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AIによってオペレーション業務から解放された後の人事組織の姿 〜人事CoEの3つの変化〜

AI(AIエージェント)によって人事の仕事の30-40%が自動化されると言われている中で[参照]、最近は人事の方々と「AIエージェントによってオペレーション業務が減った後の人事組織の姿」についてディスカッションすることが増えています。

今回は、人事組織の中でも、人事制度の運用オペレーション業務を多く抱えていることが多い 人事CoE [※] に焦点を当てました。
AIによってオペレーションから解放された後の人事CoE組織の姿について、3つの変化を描いてみました。

[※] 人事CoEとは:
一般的に人事組織が「人事戦略・企画」「HRBP」「人事CoE」「人事オペレーション(HR Ops)」で構成される中で「人事CoE(Center of Excellence / Expertise)」は、採用・人材開発・報酬・福利厚生・労務・人事DX等のスペシャリストからなる各担当の総称です。
人事CoEの他にオペレーションチーム(サービスセンター等)がある場合でも、人事CoEの各担当は制度運用上の取りまとめ、各種手続きや処理、社員問い合わせ対応、提出管理や督促等のオペレーション業務を抱えていることが多くあります。

【変化①】 より一層の「エキスパートチーム」に

オペレーション業務が減ることで、人事CoEメンバーは、"手続きの達人"から各機能領域における「エキスパート」として、より戦略的な役割が期待されます。

<今後より一層求められる「エキスパート」としての役割>

  • 人的資本経営や価値創造のために、また情報開示も踏まえて、担当領域のポリシーを明確にし社員に浸透させる。同時に、人事戦略策定に参画するとともに、それを担当領域の戦略に落とし込む

  • 担当領域における制度・ルール遵守の監督だけでなく、エンゲージメント向上や組織カルチャー醸成の視点で制度・ルールを見直す

  • 担当領域における法規制動向のチェックだけでなく、より広い視野で労働市場や競合他社の動向を分析したり、より専門性を深めるために理論を探求し活用する。

例えば、報酬担当の場合、報酬に関するエキスパートとしての知見を活かし、経営や人事戦略と連動する形で「報酬ポリシー」を定め、労働市場や競合他社に対する競争力の視点やエンゲージメント向上に資するトータルリワードの観点で「報酬制度改定」を企画提案・実行します。そのためには、常に専門知識や社内外の最新情報の習得に努め、自身の専門性に磨きをかけ続けることが求められます。

【変化②】 機能横断の「プロジェクト型組織」へ

人的資本経営においては、各社で様々な人事施策(下記例)が展開されています。これら施策の設計や運用には、幅広い領域の知見が必要なため、どこか1つの機能だけで完結することは難しくなっています。

例えば「女性活躍推進」がテーマの場合、その効果的な施策設計のためには、人材開発・採用・昇格・配置・キャリア開発・組織開発・報酬・福利厚生(両立支援)等の人事CoE横断の知見や経験が不可欠となります。
しかし現状では、女性活躍推進は「DEI担当の仕事」となっていることが多く、他機能の担当者は"自分の仕事"と認識していません。そのため、DEI担当は関係者に協力をお願いして回らざるを得ない非効率な状況です。

<広範な領域の知見が必要な人事施策例>

タレントアクイジション(採用ブランディング / オンボーディング 等)
タレントマネジメント・人材開発(越境学習 等)
キャリア自律支援
サクセションプランニング
タレントマーケットプレイス(最適配置 / 社内公募・社内スカウト 等)
ポジションマネジメント
エンゲージメント向上
組織カルチャー醸成
スキルベース組織化
DEI
リテンション
マネジャーイネーブルメント(マネジャー支援・育成) 等

一見すると、人事CoE横断的な関与の必要性がなさそうな「オンボーディング」でも、下の記事に書いた通り様々な制度との連携が有効であり、人事CoEの各機能の関わりが期待されます。
しかし実際には、採用や人材開発以外のCoE担当者は、関与するとしても入社研修の中で担当する制度等を説明するのみで、オンボーディング全体に関心を持っている担当者は皆無ではないでしょうか。

上記をはじめとする人的資本経営の各施策の企画設計や運用においては、機能横断でプロジェクトを柔軟・俊敏に立ち上げる組織になることが必要で、検討施策テーマにあわせて"誰もが"プロジェクトリーダーとなることが求められます。

<今後より一層期待される「プロジェクト型組織」の形>

  • 必要なプロジェクトを都度、柔軟に立ち上げ、人事CoEメンバーは常に何かしらのプロジェクトに参画している。

  • 人事CoEの中で、共通認識となるプロジェクトの実施手法(アジャイル含む)が確立されているため、担当チームを超えて誰とでもスムーズにプロジェクトを実行できる

  • 現在の担当にこだわらず最適なメンバーでプロジェクトを編成できるように、「スキルベース」で人事CoEメンバーをアサインする。そのために、CoEメンバーの保有スキルが明確になっている。

  • 人事CoEに閉じずに、経営や現場、HRBP、社外人材とも連携してプロジェクトエコシステムを構築する。

【変化③】 CoEも事業部門の方を向いた「HRBPイネーブルメント」へ

HRBPが日々、多岐にわたる課題に効果的・効率的に対応するためには、人事CoEの各機能との連携による専門的なサポートが欠かせません。人事CoEには、HRBPの機能を最大化するHRBPイネーブルメントとしての役割がより一層求められます。

そのためには、人事CoE各機能の担当者ごとに 担当する事業部門を割り当てる方法があります。海外ではEmbedded CoE (事業部門組込みCoE/事業部門配置型CoE)と呼ばれています。
CoE担当者1人ひとりが担当する事業部門を持つことで、その事業部門の成功への参画意識を持つことが期待されます。

HRBPイネーブルメント/Embedded CoEとして最もイメージがしやすい採用(中途採用)担当の例を紹介します。
採用(中途採用)担当者が、担当する事業部門を持つことで求人票には書かれていない担当事業部門の戦略上の募集背景や組織カルチャー等を深く理解した上で採用に注力したり、ビジネス環境変化を見越して求人が出る前に先回りすることができます。
その他、人材開発や労務・報酬・福利厚生・DEI等においても担当する事業部門を持つことで、担当者の行動が変わってきます。

<今後より一層期待される「HRBPイネーブルメント/Embedded CoE」の役割>

  • 各担当者が、全社最適視点の他に担当事業部門視点を持って、全体最適とその中での事業部門最適を追求する(または、人数が多いチームは担当者を分ける)。

  • 担当事業部門の事業戦略・計画を深く理解し、HRBPと同じ「担当事業部門の成功」という目標を持ってHRBPと密に連携する。

  • 各事業部門のトップの考えや現場のマネジャー・社員の声をダイレクトに聴き、制度改定やプログラム設計・運用改善等の人事CoEへの活動に活かす

人事CoE 1人が担当する事業部門の数は?
私が勤務していたある企業では、人事CoEにEmbedded CoEを採用していました。その企業では、人事CoEのメンバー1人が担当する事業部門の数はHRBPよりも多く設定されていました。HRBPが1人1-2つの事業部門を担当するのに対し、CoE各担当者は3-4つの事業部門を担当していましたが、人数が少ない担当チームは、例えば担当が2人しかいなければ全事業部門を2つに分けて担当していました。

HRBPとの役割分担は?
その会社でのEmbedded CoEとHRBPとの役割分担は、業務特性や経験・志向性によって両者で決めていたというのが実状でした。例えば、採用や人材開発はHRBPを介さずにCoE担当者が関係者とスピーディに進め(HRBPには随時、状況共有)、報酬や労務・福利厚生についてはHRBPが前面に出て対応し、人事CoEは専門的知見で後方支援するという分担例です。


最後までお読み頂きありがとうございました。


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