AI活用が当たり前になった職場で成長に不安を感じている若手社員 <ケーススタディ用の5つのケース>
AIの活用が当たり前となった(なりつつある)職場では、AIができる仕事を若手社員に任せることがなくなり、若手社員もより創造的な仕事を任されるようになっています。
どの会社もAIを企業競争力の源泉の1つとして位置付け、AI活用を積極的に進めています。若手社員も自身の経験不足をAIで補って仕事ができる一方で、一部の若手社員からはAIに依存することによる成長への不安や焦りの声も聞こえてくるようになりました。
今回は、これらの声を5つのケースとして、「AIネイティブ組織づくり」において、人事(HRBP/組織開発/人材開発担当 等)だけでなく現場マネジャーも認識し考えるべきテーマとして紹介します(これらケースは、マネジャー研修や組織開発時のディスカッションに使用しています)。
【ケース1】 AIを使ってアウトプットは出せていますが、中身を理解できていません…
上司は、AI活用を前提として、若手に対しても企画の仕事機会を積極的に与えてくれます。
企画に必要な顧客課題や市場、技術等の知識はまだ全然足りていないので、調査・分析・企画案作成・資料化そして説明用スクリプト作成と、AIを最大限活用してアウトプットを出しています。
AIをフル活用することで、それなりに対応はできているのですが、一番の悩みは(当然ですが)AIによる企画案のアウトプットレベルが高く、いつも内容を十分に理解できていない状態で上司に提出してしまっていることです。
本当は、ある程度時間をかけて学びながら企画案を組み立てていきたいのですが、(職場全体がAI活用を前提としたスピード感になっているため)時間的な猶予がありません。少しでも遅れ気味になると、上司から「AI使ってないの?AI使っていいから早くまとめてみて」というアドバイス(?)が来てしまいます。
中身を十分理解しないままAIによるアウトプットが一人歩きするので、企画案を上司や周囲から褒められることがあっても、自分が作ったという貢献実感や達成感はありません。
若手でも企画の機会をもらえるのはありがたいのですが、自分が成長できているのか、これを続けていてもこの先成長できるのかが不安です。
【ケース2】 資料を作って上司に提出しても、返ってくるのはいつも…
何か資料を作って上司に提出すると、最近はすぐにメール/チャットでフィードバックが返ってくるようになりました。ただ、フィードバックの内容は、明らかにAIがレビューして作成したコメントがそのまま貼り付けられています。
AIによるレビューは的確なので、気付きや学びになっていると感じています。ただ、上司がどこまで提出した資料をちゃんと読んでくれているのかがわからず、不安になる時もあります。上司との関係は悪くありませんが、AIを相手に仕事をしているように感じてしまう時もあり、上司が(資料の中身ではなく)自分のことを見てくれているとはあまり感じられません。
なお、今では、上司(AI)からのこれまでのフィードバック記録をAIに学ばせ、作成した資料を十分にAIでチェックしてから上司に提出しています。もちろん、上司(AI)からのフィードバックで指摘された修正もAIに任せています。
【ケース3】 他者との協働は人間ならではの仕事、と言われても…
最近、AIには出来ないこと=人間にしか出来ないことは何か?をよく考えるようにと言われることが増えました。自分自身でも、今後残っていく"人間ならではの仕事"には強い関心(危機感?)を持っています。
上司からも、「企画案の作成はAIを使ってできるけれど、関係部署と協働で企画を動かすのは人間ならではの仕事」と言われ、頑張るように言われています。
しかし実際、関係部署を動かすといっても、企画案はほとんどAIが考えたもので内容理解が追いついていない上に、相手への説明時に"自分が考えた"という熱量も今ひとつ持てていません。その上、説明用のスクリプトや想定Q&Aも、AIに作ってもらっている状況です。
相手も資料を読み内容を理解して協力してくれますが、これが自分自身の成功体験や成長に繋がっているのかがよくわかりません。
もちろん、関係部署との調整が上手くいかない時には、相手が理解できなかったことや相手への訴求不足の点に気づけるなど良い経験にはなっています。でも、気づきやフィードバックをもらっても、(自分で熟考する前に)結局はそれをAIにインプットして資料やスクリプトを修正してしまっています。
【ケース4】 自分たちは上司・先輩世代と違って…
上司・先輩の世代の人たちは、AI導入前の時代に、自分で考え抜き自分の手で形にしてきた経験を通じて、自分なりの"視点"や"軸"を持っているので、人間が主となってAIを上手く道具として使えているように見えます。
一方で、ほぼ最初からAIを当たり前に使える環境にある若手社員は、考えたりまとめたりする作業をAIに任せてしまっているため、経験が積み上がっていくのか、自分の視点や思考の軸を持てるようになるのか、漠然と不安を感じています。
上司との1on1や先輩との会話の時に、こうした漠然とした成長への不安を話してみても、上司や先輩は最初からAIが使える(AIネイティブな)状況をイメージできないようです。上司・先輩に、この不安感が伝わらないことがきついです。
同期の中でも、同じような成長不安を感じている社員は多くないかもしれません。それよりも、AIを最大限に使って成果を出し続け、望むキャリアを歩むことを、第一に考えている同期が多いかもしれません。
【ケース5】 これは"自律的な"キャリア開発と言えるのか…
自分のキャリアは自分で開発するようにと言われていますが、実際には、AIで自身のスキルを分析し、AIに提案された研修を受講し、AIが勧めてきた社内公募に応募し、応募書類もAIで作成、公募面接の想定問答もAIを使って準備し、AIと面接ロールプレイングをしています。
AIからの提案に従っているといっても、もちろん最後に決めているのは自分なので「自律的な」キャリア開発となります。しかし、自分で自分のキャリアを切り拓いている実感はあまりありません。
会社に提出するキャリアプランシートで、入社後からの仕事を棚卸ししてみても、ほぼAIを使った経験なので、何が自分の強みなのかは正直よくわかりません。
なお、さすがに全てにAIを使うのはよくないと思い、キャリアプランシートの作成は、なるべくAIを使わずに自分で書くようにしています。
しかし、上司とのキャリア面談も評価の時に合わせて年2回ありますが、上司もAIを使って私のキャリアプランや育成プランを考えているようなので、結局はAIに従っているのかもしれません。
最後までお読みいただきありがとうございました。
