が出る。
これもれっきとした心不全の症状です。
注意したいのが胸水の解釈。
胸水は肺の「中」ではなく「外」に貯留した水分なので、
肺うっ血ではなく体うっ血の所見として解釈します(私見)。
低拍出(Low Output Syndrome、いわゆるLOS)
次に注目するのが
③低心拍出による症状(Low Output Syndrome、いわゆるLOS)です。
これは単純に「各臓器に必要な血液、酸素が供給されていない」状態、
いわゆるショックと似た様な状態です。
厳密に言うとショックと低拍出は少し違って
ショック→全身の酸素需給の破綻
低心拍出→心臓からの拍出が足りてなくて全身の酸素供給が不十分
ということでショックの中の原因の1つとして低心拍出があるって位置付けですね。
基本は「ショック」の時に出てくる症状、身体所見と同じになります。
バイタルも注意が必要。
頻呼吸は当然として、HRが 100をこえてくる場合は、心不全にしてもHRが高めである、という印象を持ちましょう。
この③LOSがあるかどうかで治療方針が大きく変化するため、③の項目は採血含めて必ず確認しておきましょう。
病歴、症状&身体所見の評価

心不全の身体所見は上記の表に応じてチェックしていきましょう。
身体所見も症状も
①肺うっ血
②体うっ血
③低心拍出
にわけて考えると初期対応の治療がわかります。ちらみせしておきましょう。

肺うっ血の兆候、症状
急性心不全による肺うっ血でまず前面に出てくる症状は、やはり呼吸困難と低酸素です。
ここは誰も異論がないと思います。
さて、ここでクイズです。
「1か月前からの労作時呼吸困難」
典型的な心不全っぽいですか?
答え:No。
理由は、心不全としては
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