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WBCの放映はネット(Netflix)配信だけで続けるべきですか?【コンサル面接解答集/是非判断】

はじめに

ケース面接対策道場のケース侍田中です。
ケース面接対策でうまくいかないことが続くと、「自分は頭が悪いんじゃ…?」と自己嫌悪に陥ってしまうことってありますよね。
私も、以前そうでした。
自分がケース面接対策で苦労した経験から、当時の自分がつまずいたポイントや、知りたかった考え方を発信しています。

この解答例は良問を選んで、解答したものです。
実際の面接のディスカッションを想定して作成し、各ポイントも記載しています。

一連の流れ、考え方をぜひケース面接対策の参考にしてみてください。
こちらは前回の記事になります↓↓↓

面接官「では、ケースを始めたいと思います。田中さん、好きなこと何かありますか?」

田中「そうですね、野球が好きで、最近もWBCを見ていました。次の大会も楽しみにしています」

面接官「いいですね。では、WBCをテーマにしてみましょうか。26年大会からWBCの放映権がNetflixの独占となりましたが、それについての是非を考えてみてください」


(1)前提確認

田中「承知しました。
では、『26年WBCの放映権はNetflixの独占とすべきだったか否か』ということで考えたいと思います。
この問題は立場によって結論が変わると思います。例えば視聴者の立場であれば民放の方が見やすいでしょうし、主催者の立場であれば収益を重視するはずです。今回は、放映権販売の意思決定主体である主催者の立場から考える、という整理でよろしいでしょうか?」

面接官「それで結構です。WBCの主催者はご存じですか?」

★ポイント
主体(立場)によって是非が変わるため、まずは主体をすり合わせる

田中「存じていません。オリンピックのIOCのような団体でしょうか」

面接官「実は、WBCはMLBとMLB選手会が運営しているようです。今回は便宜的にMLBが主催者として考えてみてください」

田中「分かりました。MLBが主催であれば、ゴールはWBC大会単体の盛り上がりではなく、WBCを"手段"として最終的にMLB全体の収益最大化を目指す、というイメージでよろしいでしょうか?」

面接官「はい、その理解でよいです」

田中「ありがとうございます。続いて時間軸ですが、26年大会単年での収益最大化であれば、おそらくNetflix独占が最適解になると思います。
今回はもう少し長く、3大会程度(10〜12年先)を見越したMLBの収益最大化、というスパンで目線を合わせさせていただいてもよろしいでしょうか?」

★ポイント
目標期間や目標値(感)の目線を合わせる。目標が定まらないと議論の終着点が決まらず発散する。

面接官「それで結構です。他に質問が無ければ5分で考えてみてください」

田中「承知しました」

―――5分後―――

面接官「いかがでしょうか」

(2)結論と結論に至る流れを述べる

田中「はい、発表いたします。結論としては、短期的にはNetflix独占が合理的ですが、中長期的にはより多くの視聴者にリーチできる民放放送に戻すべきだと考えます。
結論に至る考えを順を追って、
①WBCを取り巻く環境、②WBCの収益構造、③短期と中長期のトレードオフ、の3点から説明します」

(3)取り巻く環境を述べる

田中「まず、そもそものWBCを整理します。WBCは2000年代半ばから始まった野球の国際大会で、4年に1度開催されています。
第1回大会では日本だとイチロー選手など一部のメジャーリーガーは参加していたものの、米国を中心に現役のトップメジャーリーガーは参加していなかったと記憶しています。
それが今大会では大谷選手、アメリカのジャッジ選手をはじめ、各国の一流メジャーリーガーが多数参加する大会へと成長しており、開始から20年が経ち、ブランドが浸透してきたフェーズと捉えています。
また、ここ20年で視聴チャネルも大きく変化し、Amazon PrimeやNetflixといった配信プラットフォームが台頭してきました。潤沢な資金を持つこれらの企業がコンテンツを獲得しに来ている背景が、今回のNetflix独占契約に繋がっていると考えます」

(4)収益構造を述べる

田中「次にWBCの収益構造です。
短期的な大会毎の収益は、①放映権料、②グッズ、③広告、④観戦料に分解できます。
ネット独占により国内の視聴者数は減るので、②グッズや③広告は減少すると考えますが、それを上回る額の①放映権料をNetflixが提示したため、今回の独占契約に至ったのだと推察します。④観戦料はチケットがプラチナ化していることから影響は軽微です」

(5)短期と中長期の収益のトレードオフを述べる

田中「そのうえで中長期的な視点で考えると、WBCは単発の収益にとどまらず、『WBCのブランド化とそれに伴うスター選手の輩出』というMLB本体への波及効果を持ちます。
例えば、大谷選手は幼少期にWBCでのイチロー選手の活躍を見て出場へのモチベーションを得たと耳にした記憶があります。大谷選手のようなスーパースターが出れば、WBCを超えてMLB自体の収益が大きく伸びます。
ここで、ネット独占にすると有料視聴者に限られるため、将来の大谷選手候補となる子供たちにリーチできない懸念があります。1大会の収益最大化と、将来のスーパースター輩出によるMLB全体の収益増を天秤にかけた場合、後者の方が大きいと考えます。 以上より、中長期的には国内放送を民放に戻すべきだと考えました」

(6)面接官とのディスカッションで考えを進める

面接官「分かりました。ディスカッションしていきたいのですが、当然MLBも田中さんの言うように『民放の方が視聴者数が多く、将来のスター候補にもリーチできる』と考えたはずです。それでも、なぜ今大会をネット独占にしたと思いますか?」

田中「そうですね、まずあまりにも民放とNetflixの提示額が違ったことがあると思います。主催者のMLBからすると20年かけて日本国内で大会のプレゼンスを高めてきた、ある意味で投資回収のフェーズに入った、と判断したのかもしれません。
あとは、子供時代に大谷選手がWBCに憧れたという話をしましたが、ある意味でMLBの底上げをするようなスター選手はWBCの視聴があってもなくても育つ、つまり"再現性が低い"効果として割り切ったのかもしれません。
まとめると、①投資回収フェーズに入ったこと、②WBC視聴によるスター醸成の再現性の低さ、の2点で今大会をネット独占にしたと考えました」

面接官「分かりました。一方、もしMLBが『WBCは将来の子供たちが夢見る場としての価値を持ち、スター醸成にも寄与する』という前提を維持したまま、それでもネット独占を選んだとしたら、その合理性はどう説明できそうですか?」

田中「(うっ、なんでだ?)…少しお時間をいただけますか」

面接官「どうぞ」

―――30秒後―――

田中「申し訳ありません、結論まで至っておらず幅出ししながら考えを整理しながらご説明します。
まず視聴媒体の観点ですと、すでに子供たちの視聴媒体はテレビからYouTubeなどの動画プラットフォームに移っており、『民放=子供にリーチできる』という前提自体が弱まっている可能性があります。
実際、親世代となる20〜40代はネットに親和性が高く、家庭での視聴環境もネット動画にシフトしているケースが多いと思います。
そう考えると、『ネット独占でも将来のスター候補へのリーチは確保できる』、という判断があったのかもしれません」

★ポイント
すぐに回答が出ない場合には、無理に述べず。思考時間をもらいにいく。また、思考時間が終わっても考えが纏まらない際の回答時に「幅出しします」と前置きすることで、不完全でも論点を広げる姿勢を示せる

面接官「なるほど。他にネット独占の合理性を支える観点はありますか?」

田中「そうですね、もう一段考えると、MLBのマーケットの主戦場は米国や日本だと考えますが、米国・日本だけでなく中南米・アジアへの市場拡大も進めていると認識しています。
とすると、Netflixの強みは『世界各国への同時配信網』ですので、民放経由の日本国内リーチを失っても、それを上回るグローバルリーチを取りにいけると思います。」

面接官「ちょっと止めますね。実はNetflixの独占契約は日本市場のみで、米国・中南米といった他地域は別の放映契約が並走しているようなんですよ。その前提で考え直してもらえますか?」

田中「(あ、そうだったのか…前提が崩れた…)失礼しました。前提を修正させてください。グローバルリーチではなく『日本市場における放映チャネルの選択』として考え直します。少しお時間をいただけますか?」

面接官「どうぞ」

★ポイント
自分の前提が崩れたら、素直に認めて切り替える。間違った前提のうえに論理を積み重ねると沼る。
「前提を修正させてください」と一言入れて、思考時間を取り直せばよい。出来ればケースの思考時間前に前提を揃え切るのが理想だが、難しい場合はディスカッションのなかで修正する柔軟性をつけていこう。

―――30秒後―――
田中「整理し直します。
日本市場限定でのNetflix独占ですので、改めて『MLBはなぜ日本市場でNetflix独占にしたか?』と捉え直しました。
まず、日本市場はMLBにとって米国外で最大級の収益源と認識しています。大谷選手の活躍を機に、日本人ファンのMLB視聴・グッズ消費・スポンサー価値が大きく伸びています。
そう考えると、MLBは日本市場では『広く薄く認知を取る』フェーズはすでに終え、『高い支払い意思額を持つファンから最大限収益化する』フェーズに入っていると整理できます。
Netflix側も日本人加入者の獲得・解約抑止のためにWBCの独占契約をしており、MLBとNetflixの両者の利害が日本市場で特に一致したため、日本だけ独占という構図になったと考えられます。

さらに、Netflixは日本ユーザーの視聴データを取得できる点でも民放より優位です。誰のどの試合を、どこまで、どのデバイスで見たかが分かるので、MLBは『日本市場向けの個別マーケティング』にこのデータを活用できます。
ただ、データの一次保有者はNetflixなので、契約条件にデータ共有を織り込めるかが鍵になると思います。
まとめると、
①子供の視聴媒体はすでにネット動画へ移行している
②日本市場は『認知フェーズ』を終え『収益化最大化フェーズ』にあり高単価が取れる
③日本特化の視聴データが取得できる
の3点から、日本市場でのWBCをNetflixが独占した合理性が説明できると考えます」

面接官「いいですね。最後に、ご自身の最初の結論はどう更新しますか?」

田中「最初は『中長期では民放に戻すべき』としていましたが、今のディスカッションを踏まえると、むしろ『中長期でも日本市場ではNetflix独占(あるいはネット中心)を継続する方向が合理的』に結論を更新できると考えます。
ただし、その前提として、
①国内におけるWBCの認知維持のためにハイライト等の二次配信を確保し、SNS、YouTubeといった無料媒体にも配信する
②Netflixと組んだうえで日本ユーザーの視聴データ活用を契約に織り込む

といった取り組みがMLBとしては必要かと考えます。

また、日本でのNetflixの協業がうまくいけば、その協業モデルをベースに、これから伸ばしたい市場(中南米・アジア他地域)での、放映権を販売するメディア選定に寄与すると考えます。」

★ポイント
最初の結論に固執しない。ディスカッションを通じて結論を更新できる柔軟性は評価される。逆に、自説を守るために論理を歪めるのは評価されない。

面接官「ありがとうございました。本日の面接は以上です」

田中「ありがとうございました」

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