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【東大卒:循環器内科監修】急性心不全の薬物管理パーフェクトマニュアル

はじめに

初めまして、なんでもないかと申します。

せっかくなので自己紹介です。

東大医学部を卒業し、現在都内で循環器内科医師として勤務中。

初期研修にて、救急外来で血管内リンパ腫を診断できる化け物みたいな内科医との出会いを経て総合内科医の道に進もうとするも「とりあえず専門は何か持っておきなさい」と言われて、路頭に迷う。

「医師として最低限度の救命能力が欲しい」と思い循環器内科を志望、地方の野戦病院でのICU研修を経て集中治療もいいなと思い始めた今日この頃。

さて、そんな私ですが初期研修の時には学習方法で苦労しました。

世の中の医学書大体全てに言えると思うんですが、

  • 核心部分までの前置きが長すぎる

  • 正確な文章を書くことにこだわる余り情報が多すぎる

  • 一読しても結局どう実臨床に活かせばいいかわからない

要するに長くて高くないですか?大体の教科書って。

なので僕の発信記事のコンセプトとして

手に取りやすい価格、エビデンスより記憶のしやすさを重視して
経験不足な医師でも一人で初期対応できるようになる

ことを重視しています。

どんな病気でも初期対応だけなら数ページにやることまとめられると思いますし、正直実臨床で一番大事なのって

『病態生理はよくわかんないけど、とりあえず対応できる』

っていう各疾患ごとに対するお作法を知っておくことだと思います

ということで、循環器内科以外は系統だって経験しにくい、急性心不全という病態について、簡単に解説してみました。こんな人たちにおすすめです。

  • 初期研修で循環器内科ローテ中、もしくはローテ後

  • 後期研修、救急研修で心不全を診なくちゃいけない3〜5年目

  • 手癖で心不全を見慣れてしまった循環器内科医

  • 内科なんでも診なくちゃいけない開業医

心不全って怖いしとっつきにくい、、、、

利尿剤使って血圧下がったらどうしよう

心不全の時の心エコーって何を評価すればいいの?

こんな疑問が全て氷解します。

病態生理は必要最低限にして、薬物治療を迷わず行えることに特化したマニュアルです。

また、今回初の有料記事ということもあって価格は1000円以下に設定しています。

読んで役立ったと思っていただけたら、ぜひSNSで感想をいただけると嬉しいです!

また、この記事は適宜追記していく予定なので、順次値上げする可能性があります。なので今これをみている瞬間が最安値です。後悔させませんので、ぜひ一度目を通してください。

この記事では有症状の心不全(非代償性心不全)についてのみ扱います。

🫀このnoteを読むとできるようになること

①症状のある心不全の診断ができるようになる
②初期対応ができるようになる

③退院までの心不全薬の導入、調整ができるようになる

④退院までに必要なことが何か大まかにわかる

ちなみに、『長い!!』って人は、小分けにした以下のnoteもあるのでぜひご一読ください😇。



①心不全の診断+病態分析

まず心不全とはなんでしょう、簡単に言うと

心臓の機能が悪くて多彩な症状(※)が出る症候群

当たり前のこと言うなと思うかもしれませんが、大事なことです。※の症状については以下の表をご覧ください。

主訴としては労作時呼吸苦、起座呼吸、下腿浮腫、倦怠感などで心不全を疑い、随伴症状や身体所見で心不全の裏付けをとっていく流れになります。

以下の表項目はチェックしておくべきでしょう。特に赤文字は必ずチェックです。


理解を助けるために、心不全の症状について説明します。

心不全の症状は大きくわけてうっ血による症状と低心拍出による症状にわかれ、うっ血も①肺うっ血(左心不全)と②体うっ血(右心不全)の症状に分けられます。

うっ血は簡単に言うと「心臓の内圧があがって症状が出る状態」ですが、内圧が上がっているのが左心なのか右心なのかで症状が違うんです。これは治療法にも関わるので必ず区別してください。

(※ちなみに以下の説明はイメージを伝えやすくするため非理論的な表現を多用しています)


まず①肺うっ血から説明すると、左心系の内圧が高いと血流が停滞し、左心に入る前、繋がっている臓器の肺の内圧も高くなり、肺の中が水びだし状態になります。

そうなると肺でのガス交換がうまくできず、酸素の取り込みができなくなり酸素化の低下や呼吸苦、息切れ、起座呼吸などの肺由来の症状が出現します。レントゲンではいわゆる肺水腫様の像を示すようになり、これが肺うっ血という状態です。

対して②体うっ血は、上の表から見ると右心系の前は全身の静脈系なので、下肢の静脈がうっ血するなら下腿浮腫、頸部なら頸静脈怒張などの身体所見、症状は体重増加や腸管のうっ血を反映して食思不振や便秘という症状が出てくるわけです。

注意するのは胸水の所見は肺の外の水分なので肺うっ血でなく体うっ血の所見だと解釈します。

さて、次が③低心拍出による症状(Low Output Syndrome、いわゆるLOS)です。これは単純に「各臓器に必要な血液、酸素が供給されていない」状態、いわゆるショックと同じ状況です。


ということでいわゆる「ショック」の時に出てくる症状、身体所見と同じになります。

バイタルも注意が必要で、頻呼吸は当然として、HRが 100をこえてくる場合は、心不全にしてもHRが高めである、という印象を持ちましょう。

ショックの併発や、内分泌異常(甲状腺機能亢進、もしくは褐色細胞腫など)について一度は思いを馳せたい。

この③LOSがあるかどうかで治療方針が大きく変化するため、③の項目は採血含めて必ず確認しておきましょう

身体所見は上の表を参考にして診察しましょう。特に大動脈弁狭窄症ASを疑うような収縮期駆出性雑音があるかを必ず確認。


ASの心雑音なんてわかんないよ、、、、という人は、最強点と放散の2点に注目するといいでしょう。

最強点は胸骨右縁(第2肋間前後)から左縁、心尖部(胸骨左縁第5肋間前後の鎖骨中線付近)のいずれかです。心尖部に強いと僧帽弁閉鎖不全MRとの鑑別が難しくなりますが、大動脈弁狭窄では胸骨左縁や右縁でも聞かれやすい(放散する)こと、また、雑音の持続が短いことが参考になります。MRは『全』収縮期雑音なので持続時間がASの雑音と比較して長いです。

心不全を疑った際に必要な検査

・採血(BNP, d-dimer, 血液ガス含む)

・胸部Xp(立位か座位)

・心電図
※ST変化や徐脈の所見に注意
※心房細動あれば甲状腺ホルモン確認

・心エコー
→EFがいいか悪いか、壁運動異常、弁膜症のチェック

※前のデータがあれば比較して検討

・採血
BNPは当然として、ショックがあるかの判断をするために肝機能、腎機能の項目は必須。
頻呼吸があれば血液ガス(ABG)も採取して乳酸の上昇やP/F(PaO2/FiO2比;400以上が正常)について確認したいところ。

ここであらためてショックの採血項目についてまとめておきます。


肝機能、腎機能異常だけであれば、うっ血肝、うっ血腎による採血異常の可能性もあるのですが、EFが悪かったりASなどの弁膜症が重症であれば、LOSが併発していると判断した方が無難でしょう。強心薬を開始した上で利尿剤や血管拡張薬を使用するべき。

・胸部Xp

心不全兆候である胸水、心拡大、肺水腫を確認しましょう。

以前も言いましたが胸水は体うっ血、肺水腫は肺うっ血の所見であることを区別しましょう。

身体所見で心不全兆候に乏しくて「心不全にはなってないかな?」って感じた症例でも、Xpを撮像したらしこたま胸水溜まっている症例、、、なんてのも日常茶飯事です。Xpは心疾患、心不全を疑う場合ルーチンで撮像していいと思います。

 2025 心不全ガイドラインより引用

・心電図

心不全の患者で心電図を読む時、大事なのはこの2つ。

虚血性心疾患や徐脈性不整脈(洞不全症候群、または房室ブロック)を疑う所見があるかに注目しましょう。

なぜなら上記疾患を疑う場合、心不全の初期対応として緊急冠動脈造影や一時的ペーシングが必要だからです。

ST上昇含むST変化の所見があれば、急性冠症候群ACSを契機とした心不全が鑑別となり、心不全の治療どうこう言う前に緊急冠動脈造影、およびインターベンションによる治療を行わないと、一生心不全が治りません。徐脈性不整脈の場合も同様にペーシングしないと治療に反応しません。

病歴で心不全症状の前に急性(acuteからsudden onset)の胸痛や胸部不快感があったかどうかは必ず確認しましょう。心不全のonsetは基本gradual onsetなので、acuteからsuddenの胸部イベントが先行していた場合、ACS含めた血管イベントを背景とした心不全を疑うべきです。

例外として夜間に血圧が急に上昇した心原性肺水腫(いわゆるCS1の心不全)ならこういったacuteな経過でいいんですが、、、それ以外は基本gradualな病歴であることを覚えておきましょう。

心房細動があっても血行動態が破綻していなければ放っておいていいです。適切な急性心不全の治療ができれば、勝手にHRは下がっていきます。初回指摘なら抗凝固薬の内服を導入して循環器内科外来へ翌日相談。
ただし甲状腺機能異常があるとその治療をしないとAfが治らないため、甲状腺ホルモンのFT4、TSHは測定しておくべきですね。

・心エコー

細かい項目も測定できると素晴らしいですが、エコーの測定に時間を割きすぎて治療が遅れるのは本末転倒。大雑把に以下の3つが把握できれば十分です。

  • LVEFが良いか悪いか(40%程度を目安)

  • 壁運動異常の有無

  • 弁膜症の有無

LVEF(Left Ventricular Ejection Fraction)の値は大事は大事なんですが、『LOSになりやすい心臓なのか』が大雑把にわかれば良いため、EFが良いか悪いかだけ判断できれば初療では十分です。目安は 40%以下は悪そう、50%以上なら良い心臓、と評価していいです。

「局所的に壁運動異常がある場合のEFはどう見た目で評価しますか?」とよく聞かれますが、壁運動異常がある時点で良くはないでしょう笑。「悪い」扱いでいいと思います。

あとは虚血性心疾患を疑うような壁運動異常や弁膜症(特に大動脈弁狭窄症AS)の所見が大事。

もし細かい項目が測定できれば、以下のように「各測定値がなんの症状と関連するか」を意識しながら測定するといいでしょう。

①肺うっ血→E/A、E/e”、(TRPG)
②体うっ血→IVC(呼吸性変動含む)、TRPG
③低心拍出→LVOT-VTI、ASの重症度、LVEF

※IVC:下大静脈(inferior vena cava
※LVOT-VTI:左室流出路速度時間積分値(Left Ventricular Outflow Tract Velocity Time Integral)

②初期治療

急ぎで対応しなければならない場合は以下です。体うっ血所見だけなら、翌日循環器内科受診の指示で大丈夫。

心不全の初期治療を急ぐ場合

・酸素需要がある(肺うっ血)
・循環不全がある(LOS)

さて、上記所見がある場合は急性心不全(救急対応を要する心不全、という意味で急性心不全とこのブログでは定義します)として初期対応をしましょう。

実は、急性心不全の治療薬は3つしかありません。


診断、評価の章でうっ血と低心拍出の評価はしているはずで、各々に対応する治療薬が血管拡張薬、利尿薬、強心薬、というわけです。

RA=右房圧、PAWP=肺動脈楔入圧、CI=心係数(CI、cardiac index)COを体表面積で補正した値


実際の治療薬の投与順番も踏まえると、以下のような流れで対応します。

🫀急性心不全の初期対応

0️⃣まずLOSの兆候があるか確認
→LOSが否定できなければ
血管拡張薬や利尿剤は使用せずに
循環器内科に相談or循環器病院へ転送

※どうしても自分で対応する時で
虚血性心疾患の可能性が低ければ
ドブタミンを2γを開始

1️⃣血管拡張薬(ニトログリセリン)を使用
※血圧が110以上が大前提

※以下の3大禁忌のチェック
✅AS、左室流出路狭窄LVOTOなどの
低心拍出症候群のリスク
✅右室梗塞、心タンポナーデ
含めた右心不全
✅ホスホジエステラーゼ5阻害薬
バイアグラなど

2️⃣酸素4Lでも低酸素が持続する場合
早期に非侵襲的陽圧換気療法(NPPV)の使用を検討

※暴れてNPPVがつけられない場合は鎮静薬を考慮するが
ショックか低心機能だと鎮静で心停止する場合があるので注意
その場合はミダゾラムがおすすめ

3️⃣体うっ血の兆候あれば
利尿剤(ラシックス)を注射

※血圧が低めの状況であれば
無理に併用しない

LOSの兆候があるか確認

この状態の時は循環器内科やICU医などショックを見慣れている医師にいかに早く引き渡すかが大事。目安として収縮期血圧110以下の場合はLOSの可能性を考慮し、血管拡張薬や利尿剤は使用せずに専門医に引き渡してください。


※以下、なぜLOSでは利尿剤や血管拡張薬を使用してはいけないのか、説明しています。

直感的に納得していただくため非論理的な表現がわんさか出てきます、きちんと勉強したければ循環動態の書籍を読んでみてください。

基本心拍出量は右心系の圧、左心系の圧に比例します(←部分的に嘘なんですが、皆さんが遭遇するシチュエーションではこの状況が大半なのでこの前提で話をすすめます)。
要するに右房圧(RA)、左房圧(≒PAWP)が高ければ高いほど心拍出量は増えます。

そして

・利尿薬   →右房圧を下げて体うっ血を解消
・血管拡張薬 →左房圧を下げて肺うっ血を解消

という原則があるため、上記治療薬は2つとも心拍出量COを下げる副作用が付きまとうのです。

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実はここも部分的に嘘で、血管拡張薬は(特にLVEFが低めの心不全の場合は)心拍出量を上昇させる可能性があります。
右心系の圧が高すぎて左心を圧排している場合でも、利尿剤は心拍出量を上昇させる可能性があり、詳しく知りたい方は心室間相互作用で調べてみてください。

しかし、非専門医や循環器駆け出しの医師が、自分一人でこんな病態生理を考えるシチュエーションはないのでこの記事では割愛します。

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なのでEFが低い心臓だと上記治療薬で心拍出量COが下がりLOSになるリスクが高いので、強心薬でCOを上昇させながら、血管拡張薬や利尿剤などの追加治療を行いうっ血の解消を狙う、というのが基本スタンスになってきます。

まとめると、LOS状態、もしくはLOSのリスクがある場合は血管拡張薬や利尿剤は病態を悪化させる可能性があるので、強心薬や補助循環などで心拍出量を保ちながらうっ血を解消していくのが基本スタンス。

、、、、、、が、正直慣れてないと無理です。収縮期血圧が低め(110以下だと個人的にはちょっと危ないかな、と思ってます)な時点で非専門医が単独で見ることを諦めましょう。

循環器内科に気軽にアクセスできなければ、高度医療センターに転院搬送もやむを得ないと思います。


血管拡張薬の使用

1️⃣血管拡張薬(ニトログリセリン)を使用
これと利尿剤使っておけば8割の心不全は勝手に治ります。
救急外来での初期対応のレベルなら、血管拡張薬は硝酸薬のニトログリセリン1つ使えれば十分です。

ちなみに血管拡張薬はCa拮抗薬であるニカルジピンもありますが、なぜ硝酸薬の方が第一選択なのか、説明します。

心不全患者では交感神経賦活などの影響で静脈も動脈も収縮傾向、特にクリニカルシナリオ通称CS1で呼ばれる電撃性肺水腫の病態では末梢血管に収まることができなくなった血液が肺に一極集中する形になります。当然肺うっ血を引き起こすわけですね。

肺水腫の病態の場合、動脈だけでなくて静脈も拡張させることで血液が末梢静脈にプールされ、不自然に肺に集中した血液を減らすことができます。しかも利尿剤より効き目が早く、迅速に前負荷が下がるので、即効性という意味でも利尿剤より血管拡張薬に軍配があがります。

Ca拮抗薬のニカルジピンは実は動脈メインの拡張作用が主であり、静脈も動脈も全体的に拡張するのは硝酸薬の方なんです。なので急性心不全に対する血管拡張薬は硝酸薬のほうが好まれます。

ただし、硝酸薬の禁忌のチェックを忘れずに。大動脈弁狭窄症ASの有無はなんとしても心エコーで判断できるようになりたいですが、臨床的に問題になるレベルのAS(≒重症AS)なら心雑音がビュンビュン聞こえていることでしょう。心音聴取は欠かさずに。

もし心エコーの過去の検査歴があればそちらも参考にしておきましょう。

※硝酸薬の禁忌項目
①AS、左室流出路狭窄LVOTOやショックなどの低心拍出のリスク確認
②右室梗塞、大動脈解離の心タンポ含めた右心不全
③ホスホジエステラーゼ5阻害薬の内服確認、バイアグラなど

ニトログリセリン(ミオコール)

1シリンジ(25mg/50mL) 計50mL
2ccshotして3ml/hで開始
初期調整は5分程度目処に1ml/hずつ調整

⭐️収縮期血圧140以下を目指す
初期血圧から20-25%の降圧でも可

※10ml/hまで使用しても
降圧目標未達成なら
ニカルジピン使用を考慮

※一刻も早く降圧したい場合
1cc shotして1ml/h増量などshotを併用

※48時間程度で耐性ができるので
その間に内服(ARB/ACEiが良い)や
他点滴薬に切り替えるイメージ

ただし、上記でも降圧未達成であればニカルジピンの出番です。

ニカルジピン

※体重換算不要

5A(50mg/50mL) 計50mL
3ml/hで開始 1ml/hずつ調整
1-15ml/hの間で調整

※高頻度で静脈炎を起こすので
できればCVから投与を
施設によっては濃度を半分にして
末梢から使用します

※反応性頻脈になることも
大動脈解離の使用時なら
βブロッカーを併用する方が無難

NPPVの使用

2️⃣酸素4Lでも低酸素が持続する場合
早期に非侵襲的陽圧換気療法(NPPV)の使用を検討

肺うっ血がひどい時に奏功するのが血管拡張薬、そして非侵襲的陽圧換気療法NPPV(BiPAP)や人工呼吸器IPPVによる呼気終末陽圧PEEPをかけることです。

PEEPをかけることで左心圧を下げて肺うっ血の解消が狙えますが、前負荷が下がるため必要以上に血圧が下がる可能性があります。

しかし
・挿管技術がなくても使用可能
・設定方法がIPPV(人工呼吸器)より簡単

という2点から一般内科医でも使用法については知っておきたいところ。

特に肺うっ血があるAS患者にはNPPVはいつもお世話になってます。重症ASは血管拡張薬が禁忌ですし、利尿剤が効きすぎてもショックになることがあるので、肺うっ血についてはNPPVで対応することが多いです。

さて、NPPVは2つモードがあり
・CPAPmode
(陽圧PEEPを一定圧でずっとかけ続ける)
・S/T mode 
(PEEPに加えて吸気にも圧を追加する)

心不全なら基本CPAPmodeでいいですが、高CO2血症が合併している場合はS/T modeを使ってください。(参考;https://www.kango-roo.com/learning/3502/)

以下はCOPDや肺気腫がなく、普段のSpO2が95%以上保たれている場合の指示です。

もし普段のSpO2のベースが低い(COPDの人などは普段からSpO2 90%前後であることが多い)場合、病棟での管理目標もそこを目指しましょう。

※呼吸器設定については、私が後日販売する集中治療管理マニュアルにも記載しています。ぜひみてください。

NPPV使用指示
・CPAPmode

CPAP 6(cmH2O)
FiO2 100%
から開始

①SpO2 95%以上を目標に
数分ごとにCPAP 2ずつあげる

②SpO2が安定したら
SpO2 95%以上を目標に
FiO2を10%ずつ増減
min 30%, max 80%→超えたらDrcall

※①の部分は血圧が下がることや
低酸素が持続する場合もあるので
安定するまではベッドサイドで
医師が調整することが望ましい


※血圧下がる場合はノルアドレナリンを併用しながら
血圧低下の原因精査と介入を進める

※30分調整してSpO2低下や
頻呼吸、アシドーシスの改善なければ
挿管を考慮

次にCO2貯留がある場合、換気量を多くしてCO2を下げる必要があるので吸気時に追加で圧をかける必要があります。

NPPV使用指示
・S/T mode


IPAP 10, EPAP 6
FiO2 100%
呼吸回数 20
から開始

⭐️酸素設定
①SpO2 95%以上を目標に
数分ごとにEPAP 2ずつあげる
②SpO2が安定したら
SpO2 95%以上を目標
FiO2を10%ずつ増減
min 30%, max 80%→超えたらDrcall
(ナルコーシスリスクあり
速やかにFiO2は下げていく)

※①の部分は血圧が下がることや
低酸素が持続する場合もあるので
安定するまでは
医師が調整することが望ましい

⭐️CO2設定
①アシドーシス改善を目標に
数分ごとにIPAP 2ずつあげる
もしくは呼吸回数をあげる


※血圧下がる場合はノルアド使用
※30分調整してSpO2低下や
頻呼吸の改善なければ
挿管を考慮

利尿剤の使用

3️⃣体うっ血の兆候あれば
利尿剤(ラシックス)の併用を検討

ここからようやく利尿剤のターンです。ここまでの流れで分かったと思いますが、急性心不全の予後に関わる危ない状態は

①LOS
②肺うっ血による低酸素
③体うっ血

の順なので、体うっ血のみ目立つ心不全は緊急対応は不要です。

なので利尿剤をうつことよりも、血管拡張薬やNPPVを使いこなす方が大事。

あとは血圧低い人や重症ASがあるLOSのリスクが高い患者に利尿剤を使用する方がよっぽどriskyだったりするので、LOSリスクがあるなら無理に利尿剤をうたない、という選択ができるようになりましょう。

フロセミド(ラシックス)
1A(20mg/2mL)

まず1Aを静脈注射して
反応尿(尿色の薄さ、時間尿量)をみる

尿量 100-150mL/hourなら
効き目は良いと判断

※腎機能が悪い人ほど効き目が悪い

※電解質、腎機能を適宜フォロー

※利尿が足りない場合は
1A→2A→4Aなど
1回の注射量を倍々に増やす

上記で反応が悪ければ(ラシックス80mgでも尿量がでない場合)以下の選択肢があります。

①ラシックスの持続静脈注射
②トルバプタンの静脈注射

ラシックスの持続注射

フロセミド(ラシックス)10A(200mg/20mL)+溶媒 28mL
合計48mL
1ml/hで開始
最大2ml/hまで

尿量を数時間ごとに測定し
0.5-1ml/hずつ増減

トルバプタン(サムタス)

1V(50mg/1V)+溶媒50mL 計50mL
1時間で投与

翌日にNa含めた電解質、腎機能を必ずチェック

※1日尿量が4Lを超える場合も
(例;6時間で1L以上尿が出る)
当日に一度採血チェックを推奨

※意識障害など
自分から飲水ができない患者は禁忌

サムタスを使用する場合は飲水制限の禁止、および翌日の採血が必須になります。原則ループ利尿剤との併用が必須で、腎機能にあまり影響しない(フロセミドより腎前性腎障害をおこしにくい薬剤、、、、という触れ込み)利尿剤です。

腎臓の集合管に作用し、水単独での利尿を促す利尿剤なので高Naになる可能性がある薬物です。対してフロセミド含めたループ利尿薬は、KやNaなどの電解質と水をまとめて尿に出す薬です。

サムタスは添付文書上、投与後数時間での採血や尿検査を推奨しています、、、、、が実臨床でやっている先生あんまりいませんね、やったほうが丁寧ではありますが笑。最低でも翌日の採血は必ず確認しましょう

ただし尿量が出過ぎた場合(個人的には3-4L/日程度を目安にしています)は翌日を待たずに採血チェックしたほうがいいかと。

循環器内科に緊急コンサルする状況

循環器内科へ夜間でも緊急コンサルトが必要な状況

・LOS、ショック
・ACSを強く疑う病歴、検査所見
・AS含む重症弁膜症
・HFrEFの急性心不全
・初期対応で状態が改善しない場合

HFrEF:駆出率が低下した心不全(heart failure with reduced ejection fraction)

ひっくるめて言うと血圧が低め(収縮期血圧110以下が目安)か心機能が悪いなら迷わずコンサルト。

あとは急性冠症候群;ACSを契機として急性心不全を発症している場合(突然胸痛を自覚して、そこから呼吸困難も付随したという病歴)は緊急冠動脈造影の適応なので即刻コンサルした方がいい。検査所見では心電図における新規のST上昇や心エコーで新規の壁運動異常を認めた場合が該当するでしょう。

トロポニンが上昇している場合は、、、、、、、急性心不全単独でもトロポニンが上昇する場合があり、ACSの有無はトロポニンでは判断できません。

EFが悪い急性心不全を自分で見なくちゃいけないとき

循環器内科へのアクセスが最悪な病院の夜間当直、もしくはバイト先などの場合は腹を括ってやるしかありません。

強心薬を併用して心拍出量を保ってから、血管拡張薬、NPPV、利尿剤など上記の対応をしましょう。この場合は普段より慎重に点滴を管理する(0.5ml/hずつ増減、shotは普段の半分になど)べきです。

※ただし、強心薬は大なり小なり催不整脈作用があるため、心室頻拍VTや心室細動Vfを誘発する可能性があります。そして少しでも急性冠症候群の可能性があるなら虚血を増悪させるので使わない方が無難です。

不整脈が出たとしても、病態の性質上心拍出量を上げるために使わざるを得ないのでしょうがないんですが、、、、一応患者さんに「点滴のせいで不整脈や胸痛が出るかもしれませんが、使わないほうがおそらく危険な病態なので使用します」と一言言っておくと丁寧ですね。

期外収縮が頻発していて、VT、Vfなど心室性不整脈が心配な状況であれば、自分なら無理に強心薬使わずにIABP(Intra-Aortic Balloon Pumpingの略で、日本語では大動脈内バルーンパンピング)含めた補助循環使用を検討します。いずれにせよ循環器に緊急コンサルトですけどね。

①薄いドブタミン(200mg/200mL)

6ml/h(50kg換算で2γ)から開始、3ml/hごとに調整
3γ以上必要なら
濃いものを使用することを検討

※末梢点滴でも投与可
※絶対にいきなり終了しないこと!
3ml/h(1γ)ずつ、できれば数日ごとに
様子見て減量していく

②濃いドブタミン(シリンジ150mg/50mL)

3ml/h(50kg換算で3γ)から開始、1ml/hごとに調整
5γ以上必要なら
補助循環の使用を検討

※中心静脈カテーテルCVから投与するのが原則

治療の効果判定

さて、上記に従って初期対応をしたとしましょう。その後治療が成功しているかどうかを1〜2時間後に評価(LOSriskが高い患者であれば10分から15分で再評価)しなければなりません。

治療が不十分の場合治療強化が必要ですし、最悪なのが治療によってLOSになってしまった場合。強心薬や補助循環を検討しなければならないので、循環器内科のDrcallを検討しなければなりません。

その評価はどうするかというと、、、、以下の項目で判断します。

HR→低下傾向
脈圧→開大(背景の弁膜症にもよるが)
SpO2→改善
呼吸数→低下
尿→希釈尿、150ml/h以上の排尿あり
血液ガス→アシドーシスの改善、乳酸低下
自覚症状→改善

上記の項目を全て確認しましょう、それで3項目以上当てはまらない場合、治療抵抗性と判断し、治療強化を考える必要があります。

、、、、とは言うものの、非専門医であればこの辺がひきどきです。初期対応で良くならなければ夜間でも循環器専門医への依頼を躊躇してはなりません。

③病棟管理〜内服調整〜

酸素需要が落ち着けば(NPPVの離脱が可能であれば)一般病棟で心不全を管理できます。そうなれば点滴も終了して、内服調整での管理が可能となります。

内服としては

  1. 利尿剤

  2. 心保護薬 (fantastic 4)

  3. 増悪因子への介入

ができれば非循環器専門医であれば十分過ぎるでしょう。解説していきます。

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