人事データ活用のグランドデザインの描き方 -5枚のテンプレートで作成-
今回は人事データ (People Data) の効果的活用に向けた「グランドデザイン」を描くためのステップとテンプレートを紹介します。
「人事データ活用グランドデザイン」はデータ活用の設計図
人事データ活用の関係者は、人事部内の各ファンクション(人事企画・採用・人材開発・報酬・労務・DEI・・・等)や人事以外の各部門と多岐に渡るため、皆のデータ活用ニーズを整理し、目指す方向を関係者で共有するためにグランドデザインを描いておくと効果的です。
グランドデザイン作成の<5つのステップ>と<5枚のテンプレート>
以下では、人事データ活用のグランドデザインを描く5つのステップと5枚のテンプレートを紹介します。
Step 1: 人事データ活用の方針を描く
最初にデータのユーザーとなる経営層・社員・管理職そして人事部それぞれが、人事データを活用して何を実現したいかについての「方針」を整理します。

人事データ活用の「方針」例を下記に記しました。
① 経営層
・社員の最適な人材配置を実現する
・キーポジションの後継者候補を準備する
・人的資本投資を最適化する
・組織・人材に関する経営リスクを把握する
② 社員
・自分自身について客観視し理解を深める (強みやキャリア希望など)
・成長・キャリア開発の機会を自律的に活用する
・生産性が最も高くなる自分の働き方を追求する
・社内の人的なネットワークを構築する/広げる
③ 管理職
・自チームの状況・課題を理解しチーム能力を最大化する
・メンバー1人ひとりをより理解し個人の能力を最大化する
・チーム外から常にチームに必要な人材(候補)を探索する
・リーダー・管理職としての成長課題を把握し取り組む
④ 人事部
・経営に対する提供価値を向上させる
・人事制度(ジョブ型/タレントマネジメント等)を効果的に運用する
・社員のことをより理解し効果的な施策・サービスを提供する
・人事業務を効率化させる
人事データ活用の「方針」検討のために準備する情報:
人事データ活用の方針は上位の経営計画や人的資本マネジメントポリシー類との連動も必要になるため、それらをインプット情報として事前に整理しておきます。
・経営計画・重点戦略施策
・人的資本マネジメントポリシー
・人的資本KPI・各種指標
・人事制度・施策運用上の課題 等
Step 2: 活用するデータを設定する
Step2では、Step1で設定した方針を具体化していきます。
ここでは、Step1の経営層における人事データ活用方針例にある「社員の最適配置を実現する」を例とします。
この「方針」を具体的な<目的>に落とし込みます。
<経営層にとっての人事データ活用方針例>
・キーポジションについて最適な人材配置を実現する
↓
<データ活用目的例>
・各キーポジションについて、現職者のポジション要件とのマッチング率を確認し不足スキルを明確にする
・各キーポジションの後継者候補を確認する
次に、その「目的」の実現に必要なデータ(活用データ)案を書き出します。
・各キーポジションについて、現職者のポジション要件とのマッチング率を確認し不足スキルを明確にする (再掲)
↓
<活用データ案>
・キーポジションのスキル要件と現職者の保有スキルのマッチング率
・キーポジション現職者に共通して不足しているスキル(Top10)

Step 3: データ活用方法を設定・確認する
Step3では、Step2で設定した<活用データ案>について実際の活用方法案を確認すべく書き出します。
<活用データ案>それぞれについて、①データのチェックポイント(データのどこを見るのか?)と、②改善等のアクション候補(課題が見つかった場合にどのようなアクションを取るのか?) の2つを整理します。
引き続き、Step2の例を用いて話を進めます。
<活用データ案>
・キーポジションのスキル要件と現職者の保有スキルのマッチング率
↓
<チェックポイント例>
・スキルマッチング率が低いキーポジションの現職者は誰か?
↓
<アクション候補例>
・現職者の不足スキルの強化方法を設計する
・現職者以外で他に同ポジションの適任者がいるかを確認する
・現職者が現ポジションよりも適任であるポジションがあるかを確認する
・必要があれば同ポジションの現職者を交代する
もし<チェックポイント>や<アクション候補>が書けない場合は、Step2の<活用データ案>の必要性が低い可能性があるので、Step2に戻って再検討します。

Step 4: 必要な個別データを整理する
Step4では、Step2で設定した<活用データ案>を導出するために必要となる具体的な<個別データ>を整理します。
ここでも、引き続き、Step2の例を用いて話を進めます。
「スキルのマッチング率」を算出するために必要な<個別データ>は、「ポジションのスキル要件データ」と「社員の保有スキルデータ」となり、この2つの個別データの組み合わせがマッチング率となります。
<活用データ案>
・キーポジションのスキル要件と現職者の保有スキルのマッチング率
↓
<必要個別データ案>
1) キーポジションのスキル要件データ
2) キーポジション現職者の保有スキルデータ
必要な<個別データ案>の中で、今はまだ集めていないデータがある場合は、その収集方法や収集開始タイミング案もあわせてここで検討しておきます。

Step 5: ロードマップを設定する
最後のステップとして、各データの準備期間や活用開始時期を設定してロードマップを設定します。
ロードマップの考え方例:
① 既にデータがあるものについては早期に活用を開始する (フェーズ 1)
② まだデータは無いが、中でも特に必要性が高いものについてはデータ収集等から優先的に取り組む (フェーズ 2)
→ 例: 会社の重点人事アクションに必要なデータ等
③ 残り全ての必要データの活用について取り組む (フェーズ 3)

フェーズ1「既存人事データの活用」では、ダッシュボード(またはExcel等のレポート)やデータ活用ガイドの準備、ユーザーへのトレーニング等を行います。
普段あまり人事データに触れないユーザーがいる場合は、フェーズ2に着手する前に、フェーズ1でデータ活用を体験してもらうことが重要です。「もっとこういうデータは見えないのか」「こういうデータがあるとXXに使えそう」といった声が集まってくれば、皆さんが人事データ活用に対してレディネスな状態になったと言えると思います。
①の既存人事データの活用については、最初は人事の基本情報の一元整理や活用からの着手になると思います。
属性別の人数等の人事の基本情報 データによる単純(に見える)グラフからでも、様々な課題の候補を読み取ったり想像できることは多々あります。
グラフ(の画像)を生成AIに読ませて、「このグラフから、この組織にとっての課題を10個挙げて」「人事部として注意すべき課題を5個挙げて」等といったプロンプトで指示すれば課題候補を挙げてくれます。これまであまり人事データに触れてこなかったユーザーには、ダッシュボード操作と共に、ぜひ生成AIの活用を勧めてみて下さい。
【参考】ピープルデータ活用: 適所適材のための「ポジション」と「人材」のマッチング はこちら(note)
【参考】ピープルデータ活用: スキルデータの活用 はこちら(note)
【参考】ピープルデータ活用: 採用&オンボーディングにおけるデータ分析 はこちら(note)
【参考】人事戦略策定のためのチェックポイント はこちら(note)
【参考】スキルベース組織については こちら(note)
【参考】HRデータ活用を9ボックスで考える はこちら(note)
