退職"手続き"プロセスだけではない「オフボーディングプロセス」の導入
アルムナイを整備して退職者との良好な関係を構築・維持しようという企業の取り組みを目にすることが増えています。退職(手続き)プロセスは名前の通り「退職する=会社から離れる」ためのプロセスですが、オフボーディングプロセスは退職者との良好な関係を構築・維持するために「雇用主-従業員の関係から新たな関係に移行する」プロセスとなります。
新たな関係性の中で、機会があれば再び戻ってくることもあれば、自身は戻らなくても他の人材を直接的・間接的に紹介してもらうこともあります。ビジネス上で協業することもあるでしょうし、自社のインフルエンサーとなることもあるでしょう。
退職(手続き)プロセス:退職する=会社から離れるためのプロセス
オフボーディングプロセス:雇用主-従業員の関係から新たな関係に移行する
一連の退職手続き (退職届受理→各種書類提出→貸与物返却…等)の中に
(1) オフボーディングサーベイ
(2) オフボーディングインタビュー
(3) アルムナイ登録 (または再雇用制度登録)
を組み込みます。
社員は退職予定者への会社の扱いをよく見ている
丁寧なオフボーディングプロセスは、退職予定者のためだけでなく、社員のリテンションのためでもあります。退職が決まった社員に対する冷たい扱いや雑な扱いは社員へのネガティブなメッセージとなってしまいます。
(1)「オフボーディングサーベイ」の導入
(自己都合)退職する理由の把握を目的として実施します。把握した退職理由を会社・組織・職場改善やリテンションプログラム改善に活かすためです。
退職手続きがある程度進んだ段階で、退職予定者にサーベイ回答用のURLが送られる (or サーベイシートが送られる) という流れです。
退職理由を自由に記載してもらう方法や、主要な理由を選択肢としてデータ集計をしやすくする方法があります。
【参考】想定退職理由リスト についてはこちら(note)
ただ、退職予定者の本音の退職理由を把握することはそう簡単ではないため、下のQ1のように聞く方法もあります。
Q1. 会社や職場を今よりも良くするためにアドバイスを頂けませんか?
また、上記の質問に加えて、次のキャリアの回答を依頼するケース(下記Q2)もあります ([社名記載は求めず] 同業他社なのか異業種なのか、同職種なのか異職種に挑戦するのか、スタートアップなのか、独立起業するのか、学校に行くのか、次の予定は特に決まっていないのか等を選んでもらう)。これは、退職者がどのようなキャリア機会を求めていたのか=自社ではどのような機会を提供できたのか/すべきだったのか、を把握するためです。
Q2. 退職後の次のキャリアを教えて頂けませんか?
サーベイの最後に、アルムナイ等の連絡先として会社から連絡しても良いプライベートの連絡先の記入を依頼しておきます。
(2)「オフボーディングインタビュー」の導入
オフボーディングサーベイ回答結果をもとに、退職予定者と人事担当者(HRBP等)で面談を実施します。
この面談の目的は、引き留めでも退職理由を掘り下げることではありません。本人が"聞いて欲しい"という場合は別ですが、すでに気持ちが"次"に向かっているので表面的な会話になったり、すでに上司等にしつこく退職理由を聞かれていて、"またか"とうんざりされることも結構あります。
ただし、「あなたの退職は会社として残念である」「これまでのあなたの貢献に感謝している」ことはきちんと丁寧に伝えます。
サーベイ結果をもとに組織・職場改善へのフィードバック(アドバイス)をもらうこともオフボーディングインタビューの目的の1つですが、一番の目的は退職後も会社と良い関係性を保ってもらうことです。
以下はアジェンダ例です。但し、次に向けての期待に満ちている社員もいれば、怒りや不満を抱えている社員もいるため、決まったアジェンダを進めていくのではなく、相手への寄り添い・傾聴と率直な対話が求められます。
<オフボーディングインタビューの1つのアジェンダ例>
1. 退職が残念であること/これまでの貢献への感謝
2. 次のキャリアや挑戦内容とその応援
3. 会社・組織・職場が今より良くなるためのアドバイスの依頼
4. 当社で成長したこと/キャリア開発上でプラスになったこと
5. アルムナイ登録の依頼
6. 改めての感謝と応援
質問の2.と3.はオフボーディングサーベイをもとにして対話します。
私は面談時には特に「4.当社で成長したこと/キャリア開発上でプラスになったこと」の質問を重視していました。退職者に言葉に出してもらうことで当社で働いた意味・意義を心に留め、(仮に怒り・不満が残っていたとしても、少しでも) 当社に対してポジティブな感情を持って退職して欲しいためです。
「5.アルムナイ登録の依頼」については、もしアルムナイや退職者再雇用制度等が無ければ、今後も「いま上司や同僚とSNSや連絡先交換で繋がっていれば今後も繋がり続けて下さい」というメッセージでも良いと思います。
各部門にHRBPが配置されていない場合は、退職者全員との面談が現実的ではない場合もあると思います。その場合は、サーベイは退職者全員に依頼し、面談は特に辞めて欲しくなかった社員のみと行う方法もあります。特に辞めてほしくなかった社員とは、例えばハイパフォーマー/次世代リーダー候補/高スキル人材/若手・女性など特定の属性/入社後短期間の社員他です。
ただし、同時期の退職者が複数人の場合、「あの人は人事と面談があったのに、私は面談に呼ばれていない」と"もやもや"を残してしまうと、退職者と会社の新たな関係づくりにはマイナスとなるため、可能な限り全員と面談することをお勧めします。
どうしても面談対象を絞る必要がある場合は、サーベイの最後に「回答頂いた内容について詳しくお話を伺いたい場合、面談を依頼することがあります。」と書いておく方法もあります。
(3)「アルムナイ登録 (または再雇用制度登録)」への依頼
自社にアルムナイや退職者の再雇用登録制度等があれば、登録の案内をします。このプロセスは退職前でも退職直後でもどちらでも良いと思います。
退職者がアルムナイや再雇用登録制度等を十分に知らないようであれば、オフボーディングインタビューの中で紹介したり、アルムナイ等への登録依頼次に紹介資料・動画を添付する方法もあります。
