【オクトラ0】感想と考察。ローラナの本当の罪は何か? ウィッシュベールの村中裁判について「異議あり!」
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こんにちは。
今日もオクトラの話をして行きたいと思います。
どんだけオクトラが好きなんだろうか。
自分がプレイ中に流し続けてきた違和感を検める作業になってますね。
ネタバレありです。
ローラナ周りについては、それで良いのか? と思う人も多いのではないでしょうか。ウィッシュベールの復興の最後の方ではなんだかんだでローラナを許し迎え入れるという流れになってます。モヤモヤするけど仕方ない。でも、「あなたの旅」だって強調するなら、ローラナを許す許さないを選べても良かったなと思います。
まずはフェンから
以前にオクトラOのクリアレビューで書いたのですが、フェンの行動について語ります。
フェンはウィッシュベール襲撃の際、ノモスという正体不明のおじさんに、主人公・スティア・ローラナを任せて、自分は街に生存者を探しに行ってしまいました。
主人公が男性ならまだしも、私は女性主人公でプレイしてたので、そこ置いていく!? と思ったものです。
炎燃え盛る街を四人で逃げてきた時に街の様子は見ているはずで、生存者については望み薄であり、逃げ切れた三人を確実に守り切る可能性をあげるのが自警団の仕事じゃないのか、とまず思いました。
でも、「今、自分が行けば他に助けられる人がいたかもしれない」という可能性もゼロではないので、ここは確実にフェン有罪!と言えないライン。
フェンの仕事を、現代では警察兼レスキュー隊員だとして考えますね。
フェンが街に生存者を探しにいくのは、被災時・混乱時にプロとして冷静かつ合理的な判断を下した結果なのか、自分が一番混乱し感情が混じってしまった故の行動なのかと考え得ると、圧倒的に後者。
現代だと、被災現場から救出した人は安全な場所で守られる確率は100%です。なので次の救出に向かっても問題ないのですが、ゲーム内ウィッシュベールのこの状況だと、まだその辺りに残党狩りの兵士がいる可能性が大いに高い。ノモスが信用できるか人かどうかも不明。
その上で、男性で年長、自警団としての経験も長いフェンが、他の三人をほっぽり出すというのはアウトに近いと私は考えます。
フェンの心象を追うと、「自分は捨て子でウィッシュベールのみんなが家族だった」「それを守れなかった」という現実は自分の意義や価値を揺さぶってきました。アイデンティティが崩れるという恐怖と混乱。その恐怖を少しでも薄めるために街に戻った、と思うのです。
結果としてフェンは生存者を増やすことはできませんでした。怪我を負い、追いかけてきたローラナに看病をされながら過ごし(どこで?)、ローラナに置いて行かれた後は「強くならなきゃ」と言う強迫観念に駆られトカゲ退治に明け暮れる日々。
ここで、自分で預けておいてスティアと主人公の安否確認に行かないのか? と言う当然の疑問が生まれます。
これはローラナも同様なんですが、フェンの元を立ち去り、ウィッシュベールではなくフレイムグレースに向かいます。割とそこは計算高いなと思いますね。教会なら自分を保護してくれる。何も聞かずに置いてくれると思ったから向かったわけなので。
フェンとローラナにとってウィッシュベールは、自分が守れなかった街と、自分のせいで襲われた街。
自分は無力だった、取り返しのつかないことをした、その自覚はあるにも関わらず彼らは、向き合わない道を選ぶんですね。
そこにはおそらく、自分の弟分・妹分が残されている。燃えた街も、人々の遺体も。
見ない。見なければ知らない。知らなければ苦しまない。
誰が? 自分が。
主人公とスティアが強いのは、燃え落ちた街に戻り、村人の遺体を埋め、ひとりひとり墓を作っていったところです。
ついこの間まで笑っていた家族のような村人の遺体を捜索・確認し、重い遺体を運び、人数分土を堀り墓地を作るのは、想像するだけで精神的にも体力的にもきつい作業です。フェンお前がやれ。

主人公とスティアは親の遺体もありますがら、本当にしんどい作業だったでしょう。でもその分、失われたもの、家族の死にこれ以上なく向き合った二人は、喪失に向き合い街を復興するという意志を強く持てたように思います。
で、フェンはというとトカゲ退治に明け暮れ、俺は何をやってるんだ(ほんとだよ)とぐるぐる悩み、心配して迎えにきた(逆でしょ!)弟妹分を拒絶。本当に何やってるのこの人。ローラナに置いて行かれてから、ローラナを探しに行くこともしていないのですよ。
街に戻り村人の墓を目の前にし、悔やむのはもうやめて明日を見る、と気持ちを切り替えるフェンですが、お前はもうちょっと反省していろと思わずにいられない。
こうしてフェンを見てくると、後の物語で一番にローラナを庇い擁護するのは、フェンとローラナの単なる傷の舐め合いに近いように感じます。ローラナは悪くないと言うのは、ローラナに対する恋愛感情も少し混ざる、個人的な判断だと感じます。
フェンの場合、正義面して「だってこうだろ?」と押し付けてくるのが問題です。
ローラナの罪を知った村人が「ローラナは街を大金で売ったんだ!」と言うのに対し、「ローラナはそんな奴じゃねぇ」と言います。そんなやつとは街を金で売ったやつという意味でしょうが、結果だけ見たらその通りなんですよね。事実しか言っていない。それはローラナも認めている。

「ローラナは街を金で売った。きっとこの街のことなんてどうでも良かったんだ」
「ローラナは汚い女だ」
に対して、「そんなやつじゃねぇ」なら通じます。
どうでも良く思っていないし、汚いというのも個人的な感覚だからです。
でも大金で村を売ったのは事実なので、そんなやつじゃねぇは全く通らない反論です。単なる不満の発露。
厄介なのは、この時点でフェンは酒場のマスターであり他の村人よりも先に村に戻っていた自警団員です。周囲は自然彼をリーダー格として見ますし、彼が「ローラナを貶すのは許さねぇ」って態度を示すと、周りは逆らいにくくなります。もうそれは圧になってしまう。
でも、ここまでプレイヤーが見てきたフェンっていうのは、自分たちに対する保護責任を投げ自分のアイデンティティを守るために走り出し、結局守れなかったらいじけて戻ることもせず、トカゲ狩りというとりあえず意味のありそうなことに逃げ込んでいたヘタレです。
そしてフェンは、前を向くことを、忘却や考えないことであると捉えている節があります。
「ウィッシュベールの明日のために!」と明るく高らかに叫ぶ彼は、自分が守れなかったもの、自分の弱さ、自分のとった行動に対してきちんと向き合い苦さを飲み込んだというより、「今後は復興のことだけを考えよう! 俺は変わるんだ、だから忘れよう!」と思っているように受け取れます。
いや、フェンは後悔しているけど、それを出さないようにあえて明るく振る舞っているのかもよ? という見方もあるでしょう。ですがそうであれば、内省を重ねているのが表の態度や性格に出てきてもおかしくないので、もう少し思慮深くなり「酒場やってみたかったんだ」というノリは出ない。

ローラナが何に苦悩しているのか、という部分は、自分も同様に街を守れなかった過去につながる痛い部分でもあるので、フェンとしては掘りたくないんですよね。それは考えないように今を過ごしているから、「ローラナはそんなやつじゃない」と思考停止してしまう方がフェンにとって安全です。その上でローラナが責められないように擁護すると、ローラナだけではなく自分も守ることが出来ます。彼はその辺、おそらく無意識ですね。
世の中は、知らなかったで済まされないことがあるんだよ
比較として面白いのが、過去に対する向き合い方です。
主人公・スティアは、向き合った上で乗り越える。
ローラナは、向き合うことからは逃げたが、内省的な性格と祖母の言葉もあって逃げきれない。
フェンは、向き合うことから逃げて物理的に時間を潰す。街に戻った後は、向き合うのではなく思考停止。
ウィッシュベールの関係者ではないですが、リシャールは向き合った上で表では軽さを出せるタイプなので、フェンがそうなれたら良かった理想形です。あと、バルジェロは向き合っていて、他人には預けないタイプですね。サザントスは、本人は向き合いたいのですが、彼の過去には他人の乱暴な介入と記憶の改竄などがミルフィーユ状になっており、すでに内部が崩壊寸前だけど外だけは立派に取り繕えてるタイプ(考察しがいがある人)です。
ローラナの何が悪かったのか
祖母の命が失われるのが怖くて、祖母の病を治す薬のために大金と村の情報を交換してしまったローラナですが、彼女が悪いのは「この街には襲撃するだけの価値がある」とタイタス側に確信させてしまったこと。これはストーリー上でもわかりやすいですね。

ローラナが街の情報を売らなかったとしても、「この女は隠し事をしているだけでは?」と思われタイタスが攻め込んでいた可能性は十分にあるので、ローラナがお金をもらおうがもらうまいが、街の悲劇は回避できなかったということになります。
そしてお金をもらって薬を買っても、街の襲撃時にヤヤが亡くなってしまうのであればローラナのやったことは全くの無駄です。むしろ最愛の祖母の死を、病死よりも早め、悲劇的なものにして、さらに周りを巻き込んでしまったのはローラナ。これは公式がローラナに用意している罰ですね。
性格的にも考え込むタイプであり、フレイムグレースでいくら祈り続けても許された気にはならなかったでしょう。ヤヤが亡くなっているだろうことも、自分の中で確定させるのが怖かったのだろうと思いますが、最愛の祖母の弔いを他人任せ。もし誰も何もしなければ、遺体は野晒しで野生動物に食い荒らされることになるので、それでいいのか、と思いますね。
ローラナの罪って、街を売ったことそのものよりもその罪を村人に告白したいと願ったことだと思います。
ひとり抱えているのが限界で、もう全部ぶちまけたい。罪を犯した私ごと許してほしいと。そのために聖火神の洞窟に行って聖火を命懸けでとってきますと。
自分の命をかけて罪の贖いをするーーという意思表明は同時に、命をかけて村を守るから罪ごと私を許してほしいという要求でもあります。
「あんなクソどもが生きていてなぜおばあさまが死んだのか」というローラナの叫びは、人間臭くて良かったですが。
さて、生き残った村の人にとってあの悲劇はどんな位置付けにあるのでしょうか。
理由はわからないが巨悪が外部から攻めてきて壊滅した。そういう認識でいたと思います。
「なぜ襲われたか?」は推測が難しい領域だったんですね。
だからそこまで追求せずにいたし、タイタス・ヘルミニア・アーギュストは同郷の主人公の手で倒されました。元凶はもういないと思うことで、憎しみの矛先を一旦降ろし、皆で前を向くことが出来ました。
それなのに、みんなでまた頑張っていこうと思っていた村人のメンタルをローラナの告白は激しく揺さぶります。「私が裏で情報を流していました」は、一旦は落ち着けた憎しみを蘇らせる手榴弾です。
もう手の届かない場所ではなく、今目の前にいる、原因=ローラナ。しかも許してほしいと言っている。
村人たちの心は、再びウィッシュベールを喪ったあの日に戻されます。

そもそも、ローラナは聖職者です。神に仕えるものであり、神の意思を伝えるもの。
教会という場所は一般的に、人が祈りを捧げる場所、救いを求める場所ですね。聖職者はそこで働く人間なのですから、人は自然と、聖職者の言葉は正しく、行動は清く、間違いを犯さないと信用します。
その聖職者が利己的な動機で自分達を裏切っていた、情報を売っていたというのは、信じていた世界や権威が信用できるものではなかったと揺らぐ体験です。
村人全員がお互いを家族のように思う小規模な村であれば、多くの村人にとってローラナは家族の中でも信用がおける方だったでしょう。
ローラナが聖火を持ち帰り広場で許しを乞う、あの裁判のような場面で、村人は家族と権威に同時に裏切られた事実を知ります。心の奥に封じていた憎しみの炎に再び薪を投げ込まれます。
心はグラグラな状況で、許してくださいという要求を押しつけられます。
あの場にいる肉親を亡くした村人だったら、メンタルめちゃくちゃですよ、あの瞬間。
そこでフェンとルドによる正義演説が始まります。
フェンに「異議あり!」
ローラナが取ってきた聖火がないと魔物が寄ってくるんだぞ、ローラナはそれを命懸けで取ってきたんだぞ。
実質それで俺たちは、将来的にローラナに命を救ってもらったことになるんだ。
それなのにまだ糾弾するのか、と。
村人からしたら、肉親を喪った過去をフラッシュバックさせられるような突然の罪の告白に続いて、追い打ちをかけるようにフェンとルドによる許しの強要が始まります。
フェンの方はまだ主張の根拠が弱いので、論破は簡単です。
ローラナだってあんなに守りたかったおばあさんを失っているんだと。
だから同じ立場だろと言いたいのか、許してやれよと言いたいのか、どちらかはわかりません。


でも、同じじゃないですよね。
指輪があるという情報を知っていたのは聖職者だけ。ヤヤとローラナだけ。
情報を知る人数が限られているということは、それだけ扱いに慎重になるべき、貴重な情報ということです。
相手がサザントスのような教会関係者ならともかく、情報をお金で買おうとする兵士に後ろ暗い魂胆がないわけがありません。ローラナは取引時に、よくないことが起こるかもしれないという予想は簡単に出来たはずなのです。まさか街を壊滅させられるとは思わないにしても、何かは起こるのではないかと思っていた。
ヤヤはこの時点では生存していますから、相談することもできた。でもローラナはそれをしなかった。ヤヤに相談したら怒られるか、自分の命を引き延ばす大金など要らないと言うのが彼女にはわかっていたからです。
聖職者は権威を背負うので、清い人物像が求められます。身内の死を悲しむなとは言いませんが、身内の死だけを特別扱いしない、死に即しても受け入れるーーそういう公平さ、公正さ、厳格さが求められる職種です。
この世界の聖職者は、身内の死にやたら抵抗を示すの、なんでなんでしょう。オフィーリア周りの話もそうだったな。
ローラナには、おばあさまだけは失いたくないという強い欲がありました。
サザントス的に言うなら、その欲を律することが出来なかったが故に、悲劇を招きました。

・ローラナは街に悪いことが起こると予想が出来た上で、お金と情報を交換した。
・自分の唯一の肉親を、是が非でも長く生きさせたいという願望があった。
この点で、何も悪いことをしていない村人がある日突然、愛する肉親を永遠に失ったのとは同じではありません。
また、厳しいことを言うと、フェンは本来それを語れる立場にいません。
フェンは捨て子であり、自分を育ててくれたこの村全体が家族のようだと思っています。
村人全員が家族の“よう“だったフェンは、“たった一人の婚約者“、“たった一人の父親“、“父と母”を失った気持ちを体感として持ちえません。フェンには強い執着や愛着を抱く個人そのものがもう存在しないのです。
だから、厳密には外にいる人が中にいるつもりで意見を言っているのに過ぎないのです。
ルドに「異議あり!」
ローラナを許すか許さないか、ヒートアップし始める場に水をぶっかけるのは商人のルドです。
ローラナを許せないという村人に対して、「そうかな?」と自説を述べ始めます。
ルド曰く、「自分は外部の人間だから、外から見えるものがある」とのこと。
こちらはなかなか説得力を持ってしまいますね。ルドはこの街で誰を喪ったわけでもなく、単に商売としてやってきた利害関係者ですから。「第三者の冷静な意見か…」とざわつく系です。フェンだけだと単に幼馴染のローラナを庇ってると捉えられてしまうので、フェンにとってはこれ以上ない援護射撃。



ルドの主張はこうです。
悪いのはローラナじゃなくて、ローラナの気持ちを利用して情報を買ったやつだろ?
そいつはもう、主人公が倒してるだろ?
だったらここで憎み合っても意味がないだろ?
だから、ローラナを責めるのは違うんじゃないか。
という弁論ですね。
「ん? そうか?」と思いつつも論理が通ってる気がして、プレイヤー側も「そうかも」と思ってしまう。
そうだよね、悪いのはタイタスだ。ローラナを責めるのは違うのかな、そんな気がしてくる。
こんなに謝ってるし、後悔しているし、街のために頑張ってたし、聖火もとってきてくれたし、これ以上責めたらなんだかこっちの方が悪人のようだ、と村人が思い始める場面です。
でも、ルドの言ってることはこういうことなんですよ。
ルドのお店に、盗賊が入ったとしますね。
盗賊はあらかじめ、僧侶Aに大金を渡して、ルドのお店の抜けを探っていました。
ルドが店を留守にする時間帯はあるかとか、金貨をどこに隠していそうかとか。
僧侶Aは、相手を怪しいなと思いつつも大金に目が眩み、ルドの店の情報を渡しました。
結果としてルドの店に盗賊がきて、店の有り金を全部盗んで行きました。
ルドの商売は立ち行かなくなり、店は倒産しました。
のちに僧侶Aは、ルドに謝りに行きます。
自分は盗賊にルドの店の情報を売った、ごめんなさい、許してください、でも自分はルドの店が好きだった。盗賊からもらった大金で、ルドの店で売っていた〇〇を買うつもりだったが、それも盗まれてしまった。
こんなことになると思っていなかった。後悔している。せめてもの償いで、命懸けで建築資材を確保してきた。自分はこれからもルドのお店で買い物がしたい。
その時、ルドは言えるんですかね。
「悪いのはお前じゃない、お前の気持ちを利用した盗賊さ」
「その盗賊はきっと誰かが成敗している。俺がお前を憎むのは違う」
「一緒に前を向いて行こうぜ」

いやーー、言えないと思うな。
「テメェが俺を裏切って奴らを手引きしてたのか、許さん!」
「俺の店を返せ! 償え!」
「お前聖職者だろうが! 欲丸出しでその仕事すんな!」
「お前に店の再建を手伝ってもらうのなんて真っ平ごめんだ」
「いくらお前が命を張ろうが、俺の大事にしていた店も、金も商材も、帰ってこないんだ!」
こっちの方が人間だと思いますが、どうでしょう。
ちなみに、フェンがここで何か言うとこうなります。
「待てよルド。Aだって、お前の店で買いたかった〇〇が盗まれちまったんだ。何より欲しかった〇〇を、Aは手に入れることはできなかったんだぞ? ルドも商品を失ったけど、Aも〇〇を失ったんだ。だったら、Aだけ責めるのは違うんじゃないか?」
ジャスパーに「異議あり!」
フェンとルドの主張により、場は“ローラナを許す”方に傾いていきます。
流れを決定的にしたのは、ジャスパーの言葉です。
もうこんな言い争いをやめよう。
こうやってローラナを責めるのは、僕らを襲撃した犯人と何が違うんだよ、と。

えっ・・・。
君は何を言ってるんだ、全然違うだろ?
タイタスがやったのは、利己的な動機による、一方的な破壊と虐殺だろ?
今この場でやってるのは、村に情報を売ったローラナを許すかどうかだろう?
君の中では、虐殺と裁判がイコールで結ばれるのか、おかしいだろ!?
後ろではなく前、過去ではなく未来
過去ではなく、未来ーー前を向くと言うのは綺麗に聞こえますが危険性もあります。
人は過去と未来の狭間である現在にいて、そのどちらも切り離せない連続した線の上にいる。
過去が辛くて苦しくて、憎しみも混ざるものだった場合、無理に許したことにするためには、心のどこかでその気持ちを抑圧し続けなければならないからです。
相手を責めないのが人として正しい、許すよう努めるのが正しい、そう自分を押さえつけて苦しみに蓋をすると、その苦しみは年々汚泥のように心の深部に溜まっていきます。もう我慢できないほど溜まったとき、それは爆発して外に出る。
爆発するまでの長期間も慢性ストレス下に置かれるので、自律神経が乱れて、自分では原因がわからない頭痛や腹痛、イライラや不眠といった諸症状に襲われ続けるし、酒量が増えたり、病気にかかりやすくもなるでしょう。トラウマによるフラッシュバック、愛する人を喪った悲しみによる抑うつ、加えて怒りの抑制も強いられます。今後の復興した街で、ローラナの姿を見ることがトリガーになる怒りです。
ローラナを許し受け入れ街を再考して行く話は一見美談ですが、その裏で村人の心に時限爆弾を植え込みました。
ローラナの受容と引き換えに、多くの村人は許しと、憎しみの抑圧を強いられました。
ローラナは罪を告白し、謝罪し、受け入れてもらったことでスッキリと前を向けますが、他の村人はどうでしょうね。
村に将来的にメンタルクリニックが必要になったら、フェン・ルド・ジャスパー・そしてローラナは責任を取れるのでしょうか。フェンのように、切り替える・忘れる・考えないができる人間であれば大丈夫かも知れませんが。
そんなこともありローラナが、村人の役に立ちたいからとフェンの経営する酒場で給仕役をやっているシーンが、私には別物に見えるんですよね。
再び、ローラナは悪なのか?
ゲームの話はそれっぽい流れであればいいという前提で作られています。
そこまで人間心理を掘っていったら、物語が描けなくなるには同意。
その上で、ローラナがどうすれば良かったのかは明白で村に戻っても罪を告白しないを選べば良かったのです。
ストーリーとして描くのであれば、ローラナが苦悩する姿は見せる。聖火も取りに行く。罪を告白するのは、主人公やその他2〜3人にとどめ、全員に許してもらおうと望まない。
罪があることを告白していない(その点では、村人を裏切ったまま)という罪悪感を味わい続ける人生を選ぶこと。本当の自分は裏切った罰されるべき人間なのに、周りの村人には善人のローラナとして見られ続けるギャップの苦しさを受け入れること。
ローラナは自分が許されることと引き換えに、村人に新たな苦しみを与えました。
許さなければいけないという葛藤です。
フェンだったら、どうかな。
主人公とスティアがノモスの元で暮らし力をつけ、ウィッシュベールの再興を決意する流れの中で、フェンとローラナは不在である方が、主人公の旅立ちとしてはインパクトが強いんですよね。
でもいじけっぱなしと言うのはとても格好悪いので、主人公たちの元に戻れない理由があったら良かったですね。
記憶喪失にもなってないし、五体満足の彼は自由に行動もできたわけなので。
フェンを格好悪いキャラ、ズレた兄貴、残念なイケメンとして描き、ローラナと庇い合いをすることにフェンの役割はあったのかもしれませんが、プレイヤーもローラナを許す倫理を強要される以上、もう少し納得感のある話にして欲しかったところ。
多数決を取りながら自分は後出しで中立といい、決の結果も採用しない王女のいる世界なので、倫理の一貫性は難しいのかなぁ。
そうそう、ローラナで書き忘れた話がありました。
ローラナが自身の罪を告白した置き手紙を、教会で見つけたのは主人公です。
その次のシーンでは、もう酒場で村人にローラナの情報が回ってしまっています。
ここにローラナ本人はいないので、ローラナの手紙を村人に回そうと決めた人物がいるんですね。
ここでは主人公→スティア→フェンという流れが想像できますが、フェンがそこで村人に回さないという判断もできました。もちろん、スティア、主人公にもできました。
ローラナの意図としては、村人全員に知ってほしいと書いた手紙です。だから読み手はその通り回した。
もうこの時点で、ローラナの罪を村人全員に知らしめ、その上でローラナを総意として許す方向性が確定しています。
ローラナの意思がまず先に“手紙”としてあり、その意思を幼馴染三人が“誰も止めない“。
ローラナを許すというのは、この物語の総意なんです。
だからこそ、許せるか許せないがギリギリのグレーラインに乗るように、ローラナの罪は決定された。
ヤヤが生き残ってもいけないし、全員死亡してしまってもいけない。ローラナが手引きしたわけではない。
そして、ローラナを庇うルドとフェンは、肉親を殺されていない。
村人全員に許された上で、もう一度この場所でやり直したいというローラナのエゴを、世界が採用しました。
そうしたらもう、何も抗えないですよね。
ローラナとアラウネは、何やっても許されるけど、エリカとサザントスはダメ。そういう世界。
オルステラの世界のルールはそうなってるけど、異世界からそれを眺めているだけのプレイヤーは世界の枠組みの外にいるので、「変だな?」って思うことができる。
ローラナの手紙は結構な爆弾情報であるのに、主人公たちがそれをすっと通してしまうのは、「ん?」ってなりましたね。ここでもフェンが(あまり深く考えずに)動いたんじゃないかなぁと勘ぐってしまう。
ローラナを許した結果、今後苦しむことになるのは村人の方なんですけど、表立って目立つのはローラナ良かったね、ウィッシュベール良かったねっていう美談であり、心理を丁寧に追わないとプレイヤーに苦しみが伝わらない村人の方ではありません。
フェン・ローラナは真エンドの全員で臨む総力戦でも、終盤まで連れて行くメンバーではないのにもかかわらず、必殺技が異常に使い勝手の良い優遇されたキャラクターです。(アーフェンやメイシィと比べてみてくれ)
だから彼らの行動というのは一見おかしくても、正しく見えるように設計されていきます。
でも違和感は確かに残るので、今回深掘りさせていただきました。
これで私はローラナと同じでスッキリするんですけど、読んだ人にはモヤを残してしまいますね。
エゴって本当に厄介ですね。
お付き合いありがとございました。
また別の記事でお会いできたら嬉しいです。
他の記事もよければどうぞ。

